キム・ソヒョン「大学生活は怖さ半分、ときめき半分」

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写真=E&T Story Entertainment

「キム・ソヒョンなら、その過程がどうであれ必ずよい女優、よい大人になるだろう」

2年前、キム・ソヒョンとのインタビューを整理しながら書いた文章だ。当時18歳だったキム・ソヒョンは「他人を大切にすることができる、温かい大人になりたい」と話していた。周りの人々を配慮し、彼らと調和する方法がわかり始めたと言いながら。

そして2年が過ぎた。20歳になってから初の作品であるKBS 2TV「ラジオロマンス」を終えたキム・ソヒョンに再会した。ドラマの中でラジオ作家のソン・グリム役を演じたキム・ソヒョンはデビュー後初めて、20代のキャラクターを演じた。Highlightのユン・ドゥジュン(チ・スホ役)とのロマンスも披露した。作品性を視聴率だけで評価することはできないが、視聴率は残念なものだった。ドラマの中後半から、2~3%台の低調な視聴率を記録していた。これにはキム・ソヒョンも残念さを感じていたという。しかしそれは、人気への欲のためではない。見えない場所で苦労していたスタッフに良い視聴率で応えられなかったことが申し訳なかったからだという。彼女は「ラジオロマンス」を撮影し、限界を認め、代わりにその中で最善を尽くす方法を学んだと話した。

20歳になり「過渡期」を経験したというキム・ソヒョン。おかげで、子役ではない成人の演技者として、或いは一つの作品を率いる主演女優としての責任を果たすことを、受け入れるようになったと語った。このようにして彼女は大人になってきている。



――20歳になって最初の作品である「ラジオロマンス」を終えた感想はいかがですか?

キム・ソヒョン:寒い冬に撮影が始まり、3ヶ月間共にとても苦労しました。皆、疲れているのにも関わらず最後まで笑顔を忘れませんでした。明るく美しいドラマで20歳をスタートできてよかったです。よい思い出として残ると思います。

――本格的なロマンス演技に挑戦した感想はいかがですか?

キム・ソヒョン:まだ足りない部分が多かったです。お互いの気持ちを確認する前の、微妙なときめきを演技で表現するのが大変でした。監督にもたくさん怒られました。相手を本当に好きだという雰囲気が上手く表現されなくて(笑)。ロマンスを上手く表現できなくて残念です。

――相手役を演じたHighlightのユン・ドゥジュンさんとの息はどうでしたか?

キム・ソヒョン:だんだん親しくなったおかげで、後半には恥ずかしいシーンも楽に笑いながら撮影できました。スホを演じるのは、すごく大変だったと思います。ポーカーフェイスを維持しながら、自身のコンプレックスを表現しなければならなかったからです。見守る私も「あれをどうやって表現するんだろう? 」と思いました。でも撮影が始まって、ドゥジュンさんの目を見ていたら心苦しい感じがして、本当のスホみたいでした。どうやって演技するのか深く考える必要もなく、ドゥジュンさんの目を見ているだけで、スホの感情が理解できました。本当に心が痛くて、抱きしめて慰めてあげたくなりました。そんな気持ちになったのは初めてです。ドゥジュンさんの演技は素晴らしいと思いました。配慮もたくさんしてくださったので撮影期間中はずっと感謝してました。

――実際に10歳の年の差がありますが、ジェネレーションギャップを感じたことはありますか?

キム・ソヒョン:年齢は関係ないということを感じました。一緒に出演したクァク・ドンヨンさんも、ユン・バクさんより10歳年下なのにお互いとても親しかったです。私もお兄さん達とすぐに親しくなりました。特に、ユン・バクさんは純粋で独特な方でした。ギャグのコードも独特だし、幼い私に合わせるのにユン・バクさんがもっと苦労したと思います(笑)。

――Girl's Dayのユラ(ジン・テリ役)がグリムとテリの仲良しシーンがなかったことを残念がっていましたが?

キム・ソヒョン:もともと二人は仲のいい設定だと聞いていました。ドラマの中盤で私がユラさんにファンだと言いながら「自撮りを撮ろう」と言うシーンがあったのですが、私はそのシーンを撮影しながら、グリムがテリのファンだったという事実を初めて知りました(笑)。少し戸惑いましたが、これから私たちのウーマンス(ウーマン+ロマンス)が始まるのではないかという思いで嬉しかったです。でも結局はあまりなくて、残念でした。ユラさんと久しぶりに会ったのに、怒ってビンタをするシーンしか撮影しませんでした。次に機会があれば、ウーマンスが出てくる作品に出演したいです。女優さんたちと息を合わせることのできる作品を待っています。

――ラジオ作家のソン・グリムを演じるためにどんな努力をしましたか?

