「リトル・フォレスト」キム・テリ“原作の日本の情緒を、韓国に合わせて表現した”

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「『リトル・フォレスト』ですか? 私みたいな人に必要な映画です(笑)」

女優キム・テリ、さすが忠武路(チュンムロ、韓国映画界の代名詞)の“怪物新人”らしい。映画「リトル・フォレスト」を通じて単独主演の可能性を証明することに成功した。劇中、ヘウォンという役に完璧に変身し、日本の人気原作という大きな山を越え、彼女だけの魅力が詰まった小さな森をスクリーンに盛り込んだ。「リトル・フォレスト」は1年間、韓国全国の各地を歩き回りながら4回のクランクインとクラックアップを経て完成した。長期間念を入れて撮影しただけに、キム・テリはこの作品を通じて一段階成長した。女優キム・テリはもちろん、人間キム・テリにとっても大事な養分になった。

「リトル・フォレスト」は試験、恋愛、就職など何一つ思い通りにいかないヘウォンがすべてを後回しにし、故郷に帰り、古くからの友人ジェハ(リュ・ジュンヨル)、ウンスク(チン・ギジュ)と特別な四季を過ごしながら、自身だけの生き方を探していくストーリーを描く。イム・スンレ監督がメガホンを取った。

――「お嬢さん」で華やかにスポットライトを浴びた後、初めて選択したシナリオが「リトル・フォレスト」でした。撮影期間がなんと1年もかかる作品であるにも関わらず、出演を決心した理由は何ですか?

キム・テリ:逆に1年間撮影するということに興味を感じました。ゆっくり進むというのが期待できました。作品の完成度が重要なのではなく、雰囲気自体がとても気に入りました。話したい物語でした。イム・スンレ監督が「リトル・フォレスト」にとても似合う方だったし、演出も期待できました。また、私を気に入っていました(笑)

――同名の原作が日本現地はもちろん、韓国でも大人気でした。映画「リトル・フォレスト」が原作のファンの心まで捉えることはできるでしょうか。

キム・テリ:原作は私もシナリオを見る前に読みました。韓国の情緒に合わせて表現すること、制作会社や監督、そして脚色する方が一番悩んだ部分です。そのため、より静かで淡々とした日本の情緒を、スピード感を持って表現しました。また原作のように自然に集中することもいいですが、韓国映画では人物に集中します。料理シーンもそこまで詳しく表現していませんが、ヘウォンの感情、状況を見せる媒体としてよく使われています。原作とは全く違う映画だと思って鑑賞してもいいかもしれません。全く違う感性があります。

――すでにJTBC「ヒョリの民宿」、tvN「ユン食堂」などテレビで“癒し”をテーマにしたコンテンツがたくさん使われています。そんな中でも「リトル・フォレスト」を必ず見るべき理由は何ですか?

キム・テリ:リアルはリアルであり、映画は映画ですから。コードが似ていると思うかもしれませんが、「リトル・フォレスト」は確かにストーリーが持つ力があります。観客の方々にとって気持ち良い映画になるはずです。この映画はファンタジーのように感じられる部分をリアルに表現しようとせず、代理満足(他人の行為を通じて間接的な満足感を得ること)を与えます。夢見ることができなかった、想像することができなかった休息を見せてくれます。

――他の作品とは異なり、4回のクランクインとクランクアップを行った感想は?

キム・テリ:とても特別でした。良かった点はたくさんあります。撮影終了後に別れ、また会うのを4回も繰り返してみたら、出演陣や制作陣とだんだん親しくなりました。距離が近づき、気楽になる感じがしました。季節によって変わる場所を見ることができるのもとても幸運でした。大変だった点は、次の撮影まで期間があるので演技について考えることが増えました。どうすればもっと良くなるのかなど色々考えました。

――複雑な頭の中とは異なり、スクリーンでキム・テリはヘウォンそのものでした。肩の力を抜き役に入り込んだのが感じられます。

キム・テリ:考え込まないのが一つの方法であることに気付きました。イム・スンレ監督がシナリオを見て悩む私に話してくれたアドバイスでした。多くのことを表現したくなっても、逆に減らす方が効果的だと教えてくれました。観客の役割を奪ってしまう可能性もあると。それで考え込む一方、全体的に重く見えないように調節しました。

――初めての単独主演であるだけに、悩みも多かったでしょう。

キム・テリ:一人で撮影するシーンは、全部大変でした。きちんとやれているのか、流れを感じることができませんでした。母親役のムン・ソリ先輩や劇中、親友たちであるリュ・ジュンヨル兄さん、チン・ギジュ姉さんなど、誰かと一緒に演技する時が良かったです。

――今回、初めて女性監督と息を合わせました。異なる部分はありましたか?

