「10人の泥棒たち」チョン・ジヒョン“正直、ヒット作に飢えていました”

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どこかで香ばしい香りが立ち込めている。結婚前はただのきれいな女優だと思ったチョン・ジヒョンが結婚して、一層成熟した。そこに親しみやすい魅力まで加わり、韓国男性にとってのミューズは“グレードアップ”された。

映画「10人の泥棒たち」(監督:チェ・ドンフン、制作:Caper Film)で綱渡り専門の泥棒、イェニコールに扮したチョン・ジヒョンは「スーパーマンだった男」(2008)以来、4年ぶりの韓国映画復帰で、かなり緊張していたはずなのに、彼女のほうから「映画、いかがでしたか?面白かったですか?」と笑顔で尋ねてきた。何よりも、質問したチョン・ジヒョンは自信に満ちていた。“輝く眼差しのイェニコール”のチョン・ジヒョンが登場した。

「『4人の食卓』で出会った、私の大好きなアン・スヒョンプロデューサーが、チェ・ドンフン監督との結婚後に制作した、初めての作品です。だから、必ずヒットしなきゃいけないんです。幸い、反響はいいです。これまで私にこれといったヒット作がなかったじゃないですか。『10人の泥棒たち』を見た方々が褒めてくださるので、今後が楽しみです。ハハ」

“あ、これだ!これしかない!”

久しぶりにスクリーンで見るチョン・ジヒョンはまるで軍隊に行った彼氏を待つような妙な期待と、ときめきが共存していた。「どう変わっているだろう?」「どれぐらい楽しませてくれるだろう?」など、200%の期待を抱かずにはいられなかった。そして、思わず「お、すごい!」と声を上げることを禁じ得なかった。絶好調の演技を見せるチョン・ジヒョンに、最初の質問として「映画の何がチョン・ジヒョンを魅了したのか」と聞いてみると、なぜ当たり前のことを聞くのだろう、とでも言うような表情で「見ればわかるじゃないですか」という答えが返ってきた。

彼女は「まず、イェニコールの魅力は“凄まじさ”にあります」と話した。続いて「一緒に登場する泥棒たちも、魅力が満載で、キャラクターの作りも面白いです。特にチェ・ドンフン監督が得意とする、スピーディーな展開まで加わっているのも見どころです」とうなずいた。

「猟奇的な彼女」(2001)が戻ってきたようだ。さっぱりして、飾り気のないチョン・ジヒョンは、サバサバとした返答で、インタビューの雰囲気を盛り上げた。「シナリオを2枚ぐらい読んだ時に、『あ、これだ!』と言いました。まさに、これに出演するしかないと思ったんです」

実際、チョン・ジヒョンは自分で話したように、「猟奇的な彼女」以来、ヒット作に恵まれなかった。神秘主義と清純なイメージで“国民の彼女”と言われるようになったが、彼女は映画での運がなかった。彼女にそっと、ヒット作についての欲はあるか尋ねると「当然、女優を始めた時からありました」と話を始めた。

「ヒットには本当に飢えています。人々から愛される映画に参加したいという気持ちが大きかったので。今回は、典型的なチェ・ドンフン監督の作品なので、ヒットが保証されているようなものだし、いつもよりも結果が楽しみです。私もそろそろ“ヒット女優”と言われないと」と冗談交じりに語った。ようやく人間的なチョン・ジヒョンに出会ったような気がした。

「もうデビュー15年目なんです。ハハ。興行不振という言葉を否定したくはありません。また、それについての大きなストレスもありません。映画『僕の彼女を紹介します』の場合、韓国では愛されなかったものの、日本でヒットすることになりましたし。『猟奇的な彼女』より、『僕の彼女を紹介します』の彼女として知る人が多いぐらいですから。これから死ぬまでずっと女優として生きるので、チャンスはいくらでもあると思います」

「人生、なるようになれというイェニコール。スカッとするじゃないですか」

犯罪が呼べば、いつでも「は~い」と走っていくイェニコールは、男性の観客より女性の観客に愛されそうな魅力満載のキャラクターだ。チョン・ジヒョンはイェニコールの魅力について“図太さ”と“率直さ”を取り上げた。これまで、神秘主義のために長い間飢えて(?)いたのか。イメージチェンジに対する気持ちが高まった時に、イェニコールの手を握ったのだ。

