「新感染 ファイナルエクスプレス」ヨン・サンホ監督“おばあさんたちがゾンビを語る…そんな光景が見たかった”

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「新感染 ファイナルエクスプレス」の成功を予見した人は多くなかった。参入障壁の高いゾンビという題材をアニメーション出身の監督が実写映画で作ったため、期待以上に懸念が大きいのは当然のことだった。

しかしヨン・サンホ監督はこのような懸念を杞憂に変えながら、韓国の2016年上半期の劇場街を「新感染 ファイナルエクスプレス」シンドロームで盛り上げた。カンヌ国際映画祭で殺到した好評は序章に過ぎなかった。連日のように興行記録を更新し、今年初の観客動員数1000万人突破作という有意義な成果を収めた。

「新感染 ファイナルエクスプレス」の成功が何より有意義なのは、韓国の商業映画ジャンルを広げたからだ。警察、サイコパス、組織暴力団が乱舞する忠武路(チュンムロ:韓国の映画界)に不意にゾンビを登場させたヨン・サンホ監督に「新感染 ファイナルエクスプレス」に関する話を聞いた。

―「新感染 ファイナルエクスプレス」はアニメ「ソウル・ステーション/パンデミック」から出発した映画だ。

ヨン・サンホ:最初はNEW映画部門のチャン・ギョンイク代表から「ソウル・ステーション/パンデミック」を実写映画として作ってみたらどうかと提案されたが、同じ話を2度作るのは意味がないと思った。「ソウル・ステーション/パンデミック」の後のストーリーを描くのはどうかと思って始めたのが「新感染 ファイナルエクスプレス」だ。

―初めての実写映画だ。アニメーションではキャラクターの演技を直接デザインしたが、生きている俳優の演技をディレクションするのは難しくなかったか。

ヨン・サンホ:アニメーションを制作する時も、役者たちの声を先にレコーディングしてから作画作業に入った。そのため、俳優たちの習慣、演技をそのままアニメーションに溶かし込んだ。そのおかげか、実写映画だからと言って特別に難しくはなかった。

―ゾンビという見慣れない題材に比べ、キャラクターはやや典型的だ。

ヨン・サンホ:ゾンビが蔓延る列車という設定自体、あまりにも特殊じゃないか。その特殊な状況に特殊なキャラクターが登場するのは映画的にそれほど魅力的ではないと思った。特殊な状況に非常に普遍的な人物が入り込むストーリーが「新感染 ファイナルエクスプレス」の映画的な緊急事態をさらに際立たせてくれると思った。

―その中でも主人公ソグ(コン・ユ)の職業をファンドマネージャーと設定した理由は何か。

ヨン・サンホ:最初は漠然と会社員にしていた。成長中心の社会に最も似合う職業は何なのかと悩んだ。ファンドマネージャーは期待心理を財貨に変える職業じゃないか。物質社会の最も先にいる職業であるという点からファンドマネージャーに設定した。

―緊急事態に情報に接近しやすい職業だという点からも卓越した設定だった。

ヨン・サンホ:そうだ。主人公が持っている力を無力化するのが重要だった。ソグは他人より情報を多く知っているが、結局その情報は要らないものになる。その際にソグが感じる慌ただしさがこの映画の大事なポイントだった。これはゾンビ映画の常套句でもある。重要だと思っていたものがゾンビによる緊急事態では無力化するのだ。

―新派悲劇だという指摘はある程度予想したと思うが。

ヨン・サンホ:全員死んだほうが良かったのではないかという人もいた(笑) 「新感染 ファイナルエクスプレス」は生涯初のゾンビ映画である観客のために作った映画だ。「ドーン・オブ・ザ・デッド」や「ウォーキング・デッド」などを観たことのある、ゾンビマニアのための映画ではないという話だ。ゾンビをよく知らない観客が気楽に映画を楽しめるポイントは感情のシーンだった。一番早い時間帯に「新感染 ファイナルエクスプレス」を観に来たおばあさん2人が「あの子がゾンビに噛まれたの?」「まだ噛まれてないの?」と話しているのを見た。僕がこの映画を通じて見たかった光景の一つだ。

―どうしてそのような光景を望んでいたのか。

ヨン・サンホ:ゾンビは大衆的な題材ではないじゃないか。ゾンビジャンル自体を大衆的に広げる必要があると感じた。「新感染 ファイナルエクスプレス」のような変奏は変奏でもない。ハリウッドではゾンビが恋愛(映画「ウォーム・ボディーズ」)までするんだから(笑)

―ゾンビジャンルを広げる必要性はどこから感じたのか。

ヨン・サンホ:以前は韓国ではスリラー映画を作ってはいけないという認識が強かった。コメディやラブストーリーが中心だった時代があったのだ。だた「殺人の追憶」のように完成度の高いスリラーが登場し、ある瞬間スリラーが普遍的なジャンルになった。商業映画を準備する若手がシナリオを選ぶ幅が非常に狭い。警察、組織暴力団、サイコパス、スリラーに限られている。絶対ヒットできなさそうな、成功しがたい題材でヒットするところを見せないと。

―次回作でも新しいジャンルに対する挑戦が続くだろうか。

ヨン・サンホ:おそらく。「新感染 ファイナルエクスプレス」のようなアクション映画ではないと思う。ブラックコメディやラブストーリーのように、韓国ではあまりヒットしないジャンルにチャレンジするつもりだ。

―「豚の王」「サイビ」のファンの「ヨン・サンホが変わった」と残念がる声についてはどう思うのか。

ヨン・サンホ:ハハハ。カンヌ国際映画祭で好評を受けた後、韓国に帰ってヨン・サンホ回顧展を開いた。僕はすごく期待していた。しかし観客はたった8人。(一同爆笑) なのにヨン・サンホが変わっただなんて! 「ソウル・ステーション/パンデミック」の公開の時にファンの団結力を楽しみにしてみたい(笑)

―ハリウッドからのラブコールも熱い。

ヨン・サンホ:まず「新感染 ファイナルエクスプレス」のリメークは引き続き議論中だ。ハリウッド進出については、この前メジャースタジオの本社の人がいらっしゃって、お会いした。具体的な話をするのは曖昧な段階だ。

記者 : キム・スジョン、写真 : キム・ジェチャン