キム・テリ:これまでパク・チャヌク、チャン・ジュンファンなど映画界の巨匠監督の方々と撮影しましたが、性別を超え、世界を見る視界が広い方々です。イム・スンレ監督が女性だから違ったというよりは、ただイム・スンレ監督だから良かった点が多かったです。「リトル・フォレスト」が従来の映画と違う部分をあげるとすると、緩和し続けたことです。イム・スンレ監督と撮影しながら、誇張せず演じる方法を学びました。

――公開を控えた心境は?

キム・テリ:撮影の時は大変でしたが、終わってみるとこれほど楽しかった撮影現場はなかったと感じます。幸せだったという言葉が簡単に出てきます。各作品ごとに多くのストレスを感じながら撮影しているので、広報をしているこの瞬間が楽しく、胸がいっぱいです。このような自分を見ていると、私はやはり演技が一番好きなようです。

――ヘウォンのセリフ一つ一つが印象的でした。記憶に残る名台詞は?

キム・テリ:コモ(おば、父の姉や妹)はコモだ。イモ(おば、母の姉や妹)ではない(笑)

――ナレーションだけでも大きな響きを感じさせました。農法に例えて人生の教訓を伝え、より分かりやすかったです。

キム・テリ:特に、タマネギ定植のナレーションが「リトル・フォレスト」のメッセージをよく表してくれたようです。「冬を過ごしたタマネギは、春に植え付けるタマネギより数倍も甘くて固い」。それぞれの苦痛が失敗のように感じられても、その苦痛を乗り越えて立ち直った時、実は私を丈夫に作るというその意を正しく伝えてくれました。生きてきたすべての瞬間が同じでしょう。苦痛がないと、人生は上手くいかないようです。考えによって違いますが、このように考えたら満足することはできなくても、すべての瞬間が特別に感じられるでしょう。

――ヘウォンのように、キム・テリだけの森があるとすれば?

キム・テリ:ペットです。そして、私の家に招待してワインを一緒に飲める友人たちの存在、また時々山に登ることです。だからと言って何か解決されるわけではないですが、頭が冴えます。

――登山が好きな理由は?

キム・テリ:ヘウォンも料理することで認められたがるでしょう。私も山に登りながら、なんでそんなによく登るの? と満足感を感じます。面白い。頂上に行くとやりがいも感じて、そんなことが楽しいんです。

――「リトル・フォレスト」を見ると、自給自足リアルバラエティに出演しても上手くやれるように思います。バラエティ番組に出演したくはないですか?

キム・テリ:私がユーモアのある人ではないので、欲はありません。バラエティに出演するためには、ユーモアが必要でしょう。

――個人のSNSを開設しない理由は何ですか?

キム・テリ:SNSをすると、私は必ず没頭してしまうので開設しませんでした(笑)そんなに管理することはできなくても、何回もアクセスして確認するでしょう。そんな性格です。

――ヘウォンを演じながら、自身の大学生時代を思い出したりしたでしょう。

キム・テリ:私もヘウォンのように独立的な性格が強いです。大学時代、アルバイトをたくさんしました。カフェ、ハンバーガー店、コンビニなど。そのためコンビニのアルバイトのシーンでは、特に学ばず、私が一人でやりました(笑)教えてくれるスタッフより、私の方がより詳しかったんです。

――自身の記事のコメントをよく見る方ですか?

キム・テリ:できるだけ見ない方です。全国民の意見ではないでしょう。意見があってもコメントを書かない以上、その人の意見を聞くことはできません。私の心が揺れると、仕事に支障が出る可能性があるので避けています。

――実際の性格は?

キム・テリ:ネガティブな部分があるようです。何もやっていない時は不安を感じる性格だし、できないことに対して執着するタイプです。そのため「リトル・フォレスト」は私のような人にとって絶対に必要な映画です(笑)このような作品を見ることができて、個人的に嬉しいです。

――主演女優としてヒットに対するプレッシャーが大きいでしょう。

キム・テリ:主演だからなのか、プレッシャーは大きいです。映画がヒットしてほしい。また、この映画は従来の大作映画たちとカラーが違うでしょう。そのため「リトル・フォレスト」の成功が、より重要だと思うんです。韓国映画界の多様性を広げるためにも、成功してほしいです。今後も、このようなジャンルの映画がたくさん制作されてほしいと思います。昨今に必要な精神を盛り込んでいる作品です。「リトル・フォレスト」が成功すれば、ドラマ「ミスター・サンシャイン」に集中することができるでしょう(笑)

記者 : キム・ナラ、写真 : ハン・ヒョクスン