ハ・ジョンウ「食べるシーンを求められる悩み?最初はかなり心配していた」

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今やハ・ジョンウは韓国映画界において欠かせない存在になった。いつも相手役の俳優や監督にたっぷりとインスピレーションを与える彼は、存在だけで一つのジャンルであり、ブランドである。映画「トンネル」(監督:キム・ソンフン)はハ・ジョンウという俳優、さらに自然体の彼が持つ魅力に多くを頼っている作品だ。前作「最後まで行く」でジャンルをねじる実力を見せたキム・ソンフン監督は、新作「トンネル」でパニック映画にブラックコメディのDNAを加え、新しい風が吹く映画を誕生させた。その結果、観客動員数700万人を突破しながらロングランしている。そして、その中心には図々しくて達弁で愉快な、どんな状況でもユーモアを忘れないハ・ジョンウがいる。

映画「トンネル」は崩れたトンネルの中で孤立した男ジョンスと、彼の救助を巡って変わっていくトンネルの外の物語を描く。危機にさらされているのに全力で腹を立てるハ・ジョンウの姿がアイロニカルな面白さを与える。キム・ソンフン監督特有のユーモアセンスとハ・ジョンウの愉快な魅力が調和したおかけで、ユーモアの打率も高かった。最初からハ・ジョンウを主人公に考えて企画した映画ではないかと思えるほど、この映画でジョンスとハ・ジョンウは完全に重なり、映画の面白さを最大化する。

「トンネル」はハ・ジョンウが一人で引っ張っていく割合が相当高い。「テロ,ライブ」(監督:キム・ピョンウ)でもラジオスタジオという限られた空間でストーリーを導いていったことはあるが、「トンネル」の空間はそれよりも狭く、暗い。出演シーンの大半が暗いクローズアップショットだったが、疲労感が小さかったのは、ハ・ジョンウが見せる多彩な表情や彼がもともと持っている魅力のおかげだ。美術と小道具に力を入れたハ・ジョンウとキム・ソンフン監督の細やかなこだわりも光を放った。たとえば、早起きサッカーに向かうかばんの中にどんな小道具が入っているかによって、ジョンス、そして映画の運命が変わることを、二人は本能的に感じたという。

―「トンネル」では一人でストーリーを導いていく割合が高かった。プレッシャーはなかったか。

ハ・ジョンウ:むしろ「テロ,ライブ」のほうが、ひたすらスタジオ内での物語だけを描いたので、もっとプレッシャーが大きかった。「トンネル」はトンネルの外で(オ)ダルス兄さんと(ぺ)ドゥナがバランスを取ってくれるから、あまり心配しなかった。トンネルの外の状況が感情的に大変な状況なので、トンネルの中では皮肉な状況を作ってあげなきゃと思った。

―リアクションをしてくれる相手がいなかった。

ハ・ジョンウ:だから美術セッティングと小道具に非常にこだわった。たとえば、早起きサッカーのかばんの中身によって、演技が変わるじゃないか。ウォッシャー液はどうかと僕が提案した。テンイに会うまでは、車の中の空間に適応する過程に焦点を合わせた。できるだけ周辺の環境や小道具を活用しようと思った。

―トンネル外の状況は大変なのに、トンネルの中にいるジョンスの態度には軽快ささえあった。

ハ・ジョンウ:状況や態度は余裕があるが、見た目では苦しい環境を見せようと努力した。映画ではあまりはっきり映ってないから悔しいけれど、栄養士が作ってくれたプログラム通り体系的に体重を減量した。そもそもジョンスがひたすら苦しむキャラクターだったら、おそらく「トンネル」に出演しなかったと思う。パニック映画は流れるように伏線が登場し、事件が起き、主人公が苦痛にさらされながらエンディングに向かうものだが、「トンネル」は開始5分でトンネルが崩れる。残り1時間50分をどうやって率いるかの勝負だった。その中の様々なポイントを喜怒哀楽などの様々なタッチで表現することがカギだった。

―イ・ジョンスは一体どんな人だったため、極限の状況でも希望を持ち続けられたのだろうか。

ハ・ジョンウ:編集でカットされたシーンがある。もともとはガソリンスタンドに行く前にバースデーケーキを買うため、パン屋さんに寄る。そのシーンで人生に対するジョンスの普段の態度が分かる台詞が出た。そのシーンのほかにも、レンタカー業者との対話やガソリンスタンドのお年寄りに対する態度を通じて、ジョンスのポジティブな面が十分伝わると思う。

―オ・ダルスとは「暗殺」に続き、二度目の共演だ。

ハ・ジョンウ:「暗殺」では最初から最後まで一緒だったけど、「トンネル」では主に電話でコミュニケーションした。後半でジョンスがテギョンの耳にささやくじゃないか。実際はダルス兄さんを笑わせるために変なセリフを言った。「私が朝鮮の国母だ」「食事はちゃんとしてるのか」と言ったけど、兄さんは笑わなかった。(座中爆笑)

