「主君の太陽」キム・ユリ“私とは違うテ・イリョンに我を忘れました”

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※この記事にはドラマ「主君の太陽」の結末に関する内容が含まれています。

放送終了後も尽きない話がある。それは最近韓国で放送が終了したSBS水木ドラマ「主君の太陽」(脚本:ホン・ジョンウン、ホン・ミラン、演出:チン・ヒョク)のことである。その中で小さな太陽ことテ・イリョン役を演じたキム・ユリ(29)は、まだ「『主君の太陽』の余韻から抜け出すことができない」と寂しい気持ちを明かした。

ケチかと思えば隙だらけで、隙だらけだと思えば器用な人物。キム・ユリは、「主君の太陽」のとんでもなく高飛車な女性キャラクター、テ・イリョンとは異なるようで似ている。テ・イリョンというキャラクターを見送るその日、TVレポートは彼女にインタビューを行った。


「最後の撮影日は笑いながら泣きました」

キム・ユリにとって「主君の太陽」は、本当に特別なものだった。会話をするだけで楽しくなる先輩に会える機会であり、素敵な後輩もたくさんできたという。そして、これまで披露してきた演技とは全く異なる役を演じるというプレッシャーを乗り越えることができた機会でもあった。終始楽しかった撮影だったが、最後だけは寂しさが押し寄せた。

「最後の撮影は、ガンウ(ソ・イングク)と漢江(ハンガン)で撮影をしました。場所も漢江だと感受性が敏感になりましたね。このシーンが終わればイリョンやガンウともお別れだと、本当に終わってしまうのかなと考えると寂しくなりました。ソ・イングクさんに『今日が最後だね。このシーンが終われば』と言いながらメイクをしてもらおうと座っていると涙が出ました。思っていたよりずっと寂しい気持ちでした。撮影が終わると皆、すっきりした気持ちが半分、寂しい気持ちが半分だと言いますが、私にはすっきりした気持ちはありませんでした」

寂しくて涙が出るほど、楽しく思い出に残る撮影現場だった。お互いにアドバイスをし合った共演者たちや撮影スタッフのおかげで最後まで撮影を続けることができたという。特に撮影現場で励まし合ったソ・ジソブ、コン・ヒョジン、ソ・イングクの魅力を熱心に語ったキム・ユリは、当時を思い出したのか何回も笑って見せた。「主君の太陽」の出演者たちはお互い導かれるように馴染んでいった。

「『主君の太陽』で初めて出会う方ばかりでしたが、気遣いや励まし、勇気をもらいながら皆さんと馴染むことができました。特にソ・ジソブ先輩コン・ヒョジン先輩はアドリブ一つ一つ、すべてに気を使って下さいました。ソ・イングクさんはムードメーカーです。キュートな一面がある反面、思いやりもある素敵な友達です。おかげで笑いながら楽しく撮影することができました。イリョンにとってもガンウは特別な存在ではないでしょうか」


「私とは違うテ・イリョンに我を忘れました」

似ているように見えたが実際は違った。溢れるように湧き出す自分の感情を、ありのままためらいなく表現するテ・イリョンについてキム・ユリは「尊敬する」と表現するほどテ・イリョンの魅力にすっかり夢中になっていた。“小さな太陽”であっても過剰なほどの明るさを放つテ・イリョンのキャラクターとは違い、キム・ユリ本人はもう少し“普通”に近い存在だという。

「『清潭洞アリス』のシン・インファはとても冷たい役でしたが、私自身は冷たくはありません。ですがイリョンのように過剰に明るくもありません。ちょうど中間で普通の人間です。時には憂鬱になり、時には明るくなる、そんな人間です。そして、人見知りでもあり気が合えば溶け込むように親しくなりますが、すべての人と仲良くなれるわけではありません」

ありのままに自分の感情すべてを見せてしまうテ・イリョンは、最終的にはガンウの心を掴んだ。ガンウへの愛を余すことなくすべて打ち明け、拒否し続けられても諦めなかった。最後には愛を手にしたテ・イリョンについてキム・ユリは「拍手を送りたいです」と語った。

