Vol.1 ― シン・セギョン「持続的に成長する人になりたい」

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シン・セギョンの話し方は落ち着いていた。どんな質問にも落ち着いて、そして楽しく会話を交わす態度からはMBC「明日に向かってハイキック」のキャラクター同様、大人っぽい芯の強さをうかがうことが出来た。98年、ソ・テジのアルバムポスターに登場した少女として顔を知られるようになったシン・セギョンからは、年齢をはるかに越えた品格まで感じられる。だからシン・セギョンと話をしている間中ずっと「きれい」と「美しい」の違いについて考えてしまった。もちろんそれを言葉で分析するのは難しい。その代わり、この思いやりのある魅力的な女性との会話を公開する。

―最近MBC「明日に向かってハイキック」で人気が高まっていますが、どうですか?

シン・セギョン:撮影のために屋外へ出ますよね。最初の頃は見物している方が何を撮っているのか分からなかった見たいなんですけど、今は「あっ『明日に向かってハイキック』の撮影なんだな」って分かるようです。

“時間が経つほど自分の本来の姿がセギョンのキャラに溶け込んでいます”

―番組の最初の頃は市内にある南山(ナムサン)でシネを見失ったりと相当苦労してますし、道端でいわゆる“屈辱シーン”もありましたから気付かれなくてむしろ良かったですね(笑)

シン・セギョン:そうですね(笑) シネを見失った日は夜明けの5時まで撮影をしてましたから、もう疲れて倒れそうな状態でした。それでも必死で泣きながら走り回る姿を撮影したんです。あの時はほとんど正気ではありませんでしたが、時間を置いてみるとすごく印象に残るエピソードとなりました。

―今年から久しぶりに活動を再開しましたね。MBC「善徳女王」では天命(チョンミョン)王女(パク・イェジン)の子役としていい反応を得ていましたから、次の作品は何だろうと思っていました。

シン・セギョン:実は、私が「明日に向かってハイキック」を選んだというより、私にチャンスが与えられたって言うべきだと思うんです。「明日に向かってハイキック」はキム・ビョンウク監督の作品だからか、他の若者向け作品とは少し感じが違いましたし、ユニークなキャラクターもいいなって思ったんです。ただ、私が少し強いイメージを与えたようですが、セギョンの哀れっぽくて可愛そうな感じを上手く表現出来たのか心配でした。

―セギョンというキャラクターについて、始め監督からはどんな説明を受けましたか?

シン・セギョン:「明日に向かってハイキック」の最初の頃は、私のキャラクターが泣く場面や感情をむき出しにするシーンがほとんどだったんです。初め、監督からはコメディはファン・ジョンウム姉さんを中心に、私はシリアスでドラマ性のある役を中心にするって言われていました。でも、シットコム(シチュエーションコメディ:一話完結で連続放映されるコメディドラマ)という番組の形からして、愉快な感じを期待していた視聴者の方からは、私のキャラクターが哀れすぎだったと言われてしまいまして。だから私もすごく心配していたんですけど、話しが進むにつれてむしろ少しコケるだけでもすごく面白いキャラクターになっていて、それを見ると監督が正しい道へと引っ張って下さったんだなと思います(笑)

―ファン・ジョンウムさんは監督が全てにおいて細かく指導してくれるという意味で監督に「神様」というあだ名を付けたそうですが、セギョンさんにはどんな話をしてくれますか?

シン・セギョン:私は映画でもシリアスな正統派の作品ばかりをしていますし、ドラマでも時代劇ばかりしていたので、シットコム作品ではトーンをすごく上げるんだとばかり思っていました。でも監督はそう言うのを望んではいませんでしたし、私のキャラクター自体がファン・ジョンウム姉さんのような明るくオープンな人ではありませんでしたから、正統派の演技を基本とし、呼吸だけ少し早めに調整しました。もちろん、セギョンが酔っ払った時のようにコミカルな部分は時々あるんですけど、まあこれは監督の不思議なところで、俳優の中にあるその人の基本的な性格を読んで、それに合ったキャラクターを与えてくれるみたいなんです。だからキャラクターを演じながら時間が経つと、俳優の本来の姿が溶け込んでるような感じになるんです。もちろんヘリ(チン・ジヒ)がそうだという意味ではないですけど(笑)

―「明日に向かってハイキック」では妹のシネ(ソ・シネ)の面倒を見るのがとても自然体ですね。実際、一人っ子なのに年の差のある妹とはどうやって仲良くなりましたか?

