「朝鮮魔術師」キム・デスン監督が語ったユ・スンホ、Araそしてイム・グォンテク監督

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映画「バンジージャンプする」「血の涙」「後宮の秘密」など、様々な作品で繊細な映像や演出力を披露してきたキム・デスン監督。3年ぶりの復帰作である「朝鮮魔術師」は彼に映画という名のロマンを振り返らせた作品だ。言い換えれば、初心に戻らせた作品でもある。

作品に対する評価や観客の反応にはやや物足りなさが残るが、「朝鮮魔術師」は決して簡単ではない時代劇、ファンタジー、ラブストーリーという3つのジャンルを一つの器の中で絶妙に混ぜ合わせたという点において高く評価すべきである。

チョン・ジヨン監督の「白い戦争」の演出部として忠武路(チュンムロ:韓国映画界の代名詞)に入門したキム・デスン監督は、長い間イム・グォンテク監督の助監督として「風の丘を越えて/西便制」「太白山脈」「祝祭」などの作品に参加し、基礎を固めた。「朝鮮魔術師」で映画狂だった自身のロマンを思う存分スクリーンに投影させたキム監督は、後悔はしていないがイム・グォンテク監督の助監督だった時代が少し懐かしくなったと打ち明けた。

毎回前作とは異なる雰囲気の作品で観客と評壇の両方を驚かせてきたキム監督は「朝鮮魔術師」以降はより一層慎重になろうと決めたという。常に予測できない軌道でフィルモグラフィーを築いてきたキム監督。「朝鮮魔術師」以降の歩みがさらに期待される理由だ。

以下、キム・デスン監督との一問一答である。

写真=映画「朝鮮魔術師」スチールカット
―魔術師と姫の愛というファンシーな題材をキム・デスン監督が演出するというので、正直意外であった。期待半分、心配半分だった。

キム・デスン監督:With Us Filmのチェ・ジェウォン代表が原作である短編小説を送ってきた。「後宮の秘密」の仕上げ段階にあった頃だったが、小説を見てすぐ「僕がやるような作品ではないと思います」と断った。おっしゃった通り、ファンシーな作品だったので。なのに、その後ずっと記憶に残っていた。僕が幼い頃に見た、ものすごくロマンチックで浪漫的な「週末の名画」のような感じだった。映画「スーパーマン」でスーパーマンがテラスに飛んできてヒロインとキスをして、一緒に空を飛ぶような、そんなもの。僕がチェ・ジェウォン代表に逆に提案をした。原作通りにいかず、甘くロマンチックな映画にしてみるのはどうかと。

―ロマンチックな映画にしたかった理由は何か。

キム・デスン監督:「血の涙」の時に、自意識がプロットを支配しているという評価を受けた。「後宮の秘密」の時もそうだったが、僕は肩の上にあまりにも多くの荷物を乗せすぎていることが分かった。映画は何かを必ず含意していないといけないという思い込みで自らを重くしていた。そのようなものを投げ捨て、甘くてロマンチックな映画を作りたかった。

―最近の観客、つまりユ・スンホとAraを見るために映画館を訪れる観客は、先程話したような“ロマンの映画の世代”ではない。

キム・デスン監督:そうだ。なので、もっと簡単に意気投合し、「朝鮮魔術師」を作ることができた。最近なかなか見られないジャンルではないか。

―ユ・スンホやAraもそのロマンに同意し、理解していたか。

キム・デスン監督:もちろんだ。俳優たちに一緒に聴くと良いシューベルトの音楽や直筆の手紙などをプレゼントしたりもした。未堂(ミダン)徐廷柱(ソ・ジョンジュ)の詩も一緒に渡した。二十歳にもなっていない若者としての姿とともに、姫としての束縛、勿朗楼を率いる者としての束縛を一緒に表現してほしかった。

写真=映画「朝鮮魔術師」スチールカット
―毎回俳優たちに手紙を渡すほうなのか。「後宮の秘密」の時もチョ・ヨジョンに手紙を書いたと聞いた。

キム・デスン監督:常に悩んでいる。「後宮の秘密」の時もチョ・ヨジョンさんに長文の手紙を書いた。手紙を読んで共感し、監督と俳優の目標地点も同じになるのだ。

―映画を見ている間、監督がAraという被写体を本当に大事に思っているということが常に伝わってきた。

キム・デスン監督:Araは本当に賢い女優だ。真心を込めて人を泣かせる女優だ。俳優の中には、感情のシーンを撮る前から鉄壁を張る人もいるが、Araはカメラが回る直前まで楽しくおしゃべりをしたりおやつを食べたり忙しい。そして演技を始める瞬間、怖いほど集中できる。チョ・ヨジョンさんもそうだった。すごい女優だ。

―ユ・スンホには軍除隊後、初となる撮影現場だった。感覚が戻っていないことはないかと心配はなかったか。

キム・デスン監督:撮影の序盤だったと思う。ユ・スンホさんがお酒を一杯おごると言うので、スタッフたちと会食をしたことがあった。その場でスンホさんは「まだ監督のディレクションが難しいです」と言った。軍除隊後、新しく出発するという覚悟からくる壁があったと思う。監督からすると、俳優がそのように率直に打ち明けてくれると本当にありがたい。

―演技的にはどうだったか。

キム・デスン監督:ユ・スンホはどのような演技をすべきなのか瞬間的に正確に捉え、こなす俳優だ。監督がなぜそのシーンを取りたいと思うのかを理解した上で演技をする。特に扇子で顔を隠してにやりと笑うシーンは、僕から見ても本当に綺麗だった。

―その綺麗なユ・スンホの顔を、オッドアイという設定のために髪で隠すしかなかった(笑) 残念ではなかったか?

