映画「26年」長かった4年間…“あの人”を断罪するために集まった俳優たち

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写真=映画社チョンオラム

映画「26年」で知っておくべき事実

忙しい毎日だった。そして多くのことを経験した。毎日新しいニュースが飛び交う中で元気に過ごす方法は“よく忘れること”ではないかと思うようになった昨今、忘れるべきこと、忘れそうなことが自然と過ぎ去っていくが、忘れられることの中で、きちんと記憶されていない真実も埋もれていくのではないかという漠然とした不安もある。

映画「26年」は過去ではなく現在の話である。未だに“あの人”は我々のそばで平気で生活していて、1980年光州(クァンジュ)民主化運動当時の市民軍虐殺の主犯たちもどこかで生きている。心に傷を負った人々も傷を負ったまま生きている。

そう考えると、忘却というのは恐ろしいものだ。「26年」はこのように人々が忘れてしまい、しっかりとした事実は分からないままだという韓国社会の一面を暴きつつ、重苦しくないように仕上げ、より多くの人々に共感してもらうために企画された。

もともとは2008年に公開する予定だった映画「26年」は、4年間も待たされることになった。公表された理由は、投資家による出資計画の撤回だった。面白いのは具体的な投資内容と方法まで合意した後、決定審査のみを残した状況で撤回されたことだという。形式的な手続きだったので問題なく投資を受けると思っていた制作の映画社チョンオラム側は突然の投資撤回を受け、映画制作を諦めるしかなかった。

“青瓦台(韓国の大統領官邸)による外圧”の噂が出回るなど、制作が不透明だった映画「26年」が最終的にはすべての撮影を終え、今では公開日だけを待っている。もう8割は成功したと見て良いだろうか。紆余曲折の末、2012年3月、「26年」の映画化に向けた作業が再スタートしてから、ソーシャルクラウドファンディング(ある目的のために個人投資家を集める策)などを経て制作費を集め、無事撮影を終えたからである。

やっと始まったと言いたい。2012年7月19日に初めてクランクインしてから10月10日に撮影を終え、編集作業を経て、11月18日には15歳以上観覧可の等級を受けた。これほど多くの人々が悲願していた作品であっただけに、観客に観てもらう瞬間からが同映画の真の始まりだと言えるだろう。


「26年」のキャスト、固定観念への挑戦と忍耐

「26年」で最も記憶すべき点はキャストの忍耐と意志だ。シナリオがまだ出来上がってない状況で、監督やキャストなどが辞退したり交代したりしていた。その過程で最も戸惑いを感じていたのは出演をすでに決めていた役者たちだったであろう。

実は「26年」に出演した役者の多くは、これまで印象的な前作がないという共通点がある。これは切磋琢磨して臨んだ今作が、彼らの本領を発揮できる絶好のチャンスになるということだ。「26年」では彼らの演技を満喫できると思われる。

俳優チン・グはそのような意味で断固たる強い意志と忍耐の持ち主だと言える。彼は制作会社が監督や他のキャストのことで戸惑っていた時、「是非出演したい」と揺るぎない意志を表明していた。本人も「今作が僕の役者人生のターニングポイントになると思う」とし、是非映画化してほしいと強く願っていた。

組織暴力団の一員、クァク・ジンベ役を演じるチン・グは、撮影現場で共演する端役やエキストラ一人一人にまで気を配ったという。彼の撮影が2日間行われるとすれば、その日を含め1週間、現場の人たちと一緒に行動を共にし、親しくなったという。当然、激しいアクションを共にする彼らのモチベーションも上がった。アクション監督はクァク・ジンベチームの雰囲気が最も良かったと、チン・グの熱い思いに拍手を送った。


意志の強いキャストたち、「出演を怖がることが可笑しい」

紅一点で出演するハン・ヘジンは所属事務所の反対をも押し切って、自ら「26年」への出演を強く主張したケースだ。バラエティ番組で親しみやすいイメージを構築していた彼女が、“あの人”断罪プロジェクトに参加するなんて……。彼女は明るい一面を持っているだけではなく、アクション演技についても天才的だったという。他の女優たちが1ヶ月間苦労して身に着けた射撃姿勢も1週間で体得したという。現場のスタッフによると銃を使用したアクションでは1回もNGを出さなかったという。彼女の国家代表レベルの迫真の演技も楽しみである。

アイドルグループ2AMのスロンは「26年」で映画デビューを果たす。彼は普段から演技への熱い思いを抱いていたが、懸念する声があったのも事実だ。だが努力している姿だけは頼もしい。忙しい海外公演の日程を終えると、夜明けには韓国に戻り、真っ直ぐ映画の撮影現場に駆けつけたという。そのお陰で飛行機のマイレージが一番溜まった役者になるかもしれないと語っていた。

ファンが送ってくれた様々なおやつや日用品は撮影現場での楽しみの一つだったという。「26年」の始まりから終わりまで、スロンの演技が成長していく過程も映画を観覧する一つのポイントになるだろう。

真面目な性格だというペ・スビンは映画のため、5.18関連のドキュメンタリーを観たり、望月洞(マンウォルドン)国立墓地を訪れたりするなど映画の内容を理解するための努力を惜しまなかった。日韓の若者の友情を描いた映画「道~白磁の人~」に出演するなど、ペ・スビンの作品を選ぶ目は独特である。商業性やスター性にこだわるより、作品の意味と価値を考える一握りの真の俳優である。

俳優イ・ギョンヨンも誰もが認める演技の達人である。現場で常に役者たちの面倒を見て、役作りのための討論をリードしたのも彼である。最初の撮影の直前に行われた告祀(コサ:幸運をもたらすように祭壇を設け、供え物を供えて祈ること)の後、打ち上げの時もキャストと作品の話に夢中になる彼の姿を見ることができた。

怒りの的となる“あの人”を演じるチャン・グァンには面白いエピソードがある。最近「王になった男」「殺人の告白」でも個性的なシーン・スティーラー(Scene Stealer:スターよりも注目される脇役)として登場したチャン・グァンは、すでにドラマで全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領役を演じたことがあるのだ。

1998年に放送されたドラマ「三金時代」は視聴率が低かったため、あまり知られていないが、今作ではちゃんと“あの人”になりきると覚悟を決めている。彼は昨年、映画「トガニ 幼き瞳の告発」の校長先生役で多くの怒りを買ったことがある。「26年」で彼が怒りを買えば買うほど、映画は興行的に成功することになるだろう。あまり憎まないでほしい。本当の役者チャン・グァンは、立派な人格を持ち後輩から慕われる役者だから。

記者 : イ・ソンピル、イ・ジョンミン