イ・ジョク、東京・大阪でベストアルバム発売記念ライブ開催「僕の音楽はCDよりライブの方が好きと言われていますが、僕もそう思います(笑)」

Kstyle |

韓国の国民的シンガーシングライター、イ・ジョクが満を辞して日本での活動をスタートさせた。これまでに発表された5枚のフルアルバムから自選による15曲を収録したベストアルバム『イ・ジョク BEST SELECTION~よかった~』をリリースする彼に、日本での本格的な活動を開始する心境を訊いた。

――日本で活動をスタートする心境を聞かせてください。

イ・ジョク:新しい場所で新しいリスナーに僕の音楽を聴いてもらうことができてとてもワクワク、ドキドキします。日本語の楽曲で活動をスタートする訳ではなく、今まで発表した僕のソロアルバムの楽曲からたくさん考えて選んだ楽曲を聴いてもらうため、歌詞が直に伝わらない時、どんな風に受け入られるかがとても気になります。

――アーティスト生活20周年を迎えた2015年には東京・キネマ倶楽部で初の単独ライブを開催してます。当時とはまた違う気持ちですか?

イ・ジョク:そうですね。新人の気持ちで、全ては新鮮な刺激だと思って受け入れようとしています。3年前、日本で小さなライブを開催した時は、みなさんが本当にライブに集中して聴いてくださったその姿に感動しました。これからどのようなことが待っているか何も分からない今の状況で、全てのことが楽しみです。もちろん僕が好きな、美味しい日本の食べ物を味わえるということも大きな楽しみです(笑)。

――(笑)日本でも放送されたバラエテイ番組「花より青春」では日本語を披露してましたが、イ・ジョクさんは日本語能力試験1級を持ってらっしゃるんですよね。日本語に興味を持ったのはどんなきっかけだったんですか?

イ・ジョク:実は初めて日本を訪ねたのは 30歳の時だったので、そんなに早くはありません。あの時は主に日本の小説に興味がありましたが、実際日本に行ってみたら色んなことに興味が湧いてすぐにはまってしまいました。特に、居酒屋に行ってたくさんの品が書いてあるメニューを見て一つも読めないということがとても辛かったので、すぐに日本語の勉強を始めました。ということで、始まりは「お酒を美味しく飲むために」と言えるかもです。(笑)そしてそれと同じく、僕が好きな日本の文学や漫画を日本語で読みたかったです。村上春樹さん、高橋源一郎さん、夏目漱石さん、浦沢直樹さん、うすた京介さん……。

――とても幅広いですね。どこか日本で行きたいところはありますか?

イ・ジョク:アニメ映画『もののけ姫』の舞台にもなっていた屋久島に行きたいですね。

――日本について本当に詳しく知ってるんですね(笑)。改めて、イ・ジョクとはどんなアーティストだと言えばいいですか?

イ・ジョク:う~ん……両面性を持ったアーティストでしょうか? 優しいバラードも歌いますが、エッジの立ったロックもやってきました。本当はどのようなアーティストなのか分かりづらい複雑なアーティストではないかと思います。そして誰も言っていないような言い方で歌詞を書きたいと思っている人です。韓国には、アイドルの他にもそれぞれの色を持っているシンガーソングライターがたくさんいますが、その中の一人として興味を持ってもらいたいです。ある心の風景、素直な気持ちを音楽に込めて伝えることが僕の仕事だと思います。その感性をそのまま感じてほしいです。

――では、今回、日本の新しいリスナーに向けたベスト盤の製作にあたって、5枚のフルアルバムからどのように選曲していきましたか?

イ・ジョク:まずは、いわゆる各アルバムのリード曲など、PVを撮って音楽番組などに出ていたメイン楽曲を入れて、それからファンのみなさんに愛されてタイトルが知られた楽曲を選びました。最後にそんなに有名な楽曲ではなくても、僕の持った色を分かってもらえる楽曲を入れました。今回はあまりにも実験的な曲やダークな曲は入れませんでした。

――最新のミニアルバムのリード曲「羅針盤」や新曲「素敵な冬の日」などはあえて入れてないんですね。ラッパーであるキム・ジンピョとのユニット<パニック>時代の大ヒット曲「左手」「かたつむり」「UFO」なども入ってません。

イ・ジョク:一番最近発表した「痕跡part1」の曲は、今後発表する「part2」と一緒にまとめたり、フルアルバムという形で日本で発表しいと思ったからです。<パニック>時代の曲を入れてないのは、今回のベストアルバムにはレコーディングをし直すことなく、既存のバージョンをそのまま収録することにしたからですね。ライブでは歌っているので、いつか何かのきっかけがあればソロバージョンでリメイクして発表することができるといいですね。

――全15曲をまとめる過程は、これまでのアーティスト人生を振り返るきっかけにもなったと思います。どんな22年間でしたか?

