2AM スロン「ミュージカルは、僕の中になかったものを表現できるジャンル」

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写真=2AM スロン

“初めて”は、恐怖とワクワク、矛盾する2つの感情が交差する。また誰もが不慣れなものだ。時間が経った後振り返ってみると、愛おしさを伴った思い出に置き換えられる。2AM スロンも、怖いながらもワクワクしながら出発点に立った。これまで勇気を出せなかったミュージカルという分野に、デビュー後初めて手を差し出した。無謀な欲で下手に判断しない彼は、熟考の果てに初挑戦作に「マタハリ」を選択した。壮大なスケールに悲壮なオーラが漂う作品であり、それに加えてヒロインの感情を揺さぶる重大な役柄だ。いつのまにかデビュー10年目、辛さと楽しさが比例するということを知っているが故に、ただ怖いというだけではない。「もっと頑張らないと」というスロンの声には力が入っていた。

――デビュー後初のミュージカルで「マタハリ」を選択した。規模が大きい作品だと出演決定するまで容易じゃなかったはず。

スロン:まず大きな作品に参加させて頂き感謝している。だから頑張って練習した事すべてを見せようと努めた。最初の公演を終えたので、今後も良い姿をお見せしようと努めて行きたい。

――初公演のカーテンコールの際、涙ぐんでたように見えた。

スロン:グッと来た。2ヶ月間「マタハリ」に完全に集中し、公演が終わって拍手をもらったという事で…初めての公演だったから余計にそうだったのかも。前日もずっと集中して、考えていた事を思い出して感慨深かった。もっと上手くなりたい気持ちも大きくて。

――これまでドラマと映画での演技をしてきたが、ミュージカルはまた全然違ったジャンルだから、準備をたくさんするしかなかったでしょう。

スロン:まず表現する方法が違うから、見せなければならないという面でたくさん悩んだ。幸いな事に、一緒に演技する先輩たちがたくさん教えて下さった。

――世宗(セジョン) 文化会館の大劇場という威厳もある。大変だった点はなかったかな。

スロン:性格が陽気な方なのに誇張することができない。ちょっとの動きだけでは、大劇場では表現が分かりづらいから、大きな動作で表現しなければならないことが負担だった。

――アルマンはマタハリを愛し、またラドゥ大佐と対立する反抗的な人物だ。どんなキャラクターを作って、配役への感情移入はどれ程できた?

スロン:うーん…まず「愛か、仕事か」という単純な問いであれば、その中で悩むのは理解できる。キャラクターは反抗的な気質もあって、それを表現する点では気持ちよかった。キャラクターは最初から、演出の確固とした枠組みがあった。全体的な流れを読む演出の目を信頼しているので、その枠内で動こうと努めた。演出は今回、アルマンが初演の時よりも反抗的な男性らしさが見える事を望んでいた。だから笑っている雰囲気を取り除き、弱そうに見える部分を削った。例えば、マタハリと向かい合って歌を歌う場面は一つもない。お互いの目を見て歌うことさえ、甘い雰囲気に見えるかもしれないという理由からだ。2人が愛するのは、セリフや状況だけでも十分だ。

――多くの歌手がミュージカルの舞台に上がる。遅くなった理由とは?

スロン:実際にこれまで数回提案されたが、難しいと思った。時間が経つにつれて考えは変わり、歌も同様、練習をしているうちに補完されていく部分がある。長所と短所が確実になり、今だったら挑戦できるんじゃないかと思った。これまでは、僕に向いてないジャンルだと思った。

――音色と発声の悩みは、ミュージカルに挑戦しながら悩むことになったのか。

スロン:ハスキーな声でも大きな声でもないので、その悩みは実際に歌手として一生の宿題だ。ミュージカルのためではなく、数年前から悟った事がある。研究し実践していたら情熱も芽生えて来たし、ある程度表現できそうだなと思って「マタハリ」の出演も決めたのに、演出が「(役が) 男らしく変わったよ」と言われて慌てた(笑)

