「伝説の拳」イ・ジョンヒョク&グウォン、カン・ウソク監督の豪語を信じた理由

TVREPORT |

こんなに奇特な俳優が他にいるだろうか。

俳優イ・ジョンヒョク(27)とグウォン(25)は、人生最高のファイトショー映画「伝説の拳」(監督:カン・ウソク、制作:シネマサービス)でチョン・ウンイン(ソン・ジノ役)、ユ・ジュンサン(イ・サンフン役)の学生時代を演じ、スクリーンを圧倒する演技で観客を感嘆させている。

スクリーンデビュー作がカン・ウソク監督の2年ぶりの演出復帰作。さらにチョン・ウンイン、ユ・ジュンサンなど名前だけでもその存在理由を持つ俳優たちの学生時代の役なのだ。よほどの度胸がなくては、プレッシャーで眠れなかっただろう。

幸か不幸か2人はプレッシャーを感じる間もなかった。ほとんどの彼らのシーンでカン・ウソク監督は現場で即興で台詞を変え、苦労して練習したアクションも頻繁に変わることが常であった。

これほどであるといくら新人でも不満を持ちそうだが、その相手が韓国のヒットメーカーカン・ウソク監督ではないか。文句をつけることなど考えられず「映画で見せてやる!!」という監督の言葉を信じて従ったということだ。

プレッシャーの代わりに監督を信頼しワンシーン、ワンシーンにすべてを注ぎ、その結果ファン・ジョンミン、ユ・ジュンサン、チョン・ウンイン、ユン・ジェムンと並んでエンドロールに名前をあげることができた。最近TVレポートとインタビューを行ったイ・ジョンヒョクとグウォンは「伝説の拳」に一緒に出演できたことが今でも胸いっぱいなのか、時々目頭を熱くした。


熾烈だったオーディション…「抱き合わせ疑惑、気にしない」

―皆どのようにキャスティングされたのか?

イ・ジョンヒョク:4人ともオーディションを受けた。それぞれ自分が希望するキャラクターを選んで1次オーディションを受け、2次、3次オーディションで4人ずつ一組になった。個人の力量より4人のコンビネーションを見たようだ。

グウォン:キャスティングはすべて運だと思う。幸い、僕たち4人の組み合わせが本当によかった。つんとした性格の人が1人もいなく、性格もよく合った。監督がその部分を高く買ってくれたようだ。

―抱き合わせのキャスティングじゃないかという疑惑もあった。

グウォン:関係ない。先輩たちがいるからこそ、「伝説の拳」があったのだ。正直、カン・ウソク監督が抱き合わせでキャスティングする方ではないじゃないか。事務所(NAMOO ACTORS)も抱き合わせする事務所ではないし。

イ・ジョンヒョク:オーディション過程そのものが、抱き合わせができない構造だった。グウォンはイ・サンフン役が一番似合った。

―シナリオを初めてもらったとき、どんな感じだったのか?

グウォン:やりたいという気持ちが切実で、心臓が震えるほどだった。一方では「期待しないでおこう」とも思った。欲が出る作品だったから、落ちたときの失望を前もって予想したのだ。

イ・ジョンヒョク:シナリオをもらう前に原作のウェブ漫画を先に見た。第1話から休まずずっと読んだ。本当に面白かった。原作がとても面白かったし、何よりもカン・ウソク監督だから僕もかなり期待した。

―上映時間が153分だ。少し長いという指摘もある。

イ・ジョンヒョク:時間的には長いが、体感する上映時間は短いじゃないか。長くても飽きないということだ。シナリオ段階から監督は2時間以上の上映時間を予想していたと聞いた。監督は「僕を信じてついて来い。長くても短くても僕は編集しない」と話していた。結果的に満足している。

グウォン:絶対必要な部分が多かったというよりは、編集するシーンがなかったと思えた。

―それぞれの配役には満足しているのか

イ・ジョンヒョク:パク・ジョンミン、パク・ドゥシク、グウォンは自分がやりたかった配役でオーディションを受け、その役にキャスティングされた。僕は正直、個人オーディションはイ・サンフン役で受けた。監督が「君はソン・ジノだ」と配役を変えたけれど。

グウォン:(イ)ジョンヒョク兄さんは、見ているとチョン・ウンイン先輩に本当に似ている。

―ユ・ジュンサン、チョン・ウンインからアドバイスをもらったのか?

グウォン:ユ・ジュンサン先輩は、イ・サンフンのキャラクターについてアドバイスしてくれたことはない。代わりに俳優として最も大事なのは、演技力ではなく現場での態度だとアドバイスしてくれた。

イ・ジョンヒョク:なのに、なぜそうしないんだ(全員爆笑) チョン・ウンイン先輩はほかの俳優が嫉妬するほど僕のことを気にかけてくれた。ほかの俳優たちに「うちのジョンヒョクさ。君たちはあっち行け」と冗談を言うほどだった。最初は分からなかったが、皆が僕のことをうらやましがるから、僕がチョン・ウンイン先輩に愛されていることが分かった。


監督の豪語を信じるしかなかった理由

―デビュー作からカン・ウソク監督の映画だ。プレッシャーはなかったのか。

イ・ジョンヒョク:大きな映画、立派な監督、ただそれだけ考えたらプレッシャーがものすごく大きかったはずだ。もちろん、プレッシャーがまったくなかったわけではないが、監督がリラックスできる環境を作ってくれた。クランクイン前から4人で合宿を始め、十分仲良くなってから撮影に臨むことができた。オーディションの合格を言い渡されたのが4月だったが、そのときから7月まで毎日アクションスクールで生活するようにしていた。家では寝るだけだった。

