「キングダム」ペ・ドゥナ“シーズン2はさらに面白くなると思います”

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写真=Netflix

Netflixのドラマ「キングダム」でゾンビに勝った唯一のキャラクターがいるとすれば、それはペ・ドゥナだ。ペ・ドゥナは朝鮮時代の女性の限界、最も低い身分である賤民が越えられない壁を崩した。一部ではペ・ドゥナの演技について「もどかしい」と言うが、ペ・ドゥナは「そのもどかしさが朝鮮時代の女性の宿命」だと語った。キャラクターに対する慎重で緻密な研究、確実な自信を土台に完成させた卓越した演技だった。

「キングダム」は、死んだ王が蘇り、反逆者として追い込まれた皇太子が、朝鮮の果てに行き、そこで飢えた末に怪物になってしまった人々の秘密を暴くことから始まる、ミステリースリラーだ。最近世界で同時公開され、韓国国内外から好評を得ている。

ペ・ドゥナは「キングダム」で疫病の根源を追う医女ソビを演じた。ソビは、飢えに追いこまれた民たちが、疫病によって怪物(ゾンビ)と化した残酷な状況に初めて向き合った目撃者であり、唯一の生存者だ。恐怖を背後にして疫病を治療する方法を探るソビは、皇太子の心強い助力者になる。自身の演技で好き嫌いが分かれても痛快だというペ・ドゥナ。むしろそうした意見を聞くために「キングダム」に挑戦したというペ・ドゥナに、ソウル三清洞(サムチョンドン)のあるカフェで会った。

――「キングダム」が公開されてから1週間が過ぎましたが、人気がより高まっていますが、気分はいかがですか。

ペ・ドゥナ:撮影時から「キングダム」に対する自負心を感じていましたが、ここまで話題になって嬉しいです。予想よりももっと話題になっていると思います。実際、外国ではNetflixは日常的ですが、韓国には入ってきたばかりです。韓国で話題になるのか心配しましたが、期待よりずっと良くて嬉しいです。

――外国の知人たちの反応はどうですか?

ペ・ドゥナ:イタリア、日本など各国の友人がうまくいってるという連絡をしてくれました。フランスの友人は韓服がとても美しいと、「ファンタスティック・コスチューム(fantastic costume)」と言ってくれました。さまざまな面で人々に良い印象を与えたようです。

――一番気分の良かったフィードバックはどんなものですか?

ペ・ドゥナ:「シーズン2を早く撮影して」「いつ出るの?」と催促されますが、それが「キングダム」への最高の称賛だと思います。

――「キングダム」のどんな部分に惹かれましたか?

ペ・ドゥナ:私たちは大河の時代劇や様々な時代劇作品に慣れていますが、外国の人たちは韓国の昔の姿を知らないので新鮮に感じられたと思います。私の推測ではゾンビ自体への慣れや人気に加え、朝鮮に対する新鮮さと疑問が、馴染みが薄いながらも親しく近づいたため良い反応があったのではないかと思います。

――「キングダム」に出演することになったきっかけは何ですか?

ペ・ドゥナ:実際、出演の提案を受ける前に映画「トンネル」で親交のあったキム・ソンフン監督からシナリオのモニタリングを頼まれました。台本を6部まで全て見ましたが、とても面白くて「さすがキム・ウニ!」と言いました。読み終えた時にオファーが来ました。

――キム・ウニ作家と共にした感想はいかがですか?

ペ・ドゥナ:私は余白が多く、想像のできる余地のある作品が好きです。キム・ウニ作家の文章は、どんどん読み進められるのに、シンプルでありながらも余白があります。キャラクターを説明してくれるけれど余白があって、私がキャラクターを想像できる部分を適度に残してくれます。

――キム・ウニ作家は「キングダム」で空腹を話したかったと表現していました。そんな主題意識をどう感じましたか? 

ペ・ドゥナ:作品のメッセージが良かったです。だからこの台本がより良かったんだと思います。私は社会的なメッセージがある作品が好きですが、権力を皮肉る鋭さが良かったです。

――作品を選ぶのに明確な基準があるように見えます。基準に従って厳しく選ぶ方ですか。

ペ・ドゥナ:最近は厳しくない方です。昔は「後悔しないかな?」と悩みましたが、最近は「やってみよう」と思います。「やり遂げられなかったらどうしよう」とも悩みません。自信がなくてもぶつかって学べばいいという余裕が少し出てきました。

――デビュー20年目にして初の時代劇に挑戦されましたね。キム・ソンフン監督、キム・ウニ作家の組合せでためらいはしませんでしたか。 

ペ・ドゥナ:ためらいました。「わざわざやらなくてもいいことをして、悪口を言われる必要があるだろうか?」とも思いました。結局、悪口を言われようという方を選びました。遅ればせながら、自分がもっと成長できるチャンスだと思いました。実は、私はこれまで運が良く、良い監督に会って茨の道なくやってきました。だから、今回茨の道を通らなければならないと思いました。冒険であり挑戦でした。

――挑戦と表現した理由は何ですか?

ペ・ドゥナ:初めての時代劇なので、多くの試行錯誤があると思いました。もし、分量の多い主人公だったら出演しなかったと思います。シーズン1では皇太子のイ・チャンを助ける役で、シーズン2の方で活躍するため、シーズン1とシーズン2の間に、私がキャラクターを研究する時間を稼げると思いました(笑)。

――キャラクターも平凡ではありませんが、“医女”ソビのキャラクター作りをどのようにされましたか?

