「海雲台の恋人たち」キム・ガンウ“作品のゴシップ扱いに、正直怒っていた”

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※この記事にはドラマ「海雲台の恋人たち」の結末に関する内容が含まれています。
写真=ムン・スジ
シャープなイメージが強かった俳優キム・ガンウ(34)が変わった。笑顔が多くなった。ジョークを飛ばす姿も自然だ。キム・ガンウは韓国で9月に放送が終了した「海雲台(ヘウンデ)の恋人たち」で一人二役を演じた。凶悪犯係の検事イ・テソン役と記憶を失った怪力ナムへ役だった。ドラマ「ザ・スリングショット~男の物語~」以来、約3年ぶりのドラマ復帰作だった。

一桁の視聴率で苦戦した「海雲台の恋人たち」だったが、幸いにも、後半には視聴率が上昇に転じた。最終話はSBSドラマ「シンイ-信義-」よりも高い11.3%(AGBニールセン・メディアリサーチ)を記録した。この数値も、「キム・ガンウがいなかったら不可能だった」という評価が多かった。「海雲台の恋人たち」で彼の存在感は圧倒的だった。

ナムへ役はチョ・ヨジョンがいなければ不可能だった

KBSは今年、「ブレイン 愛と野望」を除けば月火ドラマ枠で屈辱を味わった。「ドリームハイ2」「ラブレイン」「ビッグ~愛は奇跡~」などのそうそうたる作品が“最下位”という汚名の下に幕を閉じた。「海雲台の恋人たち」は「ビッグ~愛は奇跡~」に続く月火ドラマとして企画され、8月6日に韓国で放送がスタートした。当時は映画「蜜の味 テイスト オブ マネー」や「後宮の秘密」の公開で注目された俳優のキム・ガンウ&チョ・ヨジョンの出演が期待を集めた。

結果的には運に恵まれなかった。イ・グァンスン役にキャスティングされたT-ARAのソヨンは、T-ARAのいじめ騒動で物議を醸した。チョ・ヨジョンは釜山(プサン)訛りの演技が不自然であると非難された。撮影の際の天候もよくなかった。台風15号、16号が相次いで北上し、全国的な被害を受けた。海雲台を舞台としたドラマに、台風は大きな打撃となった。そのストレスで、キム・ガンウはドラマの撮影前は73kgだった体重が69kgに減った。

「作品を作品として見ずにゴシップ扱いされることがつらかった。正直『久しぶりのドラマなのに、なぜこんなことになるんだろう』と心の中で怒ったりもした。逃げたかった。でも、演技をしている時はそういうことは思わないようにした。作品に迷惑がかかるから。ドラマは一話、一話を別々に考えるのではなく、全体が集まった時に評価されるものだと思って、大丈夫だと言い聞かせた。もっと頑張ろうという気持ちで耐え抜いた」

キム・ガンウはこのドラマで見ているほうがつらくなるほど“壊れた”。彼の努力はテレビ画面にもそのまま現れた。「キム・ガンウのために『海雲台の恋人たち』を見る」というコメントも多かった。しかしキム・ガンウは、自分が注目を集めることができた理由はチョ・ヨジョンにあると話した。キム・ガンウは「チョ・ヨジョンがナムへの行動を心から受け止め、キュートに演じきってくれた。冷たくきれいな姿だけを見せようとする女優がパートナーだったら、僕もそこまで大胆にはなれなかっただろう」と語った。


イ・テソンとナムへ、どちらが本当のキム・ガンウか

「海雲台の恋人たち」はイ・テソンの記憶を取り戻したナムへが自分の地位を捨て、コ・ソラ(チョ・ヨジョン)と無人島でキスをするシーンでハッピーエンドを迎えた。ドラマの結末が気に入ったかと聞くと、キム・ガンウは「物足りなさがあった」と正直に答えた。キム・ガンウは「苦労を共にした妻を捨てたためだ」と理由を付け加えた。ナムへは記憶を失う前に結婚していた既婚男性だった。このような事情もあり、一部では「『夫婦クリニック 愛と戦争』でも撮っているのか」という指摘もあった。