シン・セギョン:シネとは8歳の差があります。「明日に向かってハイキック」の撮影を江原道(カンウォンド)から始めたので仲良くなりました。一番暑くて大変な時から一緒にいましたから情も移りましたし、活発なシネの性格には男の子のような面があるから人見知りもしないんです。一緒に台本合わせをする時もありますし、シネとジヒは子供だからあちこち飛び回っていたずらもします。そして、時々私もスタッフに大人しくしてなさいって怒られてしまいます(笑) それに勉強も熱心にする子達だから、台本を読んでる時間以外には撮影場で問題集とかを開いて勉強してるんです。いくら私が勉強が得意でないと言っても、小学校の勉強は簡単でしょ?だから隣で見物しながら一緒に解いたりもするんですけど、久しぶりに小学校の問題を見るからそれも面白くて。

“子供の頃から結構大人びていた感じ”

―セギョンさんも幼い頃にデビューしていますが振り返って見てどうですか?

シン・セギョン:シネは今小学校の5年生ですが、私は彼女と同じ歳の頃、もっと見た目が大人っぽかったんです。5年生で身長が162センチでしたから学校ではほとんど巨人でした。中学校の1年生の時に初めて映画「幼い新婦」を撮影したんですけど、そこでは高1って設定なんです。中学生が高校生の役ってまあ問題ないかって思われるかも知れませんけど、実際に中1なんて小学校を卒業して間もない歳なんですよね。その歳で高校生の役をしていたのが今でも不思議なんです。子供の頃から結構大人びていたのかな(笑)

―天明(チョンミョン)王女や「明日に向かってハイキック」でのイメージも歳よりも大人っぽいという感じですが、小学校の頃から人より大きくて社会生活も早く始めているから、同じ年頃の友達とは悩み等も違ったのではないですか?

シン・セギョン:はい、でも私はすごく幼い頃から演技をしている子たちや私より幼いアイドルグループを見てるとすごく切なくなることがあるんです。役者には技術的な面も重要ですが人生を生きてきた経験が演技の半分以上を占めますから、子供の頃からより多くの経験を積んだ方がいいと思うんです。それでも役者の場合はいい方で、アイドルの場合はイメージが大切だからその歳でしか経験出来ない、大人になったら経験できないことを諦めないといけないでしょ?私は高校の頃、映画の「シンデレラ」一つだけを撮ってずっと学校に通ってましたから、その時に作品をいくつか撮るよりも、友達といっぱい遊んでその歳で経験出来ることを全てやり、入試の準備も経験するなど、それがもっと大切な経験になったと思うんです。だから今は出来るだけやりたい事はやろうと努力しています。未だに地下鉄に乗っているのもそうですし。

―地下鉄に乗っていると周りに気付かれませんか?

シン・セギョン:帽子を被っていると気付かないようです。地下鉄に乗っていると他の人をよく見るようになるんですけど、意外とみんな他人には無関心なんですよね。自分の目的地や自分のしていることに集中していて。近所の5号線や9号線をよく利用するんですけど便利ですよ。

―しかし成長期に活動を減らしてその歳で経験出来ることをしながら生きるということは役者、もしくは芸能界で仕事をしている人には簡単なことではないと思いますが。

シン・セギョン:そうですね、いつ仕事をしていつ休むべきだと言う線をハッキリ引いていたわけではありません。ただ今の所属事務所もそうですし、私の周りの人も目先を見るのではなく、先を見ていたようです。今のこの時期、学校へ行く時は学校へ行って、恋愛をする時は恋愛をして、友達と遊べる時はしっかり遊んだ方が、長い目で見ると、歳を取って演技をする時に必ず必要になる部分だと思いますから。それを経験しておかないと、私にはそうした部分が欠如してしまうということだから急がずに行こうってみんなで言ってくれたんです。人間って実はすごく欲深い動物ですから、少しでも多く顔を出したいし、有名になりたいと思うのは当然なんですけど、その度にもう一度考え直して、これは違うなっていう結論を出せたんだと思います。

