「プランマン」チョン・ジェヨン“僕には特技がない…それが限界であり長所だ”

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俳優チョン・ジェヨン(43)の最近の活躍をよく見ていると、驚くほど興味深い。映画「ソニはご機嫌ななめ」でデビューして以来、初めてホン・サンス監督の映画に出演し、堂々とした演技を披露した彼は、「AM 11:00」(監督:キム・ヒョンソク)で天才物理学者のウソク役を務め、鳥肌が立つほどのカリスマ性でスクリーンを熱く沸かせた。

韓国で1月9日に公開された映画「プランマン」(監督:ソン・シフプ、制作:映画社日就月將)では、これまでの韓国映画では前例のない、無計画では生きていけないキャラクターハン・ジョンソク役を務め、観客たちに新鮮な笑いと感動を届けている。

「プランマン」は計画通りに人生を送ってきた男性ハン・ジョンソクが自由奔放なインディーズバンドのボーカルユ・ソジョン(ハン・ジミン)と出会い、少しずつ変化していく過程をユーモア溢れるタッチで温かく描いた作品だ。彼が「プランマン」で演じたハン・ジョンソクは、正確な計画と実践が命よりも大事な人物だ。コンビニに行く時間、さらには交差点を渡る時間まで、一日のスケジュールを腕時計のアラームに設定して生活するというこれまで韓国の映画では見たことのない斬新なキャラクターである。

チョン・ジェヨンは「『プランマン』のシナリオを見た時の第一印象は、とても明るくて良い作品だと思った。ここ数年、暗いキャラクターを主に演じてきたというのもあり、題材そのものも新鮮で面白いと感じた」と語り、出演を決めた理由を明かした。

きっちりとした人生を送る人物らしく、外見から漂う雰囲気も特別だ。触ると指が切れそうな綺麗にアイロンがけされたジャケットとワイシャツ、シンプルに整えたヘアスタイルや、綺麗好きな性格を物語るピカピカに拭いたメガネまで。また、今回の作品で初めてメガネをかけたというチョン・ジェヨンは、「キャラクター設定のためのメガネになってしまうのではと思い、慎重になったが、ちょうど小物スタッフがハン・ジョンソクにぴったりなメガネを持ってきてくれた」と話した。

映画「小さな恋のステップ」(2004年)以来、久しぶりのソフトなコメディ映画で戻ってきた彼に「喜んだファンも多かったのでは?」と聞くと「『小さな恋のステップ』『彼とわたしの漂流日記』『ウェディングキャンペーン』のキャラクターを少しずつ合わせたような感じで演じた。見方によっては好きになれないキャラクターだが、そんなキャラクターでも可愛くて純粋な魅力のある男性に見えるように演じることがキーポイントだった」と伝えた。

実際、チョン・ジェヨンは相手役の女優に恵まれている俳優の一人だ。「小さな恋のステップ」のイ・ナヨン、「ウェディングキャンペーン」のスエ、「ソニはご機嫌ななめ」のチョン・ユミ、そして「プランマン」のハン・ジミンまで。どの女優との共演も彼だけが持つケミストリー(相手役との相性)で観客に期待以上の面白さを与える。「プランマン」でもハン・ジミンと一緒にロマンチックさとコミカルさを自由自在に操る演技でスクリーンを彩った。

「ジミンは綺麗なことはもちろん、性格まで良い。作品への情熱も凄くある。これからブレイクするのではないだろうか。個人的な希望だが、ジミンにもっと映画に出演して欲しい。もちろん、最近女優が頻繁に出演できそうな作品があまり多くないというのが現実だが」

彼に「プランマン」のハン・ジョンソクのような自分だけのこだわりはあるのかと聞くと、チョン・ジェヨンは10年前に独特な習慣ができてしまったことを明かした。「元々体温が高い方だからサウナは好きではなかったのだが、10年前からサウナにハマってしまった。今日みたいにインタビューがある日だったり、撮影やスケジュールがある日も、朝必ずサウナに行っている」

写真=ロッテエンターテインメント
以下はチョン・ジェヨンとの一問一答である。

―ピアノの練習は別途にしたものなのか。

チョン・ジェヨン:もちろんだ。2小節を2ヶ月くらい練習した(笑) 劇中で僕が演奏した曲はショパンの「幻想即興曲」だが、20年くらい練習しないと本来の速度通りには演奏できない。代役の方が演じたシーンと僕が演じたシーンを適度に合わせて完成させている。

―ハン・ジミンとのキスシーンは可愛く、そして面白かった。

チョン・ジェヨン:元々のシナリオではロマンチックなディープキスだった。だがそれはハン・ジョンソクらしくないと思い、監督を説得して今のようなキスシーンになった。ジョンソクとソジョンが突然濃いキスをしたら映画に違和感が生じると思う。

―ハン・ジョンソクのように愛する人のために何かを変えようと努力したことは?

