Vol.1 ― 映画「ペースメーカー」キム・ミョンミン「役作りのための入れ歯に反対も多かった」

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写真=ユ・ジニョン記者
“本物の演技”と称される俳優キム・ミョンミンが、役作りの為に入れ歯をはめたと聞き、「そこまでやらなければならないのか」と、まず思った。

彼ならば目立つために容姿を変えたりしなくても十分だろう。なのになぜ入れ歯まではめたりするのだろう、そう考えていた。だが、映画「ペースメーカー」を観た後、その入れ歯がどれほどキャラクターとマッチしているかということに気づいた。出っ歯になった顔は、マラソン選手の記録を縮めるためのペースメーカーである主人公チュ・マンホの、黙々と自分のペースで生きてきたイメージと良く合っていた。入れ歯をはめているせいで濁ってしまった発音も、彼のキャラクターにぴったりだった。

4日、ソウル三清洞(サムチョンドン)で会ったキム・ミョンミンは、「入れ歯については、賛否両論があった。発音が一番大きな理由だったんだけど、僕はチュ・マンホという人物にハキハキとした発音は似合わないと思った。もちろん、そこまでしなくてもよかった。でも正解はないものだし、ただ自分の選択だと言うしか……」と語った。

賛否両論の中で選択しただけに、彼の責任は大きかった。「こだわったのは僕だからすべての責任は、自分に返ってくると思った。それだけセリフを話すときに気を使わなければならなかった。たどたどしいけど何を言っているのか理解できる発音、それを探したかった。本当に緊張した。演じた後は、真っ先に音響スタッフのところに行って、『発音はどうだった?』と聞いてチェックしていた」

彼は、見えないところまでとても細かく気を遣う俳優だ。わざわざ気を遣うというより、完全にその人物になりきって演じるから自然とそうなってしまうようだ。キム・ミョンミン主演の時代劇「不滅の李舜臣(イ・スンシン)」での有名なエピソードの一つに、「イ・スンシンは銃で撃たれた後、打たれたほうの肩を下げて歩いた」というものがある。監督が指導したわけでもなく、彼は座る姿勢にも気を遣っていたという。

これほどまでに役に入り込んでしまうと、役から抜け出すまでに時間がかかるのではないのだろうか。

「そうですね。熱い恋愛をしたのに愛する恋人と別れなくてはならない時のような空しさを感じる。うつ病になるときもあるし、精神的にも本当に辛い。でも、失恋には時間が一番の薬であるように、僕も時が経てば癒される。失恋の痛みを克服する方法が新しい恋人に出会うことであるように、僕もほかのキャラクターに出会うことで解消されるんです。」

恋人という言葉が出たのでお聞きしたい。この作品でキム・ミョンミンとAraの小さな恋もあるが、それについては?

彼は、「恋ってことにしなきゃいけませんか。この作品をきっかけにずっとこんな感じ(若い女優との恋愛)で行こうと思います」と冗談を言った。

“本物の演技”キム・ミョンミンの名演技を観ることができる映画「ペースメーカー」は、19日から公開。

写真提供=シナジー

記者 : ペ・ソニョン