―カン・ウソク監督は実際会ってみるとどんな人だったのか。

グウォン:まず、怖い人だ。ありえないぐらいの天才性を持っている方でもある。映画を通して俳優、観客、スタッフなどすべての人にプレゼントをあげる方だ。偶然というには本当に完璧な演出力を持っているし。僕たちのシーンはほとんど現場で監督が台詞を作ってくださった。

イ・ジョンヒョク:がんばって台詞を覚えていっても、大体現場で変わったよね。

グウォン:初めての映画で、準備された台詞を覚えるだけでもいっぱいいっぱいだったのに、現場でたった30秒だけ与えられ、「そうじゃなくて、こうして」とディレクションされた。体が追いつかないから、やりたいようにできず大変だった。監督は僕が大変そうにしていると「理解できないだろう? 映画で見せてやる」と豪語した。映画を見たら、単なる自信ではなかったと思った。

イ・ジョンヒョク:カン・ウソク監督を鬼だと思って、撮影を始めた。本当に怖かった。

グウォン:ジョンヒョク兄さんは監督に一度も怒られたことがない。一番怒られたのは(パク)ドゥシクだった。

イ・ジョンヒョク:贅沢なこと言っているかもしれないが、監督があまりにも僕を怒らないから、「僕に興味がないのかな、僕ちゃんとやっているのか」と悩んだ。ほかの俳優には打ち明けられない悩みだったから、さらに辛かった。映画を撮影する間、ずっと不安だった。編集されるかもしれないと心配した(笑)

―監督のディレクションが理解できないとき、どのようにして克服したのか?

イ・ジョンヒョク:頭で理解できなかったこともあるが、良く聞こえないケースも多かった。現場でインカムでディレクションするから。もう一度言ってくださいとは言えず、分かったふりして「はい!分かりました!」と答えて、演技した。

グウォン:そんな中、ドゥシクは「もう一度話してください!」と言って、僕たちは一瞬、固まってしまった(笑)

―カン・ウソク監督は撮影前にコンテを完璧に構想することで有名な監督じゃないか?

イ・ジョンヒョク:今、出ている完成版がシナリオ段階から監督の頭の中にあったと思う。いつも自信に溢れている方だ。監督の前作をほとんど映画館で見た。前の作品だけ見ても、根拠のない自信でないことを知っていたため、さらに信頼できた。

グウォン:カン・ウソク監督は完璧に近い天才だ。最終的に、映画で見せてくれる人だ。

イ・ジョンヒョク:監督はR-15のときと、R-19のときの観客数と収益の差まですでに頭の中で計算していた。すごいよね。


居酒屋での団体アクションシーン、撮影途中失神も

―危ないシーンが多かった。怪我も多かったのでは?

グウォン:小さな怪我はいつも多かった。ユ・ジュンサン先輩が十字靭帯を切る怪我をして、スタッフも皆緊張していた。

イ・ジョンヒョク:ワンシーンを1日をかけて撮影したりした。アクションスクールでアクションを組み合わせていっても、すべて変わった。アクションスクールでは、変わった設定をその場ですぐこなせる能力を育てたのだ。

グウォン:居酒屋で団体でヤクザとケンカするシーンがある。その日、撮影できなかったらそのシーンの撮影が不可能な状況だった。チョン・ドゥホンアクション監督ならびに、スタッフの皆さんが神経を尖らせていた。室内の空気も悪くて、狭いし、中に人はびっしり入っていたし。顔を殴られて一瞬、気を失った。

イ・ジョンヒョク:グウォンがそのシーンで本当に苦労した。環境がとても悪かったうえに、体力を消耗していたのだ。映画にはあまり出なかったが、僕もカメラの後ろでアクションしていた(笑)

―最も愛着のあるシーンはどこか?

イ・ジョンヒョク:ドッキュがリングの上で負けたとき、皆で悲しんだ。「伝説の拳」を通して仲良くなったため、それぞれのキャラクターにすでに同化していた。ドッキュが試合に負けて悲しむのを見て、皆本当に悲しんだ。そのシーンを撮影して宿所に帰ったが、普段の雰囲気と違い、少し暗かった。

グウォン:本気で応援し、本気で悲しんだ。監督が泣いちゃダメだと止めたけれど、涙が流れた。リングの上で4人でずっと泣いてたよね、たぶん。

―イ・サンフンは成人になってまたリングの上で戦うじゃないか。カタルシス(解放感)を感じたのでは?

グウォン:ユ・ジュンサン先輩と同じ役を共有したこと自体に喜びを感じた。技術試写会のとき、「伝説の拳」オープニングのときから泣いた。信じられなかった。俳優を夢見ていた僕がファン・ジョンミン、ユ・ジュンサン、ユン・ジェムン、チョン・ウンイン先輩の隣に座って一緒に映画を見るなんて。外に飛び出したくなるほど心臓がドキドキした。

―ロールモデルがいるのか?

グウォン:具体的なロールモデルはいない。韓国映画の先輩が、みんな僕のロールモデルだ。

イ・ジョンヒョク:レオナルド・ディカプリオ。世間が知っている以上に、俳優として素晴らしい人だ。デビュー初期に比べると今は、本当の俳優として成長した人じゃないか。俳優という肩書きの中で立派な人になりたい。

記者 : キム・スジョン、写真 : ムン・スジ