「共謀者」残酷に心臓を剥ぎ取るこの男、でも“悪人”ではない?

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写真=映画社チェウム

「共謀者」生命軽視の風潮に警鐘を鳴らす話題作

企業型臓器売買組織の実体を取り扱い、公開前から話題になっていた映画「共謀者」は予想していた通り残酷で恐ろしい。特に、2009年、ある週刊誌に報道された新婚夫婦の臓器密売の実話をベースに再構成したというストーリーはショックと同時に警鐘を鳴らす。

2時間もの間、血生臭かった映画は、スタートも強烈なものであった。臓器密売組織の総責任者で最高の実力者とされるヨンギュ(イム・チャンジョン)は、作業途中のミスで同僚を失い、3年間臓器密売から手を引いていた。その後、密輸入を始めたヨンギュは増えていくばかりの借金に耐え切れず、最後に臓器密売をし、完全に手を引くことにする。

彼が探している対象は、夫のサンホ(チェ・ダニエル)とともに中国行きの旅客船に乗ったチェヒ(チョン・ジユン)である。3年前に不慮の事故により下半身が麻痺した障がい者となった彼女は貴重な血液であるRH-Aの血液型を持っていた。彼女の心臓を狙ったヨンギュ一味は、チェヒを拉致し、サンホは行方が分からなくなった妻を探して旅客船を探しまわる。


「共謀者」が言いたかった言葉は別にあった

以前にも臓器売買の実体は、ウォンビン主演の映画「アジョシ」で取り上げられたことがある。「アジョシ」では凶悪な犯罪の被害者になる所だった幼い少女を救出する、ある男の“武勇伝”に臓器売買が題材となったのなら「共謀者」は臓器密売が映画の中心でありテーマである。

確かに臓器密売組織の実体を告発することに集点を当てた映画だが、「共謀者」が衝撃的な題材や予想を超えるどんでん返しを通じて言いたかった言葉は別にあった。「モラル欠如の時代が生んだ生計型の悪人を通じて、逆説的に人間の尊厳を語りたかった」というキム・ホンソン監督の願いのように、映画は善悪が完全に変わってしまった残酷で現実的な設定を通じて、現代社会の根本的な弊害と問題点を提起する。

3年前、同僚の死による良心の責任を感じ、これ以上臓器売買をしたくなかったヨンギュは、お金のために仕方なく再び臓器密売の総責任者となる。ここに発作症状を起こす父親を助けるために違法な臓器移植を受けようと、借金をして中国行きの旅客船に乗るユリ(チョ・ユニ)に対する恋心と3年前に死んだ同僚の妹と分かったチェヒとの縁が絡み、ヨンギュの悩みは深まるばかりだ。

許せない明らかな悪人だが、映画は主人公ヨンギュを“心まで売ってしまったチンピラではなかった”と定める。むしろ、映画はヨンギュを悪魔にさせる暗い環境を集中的に表立って取り上げている。

ここにヨンギュを再び臓器売買に引き入れたドンベ(シン・スンファン)と仲間や親友まで裏切るジュンシク(チョ・ダルファン)そして彼らの背後で全体的な作業を指揮する衝撃的な組織システムの中の悪人まで、彼らの姿は、彼らを怪人に変えてしまった非情な現実を振り返らせる。

生命軽視風潮が蔓延し、人より金を優先する世の中を鋭く批判する「共謀者」は、衝撃的な題材や新人監督のデビュー作とは信じられないほどしっかりとした演出と完成度、そして俳優たちの好演により、19禁の残酷な犯罪サスペンスの限界を破り、観客の心を掴めるのかが注目されている。

記者 : クォン・ジンギョン