イム・ジュファン、ドラマ「ああ、私の幽霊さま」を語る

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※この記事にはドラマのストーリーに関する内容が含まれています。
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近年韓国では、幽霊&ラブコメブーム。そして新たに日本に上陸した“憑依”ラブコメディ「ああ、私の幽霊さま」。“幽霊”に憑依されるというあり得ない状況から始まる恋の行方を、コメディ&ハートフルに描いた本作品は、現在DVD SET1&2ともに好評発売中だ。

これを記念して、パク・ボヨン演じるヒロインを見守る警察官を演じたイム・ジュファンのインタビューが到着! 二面性のあるキャラクターを演じた感想から共演者との話、そして出演者ならではのエピソードなど、たっぷり語ってもらった。

―「ああ、私の幽霊さま」に出演していかがでしたか?

イム・ジュファン:出演することになったこと自体が幸運でした。どう表現したらいいかわからないのですが、その一言しか思い浮かびません。私が出演したこのドラマを見て、俳優の友人や知人たちからとても羨ましがられました。「撮影現場の雰囲気がとてもいい」「監督は演出がうまいなあ」「カメラ監督のアングルがとてもいい」「共演俳優たちも演技がうまい」「現場の雰囲気がとてもいいんじゃない?」みたいな声をたくさん聞きました。友達の俳優たちが視聴者の立場から見た時にそう感じるくらいですから、私が撮影現場で演じている時は本当に幸せでした。この作品に参加できたこと自体がとても幸運だったと思っています。

―演じたチェ・ソンジェについて紹介してください。

イム・ジュファン:ソヌの義理の弟で警察官ですが、実は主人公に憑依する女性を殺した殺人犯という役柄です。彼は人間の基本的な善の部分と悪の部分の両方を持っている人だと思います。悪い霊に憑依されることもあり、そのせいで悪い行動をしてしまうこともありますが、その行動自体は人間の本質的な反応であるとも思いました。ドラマのシーンの中でこのようなシーンがありました。犬がほえているという知らせを受けて、主人に犬を黙らせるように現場に出動してみると、犬はずっとほえているが、犬の主人は見当たりません。そして次のシーンでは犬があまりにほえるので、殴られてキャンキャンと悲鳴をあげているところがあります。どんな人であっても犬がうるさくほえれば、静かにしろと小突いてみたくなるじゃないですか。それが素直な反応だと思うんですね。それが過激になって悪行(犯罪) になってしまうだけで、基本的にはすべての人が、犬がうるさくほえれば、そんなふうに考えるのではないかと思いました。もちろん、ドラマですからより過激に悪く表現しなければいけないこともありますけれど……。そしてその一方で人々に接する時には笑って善良に振るまい、物事を良く捉えて肯定的に反応します。それも見方を変えれば、すべての人々の持っている基本的な良い部分だと思ったんですね。このように彼も普通の人のように両面性を持っている人物ではないかと考えました。

―初めは正体を隠していて、後で正体がばれてからの目つきが、ぞっとするほど残忍なものでしたね。

イム・ジュファン:そのように楽しんで見ていただいてありがたいのですが、こう言うとがっかりされるかもしれませんね。実は、あれはとてもシンプルにやったんです。あれこれ悩むことなくシンプルに表現をしようと考えました。ドラマを見ている方の好奇心を刺激することは必要でしたが、私がすべて演技をして見せてしまうと、つまらないと思いました。それは監督や脚本家の先生も同じでした。俳優がこうすれば恐いだろうと思って演じてみせるのではなく、ドラマを見ている方々が恐さを感じるようにすることが、私の目標であり作家や監督の意図したことでした。

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―役を演じるために特に準備したことはありますか?

イム・ジュファン:演じるために特に準備したようなこともありませんでした。とてもシンプルでしたね。撮影現場に行く時もセリフがあればセリフだけを覚えて、状況についてはほとんど考えなかったです。監督から「このように演じて」と言われれば、そのようにすぐにやり直しました。

―卓越した演技力の持ち主ですね。

イム・ジュファン:さきほどただシンプルに演じたと言いましたが、それに対するプレッシャーもありましたよ。なぜなら不安じゃないですか。シンプルに演じていることが、ドラマを見ている方の好奇心を刺激するような結果につながらなければ、すべてのことが水の泡になるのですから、不安な気持ちは大きかったですね。でも、監督が私を信頼してそういう演技をやらせてくれたので、私も監督を信じてついて行きましたね。

―二面性を描く演技でしたが、いかがだったんですか?