――2AMの曲と、さまざまなデュエット曲では、特有の美声が強みだった。ミュージカル、その中でも「マタハリ」のように悲壮なジャンルであれば、練習しながらもストレスになっただろう。

スロン:美声と濁声に分けるなら、美声の中でエネルギーを作るものであって、濁声で行くわけではない。生まれつきのものは変えられないから、美声の状態で補完できる適当な所で表現するよう練習して研究した。まず大きな劇場の舞台に上がるのだから、テンションを上げようと努力した。まだ多くの悩みがあるし、今でも整理して補完している過程だ。

――共演するチャ・ジヨン、オク・ジュヒョン、オム・ギジュンまで、ベテランから多くのことを学び刺激も受けるだろう。

スロン:チャ・ジヨン姉さんが色々と助けてくれた。本当に良い方だ(笑) 性格も僕と似ていて、たくさん話をした。実姉が出産を控えているのだが、姉に直筆の手紙とベビー用品まで買ってくれて感動した。

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――2ヶ月の練習期間中、逃げ出したかった瞬間はなかった?

スロン:決めた事に後悔したことはない。本会場で初のランスルーの時に、思っていたより結構舞台が大きくて、もっとエネルギーを使わなければならなかった。その時ちょっとメンタルが崩壊しそうになったが、何とかしようと心に決めて5日ほど分析した。大声を張り上げたからって、エネルギーが目に見えるものではないので、演技的に引き上げて吐き出さなければならなかった。

――どの部分に主眼を置いて舞台に上がったの?

スロン:声量よりも伝達力が重要だと思う。声においても、一番いいのは伝達力だ。演出ともそう話をして、声量はマイクがあるから大きくすることはできる。一方、伝達はまた別の問題だ。声の音波のことだが、共感を得る声と伝達力が良い音を研究しながら感じた。最も重要なのは、正確な表現と共感がなければならない。初めての公演の時は、緊張して僕も思わず大きく見せようとしていた部分もある。次回からはそんなことを補完するつもりだ。より良い舞台を見せることだけに集中している。

――生放送とも言えるミュージカルで演技力も伸びるね。

スロン:編集なしで2時間半の間ストーリーを導いていく。勉強にもなるし演技の面で役に立つ。ある人物の起承転結を一度に表現してみるのは今回が初めてだから、そのような部分において感情的に役に立ち、ドラマ、映画とは別の没入をする。

――やればやるほど簡単ではないジャンルというのも感じるだろうし。

スロン:本当に難しいけど、表現するのは面白い。僕の中にないことを吐き出して表現でき、歌も感情的に増幅させてみるので気持ちも清々しい。公演をしながら多くのことを悟る。表現する共感帯は同じだが、その中で様々な強弱の調節をすることができる。

――2008年にデビューして今年で10年目になった。自らを振り返ってみてどんな気持ち?

スロン:大変だったし楽しみもあった。同じ年台の人々より、もっと多くの事を体験することができて感謝している。人生というのは、大変な部分もあるが、また楽しいとも思うでしょう(笑) 責任感が大きくなるほど、また性格上そんな事を受け入れて、仕事も楽しむ。楽しく生きようとする。

――初めてのミュージカル挑戦に、久しぶりにニューアルバムも出した。

スロン:「マタハリ」の出演決定前から、長い間準備をしていたアルバムで、タイトル曲「YOU」は、心地よい曲だが、壮大なサウンドが滲み出る曲だ。Beenzinoがフィーチャリングに参加してくれた。アルバムを通じて音楽で少しずつ発展させていっている。収録曲「That's Right」は、過去の経験に基づいて歌詞を書いた。好きな女性が彼氏と別れて慰めてあげるそんな内容…(笑) 作業している曲は、ほとんど経験から出てくる。

――2017年は、ニューアルバムと「マタハリ」に集中する計画なの?

スロン:アルバムとミュージカル、2つが大きな課題だ。両方とも成功させるには大変だから、全力を尽くす。

記者 : キム・ハジン、写真 : イ・スンヒョン