ペ・ドゥナ:作家がソビは孤児で賤民出身だと説明してくれました。チユルホン(医療院)がすべてであるキャラクターだと思いました。「山の中で薬草を掘る子どもに医学知識があるだろうか。口下手ではないだろうか?」と思った時、社会生活に対する経験や優れた知識はないと思いました。世間知らずだけれど、大胆なキャラクターに設定しました。

――大胆なソビを演じるために考えておいたイメージはありましたか? 

ペ・ドゥナ:兄が看護兵出身ですが、初めて手術のアシスタントをしてからキムチが食べられなかったと言っていました。でも、その話をしながらキムチをすごくよく食べていて、それが印象に残っていました。ソビもそのような大胆さを持っていると思いました。死と死体をいつも見てきた人なので、見ても驚かないように鍛えられた人物だと想像しました。

――寒い中、山や野原での野外撮影があってより大変だったと思いますが。

ペ・ドゥナ:本当に難しいものばかりでした。今回「キングダム」を撮りながら新人の姿勢に戻ったようでした。氷点下17度まで下がり、こんなに寒くてもいいのかと思えるほど寒かったんです。ところが私だけ寒かったんです。チュ・ジフンさんは「キングダム」が4番目の時代劇だと言っていたし、リュ・スンリョン先輩はさらに多くされてきました。そのためか、寒い時は軽量のダウンを着るノウハウがありました。

――ボムパル役のチョン・ソクホさんとラブラインなのかという質問も多いですね。共演はどうでしたか?

ペ・ドゥナ:皆さんそう思っていましたが、撮影の時は全然ラブラインだとは思わなかったです。チョン・ソクホさんはボムパルそのものでした。かつての所属事務所の縁で、元々親しかったので楽しく撮影できました。ボムパルが面白く演技をしてくれたので、ソビがより強く見える部分があると思います。弱虫の両班(ヤンバン:朝鮮時代の貴族)と強い賤民ではないでしょうか。互いの相互作用が良かったと思います。

――実際「キングダム」での演技力に対する指摘もありますね。 

ペ・ドゥナ:演技に関して論争があるのを見ると痛快な気分です。コメントを見ながら「そうだ、私もこのように言われないと」と思います(笑)。大衆がペ・ドゥナといえば思い浮かぶイメージとしてモダン、ファッショニスタ、ハリウッド進出のようなものなのに、そのような修飾語を一気に振り切ることができる機会だと思います。演技は個人の趣向だと言いますが、私は私の演技を冷静に見ます。たまには「そんなにできない訳でもなさそうだけど」と思ったりもします。

――演技力に関する論争や指摘を肯定的に受け入れる姿が印象的ですね。 

ペ・ドゥナ:私は自分の長所と短所をよく知っています。光る部分も、持っていない部分も知っています。そのため、諦めることは諦め、持っていく部分は持っていかなければならないという気がします。おそらく年を取るにつれて気持ちが楽になったからではないかとも思います。でも、さらに努力しようとする気持ちの一環としてこのような挑戦をするのです。「天才は努力する者に勝てず、努力する者は楽しむ者に勝てない」という言葉がありますよね。私はそれでも楽しむ人です。演技が一番面白いんです。

――モダンだとかファッショニスタとか言う修飾語を取りたいですか?

ペ・ドゥナ:そうではありません。20年演技生活をすれば、大衆との関係が難しくなります。最近の若者は私をルイ・ヴィトンのモデルとしてしか知らないようです。ドラマや映画を通じてその度ごとに女優であることを知らせています。役者として演技をする姿や、自分が持っている信条や価値観を示さなければならないと思います。でも、ファッショニスタという修飾語はすごく好きです。もしも「キングダム5」まで撮るなら、私を「ソビ」と呼んでくれる人が出てくると思います。

――ゾンビを直接見てどうでしたか? 

ペ・ドゥナ:やるせない感じがしました。演技がとても上手で、より凄絶に見えました。いつも渇望していますよね。最初は怖かったけれど、見れば見るほど胸が痛くなりました。お腹が空いていた民たちがゾンビになったんですから。役者たちは演技がとても上手でした。ゾンビ達が群れで追いかけてくる場面を見ると、強烈だけど凄絶な感じも伝わってきますよね。

――シーズン2に対するスポイラー(ネタバレ)をお願いします。

ペ・ドゥナ:シーズン2はもっと面白いと思います。実はシーズン2の台本の最後を見て、「シーズン2までって言ったじゃないですか!」と話しました。プロデューサーが「シーズン3を念頭においてはいます」とおっしゃったけれど、計画によって変わる可能性もあります。さまざまな解釈のできる結末になることもあり得ます。結末は編集によっていくらでも変更可能な部分ですから。キャラクターでお話しすれば、シーズン2ではソビが鍵を握っています。そのためシーズン1では、鍵を握っていないふりをして演技をしました。シーズン1では切り札だったけれど、シーズン2では切り札を超えて何かをします。シーズン2の台本を見ると、ソビが何かをします。ここまでに限って教えることができます(笑)。

記者 : ウ・ビン、翻訳 : 浅野わかな