華やかだった2012年の韓国映画界に届いた5つの朗報

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今年の韓国映画界、監督の躍進と観客の増加が目立った

1億人という観客数を見ると、目覚しい1年でした。でも、今年の映画界にはまだ未解決の問題も残っています。それにもかかわらず、希望を与える嬉しいニュースをまとめてみました。/編集者

朗報1―女性監督の躍進

今年韓国の映画界に届いた最大の朗報は、女性監督の躍進だ。そのスタートを切ったのは、ピョン・ヨンジュ監督だった。女性の性労働者を題材にしたドキュメンタリー映画「アジアの女として」でデビューしたピョン・ヨンジュ監督は「ナヌムの家」「ナヌムの家2」に続き、メジャー映画界に入り、「蜜愛」「バレー教習所」で新しい世界を切り開いたが、興行面では失敗した。

だが、今年に公開された映画「火車」は韓国で240万人の観客を動員し、ピョン・ヨンジュ監督に注目すべき商業映画の監督として見直すきっかけを与えた。次回作の「照明店」もカン・プルの原作漫画を映画化したもので、すでに映画界では期待が高まっている。

商業映画でピョン・ヨンジュ監督と肩を並べる女性監督に、パン・ウンジン監督がいる。一時女優として活躍したパン・ウンジン監督は「オーロラ姫」の脚本と演出で映画界にデビューし、自身だけのカラーを見せた。今年に入って数々の大作が公開される中で公開されたリュ・スンボム&イ・ヨウォン主演の「容疑者X 天才数学者のアリバイ」は原作ファンの反発にもかかわらず、充実したラブストーリーで、韓国で150万人の観客を集めた。

商業映画ではこの二人の女性監督が活躍したが、独立映画(配給会社を通さず、制作者が直接映画館に売り込む映画)ではチョン・ジェウン監督とキム・ヒジョン監督の躍進が目立った。「子猫をお願い」で長編映画にデビューし話題になったチョン・ジェウン監督は、長い空白期間を経てある建築家の人生と死を描いたドキュメンタリー映画「語る建築家」で4万人の観客を動員し、独立映画としては大ヒットを記録した。

商業映画界に華やかなデビューを果たした監督がまったく新しい形で観客とコミュニケーションしたことでチョン・ジェウン監督の「語る建築家」は、意味のある作品だと言える。また「グレープ・キャンディ」で女性の観客からいい反応を得たキム・ヒジョン監督は、前作の「13歳、スア」に続き、2本目の作品としても面白く、出来のいい長編映画を作ったことで評論家と観客に信頼を与えた。一方、今年の上半期に最高の話題になったドキュメンタリー映画「二つの扉」を演出したキム・イルラン、ホン・ジユ監督も成長した姿を見せたと評価されている。

朗報2―健在なベテラン監督

最近、第33回青龍映画賞で監督賞を受賞したチョン・ジヨン監督は、今年韓国映画界が一番歓迎すべき人物の一人だ。資本と権力の介入によりいつにも増して監督の能力が求められる映画界で、チョン・ジヨン監督のように力量のあるベテラン監督の存在感は、映画界を支える役割をするからだ。

1998年「カ」を演出してからしばらく空白期間があったチョン・ジヨン監督は、今年だけで自身が監督した「折れた矢」「南営洞1985」と脚本を書いたドキュメンタリー映画「映画の現場」を公開し、映画界に躍り出た。

それだけではない。「バンジージャンプする」「血の涙」を演出したキム・デスン監督も前作に続き、時代劇「後宮の秘密」で観客に相変わらずの存在感をアピールした。扇情的だという議論で作品の本質が薄れてしまった面はあるが、基本的に宮廷内の権力構図というきちんとしたテーマを盛り込んだという点で観客にアピールした。

「ウンギョ」のチョン・ジウ監督もベテラン監督の能力を発揮した。「ハッピーエンド」で注目を集めながらデビューし「親知らず」「モダンボーイ」で自身のスタイルを知らせたチョン・ジウ監督は深みのある恋愛ドラマ「ウンギョ」でマンネリを克服したとの評価を受けた。観客と評論家は「ウンギョ」から感じられる“老化”の意味に注目し、感動した。一方、キム・ギドク監督は苦労の末に公開した「嘆きのピエタ」で、ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、映画界に栄光をもたらした。

朗報3―小さい映画で輝いた観客の存在感

写真=シネマダル、映画「二つの扉」キャプチャー
今年の芸術映画、または多様性映画とも呼ばれる上映スクリーンの数少ない映画に対する観客の反応が熱かった。「テイク・ディス・ワルツ」「サーチング・フォー・シュガー・マン(仮題)」「少年は残酷な弓を射る」「二つの扉」「MBの追憶」など、数々の作品が配給と上映の両面で厳しい環境に置かれているにもかかわらず、口コミで1万~7万に至る観客に出会い、そのほとんどが良い評価を得た。