チョン・ジェヨン:年をとると少しずつ譲ることを覚える必要があると思う。20代の頃は頑固だったが、少しずつ融通がきくようになった。7年前までは撮影の際に家族と旅行に行くなんて夢にも思わなかった。撮影というのはいつ終わるのか分からないものなのに、どうやって旅行に行くのだと思い込み、旅行に行く気すらしなかった。それが自分なりの鉄則でもあった。だが『黒く濁る村』の頃、僕はあまりにも自分のことしか考えずに生きてきたということに気が付いた。そして撮影の合間をぬって製作陣の了承を得て家族と旅行に行った。やってみると出来ないことではなかった。

―映画の後半ではハン・ジョンソクのトラウマが少し過剰だったのではという指摘もあった。

チョン・ジェヨン:もしその設定がなければ映画がとても退屈なものになっていたはずだ。僕はただ笑わせるためだけの映画ではないという点で、この設定が良かったと思っている。ジョンソクのトラウマがもっと軽く描かれていたら、それはそれで他の誰かの基準に合わなかったりもしただろう。だから「プランマン」のようなジャンルの映画は結局は好みとの戦いだ。強迫性障害や潔癖症が一瞬のトラウマでできてしまうというのは大げさかもしれない。だが商業映画で強迫性障害になるまでの過程を細かく描くことはできない。ジョンソクのトラウマは「プランマン」のボーナスだと思って見てほしい。

―先日、「ソニはご機嫌ななめ」でホン・サンス監督の映画に初めて出演したが。

チョン・ジェヨン:とても楽しかった。本当に朝シナリオを配ってくれる。少しでも気を抜いて演技をするとすぐに気付かれてしまう仕事なので、俳優にとってはとてもトレーニングになる。初心に戻ったような感じだ。でも僕も稼がないと生活ができないから(笑) ホン監督の作品に頻繁に出演することは難しいと思うが、機会があればまた出演してみたい。後輩の俳優たちにもホン監督と一緒に仕事をすることをお勧めしたい。

―監督たちが相次いでチョン・ジェヨンをキャスティングする理由は何だと思うか。

チョン・ジェヨン:ハハハ。それは監督たちに聞いてみないと。まあ、僕が無難な役者だということが一番大きな要因なのではないだろうか。「AM 11:00」でどんなに重い演技を見せても、1ヶ月後に「プランマン」を公開することにあまり無理がない。外見からして平凡なので、色んな人物を演じられるということが理由だろう。

―俳優チョン・ジェヨンでも限界を感じることがあるのか。

チョン・ジェヨン:僕には特技がないということが限界だ。それが限界でもあり、長所でもある。様々なジャンルを無理なくこなすことができるが、チョン・ジェヨンからこれといって思い浮かぶものがないというのが限界だ。最近の悩みは観客が僕に飽きてしまうのではないかということだ。俳優は飽きられてしまってはいけない(笑)

―「王の涙-イ・サンの決断-」「さまよう刃」など、今年のラインナップも錚々たるものだ。

チョン・ジェヨン:「王の涙-イ・サンの決断-」は「プランマン」の撮影のため遅れて合流し、申し訳なかった。今だって撮影しなければならないのに「プランマン」のPR活動で撮影できずにいる。主にヒョンビンの傍にいる役どころだが、ヒョンビンは男性から見ても本当に格好良い。周囲の人に僕が「王の涙-イ・サンの決断-」で宦官役を演じると話したら、みんな3秒くらい黙ってしまった。ハハハ。「さまよう刃」は上半期に公開される。最初から最後まで重い内容の映画だ。

―新年の計画は? 元日には何をしていたのか。

チョン・ジェヨン:新年の予定は「プランマン」だ。ハハハ。元日は本当に久しぶりに一日中家で横になっていた。妻が寝てばかりだと小言を言ったが、聞こえないふりをした(笑) あ、子供たちと一緒に家で映画を見た。タイトルは何だったかな。「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々:魔の海」だったかな。

―キャリアを積み重ねる上で自分なりのリズムはあるのか。

チョン・ジェヨン:本当に良い作品であれば役に成りきることにプレッシャーはない。ただ連続で似たような役を演じると、演じる側も飽きるし、キャスティングする側も飽きるし、そして見る側はもっと飽きてしまうだろう。今回「プランマン」を演じたが、もし次回作で「プランガール」をやると考えると……やはり面白さが半減してしまう。

記者 : キム・スジョン、写真 : チョ・ソンジン