イム・ジュファン:全く難しいとは思いませんでした。その部分もシンプルに演じました。なぜならやたらと悪い人相をするとか歯を噛みしめるとか、そういった必要はなく、ただ何の感情も持たずに見つめれば冷たい感じになるものです。感情がないということ自体が冷たいということですからね。だから、人を害する時、何の感情も持たないということが最も恐ろしいことだし、恐怖を感じさせると考えたんですね。

―モニターを見た時のご自分の演技に対しての満足度はどのくらいですか?

イム・ジュファン:自分のことを評価するなんて、私はまだまだヒヨッコですから……。多くの方々が良いと言ってくださるから、うまくやれたんだなと思っています。まあまあ合格点だったのかなと思いました。

―パク・ボヨンさんチョ・ジョンソクさんらと共演してみていかがでしたか?

イム・ジュファン:多くの才能を持った俳優だと思いましたね。このドラマには恋愛のシーンやコミカルなシーン、そして音楽的な部分では、楽器を演奏するシーンなど、様々なシーンが登場します。2人ともそれらのシーンを何の遜色もなく、そつなくこなし、演技のアイデアなども色々と提案していましたから、とても優れた俳優だと思いました。私だけの考えかもしれませんが、私は俳優というのはとても賢くないと、やっていくのは難しいのではないかと思っています。台本で表現されているものと、視聴者が演技を見た時にいいなと感じるものとを、素早く感じ取ることができること。作家がそのシーンにおいて表現したい、伝えたいと思っているニュアンスやメッセージを、素早く正確に把握し表現できること。これが俳優として必要な素質だと思っているのですが、お2人はそういったものを十分に備えていると思いました。

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―最初、チョ・ジョンソクさんがキャスティングされたと聞いた時、どのように思いましたか?

イム・ジュファン:彼のことは知らなかったんです。パク・ボヨンさんのことは知っていました。ドラマへの出演が決まった時は、台本も読んでいませんでしたし、監督にも会っていませんでした。事務所からの連絡で「ああ、私の幽霊さま」というドラマをやることになった。ヒロインはパク・ボヨンさんだ。それだけ言われました。それを聞いた時は、パク・ボヨンさんが本当にドラマに出演するのだろうかと思いましたね。なぜならこれまでずっと映画だけをやってきているようでしたから。自分が演じる役の名前も内容も全く知りませんでしたが、パク・ボヨンさんが出演するというのでOKしたんです。キャラクターの名前もドラマの内容もまったく知らないのにOKしたんですよ。

―女優たちと共演してみていかがでしたか?

イム・ジュファン:パク・ボヨンさんの演技には感嘆するばかりでした。演技力や感受性は他の追従を許さないほどで、あの小さな体のどこにそんなすごい力が隠れているんだろうと不思議なくらいです。スルギさんも表現力の優れた女優だと思いました。本能的に演じているのでしょうが、素晴らしいと思いました。以前の作品は見たことがないのですが、明確な表現というのはどういうものかをよく知っている女優だと思いました。「それでもお父さんじゃないの、何でなの」というセリフがあったのですが、あの年齢で、あんなにも胸に響く表現ができるなんて驚きましたし、表現がとても的確で感動しました。あのシーンがとってもよかったですと言ったら、スルギさんは、とてもたいへんなシーンで、ちょっと変じゃなかったかしらと謙遜したけれど、僕は本当にあのシーンに感動したんですね。そのくらい彼女もすばらしい女優ですよ。

―イム・ジュファンさん演技ついて、ドキッとするほどすごかったと女優たちが口を揃えて言っていましたが、演技に対しての集中力がそれほど高いということでしょうか?