このような傾向により、韓国で上映スクリーン数とは別に、作品が良ければ映画館を訪れる積極的な観客が存在するという事実が分かるようになったことは、今年韓国映画界の大きな収穫だ。いわゆるマニアと呼ばれるこのような観客こそ流行によって映画館を訪れる観客に比べ、長期的に映画界で影響力を発揮する観客になれる。

最近一部の映画館で行われている「シネキューブ芸術映画プレミアフェスティバル」と「ソウル独立映画祭」に行ってみると、観客の熱い熱気が感じられる。違う映画、新しい映画への情熱は、韓国映画界の性格とも関係がある。

いつも新しいものを楽しむ韓国人の映画への愛情は、すでにアメリカをはじめ、世界中の映画関係者によく知られている。そして、韓国を訪れる外国の映画関係者も年々増加すると共に、韓国で初めて公開される映画もある。また、韓国映画を一つのジャンルとして好む外国人が存在する。このような情熱が今年数本の小さな映画を支え、映画界に少なからぬ感動を与えた。

朗報4―立派な新人監督の登場

チョ・ソンヒ監督。まだこの名前よりは「私のオオカミ少年」の監督の方が分かりやすいだろう。伝統的なオフシーズンという10月末に韓国で公開し、12月現在までに650万人の観客を動員したこの凄いファンタジー恋愛映画は、メジャー市場にデビューする前から映画関係者に脚光を浴びてきたチョ・ソンヒ監督から誕生した。

このように韓国の映画界、特に独立映画界にはたくさんの人材がいる。韓国の映画界は「私のオオカミ少年」の成功でより忙しくなりそうだ。良い企画と隠れた人材が作り出す素晴らしい映画は、安定した配給と上映能力までを兼ね備えれば、数百人の観客を集めることは不可能なことではないためだ。すでにCJエンターテインメントでは、6日に韓国で公開される予定の「マイPSパートナー」のピョン・ソンヒョン監督を発掘し、観客との出会いを待っている。

写真=シネマダル
チョ・ソンヒ監督とピョン・ソンヒョン監督。この二人の新人監督を通じ、韓国映画界の未来を肯定的に見ることができる。まずは、より多い独立映画の監督たちが長編映画でデビューしなければならない。ベテラン監督たちの中でいい新作を作り出す場合もあるが、今年は特にベテラン監督たちが前作に及ばない新作で酷評を免れなかった。また、優れた監督はハリウッドに進出したり、制作やテレビドラマ、後進の育成など、映画の演出でない方向に移動している。

その中で可能性のある新人監督を発掘することは、単なるニッチ市場(特定のニーズを持つ規模の小さい市場)の開拓ではなく、韓国映画界の未来のために必ず必要なことだと言える。幸い今年、MYUNGフィルムは数年後に映画学校を開校させ、埋もれた人材を積極的に育成すると明かし、CJ文化財団のプロジェクトSは引き続き新人の監督を支援する予定だと言う。このような動きがあるため、韓国映画の未来は暗いとは限らない。

朗報5―映画館を訪れる観客の増加

何よりも「10人の泥棒たち」「王になった男」など、今年1千万の観客を動員した映画が2本も出たことは、韓国の映画界には朗報だった。同映画を含め、8本の韓国映画が数百万の観客を動員した。今年は潜在能力が炸裂した俳優が多いが、これは観客の鑑賞の潜在能力が炸裂したとも言える。

観客が映画を映画館で観たいと思うようになったとのことだ。これまで違法ダウンロードやテレビなどで映画に接してきた観客が映画館を訪れるようになったことは、今年、韓国映画を観た観客が1億人を突破することに繋がった。

それだけ韓国映画を含め、韓国で公開される映画がたくさんの観客を満足させる水準になったということだ。もちろん、観客数や上映スクリーン数の二極化問題が浮上したが、どうであれ映画館を訪れる人が多くなったことは、それだけ映画への関心が高くなったことで、これは今後韓国の映画界がどうなっていくのかによって消費市場としてその機能を十分に果たせるという期待をもたらすものだ。いかなる市場であれ、需要があってこそ存立と発展を夢見ることができるためだ。

従って、映画館で映画を観てくれる観客のためにも、韓国の映画界はより多様で出来のいい作品を作り出す能力を備えなければならない。そのためには、映画制作の際には脚本家の創造性を尊重し、撮影と後半作業においてスタッフへの待遇を改善し、配給と上映、そしてマーケティングにおける精度を守らなければいけない。

今年は、韓国映画界にとって最高の一年になった。このような雰囲気を来年にも、再来年にも続けていくためには、観客が求める映画はどんなものなのかを絶えず研究し、観客とコミュニケーションする必要があると考えられる。

記者 : ソ・サンフン 写真 : イ・ジョンミン