「最高の愛」 vs 「最高の愛」 最高の男だからこそ可能になったロマンスの世界

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MBC「最高の愛~恋はドゥグンドゥグン~」のトッコ・ジン(チャ・スンウォン)とク・エジョン(コン・ヒョジン)との話は、ハッピーエンドで終わった。相変わらず離婚説と別居説は出たものの、悪意のある噂を跳ね除けるほど幸せな家庭を築き、情熱を注いだ仕事も続けられることとなった。到底釣り合わない“グレード”が違う彼らが愛し合い、夢見た未来を現実のものとした動力とは、一体何だったのだろうか。「10asia」チェ・ジウン記者とユン・イナTV評論家が、その糸口をトッコ・ジンという“最高の男”から解き明かした。/編集者注

ラブコメディは結局、“ドキドキ"という歌詞のように“私たち、始めから合わなかったよね”から始まり“不思議なことに、いつしか心を通じ合い”結局、“あなたのおかげで、永遠にこの心臓はドキドキする”結末に至るジャンルだ。この定義に照らし合わせた時、MBC「最高の愛」はとてもよく作られたラブコメディだ。よく知ると傲慢なトップスターと、またよく知ると本当に良い人であるが“憎まれキャラ”の芸能人が偶然に出会い、絡まりぶつかる過程で起こる感情のスパークは、生きた肉体に電流として流れ心臓まで走り、お互いを意識し合うようにさせた。「最高の愛」のトッコ・ジン(チャ・スンウォン)とク・エジョン(コン・ヒョジン)の間で磁石のようにお互いを引き付け、また遠くなる感情の変化だけで、説得力のあるロマンスを描く。しかし、彼らの間に本当のストーリーを作ることは、彼らを包む世界、芸能界だ。

トッコ・ジンの愛が“最高の愛"である理由

トッコ・ジンとク・エジョンに注がれるのはスポットライトではなくフラッシュだ。前者は対象を目立たせる役割りを担うとしたら、後者は隠したい場面まで赤裸々に写す。「最高の愛」は、弱肉強食の論理が支配する生態系の芸能界に、顕微鏡まではいかなくとも老眼鏡のように照らす。エジョンがネットに載せた病室の写真のおかげでトッコ・ジンの映画撮影が失敗に終わったエピソードは、一枚の写真、文章一行から、デマがものすごい速度で広がり再生産される現実を見せている。この過程で「最高の愛」が見せる大衆の反応やマスコミの態度は、単純化されてはいるものの、誇張されているわけではない。芸能人の一挙手一投足がカメラの前で一つ一つ表れる時、皆その光に目が見えなくなり、カメラが止まった瞬間にも彼らが他の人々とさして変わらない日常を生きているという事実は見ることができない。エジョンのような憎まれキャラの芸能人は、人気という名前の階級の一番下に位置し、存在自体を無視され、日常的な嘲弄とあざ笑いの中で生きていかなければならないし、それを当然のことと考えられてしまう。芸能界はそのように惨忍な世界というだけではなく、エジョンを取材しに来たマスコミが、エジョンが転んでも最後までカメラとマイクを下ろさなかったシーンでは、基本的な常識も守られない事がよく起こる場所だと言える。

しかし、この砂漠のような殺伐とした現実の中でも、ク・エジョンが“花"が咲く明日を想像することができるのも、トッコ・ジンのおかげだろう。トッコ・ジンはエジョンとは違い、非現実的なキャラクターだ。トップスターというアイデンティティを除いては、どのような生活感も感じさせないキャラクターであるトッコ・ジンは、実際弱点と言えるものはない。彼の性格はどうであれ、彼のイメージがすべてを覆い隠すことができる。序盤が、トッコ・ジンの心臓拍動が、エジョンに対する愛を確認する機能に焦点を合わせているとすれば、お互いの愛を確認した後、トッコ・ジンの故障した心臓は、エジョンを守るために存在する。自身にとって唯一の問題だったク・エジョンという存在が、自身の前で“解除”された瞬間から、トッコ・ジンはエジョンのスーパーヒーローになったのだ。彼は人間的な義理を守り、自身が負わなければならない責任をすべて果たすため、憎まれキャラの芸能人になったエジョンに“自分を売って”も良いと言い、エジョンを守る初めての人となった。何よりもトッコ・ジンの愛が本当に“最高の愛”である理由は、誰も責任を負わず何も犠牲にしないこの世界でエジョンとの関係に責任を持ち、そしてエジョンのために犠牲になったという点だ。


