「紳士の品格」キム・ウンスク脚本家、次回作は再び“シンデレラストーリー”で

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最高視聴率24.4%を記録した「紳士の品格」

24歳のイム・メアリ(ユン・ジニ)がわんわん泣いた。兄の友達で17歳も年上のチェ・ユン(キム・ミンジョン)との恋がうまく行かないためだ。すべてを手にしているパク・ミンスク(キム・ジョンナン)も泣いた。夫のイ・ジョンロク(イ・ジョンヒョク)の浮気に苦しめられて、疑心暗鬼にとらわれている自分自身が情けないからだ。

放送終了まで残すところ2話となった「紳士の品格」は、このドラマの放送開始以来、最高視聴率(24.4%、AGBニールセン・メディアリサーチ)を記録し、有終の美を飾る見通しだ。チャン・ドンゴンの出演及び、「パリの恋人」以来、最高のコンビと言われ、昨年は「シークレット・ガーデン」でブームを巻き起こしたシン・ウチョルプロデューサーとキム・ウンスク脚本家がタッグを組んだことで、放送前から話題を呼んだ作品としては、少し物足りない数値ではある。

後半へ行くにつれて、ドラマの中心であるキム・ドジン(チャン・ドンゴン)とソ・イス(キム・ハヌル)カップルは、立場が逆転した片思いからキム・ドジンの息子のコリンの登場まで、恋愛の危機をすべて乗り越えてラブラブモードであり、イム・テサン(キム・スロ)&ホン・セラ(ユン・セア)カップルも、結婚問題はさておき、愛を再確認した。だが、冒頭で話したように、17話と18話のストーリーの中心は、涙を誘ったチェ・ユン&イム・メアリ、パク・ミンスク&イ・ジョンロクカップルにあった。

つまり、この後半こそ“ロマンティックコメディの仕掛け”に全力を傾けてきたキム・ウンスク脚本家が挑戦した「紳士の品格」の形式的差別が目立った部分だといえる。男性版「セックス・アンド・ザ・シティ」を掲げた「紳士の品格」。だが、似ているのは、中心にある主人公(女性でなく男性)の数が4人であることだけだ。


依然として進化し続ける“スター”キム・ウンスク脚本家

付け加えると、「紳士の品格」は三角関係、または4人の男女主人公を描くことに集中してきたキム・ウンスク脚本家が、中心人物の数を、四角関係を含んだ8人に拡張させたことから、外形的意味を発見できる。

イム・メアリやパク・ミンスクの涙にまで感情移入させる余地を作り、女性たちの共感を得たキム・ウンスク脚本家は、チャン・ドンゴン&キム・ハヌルカップルの他、周辺のキャラクターに対しても説得力を持って描いているといえる。これは登場人物数の拡張だけではない。キム・ウンスク脚本家の前作を考えてみると、このような漸進的な進化は注目すべき点である。

デビュー作の「太陽の南側」を論外にすると、キム・ウンスク脚本家は、もっぱらロマンティックコメディの領域で、三角関係からスタートして、4人のカップルを描くところまで進化した。典型的な財閥の御曹司とシンデレラのストーリーを描いた「パリの恋人」はもちろん、大統領の娘を登場させた「プラハの恋人」もそうだった。

面白い点は、キム・ウンスク脚本家が新たな、または差別化した試みをした作品では、必ず視聴率の面で苦戦し、その後の次回作では、お馴染みの現実主義の作品に戻り視聴率を上げる方式をとって、進化してきたということだ。

キム・ウンスク脚本家は、映画「約束 Over the Border」の人物を借りてきた同名の作品がうまく行かなかったとき、女優とマネージャー、プロデューサーとドラマ脚本家のキャラクターが飛び交う四角関係を持つ背景で、放送界の裏を描いた「オンエアー」で前作の不振から脱皮した。

その後、平凡な下級公務員の女性が市議員になるまでのストーリーを描いた「シティーホール」も、キム・ウンスク脚本家が政治を初めて導入したロマンティックコメディだったが、意図したほどの成果を収めなかった。歯を食いしばったキム・ウンスク脚本家は、典型的なシンデレラストーリーに、男女主人公の魂が入れ替わるファンタジー要素まで加えた「シークレット・ガーデン」で、最高視聴率35.2%を記録し、スター脚本家としての名声を得た。

ロマンティックコメディ、またはシンデレラストーリーをどのように表現して、仕掛けるか。キム・ウンスク脚本家は、自身が投げてきたこのテーマに対し、昨年2月に発刊された「月刊放送脚本家」とのインタビューで「決まりきったものは私にとっては全部仕掛ける要素として使える。決まりきったものから一歩踏みだすと、面白い部分がある。別のシンデレラストーリーをまったく違う内容で、引き続き書く自信がある」と明かした。

