チョ・ジョンソクが“演技の化身”になるまで

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写真提供=CJエンターテインメント
彼は遊び心あふれる表情をしていた。色白であることを褒めると「20代の時に会っていたら驚いたはず」と冗談半分に答え、アドリブの話には「台本に忠実な俳優」だと残念そうな表情を見せた。千の顔を持つ俳優チョ・ジョンソクだ。

近頃この男の株価がただならぬ雰囲気だ。熱く燃え上がる嫉妬でお茶の間の女心を掴んでは放していたチョ・ジョンソクが、お茶の間に続いて忠武路(チュンムロ:韓国映画界)でも存在感を見せだした。11月23日に前夜公開した映画「あの日、兄貴が灯した光」(監督:クォン・スギョン)は、詐欺前科10犯の兄コ・ドゥシク(チョ・ジョンソク)と元柔道選手の弟コ・ドゥヨン(EXO ディオ)が15年ぶりに再会し、居心地の悪い同居の中で起きるハプニングを描いたヒューマンコメディーで、チョ・ジョンソク特有のコミカルな演技と心のこもった涙の演技が際立つ。

「あの日、兄貴が灯した光」のコ・ドゥシクはチョ・ジョンソクをスターダムへとのし上げた映画「建築学概論」のナプトゥクを連想させる。特有のとぼけた味わいがあるチョ・ジョンソクは、作品に出演するたびにナプトゥクに関する質問を受けている。

「何をしてもナプトゥクみたいだと言われても、何も言えません。(キャラクターが)重なるんじゃないかと考えて、良い作品を避けたくはないのです。それは俳優チョ・ジョンソクの良い所だと思います。それが好きな観客も絶対にいるし、自分の良い所を見せるのは当然のことなのです。その良い所を発揮せず見せないのは、観客や期待してくださる方々に対する裏切りじゃないかと思います」

ナプトゥクを切り離そうとはしないが、いつも新鮮で多様な姿を見せたいと思う彼だ。彼は「一つのイメージで構築された俳優になりたくない。断続して他のジャンルや役柄に挑戦しながら、『この人こんなキャラクターもやるんだな』という印象を与えたい」と明かし、「ノワール映画に一度も出たことがないからやってみたい。『嫉妬の化身』で激情メロを期待する方々もいた」と話した。

写真提供=CJエンターテインメント
「俳優ならいつもギャップを持っていないといけないと思います。“千変万化”という言葉があるように、ある俳優から感じられなかった姿を発見した時、喜びを感じるじゃないですか。僕自身も自分にない姿を発見すると本当に楽しくなります」

そんな意味で彼が演じたSBS「嫉妬の化身」でのイ・ファシンは、チョ・ジョンソクの多彩な魅力を垣間見ることができたキャラクターだった。チョ・ジョンソクは気高くひ弱で、コミカルでカリスマ性もあり、ちっぽけな性格までもあったイ・ファシンの姿を全て描き出し、“演技の化身”と呼ばれた。

「イ・ファシンは演技として、やることの多いキャラクターでした。俳優として本当に良いキャラクターに出会ったんじゃないかと思います。そんな魅力的なキャラクターに出会えたことは幸せです。称賛は全部コン・ヒョジンのお陰です。彼女は立派な役者なので、僕がそんな称賛してもらえたんじゃないかと思います。2人で会話もたくさん交わしながら、どうしたら良いシーンを作れるかとたくさん悩みました。色んな好評を見て、ご褒美をもらった気分になりました」

「キング ~Two Hearts」のイ・ユンジ、「最高だ、イ・スンシン」のIU(アイユー)、「ああ、私の幽霊さま」のパク・ボヨン、「嫉妬の化身」のコン・ヒョジンなど、相手役と特別な化学反応を起こしてきたチョ・ジョンソクは、実際に演技をするときに最も重要な点として相手との呼吸だと語る。

「アンサンブルが重要だと思っています。アンサンブルが良い時、役者もキャラクターも作品も輝きます。僕は、相手役と演技の対決をするとは考えていません。勝ち負けの問題じゃないんです。シーンを撮る時、空気からして良い呼吸を作って行こうという考えで臨みます。そうしてこそ僕のキャラクター、チョ・ジョンソクという俳優、相手の役者が輝くからです」

記者 : チョ・ヒョンジュ