数多く存在するク・エジョンのトッコ・ジンに、誰がなれるのだろうか

トッコ・ジンがク・エジョンについて知っているように、視聴者はク・エジョンがどんなに良い人なのか知っている。しかし「最高の愛」では、芸能人ク・エジョンを見る人々は、それを知らない。彼らは、エジョンが交通事故に遭ったという記事を読んで「死ななくて残念」と書き込んで悪い噂を広げた。「最高の愛」は、続けてこの人々が平凡な人、まさに今「最高の愛」を見ている視聴者かもしれないという事実を認識させる。そして、この認識は自然と現実のク・エジョンのように、そしてまさに“奇妙な現実”である芸能界を意識させる。ピルジュ(ユン・ゲサン)はエジョンを自身の目ではとても“奇妙な国”に見える芸能界から脱出させようとするが、奇妙なのは、芸能界を越えたこの世界自体だ。芸能界はエンターテインメント業界だけを意味しなくなってから久しい。全ての真実を要求するものの、実際は真実については関心がなく、憎まれキャラが犯罪者より厳しい非難に耐えなければならない世の中。イメージを生かして誤解と憶測から抜け出すためには“死ねば良い”というこの世の中。年をとるに従い守らなければならないことは増えるものの、生きていくためにこの世界は大切なことを手放せと強要する。疑うことなく甘く温かく見えるハッピーエンドを見なければならないのは、このためだ。幸せなトッコ・ジンとク・エジョン夫婦が別居しているとの噂が後を立たない今日、ここにこのような世界で一体誰が数多くのク・エジョンたちのトッコ・ジンになってくれることができるのだろうか。/記事:ユン・イナ

「最高の愛」は一言で“トッコの愛”についての話だ。大韓民国で一番のトップスター、老若男女みんなが愛するトッコ・ジンが、憎まれキャラの代名詞ク・エジョンに片思いし、恋愛関係に陥る。もちろん愛は二人が一緒にする事だ。しかし誰かがまず動かないと愛は始まらない。一方から少しでも強く引っ張らないと前に進むのは難しい。そして「最高の愛」ではこの役を担ったのはトッコ・ジンだった。「君のことを好きで幸せだ」ではなく「だから僕は君がとても恥ずかしい」と、告白ではなく“自白”までしてしまうとんでもない男性のことだ。

序盤、トッコ・ジンはク・エジョンに言う。「君は僕と別々の車で移動できるレベルじゃない」と。人間を階級で分け、誰に対してもかっとし、すべてを持ち合わせているため、チャドナム(都会の冷たい男)やカドナム(クールで洗練された都会の男)としても理解される彼は傲慢で独占的で、おまけにズルくもある。しかし好きな女性に告白するためお金で彼女の時間、すなわちイベントを開くトッコ・ジンは、資本主義の社会では最強の王子様だ。誰がそのトッコ・ジンの愛を拒否できるのだろうか。