「仲間が必ずしも団結してダイヤモンドを盗むわけではない、ということが一番気に入っています。それぞれの個性が強い部分が本当に面白いじゃないですか。“チーム愛”なんか眼中にないイェニコールがユニークで、特にファッションセンスがいいキャラクターなので魅力的でした。なんかスカッとしました。人生で何も気にすることなく、1人でなるようになれというのがいいじゃないですか」

長いストレートヘアをなびかせ、清楚な表情のチョン・ジヒョンの口から聴こえてくる“スカッとする”という言葉に、違和感もあった。しかし、そんな違和感さえ、体にフィットするボディスーツのように、最初は窮屈だけれど後は体の一部のように自然に感じる。

チョン・ジヒョンはストレートでクールなイェニコールに対する誤解も的確に指摘した。彼女は「映画の展開があまりにも早いため、泥棒たちに関する説明がない。もちろん、それぞれの違う一面を見せる時間もなく、その必要もないとは思います。しかし、イェニコールの場合は、ザンパノ(キム・スヒョン)とガム(キム・ヘスク)を通して、感情的なシーンが描かれます。なぜ、彼女が泥棒になったのか、切なくおぼろげな憐憫が感じられるよう重ねられた感情がポイントです」と説明した。撮影を終え、公開を控えているチョン・ジヒョンの目には、イェニコールに対する愛が込められていた。

チョン・ジヒョンがイェニコールになる過程はどんなものだったのだろうか。紆余曲折が多かったが、まず彼女は一番大変だったワイヤーアクションシーンから説明した。

「私が映画でのビジュアル担当だからといって、皆さんは“美貌担当”だと思っているようですが、そのビジュアルではありません。ワイヤーアクションと映画の背景が一つになってビジュアルが完成されました。そのような部分でイェニコールは美貌担当ではなく、あくまでもビジュアル担当なんです。メイキング映像にもありましたが、全速力でビルの5階から飛び降りました。最初は意欲が先立って、練習のため4回ぐらい飛び降りましたが、『あぁ、練習するとか言わなきゃよかった……』と後悔しました。恐怖心がますます大きくなるんです。とは言え、あんなに素敵なシーンが誕生したから、苦労だとは思っていません」

「私が本当に盗みたい宝物は健康な生活と知恵」

「10人の泥棒たち」でイェニコールを含む10人の泥棒たちは、マカオのカジノに隠された稀代のダイヤモンド“太陽の涙”を盗むために死闘を繰り広げる。イェニコールではなく、チョン・ジヒョンに「“太陽の涙”のように、何か盗みたいものはあるか」と聞くと「健康な生活」と、はっきり答えた。

率直なチョン・ジヒョンは「女なので、欲しいものはたくさんあります。前は買いたいバックも服も多かったけど、今はかなり減りました」と伝えた。

「正直、すでにたくさんのものを持っていて、結婚して家庭のことをするようになってからは、物の値段に対する認識をもつようになりました。生活費を除いたその他の支出について『あり得ない』と感じながら、無駄使いを減らしました。家庭ができてから、何が重要なのかを考えるようになりました。まずは健康でいたいという気持ちが最優先です。だからといって、私が無所有を追求する達観の境地というわけではありません。この世には楽しいことが本当にたくさんあるじゃないですか。適切なバランスをとりながら生きていきたいです。そんなバランスを維持できる知恵を盗みたいです。女優としての役割も重要ですが、1人の男性の妻としての役割も重要だと考え、努力しようとしています。ハハ」

今年の4月、同い年の会社員チェ・ジュニョク氏と結婚したチョン・ジヒョンは、まだ新婚だが、映画の撮影が続いているため、しっかりと夫を支えられないことを残念に思っていた。時間があればデートを楽しむというチョン・ジヒョン&チェ・ジュニョク夫婦は“朝型人間”らしく、夜の映画デートではなく、ランチの後に映画を見るデートを楽しむそうだ。

仕事に没頭しすぎではないかという余計な心配から、新婚旅行の計画について聞いてみた。するとチョン・ジヒョンは「とりあえず、ゴーグルは買いました」と旅行への期待を表した。「まだ『ベルリンファイル』の撮影が終わっていません。撮影が終わってからの新婚旅行を計画しています。暖かくて泳げる所がいいですね」と話した。あわせて、“国民的ミューズの2世”については「まだもうちょっと働きたいので」とウィットのある答えを返した。

「その時その時に合う良い評価をしていただきたいと思います。健康な生活を追求していけば、いい人として、いい女優として記憶に残るでしょう。いつも人々にとっていい女優でいたいです」

記者 : チョ・ジヨン、写真 : キム・ヨンドク