―モッパン(食べるシーン)の話をしなきゃ。今回はドッグフードまで食べた。

ハ・ジョンウ:ドッグフードは本当にこってりしていた。塩や調味料がまったく入ってなかった。小麦粉を固めた味だ。ダイエット用のカロリーバランス、それがドッグフードより10倍ほど甘いと思ってもらえばいい。

―出演する作品ごとモッパンが話題になっている。“ハ・ジョンウ=モッパン”という認識があるため、俳優として悩んだこともあると思う。

ハ・ジョンウ:最初は僕もかなり心配した。真面目でシリアスな雰囲気の映画なのに、僕のモッパンシーンがネット上のユーモア掲示板に出回るから。一部の観客には僕のモッパンが映画に入り込む妨げになるかも知れないと思った。「テロ,ライブ」の時は水を飲むことも注目されるから、これままでいいのかと考えた。「お嬢さん」に出演した時はパク・チャヌク監督に桃を食べるシーンがあるが大丈夫かと聞かれた。内容的に不要な、作品を濁らせるモッパンなら僕も悩むが、桃を食べるシーンは「お嬢さん」に必要なシーンだった。

―本当に美味しそうに食べる(笑) そのために工夫はしてるのか?

ハ・ジョンウ:特に工夫はしてないが、しばらく前に自分のモッパンの違いが分かった。普通は監督にOKと言われると、食べていたものを吐くけど、僕は本当に食べる。最初から吐こうと思う演技と、「本当に食べよう」と思う演技は、その気配から違うと思う。「悪いやつら」の時は、美術チームに冷めたのは絶対食べないから熱々の中華冷菜と酢豚を用意してほしいと言った。「哀しき獣」の時も、美術チームが撮影現場の隣でジャガイモを蒸していた。それは演技じゃなかった。本当に熱かったからそんな風に食べたのだ。


―現在撮影している「神と共に」(監督:キム・ヨンファ)にもモッパンは登場するのか?

ハ・ジョンウ:ユッケジャン(牛肉と野菜の辛いスープ)が登場する。これも本当に笑っちゃたな……(笑) 葬儀場でユッケジャンを食べるシーンがあるが、演出部から電話があって「おかずは何にしましょうか?」と聞いてきた。(座中爆笑) どうしてそれを僕に聞く。ハハハ。でも僕は答えてやった。「切干大根と牛肉の煮物の薄切りを用意してください」と(笑)

―今や監督たちはハ・ジョンウをキャスティングする時からモッパンを考えているみたいだ。「トンネル」もそうだし。

ハ・ジョンウ:ナ・ホンジン、ユン・ジョンビン、僕と仕事をしたすべての監督が全員気にしていた。「哀しき獣」の時は民宿のシーンがあるけど、ナ・ホンジン監督がどんなものを食べるか前もって言ってくれなかった。「中に入れば大根がある」とだけ言ってくれたが、入ったら大根キムチがあった。ハハハ。食べながら笑ってしまった。「群盗」の時は鶏の煮物、豚の煮物、長ネギがあったけど、僕は長ネギを選んだ。


―キム・ソンフン監督が特に格別な理由は?

ハ・ジョンウ:人間的な魅力に惹かれたと思う。キム・ソンフン監督のデビュー作「愛情の欠乏が二人の男に及ぼす影響」とその次の「最後まで行く」の間に7年間の空白期間があった。キム監督にその時期をどうやって過ごしたのかを聞いたけど、尊敬心さえ芽生えた。どんな人生を生き、どんな悟りがあれば「最後まで行く」のような作品が作れるのか気になったからだ。軽々しくなるのではなかった。自然に「トンネル」のヒットに役に立ちたいと思うようになった。俳優が上手に演技をし、自身の役に真面目に臨むのは当たり前のことで、それ以外に自分にできることには最善を尽くしたかった。

―クランクインの時とクランクアップの時のキム・ソンフン監督の顔を覚えているか?

ハ・ジョンウ:クランクインの日は僕の登場するシーンがなかったのでメールを送った。「雨が降って撮影が中止になり、スタッフの信頼を失ってください」から始まる、初日に起きる可能性のある事件、事故を並べた。監督の経験があるから僕も分かるけど、クランクインの日が一番怖いからだ。何も見えないし、みんなに無視されるような気がする。ジョークで緊張をほぐしてあげたかった。最後の日の前日には監督と電話で話したけど「トンネル」の瞬間が目の前を過ぎていった。撮影が早めに終わって残念だと恥ずかしがりながら話す監督の言葉から気持ちが伝わってきた。映画という作業自体を愛する気持ちが感じられた。

記者 : キム・スジョン、写真 : ムン・スジ