イム・ジュファン:違いますよ。本当にシンプルに演じただけですから。深く色々考えたりしなくて、普通にやっただけなんですよ。でも確かにどういう状況での演技なのかはしっかりと把握してから演じました。スルギさんを浴槽に浸けるシーンでも監督に尋ねました。「溺死をさせようとしているのか、それともすでに死んでいる状態で浴槽に浸けようとしているのか」と。そうしたら瀕死の状態で、息の根を止めるために浴槽に浸けるという状況のようでした。殺そうと必死で浴槽に浸けるのならば恐い顔で演じる必要もあるでしょうが、瀕死の状態なら片手でやれば十分だろうと考えて、それであのような平然とした演技になりました。そんなふうに常にシンプルに考えて演技にはアプローチしていきました。

シン・ヘソンさんは、撮影現場で会って「ご飯食べたか?」と私が声を掛けると、ドキッと驚いて脅えているようでもありました。私が年上で先輩だから緊張でもしているのかと思ったのですが、そうでなくて犯行のシーンを一度も見ていなくて家では優しい夫のふりをしていたのに、外で凶悪な犯罪を犯しているシーンをモニターで見て、あまりにショックで、その時に私が撮影現場で声を掛けたので、びっくりしてしまったようでした。

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―幽霊はいると思いますか?

イム・ジュファン:私は現実的で信じないけれど、宗教的なことや霊的なことについては存在すると思っています。怖がったりはしませんよ。私は悪夢などにうなされることもなくて、横になるとすぐに眠れるほうで、気がつくと朝になっています。

―秘密の中心となる人物だということを知っていましたか?

イム・ジュファン:いいえ。全く知りませんでした。聞くところによると日本では初めから台本が全部できていると聞きました。ところが韓国ではシノプシスとキャラクター説明と4話程度の台本が出ている状況で台本の読み合わせがあり、ドラマの撮影が始まります。でも1話から4話まではチェ・ソンジェの役割については説明がないです。このキャラクターをどのような方向性で演じなければいけないのか、ほとんど説明がないんです。それで監督と作家に後半にどうなるのか少し尋ねました。そして、その言葉を信じて演じるしかなかったんですね。そしてその言葉通りの台本を書いてくださっただけでも幸いでした。なぜなら韓国のドラマの撮影現場では、色々な事情から内容が変更になることが多々あるものですから。だから私としては監督を信じて演じるほかありませんでした。

―NGが頻発したり、撮影に苦労したシーンはありますか?

イム・ジュファン:NGはありましたよ。セリフを間違えたり、技術的にうまくいかなかったりとか、カメラへのインやアウトを間違えてしまったりした場合もありますね。でも、私の場合は撮影よりもメークなどの準備のほうが大変でしたね。家を出て撮影を開始する前までのほうが時間が長くて、撮影自体は始まったと思ったらすぐ終わるような感じでしたね。私が上手いとかそういうことではなくて、監督の絵コンテや演出がしっかりしていて、どのようにチェ・ソンジェを演じていいかもしっかりと示してくれたので、私も監督を信じて演じるだけでよかったんですね。私の役目というか目標は、ドラマを見てくださっている方にこの後どうなっていくんだろうと思わせ、意外な展開にドッキリさせたり緊張させたりすることでしたからね。うまくいったみたいです。

―特に記憶に残っているシーンはありますか?

イム・ジュファン:多くの方々がエンディングシーンや首を絞めて殺すシーンを挙げるのですが、このシーンではなくて個人的に愛着のあるシーンがあります。スネの父親が食堂で倒れていて、倒れているおじさんをそのままにして、同僚警官が入ってくると笑って「おじさんはいないようだ。イイダコ炒めでも食べに行こう」と言います。そのシーンがいちばん緊張をしたシーンでしたし、どう演じようか悩んだシーンでした。なぜなら、それまでは怪しげな雰囲気を匂わせてはいましたが、このシーンはチェ・ソンジェが悪役であることをはっきりと示すシーンだったんです。このシーンがうまくできないと、次からのシーンでキャラクターの演技が生きてこないと思ったんですね。監督と相談をしてシンプルな演技にしましたが、私としてはかなり悩んだシーンでした。おかげでドラマを見た多くの方もかなり驚いたようです。ネットの書き込みもすごかったみたいですね。後頭部をいきなりガンと殴られたぐらい衝撃的だったみたいです。

―撮影現場に必ず持って行く物はありますか?

イム・ジュファン:電気カミソリです。夜通し撮影をやるとヒゲが伸びてきますからね。それからキャラクターの感情を捉えたいと思った時は少し歩きます。考えながらぐるぐる同じ所を歩き回ります。うろうろするとでも言いましょうか。そうしている間に照明などのセットのセッティングが整うんですね。

―座右の銘はありますか?

イム・ジュファン:昔からあるのですが、「私が浪費した今日は、昨日亡くなった人々が生きたいと切実に望んだ明日だ」というものです。一日一日を大切に生きようという意味ですね。少し詩的な感じがするものですが、それで気に入っているのかもしれませんね。

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―今後どんな俳優になりたいですか?