チャン・ドンゴンのような容貌の男性と恋に落ちることを“シンデレラの成功”だと思わないのなら、「紳士の品格」はシンデレラストーリーから脱皮したロマンスだといえる。ただ、キム・ウンスク脚本家は中心人物を8人まで拡張する、容易ではない道を根気よく歩いている。個性豊かな4人の男性キャラクターはもちろん、イム・メアリやパク・ミンスクのような、主要人物でないキャラクターまでに感情移入させる余地を十分に与えられる余裕こそ、脚本家の能力が輝く部分だ。

それにも関わらず、「紳士の品格」の掲げたテーマは、「セックス・アンド・ザ・シティ」とは正反対の41歳同士の男性たちの世界と恋だった。逆説的に「紳士の品格」が、チャン・ドンゴンがお茶の間に復帰したにも関わらず、「シークレット・ガーデン」ほどの反響を呼び起こせなかった理由は、形式よりはそのテーマに起因しているように見える。


趣と郷愁で完成された41歳のピーターパンたち

能力のある建築家、弁護士、ビルを何個も持っている奥さんのおかげで暮らしていくカフェとバーのオーナー。仕事にも成功していて、他人を羨ましがることはなさそうな、この男性たちの唯一の悩みは恋と愛、そして結婚生活だ。

「紳士の品格」は、彼らが他の中年と大差のない41歳だと強調する。毎回オープニングに登場する短いエピソードは、そのような意図を正確に反映している。彼らはチョウ・ユンファや香港映画など、1980年代の大衆文化を忘れず、ネットカフェではスタークラフト(コンピューターゲーム)にハマっていて、ビリヤード場ではジャージャー麺を出前して食べ、スリッパを履く。彼らの遊びと趣向はいかにもだ。

古いトピックだが、資本主義の下で階級の差に関係なく、人々に同じように受け入れられる大衆文化の画一的なもの。他の大衆文化の脚本家は“思い出”というコードで再生産したりする。

「紳士の品格」の戦略も同じだ。この男性たちは、90年代に20代を過ごした当時の感性からまったく汚れず、そのまま剥製にされた一種の“ピーターパン”のように見えるほどだ。キム・ドジンが23歳の時に生まれた息子のコリンに対して行う行動は、中年という年のアリバイにしか見えない。責任感と罪責感の間でちょっと悩んだ後、ソ・イスとの甘い恋愛に落ちる“クールな感情”、または依然として年を取りたくないような感情だ(ここで抜けない要素は“男たちの友情”)。

実際、これはキム・ドジンのキャラクターの性格だと見なすこともできる。だが、「紳士の品格」のポイントはパク・ミンスクの台詞に隠れている。問題を起こしたソ・イスの生徒を助けてあげた後、「今、君が見たのが、今後、君が出る世の中だよ。貧乏な人が勉強をすべき理由なの」という台詞の中に隠れている真実(だが、パク・ミンスクがいかにお金持ちになったかは知る余地がない)。果たして問題児で貧乏な高校生に、遠い未来、キム・ドジンとその友達のような“品格”を期待できるか。


キム・ウンスク脚本家“シンデレラストーリー”に復帰してください

「セックス・アンド・ザ・シティ」が女性たちの全幅的な支持を受けたのは、派手なニューヨーカーの私生活に盛り込まれた現実的状況、台詞、普遍的な感受性だった。「紳士の品格」で最も面白い部分は、4人の男性がでしゃばるオープニングである理由も、ここにある。

ジャンル的ロマンスに取り囲まれた人物が現実味を帯びる余地はない。90年代青春ドラマのスターであるチャン・ドンゴン、キム・ミンジョンが演じたキャラクターが年を取らないように見えるのは、容貌だけのことではない。キム・ドジンは「恋って、なぜこんなに戦争みたいなのか」と話す。だが、制作チームも、視聴者も、41歳のキム・ドジンとその友達の恋愛が、韓国の同じ世代の現実、ひいては他のドラマより甘いことを前提にしているのではないか。

“お金持ちの品格”を基盤にしている「紳士の品格」は、むしろ積極的にジャンルをひねり、シンデレラストーリーという典型性を鋭敏に利用した「シークレット・ガーデン」と比較すると、半分の成功になる可能性が高いようだ。(男性より女性がもっと輝く)キャラクターの性格と典型的なロマンス、恋愛の設定だけでは、視聴率30%以上の幅広い共感を得るのは難しいようだ。

ということで、キム・ウンスク脚本家、次回作は再び“シンデレラストーリー”に復帰してくださいね。

記者 : ハ・ソンテ