「本当に拍手したいものです。テ・イリョンは素直な気持ちを表現しますよね。ドラマの中でトップスターである彼女ですが、自分の地位とは関係なく男性に近づき、拒否されてもめげない……そんな彼女の勇気はすごいです。私にはできないと思います。でもガンウのように素敵な人が現れたらそうするかもしれないですね」

こんなに可愛くて無邪気な悪女は他にいないのではないか、と思うほどテ・イリョンは常識とはかけ離れたキャラクターであった。美容整形をするように誘惑する美容整形お化けに取り憑かれた時は、不気味な特殊メイクをして登場し、フライパンのCMを撮影するシーンでは狂ったようにがむしゃらなダンスを披露した。炎の中でも自由自在にフライパンダンスを披露したキム・ユリに視聴者の目は釘付けになった。キム・ユリはこのシーンのためにダンスの練習室まで借りて撮影の準備をしたという。

「その台本を受け取ったのは撮影の3日ほど前でした。それから3日間、衣装やフライパン、音楽に慣れるためにダンスの練習室で時々練習をしました。音楽を聴きながら体を委ねました。もし本番で私が演じ切れなければ撮影の妨げとなってしまうので迷惑にならないよう頑張りました。それにこの踊りは振り付けを覚えればいいというものではなかったので、コミカルにしようと努力しました。本当に我を忘れて練習しました。そして当日、撮影は4時間ほど続きました。火が吹き出ている間に立ち、4時間フライパンを持ちながら踊ったので最後は全身汗だくになりましたが、NGもなく褒めて頂けて良かったです」


小さな巨人キム・ユリ、なぜここまで謙遜するのか?「私は中古の新人」

他の俳優もそうであるように、キム・ユリのデビュー当時も順調ではなかった。2006年にデビューを果たすも、2012年にSBS「清潭洞(チョンダムドン)アリス」に出演するまでは紆余曲折も多かったという。これについてキム・ユリは「元々前向きな性格なので辛くはありませんでした。今考えてみると私は中古の新人でしょうか?」と率直に話せるほどしっかりしている。

ここ1~2年の間、キム・ユリは存在感のある役を続けて演じた。特に「主君の太陽」のテ・イリョンは誰が見ても大ヒットだった。クールでありながら何食わぬ顔の持ち主であり、気さくな上にキュートな言葉遣い、これらがキム・ユリの演技の中に全部溶け込んでいた。それにもかかわらずキム・ユリは「私はまだまだです」と語る。「街でよく気づかれるのでは?」という質問にキム・ユリは「役柄として覚えてくれていることが嬉しいです。街で『キム・ユリだ!』と気づいてくださるのももちろん嬉しいですけど、『テ・イリョンだ!』と言ってくださる方がもっと嬉しいです」と答えた。特に、キム・ユリとテ・イリョンが同一人物であることに気づかれない場合に達成感があるという。

クールでシックなトップスター、テ・イリョンは去り、キム・ユリだけが残った今。キム・ユリは謙虚そのものだった。「やってみたい役はあるか。一緒に共演したいと思う役者はいるのか」という質問に「呼んでくだされば何でもやってみたいです」という答えが返ってきた。「まだ私は何かを計算するようなレベルではないので」という素直な発言ではばからずギャップのある魅力を披露した。共演してみたい役者は「多いので一人一人のお名前を挙げることはできません」と述べながらもキム・ユンシク、チェ・ミンシク、ソン・ガンホなどの名前を並べ、目を輝かせた。

「自分自身につける点数ですか?それは保留です」…「主君の太陽」に出会ったキム・ユリは星5つ!

「自分自身を評価することはできないと思います。難しいですね。視聴者の皆さんが判断されることだと思います。でも『主君の太陽』に出会えたこと、すべての状況が本当に幸運でした。星5つの状況です。ホン姉妹(ホン・ジョンウン、ホン・ミラン)の脚本センスとチン・ヒョク監督の演出力がなければ、イリョンがここまで愛らしいキャラクターになることはなかったと思います。私がそれを上手く表現できていたかは分かりませんが、すべては視聴者のみなさんが判断される部分でしょう?たくさん応援してくださってありがとうございました(笑)」

記者 : ムン・ジヨン、写真 : チョ・ソンジン