イ・ジョク:21歳の時に<パニック>でデビューして、最初から想像もできなかったほどたくさん愛されることになって。それからはもともと僕たちが持っていた色を見せるため、2枚目のアルバムでは少しストレンジなアプローチにチャレンジしたり、キム・ドンリュルさんと<カーニバル>というプロジェクトを試してみたり、僕が尊敬していた奏者たちと<ギグス>というバンドを組んだりしました。僕にとっては、全てがとても貴重な経験であり、勉強になりましたね。自分でも知らなかった自分の中の色んなものが見つかるようになったと思います。1999年にソロ活動を始めてからは、時間が経つにつれ少しずつ変わっていく僕の姿が音楽に反映されていたような気がします。大型のライブはより大きく作っていけるようになったし、小さなライブハウスでのライブはそれと逆でより小さい編成で作っていくことで僕というブランドを持ったライブの形ができたことも大きな成果だと思います。

――ご自身にとって転機となった曲をあげるとするなら?

イ・ジョク:まずは<パニック>のデビュー曲「カタツムリ」。この楽曲でみなさんに僕の世界を分かってもらえることができたと思います。そして、ソロの『よかった』ですね。この楽曲で僕に“ロマンチスト”というイメージができました(笑)。「アックジョンナルラリ(狎鴎亭の遊び人)」と「マラヌンデロ(言う通りに)」は、バラエティ番組『無限の挑戦』でユ・ジェソクさんと一緒に発表した楽曲で、若い世代に僕のスタイルを知ってもらえたきっかけにもなったと思います。最近では、『心配しないで、君よ』をあげたいですね。僕が書いた曲ではなく、違う人の曲でも僕の感性を伝えることができるということを気づかせてくれた曲です。

――本作の1曲目に収録されている「よかった」は韓国ではウエディングソングの定番になってますね。

イ・ジョク:そうですね。元々は個人的な目的で作った曲でしたので、アルバムに収録する予定ではなかったんですよ。ただ他の曲をレコーディングしていたスタジオで時間が余ったので興味本位で、少しだけレコーディングをして。曲という形にもなってないほどでしたが、それを聴いたキム・ドンリュルさんがとても気に入って、『必ずアルバムに入れるべきだ』と言うので、半信半疑で曲を完成させました。そして、結果的には、その曲が僕には一番大事な曲の一つになりましたね。

――ベスト盤には、イ・ジョク=“ロマンチック”というイメージを決定づけたバラードはもちろん、ロックやポップ、ブルース、ゴスペル、R&Bと様々なジャンルの曲が収められていますが、ご自身でイ・ジョクの王道といえばどの曲ですか?

イ・ジョク:あえて1曲を選ぶとしたら「空を駆ける」だと思います。僕が追求しているロックとブルース、ポップの要素が全ていいバランスで入っている音楽だと思います。とてもパワフルだけど、コードの進行は繊細だというか。

――ライブで一番もりがるアップテンポの楽曲ですよね。やはりバラードのイメージが強ので、この曲を選んだのは意外な感じがしました。また、ジョクさんは、ウエディングソングや雨の日の歌、応援ソングなど、そのシチュエーションで必ずかかるようなスタンダードナンバーとなっている曲も多いですよね。歌詞を書く上で、聴き手の日常に寄り添うことをイメージしていますか?