キム・デスン監督:もちろん残念だった(笑)

―クァク・ドウォンが演じたグィモルはある意味では典型的なアンタゴニストで、ビジュアル的にも映画的な設定で重武装(?)しているキャラクターだ。俳優本人も悩みが多かったと思うが。

キム・デスン監督:童話的な設定の中にある、主人公を苦しめる定型化したキャラクターだ。その定型性をどのように乗り越えるか悩みが多かったが、怨恨関係からその正解を見つけた。ファニのせいで失ったものを同じようにやり返すという満ちた欲望がグィモルを定型性から逃れさせたと思う。クァク・ドウォンは何もしないでいてもエネルギーが溢れ出る人だ。爆発的にエネルギーが増加する俳優だが、このような俳優は初めてだった。

―そのエネルギーがユ・スンホ、Araを飲み込むのではないかという心配はなかったか。

キム・デスン監督:その調整は監督の役割でもあるが、クァク・ドウォンもどのシーンでもエネルギーを放つ俳優ではない。ユ・スンホ、Araもクァク・ドウォンという大先輩の前で全く萎縮することもなく、よく頑張ってくれた。

―「朝鮮魔術師」では観客が期待している魔術をめぐる興味津々なビハインドストーリーが描かれず、残念だった。

キム・デスン監督:ファニを最も大きく束縛しているものであり、チョンミョンの運命を変えたメタファーとして魔術を描きたかった。デビッド・カッパーフィールドのように、まるでこの世に存在していなかった魔術のように「じゃじゃん!」と見せるのではなく、人を変化させる魔術を描くのが目標だった。誰かを変化させる魔術、水の上も歩かせる魔術を。

―最近もリハーサルをよくしているか。

キム・デスン監督:たくさんする。イム・グォンテク監督譲りのものなので。

―すべての俳優がリハーサルに同意するわけではないだろう。

キム・デスン監督:その通りだ。「血の涙」の際にはチャ・スンウォンさんがそうだったし、「バンジージャンプする」のイ・ビョンホンさんも最初から僕の方式に同意していたわけではなかった。特にイ・ビョンホンさんは僕が「OK」と叫んだのに「もう一度行きましょう、監督」と言ったりして、最初は僕が新人監督だから無視しているのかと思って悲しかった。イム・グォンテク監督の現場では一度も見たことのない風景だったので、自分への自信がなかったこともあってカッとなったりした。だが、じっと見ていたらそれはイ・ビョンホンという俳優の癖だった。考えてみると、僕は当時新人監督だったが、イ・ビョンホンさんは本当に多くの作品を経てきた先輩と言えば先輩だった。僕が学べるものがあると思った。今まで、僕のポリシーは「プライドは短いが、映画は長い」だ(笑)

―望んでいたロマンチックな映画を撮ったが、満足しているか。

キム・デスン監督:ファンタジーラブストーリーというジャンルが簡単ではないというのを今回思い知った。映画狂だった僕に浪漫的でロマンチックな情緒を与え、僕を夢見させた原型に近い映画を作った。幸いなことに、その夢を支持し、一緒にしてくれた人たちがいた。With Us Filmのチェ・ジェウォン代表も、俳優たちも快く同じ夢を見てくれた。そこに関しては後悔はない。

―構想している次回作はあるか。

キム・デスン監督:まだない。イム・グォンテク監督の下で助監督をもう一本やってみようかとも思っている。イム・グォンテク監督の得意なものは、シンプルで重みのある物語を力強く押していくことだ。今でも戻りたいと思う。研究をする姿勢で学びたい。作品を撮るたびに前作とは雰囲気が違う映画を撮ってきた。「バンジージャンプする」の後に「血の涙」を撮り、そして「ノートに眠った願いごと」を撮って「後宮の秘密」を撮った。昔のようにハプニングを繰り返し、当たっていくにはあまりにも年をとってしまった。一行の短い書き込みで傷ついたりするのを見ると(笑)

―毎回イム・グォンテク監督に宿題の検査を受ける気分だったのでは。

キム・デスン監督:監督は僕が「バンジージャンプする」で監督デビューしてから何も言ったことがない。助監督の時は「デスン~」と呼び捨てにしたり、怒ったりすることも何回もあった。「ノートに眠った願いごと」以降は怒ったりもしない。なのにそれがまたかなり寂しくて。なんと言えばいいだろうか。母にお仕置きされたのに、痛くない時の悲しさというか。そんな気分だ。

記者 : キム・スジョン、写真 : チョ・ソンジン