「お金の化身」カン・ジファン“私たちが知っている彼、知らなかった彼”

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※この記事にはドラマ「お金の化身」の結末に関する内容が含まれています。

「噂…俳優としては仕方ないが、振り回されはしない」

「やっとのことで作品に参加した」というある俳優の言葉がしばらく胃もたれのように残っていた。不思議なことにこの言葉を思い出す度にその俳優の眼差しが一緒に思い出され気になった。その主人公は俳優カン・ジファンだ。彼は元所属事務所との専属契約紛争に巻き込まれた頃、折悪しくSBS「お金の化身」のキャスティングが伝えられた。論争が起きると、カン・ジファンは自ら記者会見を開いた。それがカン・ジファンを実際に初めて見た日だった。

当時、カン・ジファンは自身の役をめぐり「喜怒哀楽を全部表現できる役柄だ」と熱意を示し、自身をめぐる論争のためドラマに影響を与えるのではないかと心配した。そして「やっとのことで作品に参加した」という当時の言葉のように、カン・ジファンは「お金の化身」でこれまでの恨みを晴らすかのようにイ・チャドンという複雑な人物を表現した。おかげで「お金の化身」は彼が映画「7級公務員」や「映画は映画だ」以外にドラマの代表作として自信を持って言える作品となった。

「一種の乾きのようなものがあったようだが、せいせいしました。すっきりして満足感もありました。もちろん苦労もして、頑張ったけど物足りなかった時もありました。僕が至らない時もありましたし。しかし、僕にできることはすべてベストを尽くしたので、今回は本当にすっきりしています」

“役者”カン・ジファン「今後も喜怒哀楽を盛り込める作品に出演したい」

他のことより「お金の化身」で気になったのは「イ・チャドンはそれからどのように暮らしただろうか」だった。もちろん、愛と復讐の両方に成功した閉ざされた結末だったが、イ・チャドンの事が気になった。カン・ジファンは「イ・チャドンには幸せや一家団欒への願望があっただけに、ちゃんと暮らすと思う。イ・チャドンもポク・ジェイン(ファン・ジョンウム)も只者ではないので、子供を産んだとしてもきちんと育てると思うし、ポク・ファスル(キム・スミ)も世話して幸せな家庭を築くと思う」と述べた。

「不正な検察官には戻らなかったはずです。最初、検察官になったのは正義感のためではなくサラ金に返済するためでしたが、色々な事件を経験しながらまた検察官になった時には権力型不正や良心について深く考え共感するはずです。もし、“正義”が何か気付いていなかったら、チ・セグァン(パク・サンミン)に自身の地位と権力を利用してさらに大きい復讐をしようと思ったでしょう。しかし、イ・チャドンは正義ある法の裁きを計画したじゃないですか。その過程を経て正義感溢れる検察官に生まれ変わったのではないでしょうか」

同じ時間帯の競争作に抑えられ「お金の化身」制作陣の前作である「ジャイアント」や「サラリーマン楚漢志」ほどの成功は収められなかったが、カン・ジファンにとって「お金の化身」は視聴率以上に意味のある作品だ。「たくさんの方々が『お金の化身』を視聴率だけで評価するのではなく“作品”として見てくれた。反応だけを見ると『お金の化身』の影響力は視聴率20%ほどの効果があったと思う」と自負した。

「もちろん主演俳優として僕の作品が成功してほしいという願いはあります。ダメなら悲しいし。それはある意味で主演俳優の義務だと思っています。たまに『視聴率にこだわらない』という役者もいますが、それは僕としてはどうかと思います。僕たち役者は自身の作品を見てもらえるように誘うことが仕事で、そのため演技をしているわけじゃないですか。しかし、視聴率が低いとそれはちょっと良くないですね」

自ら「様々な姿に変身できる点が役者としての長所」だと評価したカン・ジファンは、今後も「お金の化身」のように「一つの作品で喜怒哀楽を全部盛り込める作品」に出会いたいとした。しかし、ジャンルに制限を設けたくはないという。「本格アクションを一度やってみたいですが、“ロマンス俳優”というアイデンティティを捨てる気はありません。ロマンス俳優です(笑)」


