【輝く俳優Vol.1】ソンジュン「正しい道を歩んでいると思う」

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閃光を放っていると言えば良いだろう。それは数多くの新人の中で“俳優”というタイトルを手にしている彼らがその可能性を見せる瞬間のことだ。それは一瞬のことのように、とても短いかもしれない。しかし、それさえも数多くの新人の中で、数少ない人だけが見せていると思うと、それ自体がどれだけ難しく、大切な瞬間なのかが分かる。まだ未熟だが見守りたくなる4人の俳優が残した些細なことも「10asia」が覚えているのはそのような理由だからだ。特に彼らは日照りが続いていた中で、目を輝かせたくなる俳優が少なかった20代男性俳優のカテゴリーから飛び出してきたという点で、より大切な存在である。ゆっくり歩んでいるが、いつからか人々を強く魅了している彼らは、今どこへ向かっているのだろうか。最初に2011年KBSドラマスペシャル連作シリーズ「ホワイトクリスマス」でデビューした後、昨年JTBC「私たち結婚できるかな?」まで、驚くほど速いスピードで自分の領域を広げている俳優ソンジュンの足跡を追ってみた。彼が聞かせてくれた話は、一度見たら忘れられないほど強烈な彼の印象と似ていた。

ソンジュンは非現実的だ。停止した画面の中でも何かを語っているような不思議な眼差しを持っているからではない。ソンジュンはわずか1年前、tvN「美男バンド~キミに届けるピュアビート」で格好つけた高校生クォン・ジヒョクとして人々に広く知られ、その後半年も経たない昨年の夏は、お金がなくて生活に苦しむKBSドラマスペシャル「湿地生態報告書」のチェ・グンだった。そして数ヶ月後は、毎日彼女に叱られるJTBC「私たち結婚できるかな?」のジョンフンとして生きた。もう少し遡ってKBS「ホワイトクリスマス」のチェ・チフンを思い出すと、混乱してしまう。誰よりもアウトサイダーの方が楽だった「ホワイトクリスマス」の高校生が会社で苦労しながら、「人は変わっても、愛は変わらない」と信じる「私たち結婚できるかな?」の平凡で純粋な男になったからだ。世相の中心に足を踏み入れるまで2年余りかかった。そんなに無理をしたわけではない。本当にソンジュンは非現実的だ。

この俳優に心を打たれた理由は、単純に2年という物理的な時間が経ったからではない。自分にしか不満を言えないほど、自発的に外部から離れていたソンジュンは自我を育ててきた男だった。「そばに誰かがいるのが嫌だった。ストレスが溜まるから。昔はただ一人で音楽を聴いたり、映画を観たりした。自分が好きなことだけして生きていた」そのようなソンジュンがある日突然、何気なく自分を消した。他のものでもなく、人間ソンジュンを消したのだ。現実に似た仮想空間で、自由に動く俳優になるためだった。「僕ではなく、ただクォン・ジヒョクであり、チェ・グンであり、ジョンフンでいなければいけなかった。そうしなければ、良い演技はできないから」仮想空間で本当のように話をしたり、笑ったりすること。これはその気になったからといって、簡単にできることではない。いや、覚悟した瞬間、すべてが偽者になってしまう。そのような理由で、ソンジュンは“表現ではなく、反応”し始めた。無理して何かを表現するより、台詞だけを覚えたまま撮影現場に行き、芽生える感情に対応すれば良いということをソンジュンは知ることになったのだ。もちろん今も彼はそれをじかに感じて、世の中を受け入れている。チェ・グンを知るために実際にお金を持ち歩かないなど、その時その時自分の“壁を作ってみる”のは、彼が自分以外のものを受け入れる独自の方式である。しかし、それさえも劇の中で自分を消すためにしたことだった。だから、クォン・ジヒョクとジョンフンのように周りとコミュニケーションをとる人物とソンジュンが重なっても衝突しなかったのは当たり前のことだ。

少年を消した空間に詰め込んだ俳優

自我に満ちていた少年が、大胆に自分自身を消し、俳優ソンジュンの名前を書き込んだ。そして思ったより短い時間で、俳優ソンジュンは様々なキャラクターを演じた。だが、これよりさらに興味深いのは、単純に見えるが混乱するようなこの過程をソンジュン自身がコントロールできるということだ。ソンジュンはアイデンティティが次第に薄くなっているようで喪失感は感じているが、不安にはならず、同時に“俳優として悪くない”ということを前提にしてバランスを取っている。自分の最も大きな変化の一つを第3者の立場で見る、客観化されたソンジュンは少しのことでは動揺しない冷たい宇宙である。そしてその宇宙は、いつでも新しい人物を受け入れるために、思い通りに自分を動かす準備ができている。まだ未熟で、経歴も多くはないが、俳優ソンジュンが怖く思えるのはこの様な理由だからだ。現実のせいにして逃げようとする人に「僕は野望がない男だ。僕は小さくて、素朴な人生が良い。うん……妻を熱く愛して、その愛を維持して、子供を一緒に育てて、大したお金ではないけど、些細な幸せを楽しむこと。僕はこのような人生を君と一緒に歩くなら大丈夫だと思った」と照れながら話すジョンフンも、反対に「まだ未熟な面がたくさんあるけれど、僕は自分が正しいと考える道を歩んでいると思う」と堂々と話すソンジュンも、結局みんなを説得してしまうのだ。

今ソンジュンは、彼の言葉通り「スタートしたところから、5歩進んでいる」のかもしれない。だが5歩“しか”ではない。ソンジュンは一番堅固だった自我を柔軟に動かせるようになったからだ。それも重心を土台にして、思い通りに大きな振幅を描きながら。そのため、俳優ソンジュンにかける期待は、ただ様々なキャラクターを自分のものにするだけに留まらない。他の人ではないソンジュンが努力して得た結果を、そして彼が解釈して誕生させた新たな人物を確認したくなったからだ。「何がしたいということは重要ではないそうだ。ある先輩は、『俳優とは自分に合った作品を見つけていくのではなく、作品に合わせて行くこと』だとおっしゃっていた」ソンジュンは軽く他人の言葉を伝える。しかし、その言葉の中には、より自由に自分を消し、劇の中に飛び込んで行く彼の志が刻まれている。焦らず、一歩も無駄にしない俳優ソンジュンは、そのような理由で今後も非現実的であり続けるだろう。これ以上頼もしい予感はない。

記者 : ハン・ヨウル、写真 : チェ・ギウォン、編集 : イ・ジヘ、翻訳 : チェ・ユンジョン