キム・ジェウク『蝶の眠り』で中山美穂と共演…全編日本語の台詞も「僕にとっては日本語がファースト・ランゲージ」

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5月12日から角川シネマ新宿他、全国で公開する映画『蝶の眠り』。自らの余命を知る人気女性作家・涼子が韓国人留学生チャネと出会い、美しい記憶を残そうとした愛と記憶の物語で、キム・ジェウクは小説家志望で日本の大学に留学しながら居酒屋のバイトに励むチャネを好演。そんな彼が現在、韓国で舞台「アマデウス」出演の合間を縫って来日した。インタビュー場所は映画にも登場する山の上ホテル。受け答えはすべて日本語で、時おり「なんと表現したらいいんだろう……」「もっと正確に言いたいんですけど」と考え込みながらも真摯に、時にユーモアをまじえて語ってくれた。

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――『蝶の眠り』に出演することになったきっかけを教えてください。

キム・ジェウク:僕はもともとチョン・ジェウン監督の映画『子猫をお願い』が好きだったんですよ。女性監督が撮影したとは思えないハードボイルドさが感じられて、この監督はすごく面白いなと思っていたんですけど、そのチョン・ジェウン監督が本当に久しぶりに映画を撮るということで、そのシナリオが僕のもとに来たんです。この映画を単純に恋愛モノとは言いたくないんですけど、こういう恋愛を描いた作品って今、韓国ではあまり制作されないんですよ。そして、この映画ではセリフも全部日本語で、ロケも全部日本でやる、さらに共演者もスタッフもすべて日本の方だと聞いて、その何もかもが面白そうだと思いました。ストーリーももちろん面白かったけど、そういう環境に惹かれたっていうのも大きいですね。

――日本語での演技はいかがでしたか?

キム・ジェウク:これまで日本語を話す役はけっこうやってきたんですけど、ほぼ100%日本語だけっていうのは初めてで、いつかやってみたいと思ってました。それが韓国の監督になるとは思ってなかったですけど(笑)。だから、僕にしてみたら断る理由がなかったですね。それに、シナリオがまるで小説を読んでる感覚に近かったんですよ。こういうテキストをチョン・ジェウン監督が映像化したらどういう映画になるのかなっていう興味がすごく大きかった、それが一番の理由です。

――チャネという青年を演じるにあたって監督とはどんな話をしましたか?

キム・ジェウク:映画に関してはたくさん話をしたんですけど、チャネをこういうふうに演じてほしいみたいなことよりは、もっと全体的な話が多かったですね。なので、チャネに関しては僕に任せてくれた部分が多かったです。役作りに関しては、撮影に入る前に太宰治さんの『人間失格』を読みました。

――中山美穂さんとの共演はどうでした?

キム・ジェウク:中山美穂さんがキャスティングされたと聞いた時は正直すごくびっくりしました。涼子という役をどんな女優さんが演じるのかということが、この映画にとっては一番重要な部分だったので。だから、涼子役が中山美穂さんになったよと聞いた時にはすごくうれしくて。彼女との共演がどんなふうになるのかという期待もありましたし。でも、共演者が中山美穂さんだからどうだ、というのはあまりなかったですね。もちろん中山美穂さんの出演作は『Love Letter』も拝見してますし、フランスで撮られたという『新しい靴を買わなくちゃ』も観てますけど。それよりも彼女が涼子をどう演じるかのほうが気になりました。実際にこうして彼女が演じる涼子を見ることができてすごく楽しかったですし、美しかったです。

――映画の中では“偶然”が大きく作用しますが、必然とも言える偶然はあると思いますか? またキム・ジェウクさんの人生を変えた偶然は何ですか?