キム・ソヒョン:ソン・グリムは明るくて肯定的な子です。前半では楽天的な性格のせいで、視聴者からグリムは考えの浅い子に見られるかもしれないと思いました。最大限、淡白に演技をする一方で、真心も込めようと努力しました。私自身、ラジオ作家という職業をあまり知らなくて、時間がもう少しあったなら、実際の作家さんの事務所に行って話をしたり、勉強もしていただろうけれど、それが出来なくて残念でした。現実的なラジオ作家の姿を完璧には込められていなかったと思います。それでも演じる瞬間だけはラジオ作家として一生懸命働こうという思いで演技をしました。

――普段好んで聞いているラジオ番組はありますか?

キム・ソヒョン:リアルタイムで毎日欠かさず聞いているものはありません。でも、癒されたい時には、KBSクールFM「愛するのに良い日 イ・クムヒです」を聞きます。

――ドラマの中で飲酒シーンがありましたが、お酒を飲む演技はデビューしてから初めてですよね?

キム・ソヒョン:はい。だからすごく不自然でした。私がお酒の瓶を持って爆弾酒(焼酎とビールなどを混ぜたもの)を飲むシーンがあったからです(笑)。恥ずかしかったけれど、ドラマの中のグリムは何年もお酒を飲んできた子だからと思いながら頑張って演技しました。お酒のグラスをトンと弾いて、他のグラスに入れる方法などはマネージャーさんに教えてもらいました。ハハ(笑)。お酒の瓶を回すのは、現場に手伝いに来られていたバーテンダーの方に学びました。新鮮な経験ができて面白かったです。

――実際にお酒を飲んだことはありますか?

キム・ソヒョン:1月に撮影がオフの日があったので、お母さんとビールを飲みました。1杯半くらい? を少しずつ飲んだんですが、大丈夫でした。まだ酒量がわかる位飲んだことはありません(笑)。

――20歳になって変わったことはありますか?

キム・ソヒョン:特にありません。周りから、20歳になっても同じだという話をたくさん言われていて、あまり期待していなかったのですが、それは本当でした。「ラジオロマンス」の撮影で忙しかったから余計そうだったと思います。

――漢陽(ハニャン)大学の演劇映画学科の新入生になりましたよね?

キム・ソヒョン:これからは授業を聞くために大学に通わなければいけません。私にとって学校はすごく不慣れな空間なので、すごく心配です。高校生の頃は、学校に通う代わりにホームスクーリングをしていました。でも学科の同期が良い人たちだから、学校生活も楽しめそうです。チームプレイとかグループワークに対する憧れがありました。カフェに集まって、ノートパソコンを開いて会議したりと(笑)。チーム別での課題はみんな大変だと言うけれど、それも経験してみたいです。

――恋愛に対する憧れや計画はありますか?

キム・ソヒョン:計画を立てたからといって現実になるかはわかりません(笑)。恋愛経験がないので「ラジオロマンス」の撮影で苦労したのだと思います。でも今は、早く彼氏と付き合ってみたいとは思いません。いつか自然と出来るのではないですかね?

――理想のタイプはありますか?

キム・ソヒョン:外見についてはありません。私のことをすごく好きになってもらいたいです。演技をしながら感じたのですが、私が好きになるより、相手が私を好きであることが重要だと思いました。あと私が、撮影現場の雰囲気など、周りにすごく影響を受ける方なので、正直で明るい人が私の隣にいて欲しいです。傲慢だったり気取ったりしない人が好きです。

――昨年MBC「仮面の王 イ・ソン」を終えた後“今が過渡期”だと言っていましたが、過渡期からは脱け出しましたか?

キム・ソヒョン:そうですね。完全に抜け出したと言うよりは、まだいつになってら過渡期が終わるのかを考えています。ただ「仮面の王 イ・ソン」を撮影する時が特に大変でした。演技する人物の感情が、だんだん重くなってくるので、それを対応するのが大変でした。ちゃんと演じきれなかったという思いがあったので、自分でも悔しくて腹が立っていました。20歳まであとちょっとの時期だったので余計辛かったのだと思います。そんな風に悩んでいる時に「ラジオロマンス」の撮影が始まったのですが、作品を準備している時もまだ憂鬱感から抜け出せずにいました。すごく怖かったです。「私がもう一度カメラの前で演技できるかな? 」と思う程でした。悪質なコメントや良くない評価をされるのも怖かったです。当時、私の側でずっと見守っていてくれた先生に言われたのが「あなたの力量というものがあるし、今のあなたが出来ることには限界がある。楽にしなさい」という言葉でした。それを聞いて「どんな風であれ、ぶつかってみよう」という気持ちで飛び込んだのが、今回の作品でした。グリムを集中して演じ、撮影現場の雰囲気がだんだんよくなっていく内に、自分の中にあった過渡期に対する不安感も自然と忘れられたのだと思います。辛いことは忘れて、前に進めるようにしてくれたという点で「ラジオロマンス」には感謝しています。

――これまでのフィルモグラフィーを振り返ってみるとどんな気持ちですか?

