Vol.1 ― 「太陽を抱く月」終了 - “MBC水木ドラマの呪いを打ち破った”

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写真=MBC
昨年6月23日に放送が終了したドラマ「最高の愛~恋はドゥグンドゥグン~」以降、視聴率が下り坂になっていたMBCの水木ドラマが、「太陽を抱く月」(脚本:チン・スワン、演出:キム・ドフン、イ・ソンジュン、制作:Panエンターテインメント)によって7ヶ月ぶりにトップに再浮上した。

15日に終了するMBCの水木ドラマ「太陽を抱く月」は1月4日に放送された第1話で18.0%(AGBニールセン・メディアリサーチ)という驚くべき視聴率を記録し、MBC水木ドラマに新たな歴史を刻んだ。以降「太陽を抱く月」は放送前後に様々な話題を巻き起こしながら高視聴率ドラマとして浮上した。

MBCはこれまで「オレのことスキでしょ。」「負けたくない!」「私も花!」まで連続3つの水木ドラマが低視聴率を記録し、静かに幕を降ろすしかなかった。さらには「私も花!」は歌手ソ・テジとの離婚で世間の注目を集めた女優イ・ジアの復帰作として話題になったが、1話を減らした15話で早期終了することとなってしまった。そのため「太陽を抱く月」も、放送される前には「MBC水木ドラマの呪いから逃れることはないだろう」と予想されたことがあった。

しかし「太陽を抱く月」はこのような懸念を一気に打ち破った。第1話の放送後、視聴率は急上昇し、最終的に“魔の40%台”を突破する底力を発揮し放送関係者を驚かせた。ドラマに出演した俳優はもちろん、制作陣までネット上で話題になるなど、まさに国民の関心を大いに買った話題作となった。

“フュージョン・ファンタジー時代劇ブーム”に火をつける

「太陽を抱く月」がこのようにブームになったことには、“フュージョン・ファンタジー時代劇”というユニークなジャンルも一役買っている。「太陽を抱く月」は仮想の朝鮮時代を背景に宮殿で繰り広げられる王と巫女の恋愛にファンタジーの要素を加え、切ない恋愛ストーリーに仕上がっている。

同ドラマの原作は作家チョン・ウングォルの同名小説「太陽を抱く月」。小説の「太陽を抱く月」は時代劇的な要素が加えられているものの、確かに恋愛小説である。朝鮮時代の王が巫女との恋に落ちるという設定は歴史の中でも存在しなかったし、当時の時代背景と照らし合わせてみても不可能である。それにも関わらずこのようなストーリーが成り立ったのは「太陽を抱く月」が単なる恋愛小説だったからだ。このため、ドラマが始まる前に原作を読んでいたファンは小説の中のラブストーリーに熱狂し、ドラマとして生まれ変わった「太陽を抱く月」を待ち望むほかなかったのである。

これに先立ってSBSの「根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~」で始まったフュージョン時代劇ブームはそのまま「太陽を抱く月」に移った。「根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~」が「世宗大王のハングル創製」という歴史的な事実を元に、様々な劇的装置を加えて新しい楽しさを与えてくれたとしたら、100%仮想の世界を描いた「太陽を抱く月」は、視聴者に歴史的な事実を認識させる必要もなく完全にドラマに没頭できる条件を与えてくれた。歴史を知らなくてもただドラマ自体に集中することができたのである。

しかし「太陽を抱く月」が単にフィクションの世界だけを追求したのならば、これほどの成功は収められなかっただろう。同ドラマはフュージョン時代劇であるものの、ドラマの隅々に我々が普段はよく知らなかった歴史的な事実を配置し、仮想の色彩が濃くないよう配慮した。朝鮮時代前期に実際に存在した国の巫俗機関である「星宿廳(ソンスチョン)」、王子の配偶者を選ぶ過程、幼い王に代わって王大妃あるいは大王大妃が代理でに国政を行う「垂簾聽政(スリョムチョンジョン)」など、歴史的な事実を加え視聴者の好奇心を刺激した。

功を奏した時代劇の水木枠

「太陽を抱く月」の枠を決める当時、MBCは主にトレンディードラマを放送していた水木夜の枠に大胆に時代劇を配置することを決めた。MBCがこの枠に時代劇を配置したのは2009年の「善徳女王」以来3年ぶりのこと。結局、このようなMBCの決断が功を奏したわけだ。

チーフプロデューサーのオ・ギョンファンは「太陽を抱く月」の制作発表会の際に、「実際、昨年の水木ドラマの成績は上半期は良かったものの、下半期にはあまり良くなかった」とし「上半期初の作品であるこのドラマを通じて6ヶ月ぶりに1位の座を奪還しようと、時代劇を大胆に水木枠に配置した」と説明した。

彼は「50部作を超える時代劇は主に月火枠に配置されていた。我々のドラマはクラシックな時代劇ではないが、冬休みを迎えた10代の青少年層にもアピールできると思う。MBCの水木ドラマが、すべての層にアピールできるファンタジータッチの時代劇を通じて視聴率と作品性という二つの目標を達成し、再起することを願っている」と期待感を表した。そして、彼の願いはそのまま現実のことになった。

フォンとヨヌの切ないラブストーリー、宮殿の中で繰り広げられる様々な陰謀は他の時代劇でいくらでも見られる素材である。しかし、このすべてがうまく調和し、視聴者をお茶の間に誘う魔力を持っているドラマを探すことは容易ではないだろう。「太陽を抱く月」は終わったが、このドラマに熱狂していた視聴者の“アリ”(何かに夢中になること)は当分続くと見られる。

記者 : チャン・ヨンジュン