イ・ジュニョク“「赤道の男」は復讐や許し…人間の欲望が描かれたドラマ”

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2013年2月20日にDVDが発売されるドラマ「赤道の男」。「復活」「魔王」に続きオム・テウンが再び復讐劇に挑んだ作品として韓国放送当時から話題を集めた。オム・テウンの敵役として、親友を裏切った男ジャンイルを熱演したイ・ジュニョクのインタビュー。

―「赤道の男」の内容とイ・ジャンイルは、どんな人物ですか?

イ・ジュニョク:「赤道の男」は欲望について描かれたドラマです “復讐”や“許し”といった、人間の欲望が描かれています。ジャンイルは成功や出世に対して貪欲なキャラクターです。実は当初は、彼は許されない罪を犯したのでジャンイルを演じることが苦痛でした。もし自分だったら、親友を陥れたことに自己嫌悪するだろうし。とにかく彼を徹底的に憎みました。今でも、彼がやったことは悪いと思います。それは事実だけど、彼の人生の結末は、悪事をはたらいた結果、幸せになるのではなく悲惨な末路をたどるので、教訓は残してくれたと思います。彼の欲望には僕自身共感できる部分もあります。

―ジャンイルの役作りのためにどんな準備をしましたか?

イ・ジュニョク:彼は行動自体が強烈なので、二重性が出るようにしました。外見でも二重性を帯びるよう、設定上男らしさよりも、女性っぽさを出したりとか、ヴァンパイアのような中性的な人物を目指しました。現実に存在しないかのような危うい雰囲気を意識して衣装や外見などにも気を遣いました。

―特に苦労した点は?

イ・ジュニョク:普通はドラマをやると5~10話くらいで、登場人物の人間関係や雰囲気が決まり、楽になるのですが、ジャンイルの場合は、2~3話の間に、周りの状況が一変し、自分の立場も変わってしまうので、2話ごとにキャラクターが変わる印象でした。状況が変わるたびに、新たに役作りをするので、そこがある意味面白くもあり大変な部分でもありました。

―激しい嗚咽や、目線での演技などが素晴らしかったですが。

イ・ジュニョク:もちろん泣くシーンは消耗します。一番きつかったのは……父親が首を吊る場面で、“子供のように泣く”という指示があって、感情を込めて演じたものの、監督は淡々とした演技を望んだためNGになりました。感情を消耗する場面でNGがたくさん出たし、自分でも満足できなくて、監督に頼んで何度も撮り直してもらったので、その部分が肉体的にも、精神的にも きつかったです。

―オム・テウンさんとの共演でしたが、いかがでしたか?

イ・ジュニョク:テウンさんは本人の仕事にプロフェッショナルで、そういう部分で頼もしい人だと思いました。彼との共演は柔らかい感じでした。現場では集中して物静かな方です。役柄上も テウンさん演じるソヌと仲良しではないし、僕もひたすら演技に集中しました。

―演出のキム・ヨンス監督は、どういう方ですか?

イ・ジュニョク:独特な発想の持ち主で、自信に溢れた方です。僕は楽しかったです。今まで見たことない方法でカメラを動かしたり、目新しい映像が撮れるという期待を抱かせてくれました。時間がたくさんかかって、大変な時もありましたが、僕にとっては楽しかったし新鮮でした。演技をよく見てくれる方ですし、よりいい方向へ導いてくれました。時にいただく厳しい意見もありがたかったです。

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―脚本家のキム・インヨンさんはどんな方ですか?

イ・ジュニョク:僕は数回しかお会いしたことがないので、こういう方です、とは言えませんが、まずは面白いストーリーを書いてくれる方です。一つの見方に固執するのではなく、様々な状況や変数にオープンに対応できる、そういう人だと思います。韓国のドラマは、予想を裏切る展開になりやすいですが、その点にもきちんと対応されていました。屋上シーンでのセリフの中に “あの時 もっと強く殴って殺すべきだった”と言って泣く場面があります。あのシーンを見るとジャンイルを許そうという気持ち、脚本家が拒んだような気がしました。

―屋上のシーンは、壮絶でしたね。

イ・ジュニョク:もっと強く殴って、殺すべきだった。そう言って泣きましたよね。視聴者はジャンイルを真の悪人と思ったでしょう。しかし、もう一方では、彼の本心は何だろうと思わせる部分でもあります。表面上悪ぶっているだけではないかと。台本を初めてもらった時は、正直戸惑いました。一般的なパターンとは違うので、ジャンイルの真意を自分なりに解釈しました。彼は過去に戻っても また過ちを犯すだろうということ。彼の本性がそうなんです。ソヌの態度が悪魔のように冷酷です。ソヌが悪魔のような振る舞いをすることに対して、動揺したんです。確かにジャンイルは昔、彼を殺そうとしたけれど、自分を受け入れてくれた最後の理解者であったソヌが、いきなり悪魔と化して現れたことに、大きな衝撃を受けたんです。だから あのセリフには、“悪魔になって戻ってくると分かっていたら殺していた”そういう気持ちを込めました。

―ジャンイルにとってのソヌとは?

イ・ジュニョク:ジャンイルにとってのソヌは……ジャンイルは皆と同じような幸せを望んだと思います。でも彼は幸せという概念を誤解してしまった人物です。ソヌは幸せになる方法を知っている人だと思います。正しい道を進める人。だから、ジャンイルにとっては、ソヌという幸せのお手本がいるのに、彼に背を向けたために幸せから遠ざかってしまった。友達という枠を超えて。ある種の象徴だと思います。

―スミ役のイム・ジョンウンさんとの共演はいかがでしたか?

イ・ジュニョク:ジョンウンさんとは、役柄の設定上わざと距離を置いたんです。ジャンイルにとってスミは、何というか自分の醜さを映し出す鏡だと思います。ジャンイルの悪い部分を、スミも持っているから、ジャンイルにとってスミは、不気味な存在であると思います。

―2人の関係は韓国ドラマでは珍しい設定でしたね。

イ・ジュニョク:2人は ひずんだ欲望に従い行動してしまった人物なので、何をしても悪い方向に進みそうです。あえてその質問に応えて、僕なりの結末を考えてみるなら、仮にスミの欲望どおり2人が結婚したとしても、やはりいつかジャンイルもスミも、それが誤った欲望であることに気づくでしょう。つらいですね。

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―ジウォン役のイ・ボヨンさんについて。ジャンイルは彼女のどんなところに惹かれたのでしょう?

イ・ジュニョク:ボヨンさんはサバサバした人でした。テレビを通して見ていた時は、もっとおしとやかな印象でしたが、兄貴っぽいところがあって接しやすかったです。ジウォンのキャラクターは、ジャンイルは当初彼女が社長令嬢だから好きになりました。ひずんだ欲望から好きになった相手ですが、ジウォンは社長令嬢でありながらひずんだ欲望を抱くことなく、実に人間らしい人物です。ジャンイルに足りない部分を持っている人物だと思います。人は自分に欠けているものを相手に求めます。彼は正反対の彼女に魅力を感じたのだと思います。

―最後に「赤道の男」このドラマの魅力とは?

イ・ジュニョク:撮影中感じていたことですが、4人の主人公は1人の人間の分身だと思います。欲望に満ちていますし、ソヌはそれを包み込める人物。ジウォンは寛容。スミは愛に対する執着。誰もが持っている一面を極大化した人物だと思います。哲学的にも考えさせられることが多い作品だと思います。ドラマを作った1人として、楽しんでもらえれば何よりです。

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記者 : Kstyle編集部