ク・エジョンはトッコ・ジンを選択するほかなかった

しかし地に足の着いた、夢見るのを怖がるク・エジョンは、トッコ・ジンの思い通りには動かず結局トッコ・ジンは「安っぽい外見の」ク・エジョンに「なぜ僕が君を好きなんだろうか」という根本的な質問を放ち、自身の愛を探求し始めた。実際、ラブコメディで大切なのは、ヒロインの愛らしさだが、それ以上に大切になってくるのが彼女を愛する男性の姿だ。トッコ・ジンは元々格好の良い男性だが、ク・エジョンを一途に愛し、自身の完璧なイメージを凄惨に壊し、逆説的にその過程でさらに格好の良い男性になる。幼い頃は体が弱かったため、成長し心臓の手術をした後、スターになったおかげでひたすら自身を中心にした世界の中で生きてきた男が、愛するうちに怖さと切なさを覚え、ついにはク・エジョンに向かって「僕にとって君は簡単ではなくとても難しい」と言い、感情の前では“階級”が無駄になるということを悟った。

だから、自身がク・エジョンを好きだと言う事実が、他人に知られることにすら怯え、この基本的で利己的、そして軽薄でもある男性が、思慮深くて多情多感なユン・ピルジュ(ユン・ゲサン)の代わりに愛を勝ち取る過程は、「最高の愛」の舞台である芸能界の特性とも密接な関連を持つ。ユン・ピルジュはク・エジョンをこの“奇妙な国”から救おうとするが、トッコ・ジンはク・エジョンとデートするチャンスを掴むため「『セクションTV』にインタビューをお願いしようか」と尋ねたり、「僕がク・エジョンの男とインタビューで言おうか」と提案する。芸能界は自身とク・エジョンが住む世界で、それが自身にとってそうであるようにク・エジョンにも生活の一部のため、辛くても簡単には切り離すことができない事実を知っているためだ。カン・セリ(ユ・インナ)やピルジュの母親(パク・ウォンスク)でなく、マスコミと大衆が悪役を担ったこの世界で、自身が知る方法で最大限の愛を表現することは、ユン・ピルジュとは違ったトッコ・ジンの配慮であると同時に、相手に対する理解でもあったわけだ。


すでに最高になった“トッコの愛”

だから、芸能界という“奇妙な国”についての話である「最高の愛」は、ク・エジョンの受難から始まり、最初は“魔王”のように見えたが、ついには彼女を救ったトッコ・ジンの内面を表すことで終わる。イメージで評価される世界の最強者が、そのイメージを脱ぎ一人の女性を守る過程は、家の外の世界ですべてのものを持つ人がそれを諦めることについての悩み、自身の社会的イメージと胸を苦しませる真実の間で悩むすべての人々の姿と言える。あなたは自身の仕事も名誉も、心もすべてかけて愛する事ができるだろうか。「最高の愛」はトッコ・ジンとク・エジョンが“永遠に”かどうかは分からないが、大衆の予想よりは長く幸せに生きていくことで幕を下ろす。しかし心臓手術を前にしたトッコ・ジンは、自身のイメージを売り生きてきた“ランク”が落ちるのが死ぬよりも怖がるこの男性が、ク・エジョンに“僕を売れ”と言ったこの瞬間も、“トッコの愛”はすでに最高のものになった。その愛でク・エジョンは初めて“奇妙な国”で癒され、トッコ・ジンは造られたイメージではなく自身の真実からの愛に出会った。「最高の愛」は本当に“最高の愛”になったわけだ。/記事:チェ・ジウン

■「最高の愛」DVD-SET 1 15,960円(税込) 4月6日発売
第1話~第8話収録/4枚組 本編520分+特典映像約60分予定
初回限定:アウターケース仕様 封入特典初回限定:ブックレット(8P)

■「最高の愛」DVD-SET 2 15,960円(税込) 5月9日発売
第9話~第16話収録/4枚組 本編520分+特典映像約60分予定
初回限定:アウターケース仕様 封入特典初回限定:ブックレット(8P)

■関連サイト
・「最高の愛~恋はドゥグンドゥグン~」DVD公式サイト
・「最高の愛~恋はドゥグンドゥグン~」特集ページ

記者 : チェ・ジウン、ユン・イナ(TV評論家)、編集 : イ・ジヘ、翻訳 : 平川留里