キム・ガンウは「愛と戦争」という言葉にかすかに笑い、小さく頷いた。記憶喪失の演技について彼は「あくまでも僕の想像だった。何よりも瞳が子どものようでないといけないと思った。本気でぼーっとしている表情をした」と説明した。ドラマのような状況が実際に起こったらどちらの人生を選ぶかと聞くと、キム・ガンウは少しの迷いもなくナムヘを選んだ。「僕が旅をしながら生きる人生は、ナムへに近い。自由で飾らない人生を生きたい」

キム・ガンウは「海雲台の恋人たち」で自分の“チャドナム(冷たい都会の男)”のイメージを壊した。空腹に耐え切れず、悲しくて大泣きをしながらホットック(韓国の焼き菓子)を口に入れたり、サバの群れと一緒に網で捕えられるなど、魚のようにもなった。怪力ナムヘになってからは口でトラックを引いたり、滑稽なサングラスをかけて卵の上を歩いたり、ファイヤーショーをして唇に火傷もした。お尻には変なタトゥーも入れた。

キム・ガンウの“壊れた”姿は一日二日では作れないレベルであった。普段の姿を尋ねると、彼は「いたずらをするくらいで、壊れることはあまりない」と笑顔を見せた。「笑わせるために壊れたわけではない。切実に演じた。でも、その姿が見る人にとっては本当のバカのように見えるようにした。これもチョ・ヨジョンが上手く受け止めてくれたので可能なことだった」

結婚してからますますラブストーリーを演じたくなった

デビュー11年目のキム・ガンウは、今年はとりわけ様々な経験をした。7月には「キム・ガンウ&イ・ジョンソプ男二人のとことんタイ旅行(二人のお喋りアクション超大作旅行エッセイ)」という本を出し、作家としてもデビューした。どのような心境の変化があったのかという質問に、キム・ガンウは「結婚後(生きることが)楽しくなった」と答えた。「これまでは、演技が楽しいと思ったことはなかった。ただ、何かやらなきゃと思っていて、負けることが嫌いだった。だけど今は楽しくやっている」

芸能人としての人生にも満足するようになったということだった。キム・ガンウは「大変だということを忘れて生きている。怒りたければ怒るし、街でも自分を隠さない。こんな僕に、妻や家族は驚いたりもする。でも、大変だということを自覚しながら生きることは疲れるだろう」と少し顔をしかめた。彼にとってTwitterは旅行エッセイと同じく人間キム・ガンウをアピールするための手段だ。「Twitterは作品に出る時だけ頻繁に使うけど、面白い。役柄だけを通じて伝わっていた僕のイメージが、Twitterで少しずつ変わっていることを感じる」

キム・ガンウは日本の映画にも挑戦した。韓国で11月8日に公開される映画「外事警察 その男に騙されるな」(監督:堀切園健太郎)でキム・ガンウは国家情報局のエージェント、安民鉄(アン・ミンチョル)に扮した。「外事警察 その男に騙されるな」は日本の同名ドラマを映画化した作品だ。日韓合作映画ではない日本の映画に出演した理由についてキム・ガンウは映画の主演である渡部篤郎のためだと答えた。キム・ガンウは「日本の俳優と韓国の俳優はとても違うと感じた。感情を表現することから違う。渡部篤郎はジェントルでありながらもクールだった。僕はクールな人が好きだ」と感想を述べた。

多くの挑戦を終えた今、キム・ガンウは今後どのような挑戦を考えているのだろうか。彼は「『これがやりたい』などはない。時が訪れれば、一つ一つ挑戦していきたい」と淡々と述べた。しかし、その後ラブストーリーへの情熱もアピールした。「これまでラブストーリーはわざと避けていた。恋愛感情に入り込まなければ、演技力の底が見える難しいジャンルだからだ。だけど、今は30代半ばだし、結婚もしたし子どももできた。人生を知るようになったからか、なぜかラブストーリーがやってみたい(笑)」

記者 : イ・ウイン