キム・ジェウク:僕はどちらかというと偶然は必然だと信じているほうです。僕はもともと音楽をやっていた人で、役者としての夢があったわけではないんですよ。昔から映画とかすごく好きでしたけど、役者というものは誰でもできる仕事ではないと思ってましたし。でも偶然、ある人に出会い、その人が僕の役者としての才能とか可能性を引き出してくれたんです。舞台の演出家さんで、僕にとっては師匠みたいな人なんですけど、その人との出会いは僕が求めたものではなく、本当に偶然に出会った関係なので。たぶん、その人に出会ってなかったら僕は役者になってなかったと思います。だから、僕は“偶然”を信じてます。

――これまでにも日本語を話す役は多く演じていますが、今回は韓国人留学生というキャラクターなのに、日本語が上手すぎでは? とも思いました。

キム・ジェウク:監督と撮影前に話してたんですけど、無理やり下手な日本語にするよりは、「なんで留学生なのにあんなに日本語がうまいんだ?」っていうところを意識させず、ストーリーに注目してもらうことに注力しようということで、そのままの日本語でやりました。これまで僕が日本語を話す役を演じていた頃は、韓国と日本の交流がドラマ制作においても活発な時期だったので、いろいろなしがらみで入れられた要素というか(苦笑)。でもこの作品で僕が日本語を話す役を演じるというのは、全然目的が違うじゃないですか。だから大歓迎でした。

――ずっと韓国で暮らしていながらそれだけの日本語力はどうやってキープしているのですか?

キム・ジェウク:頭がいいんでしょうね(笑)。というのは冗談ですけど。僕にとっては日本語がファースト・ランゲージなんですよ。7歳までは韓国語のほうがしゃべれなくて、韓国に帰ってからは韓国語で生活してたので。今度は20歳くらいになって日本の方たちと話してたら、日本語は聞き取れるんだけど言葉が出ない。それがすごく悔しくて。以来、日本の方と過ごすようになってまた日本語がでるようになりました。

――『蝶の眠り』は遺伝性アルツハイマーを発症した涼子が次第に記憶をなくしていく話ですが、もしキム・ジェウクさんが記憶をなくすとしたら、最後に残ってほしい記憶は何ですか?

キム・ジェウク:考えたことないな……。でもやっぱり、人間みんな同じだと思うんですよ。事故とかテロとかで最後にメッセージを送る時、恨みのメッセージを送る人はいないじゃないですか。僕がどれだけ君を愛してたか、それが夫であれ妻であれ、子供であれ親であれ、そういうメッセージはいつだって愛してるよっていう言葉だと思うんですけど、僕もそうだと思いますね。僕の人生にどれだけ大切な存在だったのか、そういう感覚が一番大事だと思います。その記憶が一番幸せだと思うから。

――キム・ジェウクさんはこれまで音楽と演技という2つの表現をやってきましたが、今後はチャネのように小説を書いてみたり、舞台やミュージカルの演出をしてみたいという考えはありますか?

キム・ジェウク:小説家も演出家も、誰もができることじゃないと思いますし、どちらも本当に尊敬しています。すごくティピカルな答えになるかもしれないけど、芝居ってやればやるほど難しいんですよ。経験を重ねるほど視野がもっと広がってくるし、それまで知らなかったことを知るようになるし。それがたまらなく楽しいんです。やっぱりあまりイージーなものは面白くないですよね。ゲームも難しければ難しいほど達成感が大きいじゃないですか。まさにそれです。恋愛はまた別ですけど(笑)。

ライター:尹 秀姫 / 撮影:朝岡英輔

■公開情報
「蝶の眠り」
2018年5月12日(土)より角川シネマ新宿ほか全国ロードショー


出演:中山美穂、キム・ジェウク、石橋杏奈、勝村政信、菅田俊、眞島秀和、澁谷麻美、永瀬正敏
監督・脚本・原案:チョン・ジェウン
ストーリー・劇中小説:藤井清美
企画・製作:山上徹二郎、坂本敏明、イ・ウンギョン
プロデューサー:山上徹二郎、イ・ウンギョン、山口幸彦
製作:シグロ、キングレコード、ZOA FILMS
制作プロダクション:シグロ
配給:KADOKAWA
©2017 SIGLO, KING RECORDS, ZOA FILMS

「蝶の眠り」公式サイト:http://chono-nemuri.com/

■関連サイト
キム・ジェウク日本公式ファンクラブ:http://www.kimjaeuck.jp

記者 : Kstyle編集部