「ビッグ~愛は奇跡<ミラクル>~」はなぜ「最高の愛」になれなかったのか

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写真=KBS 2TV「ビッグ~愛は奇跡<ミラクル>~」スクリーンショット
一大ブームとはならなかった。飛躍も逆転もなかった。

KBS 2TV月火ドラマ「ビッグ~愛は奇跡<ミラクル>~」(以下「ビッグ」)が全16話の短いシリーズを終えた。多数のヒット作を生み出し、テレビドラマのトレンドをリードしているホン姉妹と、映画やドラマを問わず順調に力をつけてきた俳優コン・ユとイ・ミンジョン。その組み合わせだけで抜群のラブコメディの誕生が予想されたが、それは誤算だった。

第1話の放送以降、8%台にとどまった視聴率は、上昇の兆しすら見せることはなく「光と影」「追跡者 THE CHASER」の攻勢に力なく崩れてしまった。先にスタートした競合作の機先を制するには、ジャンルも視聴者層もかけ離れていたが、それは言い訳にはならない。成績のほかに、評価に目を向けても“半分は成功”という形容が通じないほど、このドラマは成績と評価の両方を逃してしまった。

設定に負けた「ビッグ」…残ったものは?

このドラマの軸は二人の男性の魂が入れ変わるという設定だ。放送前、視聴者たちはドラマや映画などで何度も目にしてきたこの設定がホン姉妹の手によってどのように展開されるのか楽しみにしていた。しかし全16話という短いシリーズを終えたこのドラマには、特別なものはなかった。味を付けるために刺激的な調味料がたくさん加えられたものの、設定に引きずられてしまい、うまく料理することはできなかった。

ひたすらファンタジーに集中したドラマの展開は回を重ねるごとに増えていき、可能性を失っていった。連続ドラマに定番の出生の秘密が加わり、人物関係は絡み合い、キャラクターの魅力さえ半減した。コン・ユが演じる30歳のソ・ユンジェというキャラクターは初めから行方がわからなくなってしまった。「ファンタスティック・カップル」や「最高の愛~恋はドゥグンドゥグン~」で力を発揮したホン姉妹ならではのユーモアも消えた。ラブコメディのはずだが、ラブもコメディもなかった。これは設定に負けた結果であり、明確な答えのない結末に視聴者の怒りが集中した理由でもあった。

ホン姉妹流の“ユーモア”と“こじつけ”の違い

前述したとおり、これまでのホン姉妹のドラマにはホン姉妹ならではのユーモアとセクシーさがあった。多少大げさな設定を巧みに描くホン姉妹の手腕は、“ホン姉妹”をドラマ界の一つのブランドに位置づけた。しかし、これはしっかりしたストーリーがドラマを支えているときにこそ力を発揮する、まさにドラマ的な装置の一つであって、「ビッグ」のように人物関係がぞんざいでキャラクターさえ安定していない状態ではユーモアではなく、“こじつけ”に過ぎなかった。

魂が入れ変わる前の大人っぽい姿に比べて精神年齢が9歳の子供に退化した、と評価されている19歳の少年コン・ユがポロロ(韓国の人気アニメ)の主題歌を歌い、イ・ミンジョンの不倫に怒ったアン・ソクファンがコン・ユとイ・ミンジョンを留置場に収容するという設定は、一回きりの注目を集めたに過ぎなかった。登場人物を月に行かせるCGやでたらめな想像シーンも同じだ。魂が入れ変わり、出生の秘密などで感情的にこじれていたキャラクターたちに、ユーモアをユーモアとして消化させるのは明らかに力不足だった。「ビッグ」にはチョ・アンナ(ドラマ「ファンタスティック・カップル」の登場人物)もトッコ・ジン(ドラマ「最高の愛~恋はドゥグンドゥグン~」の登場人物)もいなかった。

記者 : イ・ヘミ