【ドラマレビュー】「その冬、風が吹く」からやっとノ・ヒギョンが見え始めた

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写真=SBS

現実性が薄まったノ・ヒギョンのドラマ…輝き始めた瞬間

私はドラマ脚本家、ノ・ヒギョンが好きだ。「彼らが生きる世界」(2008)を見てドラマ制作現場の厳しさと活気が羨ましかったし、「世界で一番美しい別れ」では痴呆症の姑が亡くなって死にたいと思う、余命宣告を受けたお嫁さんの気持ちが切なくて涙が出た。その他に「花よりも美しく」(2004)「バカな愛」(2000)「私が生きる理由」(1997)も幻想よりは現実的な題材と台詞で心が痛かった。

そのためなのだろうか、チョン・ウソンが生まれ変わったり、天使が登場したりしたドラマ「パダムパダム 彼と彼女の心拍音」(2011)は、率直に言って“ノ・ヒギョンドラマ”らしくなかった。新しい題材だったが、没頭できなかった。

そして今年、ソン・ヘギョとチョ・インソンが出演するノ・ヒギョン脚本家の「その冬、風が吹く」をかなり待っていたが、これも日本の原作があって韓国で映画にもなった作品ということを知って大いに失望した。最初から最後まで“ノ・ヒギョン”であってほしいという希望が行き過ぎたものだったのかもしれないが。

1度も慰められたことのない詐欺師を慰めたオ・ヨン

だが、その憂慮は取越苦労であったようだ。このドラマがいよいよ“ノ・ヒギョンドラマ”になる瞬間に出会ったのだ。2月28日に放送された第7話、オ・ヨン(ソン・ヘギョ)の兄を装っているオ・ス(チョ・インソン)は、実際の自分を「許されないことを犯したゴミのような人間」と表現した。これに対しオ・ヨンは「あなたが何様のつもりで許しているの?人が人にできることは許しではなく、慰めだ」と一度も慰められたことのない詐欺師を慰めた。

息を殺して泣くオ・スを見ながら切ない気持ちが伝わってきた。どれだけありがたくて申し訳ないのだろうか。嘘で始めたため真実を告げることも難しい上、命と金まで絡んでいるので、この危険な愛はまったく方法がなさそうに見える。

一方、こういうことも思った。オ・ヨンが障がい者でないなら、それでオ・スを見ることができるなら、慰められたのだろうか。オ・スのようにもしかして私たちもその人を知っていると思いながら自身の基準に合わせ良し悪しを区別しているのではないだろうか。それで慰めも、さらに許すこともできずにいるのではないかと思った。

写真=SBS
ソン・ヘギョの演技は「彼らが生きる世界」で言葉があまりにも速かった時と違って成長した。今は本当にスターではなく者と呼ばれるべきだ。また、まるで化粧品CMかのように美しく描かれているためドラマから目が離せなくなる。

チョ・インソンは回を重ねる度にオ・スのキャラクターと密着していく。それが実際の姿ではないか疑うほど、役者をドラマの人物と同じように作るのもノ・ヒギョンが好きな理由だ。役者の力量もあるだろうが、役者をたくさん観察し分析してドラマの中の人物に生き返らせるためなのではないかと思う。

「その冬、風が吹く」は以前の“ノ・ヒギョンドラマ”より現実性はかなり薄くなったが、緊迫感が加わって次の展開が気になる。今は原作ドラマや映画を見ない方が良いと思うほどだ。「いま愛していない人、全員有罪」という本を書いたノ・ヒギョンは「その冬、風が吹く」の最後で原作ドラマ「愛なんていらねえよ、夏」とどのように出会うのだろうか。最終回までの残り時間が楽しみだ。

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記者 : チョン・バン