「これこそが俳優を見守る楽しさ」チョ・スンウの“完璧な演技”に驚愕

TVREPORT |

チョ・スンウは映画「パーフェクト・ゲーム」(パク・ヒゴン監督)で一度だけ笑う。延長15回に及ぶ熱戦が引き分けで終わったあと、記者たちの前で相手投手のソン・ドンヨルと握手を交わしながらポーズをとる時だ。試合を勝利に導いた後、万歳をするように両手を高く上げる姿は何度か登場するが、このエンディングでのチョ・スンウいや、チェ・ドンウォンはもっとも幸せそうだ。

肩が壊れそうな苦痛に耐えたチェ・ドンウォン。そして中指にできたタコがひび割れるまで球を投げ続けた無等山(ムドゥンサン)爆撃機ことソン・ドンヨル。韓国代表のチェ・ドンウォンがそうであったように、荒れた手に接着剤をつけてマウンドに上がった後輩のソン・ドンヨルの心境はどんなものだったのか。2人は何も言わずただ見つめるだけでお互いが地獄まで行ってきたのだと分かる。そのため、満面の笑みを浮かべていても、見る者は涙を流してしまう。

「パーフェクト・ゲーム」はチョ・スンウなしには語れない映画だ。アマチュアマラソンランナーの夢であるサブスリー(3時間以内に完走すること)に成功する自閉症のチョウォンを映画「マラソン」で演じていたときから、チョ・スンウはモンスターだった。彼は自分が担当した役を演じるのではなく、その人物にのめり込み、チョ・スンウであることを忘れさせる恐るべき俳優だ。

一時期、チョ・スンウを見て「身長が10cmいや、5cmだけ高かったら、忠武路(チュンムロ、韓国の映画界を代表する街)を掌握していたはずなのに」と思っていたときがあった。「パーフェクト・ゲーム」でもがっしりとした体格のチョ・ジヌンと比べれば華奢にみえるチョ・スンウをみて、少しかわいそうに思ったのも事実だ。彼と体格が似たヤン・ドングンが相手役だったのが幸いだった。

しかし、チョ・スンウはこのハンディキャップをすさまじい演技力でカバーした。沸き起こる演技を熱く表現する俳優は多い。怒ったら大声で叫び、髪の毛をむしりとって泣き叫ぶ演技だ。しかし、この熱い演技を封印し、冷凍庫に入れて冷やしたかのように演じる俳優は少ない。ソン・ガンホ、キム・ミョンミンのような天才俳優だけに期待することができる表現だ。

しかし、チョ・スンウは新人のころからこのような演技を披露してきた。「マラソン」では脳の発達が止まったチョウォンであったし、「タチャ イカサマ師」では金と女を手に入れたコニそのものだった。本人は「金縁のめがねをかけただけ」だと謙遜するが、「パーフェクト・ゲーム」で彼はチェ・ドンウォンだった。セットポジションで1塁のランナーをけん制する眼差しとワインドアップ、ホームベースにボールを突き刺すチェ・ドンウォン特有の投球ポーズをほぼ完ぺきに再現した。

それだけではない。慶尚道(キョンサンド)出身の男らしく口数は少ないが、後輩と同僚に対する情と高校の野球部の恩師に対する悔恨を見せるときに台詞は必要なかった。チョ・スンウのゆがんだ表情1つ、些細な手の仕草1つでもチェ・ドンウォンの心が感じられた。誰もいないロッカールームの片隅で鎮痛剤を打ちながら肩の痛みと戦い、やっとの思いで上がったマウンドで「もう、オレはカーブを投げる力なんてないぞ。今回も直球だ」とキャッチャーと共感するときも、胸の底から熱い何かが沸き起こるのを感じた。

劇中、チェ・ドンウォンの醜い肩の手術痕は元ロッテ投手のヤン・サンムンの写真をモチーフにしている。また、ひび割れた手のタコを接着剤でくっつけるのも野球のルール上、反則になるという。球に微細な影響を与えるため、透明マニキュアでさえも許さないのがルールだ。しかし、チョ・スンウなら大目に見てもいいのではないだろうか?

記者 : キム・ボムソク