ハ・ジウォンはなぜ身体を酷使してまでアクション演技をするのか?

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女優と言えば頭に浮かぶイメージは、清楚で守ってあげたくなるようなルックスあるいは色気に満ちたセクシーな美しさだ。

“女優”という言葉から正統派ラブストーリーの可憐な姿や、またはセクシーでエロティックな作品の色気のある女性を連想するのが一般的である。女優たちもそのどちらかを選んで自らのイメージを作り上げている。
また、どちらでもなくても、キュートなイメージを選ぶこともできる。

しかしこの女優、ハ・ジウォンは違う。彼女は映画「リメンバー・ミー」といった正統派ラブストーリーでのイメージや、映画「愛しのサガジ」でのかまいたくなるキュートな少女のイメージをそのまま貫いても良かったはずだったが、そうしなかった。

元を言えば、彼女はデビュー作から平凡ではなかった。ハ・ジウォンは2000年の映画デビュー作「真実ゲーム」で、主演に抜擢された。同映画はタイトルからも分かるように平凡ではないスリラー映画で、ハ・ジウォンは殺人犯である女子高生を演じた。大先輩の俳優、アン・ソンギとの演技対決であった。

彼女の平凡ではないフィルモグラフィーはこうやって始まった。引き続きホラー映画「友引忌」と「ボイス」に出演し、“ホラークイーン”という称号を手に入れた。女優であるならば、ただきれいであったり、神秘的なイメージを持たれたいと思うはずなのに、彼女は平凡より非凡な道を選んだ。

非凡な道は続いた。エロコメディ映画の「セックス イズ ゼロ」を選んだ彼女は、セクシー路線で自身の女性らしさを際立たせる一方、心に響く演技で多彩な魅力を見せてくれた。彼女は平凡な映画、ありきたりな作品は頑なに拒んでいるようだ。

そしてハ・ジウォンのアンジェリーナ・ジョリーを模範とした女優としての道は、アクション時代劇ドラマ「チェオクの剣」から始まった。

朝鮮時代の女性刑事を演じることは簡単ではなかった。剣を持って走っては飛ぶといった、男性ですら簡単に演じられないアクション演技をこなし、彼女は身体を酷使し始めた。

映画「デュエリスト」はその延長線であった。このアクション映画を通して彼女はまるで「女刑事の役は私が専門なの。誰にも渡さないわ」と訴えているようだった。

ハ・ジウォンのアクションへの愛情は深いものだった。映画「1番街の奇跡」ではグローブをして四角いリングを走り回り、映画「TSUNAMI -ツナミ-」では自然災害に立ち向かい、身体を張って演技を見せてくれた。

そのピークを見せてくれたのは、映画「第7鉱区」だった。海底の化け物と戦うこの作品で、彼女は映画「エイリアン」のシガニー・ウィーバーに匹敵する渾身のアクションを見せてくれた。もちろんドラマ「シークレット・ガーデン」でもスタントマンの役を演じ、脊椎の治療が必要となるほど全身の関節がボロボロになっていたが、それでもワイヤーアクションで空を飛んだ。

現在放送中のMBC水木ドラマ「キング~Two Hearts」も例外ではない。韓国の王子様、イ・ジェハに恋している北朝鮮の女性教官、キム・ハンア役を演じる彼女は純粋な北朝鮮の女性を自然に演じ、33歳とは思えないキュートな魅力をアピールする一方で、その清楚なホワイトのイメージを漂わせながら“専門”のアクション演技にも力を入れている。

これまで戦って飛び回るようなアクション演技で身体を酷使していたハ・ジウォン。そして今回は正統派スポーツ映画だ。公開を控えている映画「ハナ~奇跡の46日間~」で卓球の韓国代表、ヒョン・ジョンファ役を演じ、一度も経験したことのなかった卓球を一から学び、またも身体を酷使してしまったという。

ハ・ジウォンはなぜ休むこともなく身体を張ったアクション女優になったのだろうか。

誰でもそうなのだが、ハ・ジウォンも決して短くはない無名時代を経験している。世間は彼女が2000年の映画「真実ゲーム」で、映画デビュー作であったにも関わらず主演に抜擢されたことだけを見て、彼女が一夜で一躍スターになったと勘違いをしているが、ハ・ジウォンは高校時代から女優を夢見ていて、17歳のときにドラマ「新世代報告書 大人には分かりません」に脇役として出演したことがある。

その翌年に豪華なキャストで話題となっていた歴史ドラマ「龍の涙」にも脇役として出演し、演技を学んだ。1999年には青少年向けのドラマ「学校2」に出演し、やっとその名を世間に知らしめることとなった。

それから1年後、ハ・ジウォンが映画の主役を手にしたのは決して偶然ではなかった。人より優れたボディラインを手に入れるため、全身にラップを巻き山を走ったという話は有名だ。美貌も人気も演技力も、一夜で手に入るものではないということを彼女は誰よりもよく知っていた。

ハ・ジウォンと似たような道を歩んできた同い年の親友、そしてライバルでもある女優キム・ハヌルの存在も、彼女には刺激となっただろう。2000年の映画「リメンバー・ミー」で、キム・ハヌルは主演を、ハ・ジウォンは助演を務めた。

その後、2人は似ているような道を歩んではきたが、最初はキム・ハヌルのほうが前進している感じがあった。しかし今現在、ハ・ジウォンは誰も否定できないヒットメーカーとして、韓国映画界で“もっともキャスティングしたい女優”に浮上している。

これが彼女の筋肉と骨を生かしているのではないだろうか。止まれば負けてしまう、人が進まない道を好んで歩んでこそ長くトップでいられるという、平凡でありながらも維持することが簡単ではない現実を、彼女は誰よりも良く知っているのだろう。

アンジェリーナ・ジョリーは、昔からハリウッドでセクシーのシンボルであった。彼女はありきたりな映画でボディラインを少しアピールするだけで十分スターでいられるような、現代のマリリン・モンローだ。それでも彼女は男性ですらこなせないアクションシーンを好んでこなし、身体を張って演じている。

それは、彼女の熱い情熱からでもあるが、演技や作品への愛情でもあり、現状に満足していては取り残されてしまうということを良く知っているからであろう。女優に残されている時間は、男性俳優よりも少ないものだから。

記者 : ユ・ジンモ