キム・ソヒョン:プロフィールに年度別で出演作が出てきますが、それを時々見ます。私が出演したにもかかわらず「こんな作品があったな」と思ったりもするし「成長したな」という感じも受けます。「もっと頑張らなきゃ」という気持ちにもなりますし……。そういえば、SBS「怪しい家政婦」で私の弟役を演じた(ナム)ダルムが「ラジオロマンス」でスホの子役を演じました。背も大きくなって、声も変わっていました。それをみたら不思議でしたね。人々が私を見る時の気分が、こんな感じだったのかなと思いました(笑)。

――2008年にデビューし、人生の半分を女優として生きてきたので出演作がまるで「キム・ソヒョンの成長ビデオ」という感じもしますね。

キム・ソヒョン:そうですね。ハハ(笑)。小さい頃に出演した作品を見ると恥ずかしいです。時々SNSにクリップ映像が上がって来ます。見てみると演技も下手だし「何であんな風にやっていたんだろう」と思います(笑)。休まずに、ずっと演技ができたことには感謝しています。やりたいからといって出来る訳ではありませんからね。私は作品をやる度に自分の演技力の足りなさを感じていました。演技をちゃんと学んだことがなかったからです。すべて現場で学びました。だから現場を離れると不安な位でした。私は運がよかったのだと思います。これまでの10年は、運で作られた時間でした。だから、これからの10年は私が努力して作っていかなければならない時間だと思っています。

――自分の成長過程をたくさんの人が見守っているという所から来るプレッシャーもあると思いますが?

キム・ソヒョン:意図していた訳ではないけれど、いつの間にか私に“模範的な人”というイメージが生まれました。そのイメージを必ず守らなければならないという強迫観念はないけれど、人々を失望させるのは心配です。だからいつも緊張して、行動により気をつけようと努力しています。

――出演作の中で“人生の作品”を選ぶなら?

キム・ソヒョン:KBS 2TV「恋するジェネレーション」ではないでしょうか? 初めて主演として出演した作品である上に、一人二役にも挑戦したからです。「恋するジェネレーション」で私を知った方も多いと思います。「恋するジェネレーション」を撮影した2015年に思春期を迎えました。その年に5作品くらい撮影したのですが、それをすごく感じました。20歳にだんだん近づきながら生まれる感情の変化についてです。混乱したし、大変でしたが、母との対話を通して克服しました。もともと、悩みを一人で抱えて詰め込む性格だけれど、一度吐露したら止まらなかったです(笑)。

――一般的には同世代の友人に悩みを打ち明ける人が多いと思いますが。

キム・ソヒョン:中学時代の友人とはたくさん対話をします。でも私は母が一番近くにいるので、もっと話します。同世代の女優キム・ユジョンやチン・ジヒ、キム・セロンとも親しいです。女優ではないけれど、Red Velvetのイェリとも親しくなりました。私があまり集まりに行く性格ではないけれど、20歳になったので外出も自由になったし、もっと会うようになると思います(笑)。

――“インドア派”ですか?

キム・ソヒョン:運動しに出たり、家族と一緒に出かけたりする以外は外出しません。家で一日中ウェブ漫画を見たり、映画を見ます。カラーリングブックのような家で出来るものはほとんどしたと思います(笑)。最近はミニチュアを作っているんですが、面白くて満足しています。これからも続けようと思っています。

――逸脱した経験はありませんか?

キム・ソヒョン:恐らくこれからの大学生活が一番大きな逸脱になると思います(笑)。家や撮影現場を離れて新しい空間で新たな人と出会う訳ですから。私を保護してくれる人なしに、一人でやっていかなければいけないので。怖さ半分トキメキ半分です。気の合う友人に出会えるか、期待しています。

――残りの20歳をどのように過ごしたいですか?

キム・ソヒョン:次期作はまだわかりませんが、大学生活を一生懸命過ごしたいです。「キム・ソヒョンは学校に来てない」なんて言われないようにです(笑)。あとは、急がずに行きたいです。私がお見せするものはたくさんあるけれど、人々が私を受け入れるのにも時間が必要だと思います。余裕を持ってゆっくりと、やりたいことは全部やってみようと思います。

記者 : ソン・イェジ、翻訳 : 浅野わかな