“高3の頃に書いた小説を大切に保管しています”

―演出にも大きな興味を持っていると聞いていますが、いつか監督として作品を作るとしたら撮ってみたいお話とかがありますか?

シン・セギョン:いっぱいあります。私は入試の時も演技の実習が中心でしたから、高3の自習時間には主に本を読んだり、それでもする事がない時には小説を書いたりしていました。もちろん小説を書きながらも、これは私の感性で書いたもの、自分で考えて書いたものだと思いながらも、一方では、客観的に見れば「まだ20歳にもならない子供の作品だから」というように見られるんだろうなって感じもしたんです。だからどこかでオープンにするより、歳を取ってから読み返してみた方が自分の大きな財産になりそうだなって思って保管してるんです。

―主にどんな話を書きましたか?

シン・セギョン:もちろん恋をする内容です(笑) 自分にとっては、それが19歳の時に書いた文章だから大切なんだと思うんです。完成度が高いとか話の作りが上手いとかではないですけど、その時に自分で感じていた感情が盛り込まれた文章だから好きです。また後になって自分でそれをモチーフにしてまた別の物を書いたり、そうした感性を思い返して演技できるわけですから。

―自分を客観視するのが上手な性格見たいですね。

シン・セギョン:私にも客観的になりたい時もあれば、それを全て無視したい時もあります。それでも出来る限り他人を意識しないように努力しています。人を相手にする仕事をしていますから、相手に気を使う必要があります。でもそれを絶えず考えていたりしたら、たくさんの事が混乱するかもしれません。この仕事をしている方の中にはそうしたことで傷つく人も多いですから。だから私は、ある部分に関しては自分がやりたい通りにやるべきだと思います。その代わり周囲の人から客観的な評価をたくさんもらいます。

―子供の頃から演技をしていますが、今まで重要なこととして学んだことにはどんな事がありますか?

シン・セギョン:シナリオを読んで、より多く考える必要があると思います。子供の頃は、ただがむしゃらにやっていました。キャラクターに関する考えより、そのシーンの中で与えられている感情を表現するのが中心でした。だけど、段々とそれだけではいけないと思ってきたんです。だからもっと具体化されたキャラクターをして、もっと悩んでみようと努力しています。実際に、悩めば悩むほど、撮影が厳しいほど良い場面が撮れるみたいです。「明日に向かってハイキック」でも屋外撮影が多いほど良いエピソードになります(笑)

―映画を見るのがすごく好きだと言うことですが、俳優は映画を見るのと同時に映画の一部になる存在ですよね。どんな俳優になりたいですか?

シン・セギョン:日常生活ではただ通り過ぎる場面や当たり前の瞬間なのに、ある小説や映画を見ている時に「ああ、そういうのがあったね」と感動や衝撃を受ける時がありますよね。でもそれが全世界で全ての人々が同じ気持で共感出来るものではありませんから、すごいと評価されて多くの人々に感動を与える映画は本当に幅広い部分を表現していると思うんです。私は今まで狭くて短い道を歩んで来ました。でも、これから進むべき道は長いと思います。だけど、そんなに幅広い表現は出来ないにしても、一つ一つ歳を重ねるごとに30代になり、40代になって、より豊かに表現が出来るようになれば、それですごく幸せになれると思うんです。もちろん苦しみもあり、悲しいこともあると思いますが、それを経験するのも大きな恵みだと思います。それを通してしっかりと成長出来る人になれればいいなと思います。

記者 : カン・ミョンソク、チェ・ジウン、編集 : チェ・ジウン、写真 : チェ・キウォン、翻訳 : イム・ソヨン