Vol.1 ― 「FLU 運命の36時間」スエ“母性愛の演技ですか?撮影前から怖かったです”

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写真=マイデイリー DB
「私がどうすれば恐れ多くも母性愛を演じることができるのでしょうか」

女優スエが映画「FLU 運命の36時間」を撮影する前に、キム・ソンス監督に言った言葉だ。これまでに映画「深夜のFM」とSBSドラマ「野王」を通じて母親を演じたスエだったが、映画の撮影前に彼女は、もし自分の演技がリアルに見えなければどうしようかと心配した。

しかし、マスコミ試写会を通じてベールを脱いだ「FLU 運命の36時間」で、スエは娘ミル(パク・ミンハ)のために自身を投げ出すリアルな母親の姿を完全に描き出して、彼女の能力を改めて証明してみせた。

スエは「以前、母性愛に溢れる母親役を演じたが、子どもとの動きは別だった。『FLU 運命の36時間』のように、子どもと直接呼吸を合わす演技は簡単ではないと思っていた。先輩たちが、動物と子供と呼吸を合わせることが一番難しいと言っていたからだ。経験したことのなかったことなので、『できなかったらどうしよう』という不安があった。女性は生まれた時から母性愛を持っていると思うが、恐れ多くも経験したことのない母親について“分かる”と言うことはできなかった」と明らかにした。

続いて、「何かを想像しながら間接的に経験したことを、事実であるかのように表現するのが俳優だと思う。しかし、私が経験したことのない事柄の中でも、多くの人が知っていて、経験したことのある母性愛は、より簡単に見抜かれてしまうように思った。私たちが考える母親という存在は、子供のためにすべてを捨てて駆けつけ、時には友達のように過ごしたりもする。そのような細かい描写に対するプレッシャーと負担があった」と付け加えた。

このような心配とは異なり、スエは子供を一人で育てるシングルマザーのキム・イネを完璧に演じ、娘のために奮闘しながらも時には犠牲を払い、時には子供のために利己的な姿も見せた。しかし、それが子どもを育てる母親の姿でもある。実際に母親になって経験したことがないという理由で、観客たちに不十分な面がばれてしまうのではという彼女の心配は、言葉通り杞憂に過ぎなかった。

彼女は、「恐れが先走ったようだ」と言いながら、「本当に上手く表現したいし、いつも演技をしたくて、上手くやる姿を見せたいというのが俳優の欲ではないだろうか。そのような想いが恐怖心を生んだようだ」と打ち明けた。

スエは、彼女ならではのキム・イネを誕生させるために強いが、その強さが度を越えずに親しみやすく、時には子供に頼ったりもする母親の姿を表現することに重点を置いた。このような細かい描写がキム・ソンス監督がスエに注文したことだった。

これと共に、俳優たちとの連携にも神経を使った。彼女自身にとって協力や団結などが必要な時だと思い、また演じながら常に学ぶが、今回の作品を通じてそのような部分をもっと体感してみたいと思ったのが「FLU 運命の36時間」への出演を決めた理由だった。このような努力は、彼女にチャン・ヒョクとユ・ヘジンという親友をプレゼントした。

スエは、「何が私たちを固く団結させたのか分からないが、私にとってチャン・ヒョク兄さんとユ・ヘジン兄さんが一番大きな収穫ではないかと思う。私は運が良いことに、相手役の俳優に恵まれてきたが、今回はそれを越えて、人間的にも親しくなった。だから、率直な対話や私の姿を飾ることなくすべて見せても恥ずかしくなかった。性格のせいでもあるが、以前はNGを出したり、そのような瞬間が来たら恥ずかしかった。しかし、兄さんたちの前ではそうではなかった」と回想した。

キム・ソンス監督の再発見も、スエにとって特別な経験だった。怖い監督として知られるキム・ソンス監督だが、実はスタッフ一人一人を愛する穏やかな監督だったのだ。

彼女は、「監督は温厚な性格だ。今回の撮影をしながら、一度も声を荒げることがなかった。後半の方になると好奇心が沸いてきた。夏だから暑くて、あまりにも不快指数が高く、撮影しにくい状況だった。毎回撮影が容易なわけではなかったので、監督が声を荒げるのではという好奇心も湧いたが、そんな状況はなかった。むしろ見たかった。“伝説のキム・ソンス監督”の姿を見たかったが、そうではなかった。先頭に立って指揮しなければならない立場なので、大きな声を出すこともあると思ったが、そのような姿を見せなかった。こうやってみんなが笑いながら演技できる雰囲気が作られたということだけでも、私たちは成功したんじゃないかと思う」と説明した。

また、「映画ごとに走るシーンが多かったが、こんなに力が抜けるほど走ったことはなかった。しかし、一人で走ったわけではない。スタッフたちが一緒に走ってくれたし、監督が最初に走ってくださった。面白かったし、印象的だった」と言いながら、「キム・ソンス監督に対し、映画の生き証人のような印象を受けた。監督が本当に全てを愛しているんだなと思った。スタッフ一人、小道具の一つに対しても、全ての面倒を見る方だ」としながら、キム・ソンス監督に対する賞賛を惜しまなかった。

雰囲気の良い現場のためか、スエは他の作品ではなかなか見られないコミカルな演技にアドリブまで加えて披露した。自分が本当に楽しんでいなければ決して出ることのない、スエのまた別のくだけた姿でもあった。このような姿を見た彼女のファンは、“おすましスエ”という愛称をつけて喜んだ。

スエは「“おすましスエ”って良いですね。監督とプライベートの席でお会いして、公の席でも打ち合わせをしていたとき、『とてもリラックスして見える。こんな演技を見せてほしい』と言われた。それで、このようにコミカルな演技に近づいていった。そのシーンを撮影した後、続けてラブコメディをしたいと話している。ラブコメディは、MBCドラマ『9回裏2アウト』以来撮影していないが、面白かった。全部チャン・ヒョクさんとスタッフたちが上手く合わせてくれたのでそうだったようだ。これからはもっと多様な姿を見せたい」と、望みを伝えた。

スエがコミカルな姿から母性愛に溢れる母親にいたるまで、様々な姿を通じて観客の五感を満たす「FLU 運命の36時間」は、致命的な変種ウイルスによって無防備な状態で閉鎖された都市に閉じ込められた人々の熾烈な死闘を描いた作品だ。スエをはじめ、チャン・ヒョク、パク・ミンハ、ユ・ヘジン、マ・ドンソク、イ・ヒジュンなどが出演し、韓国で14日に封切られた。

記者 : キム・ミリ