イ・ジョク:そうですね。あえて抽象的な歌詞を書く時もありますが、ほとんどの曲は具体的な物、もしくは風景からスタートします。隠喩をたくさん使うということも長く聴いてもらえるようになった理由かもしれません。ストレートすぎないから。僕はだいたいは先に曲を作って、それから歌詞をつけますが、曲が持っている雰囲気が映像のように目の前に浮かぶまで何回も繰り返し聴いて、それから一気に歌詞を書きますね。

――歌詞について言えば、基本的には“君”と“僕”、二人の関係性が描かれていますよね。「よかった」「喧嘩」「一緒に歩こうか」「君と」など、“君”に対する“僕”の愛情を感じる曲が多いですが、最後に「孤独の意味」を入れたのはどうでしてですか?

イ・ジョク:ありふれた話ではありますが、人間は誰もが孤独でしょう。40代になって感じた孤独は、人生の全体図を見ながらいつかは来るはずの最期を予感しながら感じる孤独ではないかと思います。人間という存在自体の有限性からくる無力感というか。しかしそれが悲しいことだけでもありませんけどね。また、ベスト盤の最後に収録した『孤独の意味』という曲は、誰かと一緒にいても相変わらず寂しくて、誰かを完璧に理解することなんて不可能なんじゃないかっていう疑問からスタートした曲なんですね。

――100パーセント分かり合えることはないという前提を受け入れた上で、他者に思いを馳せてますよね。そもそも最初から一人だったら孤独を知ることもないっていう。

イ・ジョク:そうですね。僕らは一人では生きていけない人間だからこそ、孤独を抱えたまま生きていかないといけない。この孤独というものの意味はなんなんだろうか。もしかしたら、その疑問こそが、僕が書いている全ての楽曲に通底しているテーマなのかもしれません。

――日本ベスト盤用にコンパイルした全15曲のマスタリングを終えて、全部を通して聴いた時にご自身ではどんなことを感じましたか?

イ・ジョク:それぞれ違う時に、違う感性で違うアルバムに収録した楽曲だったのに、結局、全て僕の中から出てきた曲だから全部ちゃんと繋がっているということが分かりました。僕の中にある“音楽性”というものが、時間が経った後に僕の曲を全部通して聴いてみたらまとまるだろうと、リスナーの立場で気づくことになりました。

――日本のリスナーにはどう聴いて欲しいですか?

イ・ジョク:できるだけリラックスして聴いてもらえるといいですね。歌詞の意味もブックレットを読みながら一度見てもらえたらと思います。

――そして、日本でのライブも決定しています。日本のファンにメッセージをお願いします。

イ・ジョク:東京と大阪でライブを開催します。たくさんの方から、僕の音楽はCDよりライブの方が好きと言われていますが、僕もそう思います(笑)。一生懸命準備しますのでたくさん来て頂いて、イ・ジョクの全てを満喫してほしいです。

――最後に今後の目標をお伺いできますか?

イ・ジョク:もっといい歌を作って歌うのが夢です。いつか僕が死んだ後も『そう、あの人はこんな歌を作った人だから意味のある人生だったよ』と言われるほどに、本当に美しい歌を作りたいです。そして、日本語の歌も必ず歌いたいです。日本の作詞家さんと力を合わせていい歌詞を書きたいですね。楽しみに待っていてください。

取材・文/永堀アツオ

■ライブ情報
「2018 LEE JUCK JAPAN BEST LIVE ~よかった~」

●東京公演
2018/6/2 (土) @恵比寿リキッドルーム
OPEN 17:00 / START 18:00
お問合せ:SOGO東京 03-3405-9999

●大阪公演
2018/6/4 (月) @梅田クラブクアトロ
OPEN 18:00 / START 19:00
お問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888

チケット料金:8,500 (税込)
一般発売:5月12日(土)~

【チケット先行販売】
受付期間:4/5(木)12:00~4/15(日)23:59 抽選先行
受付専用URL:https://l-tike.com/st1/lee-juck

■リリース情報
「イ・ジョク BEST SELECTION~よかった~」
2018年4月18日(水)発売
価格:¥3,000(本体)+税

<収録曲>
01.よかった
02.僕、言ったことないですか
03.洗濯
04.Before Sunrise(Duet With Jung In)
05.空を駆ける
06.喧嘩
07.あの頃はまだ分からなかった
08.歌
09.Rain
10.一緒に歩こうか
11.嘘嘘嘘
12.君と
13.結び目
14.二十年が経った後
15.孤独の意味

イ・ジョク日本オフシャルサイト:http://leejuck-official.jp

記者 : Kstyle編集部