スポーツ新派劇「ハナ~奇跡の46日間~」……そこで心が熱くなる

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写真=ザ・タワーピクチャーズ

卓球より“南北”に焦点を合わせた「ハナ~奇跡の46日間~」……観客も感動

政治的な利害関係を結んだことから始まった。自分たちの意志とは関係なく、上から決断が下された。韓国代表チームのエース、ヒョン・ジョンファ(ハ・ジウォン)は南北単一チームを組むことに激しく反対し、北朝鮮のリ・ブンヒ(ペ・ドゥナ)もまた韓国チームと一緒に試合をしなければならないという、目の前の課題が気に入らない。当たり前のことだ。彼女たちは、去年、決勝進出をかけて猛烈に競い合ったライバルであり、その上、南と北の“敵”同士という、特殊な関係だからだ。

休戦線を境に数十年間激しく対立していた南と北の一時的な統一は、容易いものではなかった。しかし、南北は決して乗り越えられないように見えた高い壁を克服し「ハナ~奇跡の46日間~」の名の下で韓民族という根強い同胞愛を発揮し、離れていた人たちの心を一つにした。このように、21年前、わずかな時間でも卓球台の上で実現しようとした“小さな統一”の奇跡は、強敵中国に打ち勝ち、また当時“平和統一”を夢見ていた多くの国民の心を掴んだ。

映画「ハナ~奇跡の46日間~」は、1991年に千葉で行われた第41回世界卓球選手権大会に出場した南北単一チームの実話を描いた“スポーツ”映画である。主要登場人物のヒョン・ジョンファ、リ・ブンヒ、ユ・スンボクなど、当時活躍した卓球代表チームの選手の実名をそのまま使った。

この点で「ハナ~奇跡の46日間~」は、公開前から実際の韓国ハンドボール女性国家代表チームの実話を描いてヒットした「私たちの生涯最高の瞬間」とよく比較されていた。しかし「ハナ~奇跡の46日間~」は「私たちの生涯最高の瞬間」「国家代表」のようにスポーツ映画でありながらも、南北の和解という特殊な素材を前面に出している。そのため「ハナ~奇跡の46日間~」は、「私たちの生涯最高の瞬間」の卓球バージョンではなく、スポーツの形式を借りた第2の「JSA」という評価もある。

もし、1991年ヒョン・ジョンファが中国を制して優勝した内容をメインにしたなら、「ハナ~奇跡の46日間~」は映画化し難い素材だ。当時卓球は人気スポーツの一つであったし、実力と美貌を兼ね備えた国家代表選手ヒョン・ジョンファへの国民の関心も熱いものだった。そこで「ハナ~奇跡の46日間~」は、悪条件の中でも根性で成し遂げた“感動”的な結果に焦点を合わせるよりは、外見は似ていても中身は似ても似つかない“南”と“北”が心から一つになる過程に集中している。

悪化している南北関係の下で「キング~Two Hearts」……スポーツで一つになった「ハナ~奇跡の46日間~」

しかし「ハナ~奇跡の46日間~」は実話を映画化したもので、同時期に南北和解の素材を描くMBC水木ドラマ「キング~Two Hearts」に比べれば現実的である。そして、次第に悪化している現在の南北関係を意識しているかのように、あるがままの事実を直視して描こうとする痕跡が感じられる。自由な雰囲気の中で育った韓国の選手たちが、先に北朝鮮の選手たちに優しく近づこうとしても、抑圧的な北朝鮮の体制が変わらない限り、南と北は一つになり得ないという認識は、北朝鮮をただひたすら友好的な視線ばかりでは見られないこの時代をそのまま映し出している。

しかし体制維持を理由に準決勝を控えてチームの存続危機にさらされた南北単一チームを再び1つにしたのは、理念や政治的な計算とは関係のないものだった。卓球と同じ“KOREA”という共通点の下ですでに一つになった選手団とコーチ陣の強い意志のおかげだった。ヒョン・ジョンファと韓国選手たちの強い願いが、強硬な北朝鮮側の心を動かし、南北単一チームの優勝という神話を牽引することが出来たのだ。

これは、さらにドラマチックな要素を活かすためのフィクションである。しかし、決勝でリ・ブンヒと一緒に戦うために強い雨に打たれながらも北朝鮮の監督に跪くヒョン・ジョンファ、そして最後まで韓国と共に試合することを決心する北朝鮮代表チームの変化は、映画の虚構を超えて多くの観客の心に響いた。

奇跡的に世界選手権で南北単一チームが金メダルを獲得してすぐ、いつまた会えるか分からない別れを強いられた南北の卓球選手たち。このように、卓球台のネットの上でより張り詰めた緊張と対立が行き来していた南と北は、一つになるにはまだまだ多くの時間が必要だ。また、彼らを翻弄させた数多くの難関は、21年が経った今も解決の兆しが見えるどころか、却ってさらに悪化しつつある状況である。

そのため「ハナ~奇跡の46日間~」はドラマチックな勝負の末ヒョン・ジョンファ個人はもちろん国家的にも大きな栄光である“金メダル”を取りながらも、互いを心に抱いて涙の別れを強いられる“新派劇”になるしかない。それまで“敵”として認識していた人物と、卓球を通じて深い友情を築いた末、国家分断という残酷な運命により別れるしかないというこの物語自体が十分に悲しいのだ。

だが、そこに、悲しさをさらに煽るための不要なエピソードが、残念を超えてうんざりするほど含まれていたり、また、仮にもスポーツ映画のはずなのに、南北和解という感動にこだわったあまり、いざスポーツが与える刺激が足りないという部分は、南北新派劇「ハナ~奇跡の46日間~」の物足りなさを意識させる。

しかし、辛い卓球トレーニングだけでもたやすい決断ではなかったはずだが、完璧なスマッシュはもちろん、それぞれの役を十分に演じ抜いたハ・ジウォン、ペ・ドゥナという素晴らしい二人の女優の熱演、そして21年前南北が一つになった当時の感動を、スクリーンを通じてもう一度感じることが出来るという感激。

「ハナ~奇跡の46日間~」はこのようにして、2012年人々の心を熱くしている。

記者 : クォン・ジンギョン