「パラサイト 半地下の家族」ポン・ジュノ監督“この映画の価値や楽しさは賞とは別…海外にも通じる話だと実感した”

OSEN |

写真=CJエンターテインメント
「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督が、カンヌ映画祭受賞の可能性について率直な思いを明かした。

「第72回カンヌ映画祭」コンペティション部門に出品された「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督とのインタビューが、パレ・デ・フェスティバル4階のサロンで行われた。

21日午後10時(現地時間)、リュミエール劇場で「パラサイト 半地下の家族」の初の公式上映が行われた。映画のいたるところに隠喩とブラックコメディー、韓国社会の現実を風刺する場面が散りばめられている。ギウ(チェ・ウシク)とギジョン(パク・ソダム)、2人の兄妹が家庭教師になった後のストーリーは、知れば知るほど驚きがあり、どんでん返しを続ける。パク社長の家の家政婦ムングァン役を務めたイ・ジョンウンと謎のキャラクターであるパク・ミョンフンがシーンスティラー(映画やドラマで素晴らしい演技力や独特の個性でシーンを圧倒する役者を意味する)として活躍するが、彼らの役割は詳しく説明してしまうと映画を観る楽しさが半減してしまうほどの驚くべきキャラクターだ。

上映後、リュミエール劇場では8分間のスタンディングオベーションが続き、ポン・ジュノ監督は遅い時間まで映画を観覧してくれた観客に対して「ありがとうございます。もう遅い時間なので帰りましょう」とし感謝を伝えた。現在、海外配給会社をはじめ、Hollywood Reporter、Variety、Daily Telegraph、IndieWireら海外メディアも映画を絶賛している。

ポン・ジュノ監督は、150社以上の海外マスコミとインタビューをこなし、疲れている状況でも、新作「パラサイト 半地下の家族」に対する好評のためか楽しそうな表情だった。映画ほど興味深いポン監督とのインタビューを一問一答でまとめた。

――「ポンテール(ポン・ジュノ+ディテール)」の真骨頂を見ているような気分でした。

ポン・ジュノ:チェ・ウシクが映画監督の役割をする時があります。父に「カットカットカット」と言う時、妙な気分になりました。そんなセリフも自分で書いたのですが、自分で書いておきながら不思議な気分になるんですね(笑)。僕が少し精神が分裂的で、俳優に変なことを注文しておいて「なんだ。おかしいよ」と思ったりします。そうすると、俳優たちは「監督がそういったんじゃないですか」といいます。そういった見慣れない感じが好きみたいです。映画に珍しい、ユニークなアイデアがたくさんあります。俳優たちの演技がすごく上手でリアルに表現していて、説得力を持っていると思います。俳優たちの威力がすごいです。

――俳優たちの演技を見ながら「こんなことまで注文したっけ」と思った瞬間はありましたか?

ポン・ジュノ:例えば、チョ・ヨジョンさんが演じたヨンギョが初めて登場した時、屋外のテーブルで居眠りしているシーンがあります。その時にムングァンが近づいてきて起こすのですが、僕が動作まで実演しながら注文しました。しかし、カメラで見ながら「なぜあんな動き方しているんだろう?」と思いました。すごく変で奇怪でした。だけど、皆喜んでいました。そのシーンは何かそういうふうに撮らなきゃいけなさそうな気がしました。モハメド・アリが蝶のように舞い、蜂のように刺すと言ったのですが、そのようなものをイメージしました。僕がユニークな注文をしても、それっぽく表現できる女優なので、安心感がありました。

――海外の観客の皆さんにも共感してもらえるストーリーだと思います。

ポン・ジュノ:上映が終わって、イギリスのプロデューサーが「イギリスでリメイクしてもぴったりだし、完全にロンドンの状況だ」と言っていました。あるイタリアの夫婦も「これはイタリアの状況だ。TVシリーズにしたらぴったりだよ」と言っていました。香港の配給会社も完全に香港の状況だと言っていました。貧富の差など大げさなスローガンをかけて撮ったわけではないのですが「通じる話なんだ。同じように感じるだな」と思いました。

――モールス符号、インディアンのイメージが頻繁に登場します。一般観客には見慣れないかもしれませんね。

ポン・ジュノ:若い世代に見慣れたものではありません。すでに死んでいるような世界についてずっと取り扱ってきましたし、水石も死んでいるようなものです。自然の中にある石とは異なる印象です。インディアンも保護区にどれほど残っているか分かりませんが、事実上死んでいるというイメージです。そんな仕掛けを使いました。

