「殺人の疑惑」キム・ガプス“いつか『マディソン郡の橋』のような人間味溢れる映画を撮ってみたい”

OSEN |

写真=ミン・ギョンフン
俳優キム・ガプスが待っていたかのようにお父さんのような笑顔を作って見せた。明るい笑顔と共に真っ先に記者にかけられた質問は「映画をご覧になりましたか?」だった。それだけ彼は久しぶりに出演した映画に対する愛情と期待感を持っていた。

ソン・イェジンとキム・ガプスが主演を務めた映画「殺人の疑惑」(監督:クク・ドンソク)は、韓国を衝撃に陥れた誘拐殺人事件が時効となる15日前、犯人の声を聞いて愛する父親スンマン(キム・ガプス)を思い出したことから始まる娘ダウン(ソン・イェジン)の残忍な疑いを描いた作品だ。10月24日に韓国で公開されて以来、公開2週目にも興行成績トップの座をキープするなど観客の人気を集めた。

映画のシナリオを読んで感じたのは「ドラマがとても素晴らしい」ということだった。キム・ガプスの言葉通り「殺人の疑惑」はスリラージャンルの特徴だけでなく、父親と娘の間で表れる関係、その中で行き交う感情を見事に生かし“感性”スリラーと呼ばれながら好評を得ている。

「実際には、父と娘の間でなされる話を描いており、これが退屈になるのではないかと心配しました。派手なディテールやシーンを必要とする作品ではありませんが、観客はどうしてもアクションがあって、血が流れる、そういった刺激的な映画に慣れているはずなので……どう受け入れられるか心配したのは事実です。しかし、シナリオを選択した理由もそうですが、表面上に見える刺激よりも、人の内面の感情を刺激する効果のほうが大きいと思います。この映画を見た人は、1時間半の間、息をする間もないくらい集中していたと言っていました」

映画に出演した理由を語りながらキム・ガプスは娘役で出演した女優ソン・イェジンと、演出を務めたクク・ドンソク監督、プロデューサーのパク・ジンピョ監督に対する賞賛を続けた。

「今回の作品がクク・ドンソク監督にとって初めての作品です。僕は映画に出演するたびに、新人監督に興味が湧きます。好奇心から来るものですが、新人監督がどのような考えをしていて、またどのような映画を作ろうとするのか気になります。ある意味では一つの冒険とも言えますが……あ、そうだ、探していく楽しさがあります」

今回の映画を通じて、2007年にSBSドラマ「恋愛時代」で親子を演じて以来、再び親子の演技を見せることになった。ソン・イェジンの話をする時、キム・ガプスの顔に再び温かい笑みが浮かんだ。

「どうしても一緒に仕事をする人が重要だからです。ソン・イェジンと親子を演じたこともこのシナリオを選択した欠かせない理由です。(ソン・イェジンが)綺麗で、演技も上手で、それは誰もが知っている事実です。初共演ではないので、演じながらずっと楽だろうと思いましたが、時間もかなり経ったし、また私の方がずっと先輩なので不便に思われるのではないかとも思いましたし。しかし、会ってみるとそんな心配をする必要がないくらい息が合いました。昔の姿をそのまま持っていて、本当にそのままでした」

映画を撮影しながらキム・ガプスはもどかしさを感じた。娘のダウンから引き続き疑われながらも何もいえないスンマンの立場がもどかしかったと。疑われる行動をしたり、また潔白を物語る姿を見せたりする、そのギリギリのところで爆発してしまいたい衝動に駆られたという。

「違うなら違うとちゃんと話をするべきですが、本当に強く話すと本当のことなのに嘘のように聞こえるかも知れません。表現を出来ないことが、私にとってはとてももどかしかったです。そのもどかしさを作品が終わるまで持ち続けなければならないのがスンマンとしての役割でした(笑)」

1990年代に入りキム・ガプスは映画よりドラマに頻繁に顔を出している。映画よりドラマを好むことに特別な理由は無かった。理由と言うよりは、仕方が無い状況に近かった。役割に限界があったからだ。

「どんどん歳をとると、映画の中で出来る役割がそう多くありませんでした。ボスだとか会長、後ろで操る黒幕、そんな役割はあまり気に入りませんでした。正直、人間味溢れる役割をしてみたいという気持ちが大きかったです。2年前に映画『世界で一番美しい別れ』に出演しました。結果は良くなかったのですが、ドラマはとてもしっかりしていました。私の映画の好みがそうなんだと思います。ドラマがしっかりしていて、人間的な役割を求めます」

キム・ガプスはハリウッド映画のクリント・イーストウッドのように人間味溢れる役がしたいとの願いを示した。不可能なことかもしれないが「マディソン郡の橋」のような映画を撮ってみたいと。

「いつかは『マディソン郡の橋』のような映画を韓国で撮ってみたいです。それが出来る俳優が多くないので、簡単ではないと思います。観客がそういった海外映画のように受け入れてくれるかも問題です。それでも希望を失いたくはありません。我々にも出来ると思います。たくさんの映画を撮って、また撮り続ければ、後にそういったものも出来るのではないかと思います。今映画に携わっている後輩たちが、長く、歳を取ってからも役者を続けて欲しいです。その時は我々にも、そのような映画、演技をすることが出来るのではないでしょうか」

記者 : チョン・ユジン