“人間”カン・ジファン…「噂は気になるが、道理に従うと考えれば楽になる」

もう一つ避けられない話題は“噂”だ。「役者なら噂されるのは仕方ないと思う」と前提したカン・ジファンは「ただ正せるものは正して、僕と関係もないような仕方のないことは笑って済ませるしかない。デビュー初期に『隠し子がいる』というデマもあったが、そのことで記者会見をすることはできないじゃないか」とする彼は、「しかし、最近の噂についてははっきりと違うという話をしたくて手続きを踏んでいる」と話した。

「人間である以上解脱はできません。気を使いますよね。正直、ある時は答えが見つからず、仕事を辞めようかと思ったこともありました。とんでもない話がデマになり、一方的な報道によって事実であるかのように知られますから。でも気にしても解決されるわけでもなく、一人で苦しんでも僕が損するだけでした。僕が麻薬をしたり、本当に大きな過ちを犯したりしていれば仕方がないと思いますが、はっきりと違うと話すことができ、法律的にも解決できる問題であるなら、なぜそんなことに僕が夢見てきた人生を諦めるんですか。それはないと思いました」

ここまで一気に話す彼を見たら、これまで本当にもどかしかったようだ。先ほどの記者会見の話を切り出すとカン・ジファンは「あの時辛かったのは、僕が罪を犯してその場にいたということではなく、僕が出演する作品に被害を及ぼすのではないかと心配で、その場の居心地の悪さに耐えていたことだ」と振り返った。しばらく言葉を続けられなかったのも「そのような場でさえ、役者だから言いたかったことを言えずに我慢しなければならなかったからだ」という。

それでもこの一連の事態を経験し、カン・ジファンは「役者は役者であればいい」という確固たる哲学を持つようになった。「噂に振り回されず、好きな演技をしてファンたちと出会うことが一番重要だ」ということに気付いたのだ。また、役者として確実に“上手くやる”姿を見せるという決心も同時にしたという。

「せっかくやるのであれば本当に頑張らなければと思いました。他の話が出てこないくらいに。僕の専門分野があるわけですから、僕の仕事を上手くやって、それ以外の部分は機会があれば虚心坦懐に話せばいいでしょう。実はそんなに難しいことでもないじゃないですか。道理に従えばいいわけですから。そうすればいいと思ったら気持ちが楽になりました」


“ファン思い”カン・ジファン「いつかはファンだけのための公演を披露したい」

デビュー以来、自身をしっかりと支えてくれたファンへの感謝の気持ちも彼が演技を続ける大きな原動力となる。カン・ジファンは普段からネットにあるファンたちの空間を“実家”と表現する。また、なるべく頻繁にファンの反応を見て、これを鏡にして自身を振り返ったりもする。カン・ジファンは「毎日(ファンコミュニティやファンサイトを)訪問する。僕の心の中には何をしても暖かく僕の背中を押してくれる場所であり、母親がいる場所のようだ」とし、ファンへの愛情を示した。

そのため「ファンたちにどうすれば感謝の気持ちを伝えられるか」もカン・ジファンの関心事の一つだ。ファンミーティング一つにしてもカン・ジファンにとっては逃すことのできないチャンスだ。カン・ジファンは「これまでファンミーティングをするとなればたくさん準備をしてきた。僕が歌手でもなく役者としてファンミーティングをするのには限界があり、僕にできることは何があるだろうかと考えてみた」とし、目を輝かせた。ファンへの想いが深い人だ。

「僕がミュージカルをした経験があるじゃないですか。そして演技をしているから…一度はファンミーティング向けに短編映画を作ったことがありましたが、いつかはこれをもう少し発展させて僕の家族と僕の人々のための公演を作ってみたいと思います。それで作品が終わって休んでいる間も大学路(演劇などの公演会場が集まっている街)で演劇やミュージカルをたくさん見ようと思っています。

僕のファンのための僕の作品であるだけに、公演を作るとしたら公演の全般に参加すべきでしょう。そうやって役者である僕のファンミーティングでできる最大限の能力をお見せしたいです。正直、他の人はしないで欲しいです。僕だけ(笑) これまでファンミーティングの時に色々なことをやってみて試行錯誤をしてきたので、今はある程度ノウハウを身につけたと思います。デビュー11年目ですが、同じ場所で見守ってくれているファンたちへの恩返しになると思いませんか?」

記者 : イ・ジョンミン、イ・ミナ