――ネタバレに注意してほしいとコメントされたんですね。

ポン・ジュノ:大げさなんですかね。藪をつついて蛇を出したのかもしれません。余計に「何? なんかあるの?」と思われるんじゃないかと不安でした(笑)。映画を観ると分かると思いますが「パラサイト 半地下の家族」は衝撃、大きなどんでん返しがある映画ではありません。しかし、所々にそういった部分があります。それが観客を牽引する力だと思います。それを知らずに映画を観たら、2時間にわたって映画と観客が一緒に走っていく、二人三脚のように足を縛っていくようなものです。ネタバレを知らなかったら、その雰囲気を生かすことができると思いお願いしました。公開前に映画はPRしたいし「パラサイト 半地下の家族」について話したいのに、何かを書かないでほしいと頼むのは語弊があります。だから切実な気持ちでお願いしました。

――元々デリケートなほうだとお聞きしました。「オクジャ」を制作する時もたくさん悪夢を見たようですね。

ポン・ジュノ:今回の作品は暑くて大変でした。昨年の夏は皆暑かったから。金持ちの家のシーンを全州(チョンジュ)で撮影したのですが、本当に暑かったですね。しかし、一緒に働いたスタッフや俳優たちを実家の家族みたいだなと思いました。海外で7~8年間暮らしたのですが、列車の中で4年、豚と4年など、異郷をさすらったりもしました。実家で緊密に作業したような気分でした。外国か韓国かという問題よりも、規模の問題だと思います。海外の作品は、制作費が400億~600億ウォン(40~60億円)でしたし、「パラサイト 半地下の家族」は100億ウォンちょっとでした。昔の制作費に比べたら「母なる証明」ほどの規模です。今回、実家のように楽だった点、細かく顕微鏡を突きつけた点など、このような規模の映画をこれからもやりたいと思いました。英語の映画でも、韓国語の映画でも。

――「スノーピアサー」は直接的で、「パラサイト 半地下の家族」は直感的ながらも隠喩が適切に使われています。

ポン・ジュノ:ヒッチコック監督はサスペンスの大御所です。しかし、彼の初期作では恋愛やコメディ作品も撮っています。あるタイミングから自身の世界を狭めていきますが、同時に深まっていきます。僕はまだ7本しか撮っていませんが、50代に入っているので、ヒッチコックのタイミングが来たのではないかと思います。良い意味で、狭く深く行かなければいけない時です。昨日「パラサイト 半地下の家族」を観て、薄々ですが確認しました。

――「パラサイト 半地下の家族」を見ると「ほえる犬は噛まない」「グエムル-漢江の怪物-」など、前作と同じようなシーンが思い浮かびます。セルフオマージュですか?

ポン・ジュノ:最近キム・ヘジャ先生からの連絡を受けて、あるイベントに駆けつけました。そのイベントのためにモノクロの「母なる証明」をもう一度観たのですが「あれ?あれは『パラサイト 半地下の家族』にあるシチュエーションに似ているな」と思いました。「母なる証明」の時にあんなカットを撮っていたんだなと気づきました。まさか自分が枯渇しているのでは? と思いました。それは困るなあ……70歳までは映画を撮らなきゃいけないのにと思いました(笑)。

――カンヌ映画祭受賞の可能性が全くないと言っていましたが、初の公式上映後の雰囲気はとても良かったですね。今はどう思いますか?

ポン・ジュノ:最初から受賞しそうだ言うよりは、そのほうがマシだと思いませんか?(笑)。ソン・ガンホ先輩の主演男優賞を強く期待しています(笑)。これまでベルリン映画祭のコンペティション部門審査委員をはじめ、多くの映画祭の審査委員を経験してきました。今年のカンヌ映画祭には、エル・ファニングさんが参加していたんですね。自分の経験によると、本当に予測できません。最後の30分で変わるケースもありますし、審査委員の中の一人が人柄も悪くて意地っ張りで、猛烈に1つの映画を反対したり、いろんなケースがあります。僕も審査を受ける側になる時がありますが「あの時もこうだったんだろうな」と思いました。結局、審査委員9人が決めるものです。上映館でどのように反映して、その反応やリアクションも大事ですが、賞はそれとは別だと思います。最後の日の朝にどうするかによって決まります。それを考えると心が楽になります。賞をもらえなかったからって、この映画の価値や楽しさがなくなるわけではありません。「パラサイト 半地下の家族」は韓国や多くの国の観客に会う準備をしています。そのように考えを整理しました。

「パラサイト 半地下の家族」(監督:ポン・ジュノ、制作:Barunson E&A、提供・配給:CJエンターテインメント)は、全員が失業者のキテク(ソン・ガンホ)一家の長男であるギウ(チェ・ウシク)が、高額の家庭教師の面接のためにパク社長(イ・ソンギュン)の家に足を踏み入れて始まることになる、二つの家族の出会いにより抑えられない事件が繰り広げられる物語だ。

記者 : ハ・スジョン