「再審」カン・ハヌル“パク・ボゴムと美談ツートップ?僕は優しい人ではない”

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優しく礼儀正しく、さらに演技まで上手だ。美談が続く。共演した俳優たちやスタッフが口を揃えて絶賛を惜しまない。俳優カン・ハヌルのことだ。

しかし、カン・ハヌルは「優しくない。電話に出たくない時は時々出なかったりする」と否定した。「パク・ボゴムと共に、芸能界の美談ツートップではないか」という記者の冗談には「ボゴムさんは本当に優しい人だが、僕は優しい人ではない」と繰り返し強調した。

「僕が偽善で人に接しているなら、『優しい』のイメージがプレッシャーで辛いかもしれません。しかし、僕は本当に気楽に生きています。わざわざストレスを受けてまで偽善を見せる必要はありませんね。僕は優しい人ではなく、運が良い人です。言葉だけの話ではなく、周りの人が全部優しいです。良い人しかいないと信じています」

共に働く人が幸せに働けるようにするのが俳優としての生活の目標であるというカン・ハヌル。映画「再審」(監督:キム・テユン、制作:IDIOPLAN) は、自身の哲学を改めて確認したきっかけとなった。10年の歳月を罪もなく刑務所で過ごしたヒョヌ役を演じたカン・ハヌルは、常に悲痛な情緒を忘れない必要があった。その時、カン・ハヌルの安らぎとなったのは笑いが絶えない現場だった。

「再審」はヤクチョン五叉路で発生したタクシー運転手殺人事件を映画化した作品だ。カン・ハヌルが目撃者から殺人犯となって10年間刑務所で過ごしたヒョヌ役を、チョンウがそんなヒョヌを信じて弁論する弁護士のジュニョン役を演じた。映画「セシボン」、tvNバラエティ番組「花より青春」アイスランド編以降、3度目の共演となった二人は現場で目だけ見ても分かるような息ぴったりの共演を見せた。

「『再審』で僕がチョンウ兄さんが好きになったきっかけを改めて感じることができました。僕は映画『願い』を何回も見たほど、チョンウ兄さんのファンでした。『花より青春』でアイスランドに行って、ぐんと仲良くなってファンとしての心は少し薄まったんですけど、『再審』で改めて気付きました。チョンウ兄さんは一見気楽な生活感溢れる演技をしますよね。しかし、それは悩みと計算を積み重ねた上で出て来るものなんです。なのでさらにカッコよく、すごいと思います」

カン・ハヌルは撮影の中盤、事件の実際の主人公であるチェさんと会った。無念だった10年の歳月を、自身は一日も生きていないので下手に事件について話すことができなかったという。

「第一印象は純朴なお父さんのような感じでした。体型も頼もしく家族とも良く笑って楽しむような、見ているだけで気分がほっこりする感じでした。僕は一日もあの方の人生を生きたことがないので、勝手に『映画、頑張って撮ります』などとは言えませんでした。無意識にでもその事件について話すのはあの方にとっては深い痛みであるかもしれませんので」

カン・ハヌルが実在した人物を演じたのは今回が初めてではない。イ・ジュンイク監督の映画「空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~」で、詩人ユン・ドンジュ役を演じ、熾烈で厳しい演技に対する悩みを経験した。そのおかげで演技の流れは繊細になり、スペクトルも広くなった。

「『再審』より『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』がずっと大変でした。『再審』は基本的に、僕が実際のチェさんを真似したわけではなく、まず、登場人物の名前も実際とは異なっています。しかし、『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』は劇中の名前もユン・ドンジュのままで、僕の演技が誰かにとっては詩人ユン・ドンジュそのものになる可能性があるので怖かったです。『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』を撮影していた頃は、あまりにも大変で睡眠薬を飲んでようやく眠れるほどでした。すべてのシーンが僕の人生で消すことのできない動きなのに、その動きが合っているか分からず、不確実な俳優の人生に耐えられるような器ではないのかと思ったりしました。演技に対する悩みがどんどん固まって、『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』で爆発しました」

「空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~」という厳しかった宿題を終えると、残ったのは「今を生きよう」という価値ある悟りだったという。過去という嘘、未来という幻ではなく、自身の力が届く「今」に充実しようということ。おかげで幸せな今、幸せな今日を生きているとか。

「今に集中していると、良い未来、良い過去が作られると思います。自分自身が与える意味以外は、何の意味も存在しません。イ・ジュンイク監督が『創作活動をしている人たちが観客に何かを感じてほしいと思う瞬間、それだけで暴力になる』と話していましたが、その通りです。『再審』も僕がしたい話よりは観客の皆さん、それぞれが感じる意味、鑑賞のほうが合っていると思います」

記者 : キム・スジョン、写真 : ムン・スジ