イム・ジュファン:こういった俳優になりたいという目標よりも、まず、俳優になっていたらいいですね。今は職業が俳優というだけで、本当に俳優になったという感じがしないんです。どこかに行って俳優イム・ジュファンですとあいさつするのが、まだまだ恥ずかしくて赤面してしまいます。

―新しく私が挑戦できた部分や、やりがいを感じた部分はありましたか?

イム・ジュファン:多くの方々が疑問に思ったでしょうね。あんな顔をして何が悪役なんだと、だからうまくやり終えることができて気分がよかったですね。俳優というのは白い画用紙のようなものだと思っています。独自の色を持っているのが俳優だと考える方もいらっしゃいますが、私はむしろ、どんな色にもなれる白い色でなければいけないと思っています。どんな色に塗られても、しっかりとやりこなせなければいけないというのが私の考えです。ほとんどすべての人が私に対して、悪役なんて本当にやれるのかと疑問を抱いたと思うんですね。ドラマなどでは強面や強そうなイメージの俳優が悪役をやりますからね。でも、そういうイメージの人だけが悪いことをするわけではないですよね。虫も殺さないような善良そうな人が、とてつもない犯罪を行っている場合もありますよね。それと同じように私も、今回の作品で俳優として、私にもこんな演技ができるんだということを、しっかりとアピールすることができましたし、みなさんの予想をいい意味で裏切ることができて、スカッと胸がすく思いでした。

―ドラマ出演後、人気を実感したことはありますか?

イム・ジュファン:実感をします。ドラマが終わってからというもの、ほとんど休日がありません。ずっとインタビューがあったり、芸能番組への出演や取材が続いたりしています。以前は、事前製作の作品を主にやっていたので、製作時間が長いんですね。その間にオーディションを受けたり、ミーティングをしていたりしたのですが、今はまずキャスティングが先で、出演のオファーが続いています。でもそういうのはこれまでにはなかったことなので、何だか慣れなくてきまりが悪いし、申し訳ないような気持ちにもなります。『おバカちゃん注意報』に出ていた時は、私のことを知っている人は年配の方ばかりでしたが、このドラマに出てからは、小さな子供まで私のことがわかるみたいで、私としてもちょっと不思議な気分です。

―軍隊に行って変わったことはありますか?

イム・ジュファン:軍隊に行く前は、心のどこかに焦っていたようなところがあったのだと思いますね。入隊前の私の俳優としての活動期間はほんの少ししかなかったので、それは良い作品に出会うための下積みの時間だったと思っています。以前は自分がいちばん年下だったのですが、除隊して芸能界に戻ってみると、自分より後にデビューした後輩たちがたくさんいて、おのずと責任感が生まれました。それに演劇映画学科を卒業する方や俳優を志す方も増えたので、そういったことからも責任感が生まれましたね。恥ずかしくないようにしよう。撮影現場は練習するところじゃないということです。

―放映されたドラマを見た家族や友人たちから何か言われましたか?

イム・ジュファン:家族はそういった話はあまりしません。何も言われないことが、自分がちゃんとやれているということなんだと思っています。私がすることに対して関わらないようにしてくれているみたいです。周りの人たち、特にチョ・インソンさんやキム・ギボムさんほか、友人たちみなが良いと言ってくれてありがたいと思っています。

―日本のファンのみなさんに最後にメッセージをお願いします。

イム・ジュファン:こんにちは「ああ、私の幽霊さま」でチェ・ソンジェ役を演じたイム・ジュファンです。韓国でとても好評を博したドラマです。みなさんもとても楽しくご覧になれると思います。私だけでなく、一緒に出演した俳優の方々をはじめ多くのスタッフが苦労して作り上げた作品です。ドラマの演技や俳優たちばかりでなく撮影で苦労したスタッフのみなさんについても思いを馳せてくださるととてもうれしく思います。ドラマを楽しんでください。幸せに。それから(私の演技を) 恐がってくださるとうれしいです。ありがとうございました。

■作品情報
「ああ、私の幽霊さま」
DVD SET1&レンタルDVD Vol.1~6 リリース中
DVD SET2&レンタルDVD Vol.7~13 リリース中
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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■関連サイト
DVD公式サイト:http://kandera.jp/sp/yurei/

記者 : Kstyle編集部