ソン・ジュンギ、完璧な俳優を夢見る

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※この記事にはドラマのストーリーに関する内容が含まれています。
写真=BLOSSOMエンターテインメント

果たして完璧な男はこの世に存在するのか。“完璧な男”という言葉に多くの韓国女性たちは、先日最終回を迎えたKBS2「太陽の末裔」のユ・シジンを思い浮かべるかもしれない。ユ・シジンを演じた俳優ソン・ジュンも、やはりユ・シジンを“完璧な男”と表現するほどだ。ユ・シジンはそれだけ非の打ちどころのない、皆が夢見る完成形の男だった。ソン・ジュンギはこのような完璧なキャラクターを自分の色で堂々と表現してみせた。「気持ち悪ければ自分の色に溶け込ませればいい」という言葉通り、ユ・シジンはソン・ジュンギと出会い、まさに完璧に“完成”された。実際に会った俳優ソン・ジュンギもやはり“完璧”を夢見ていた。しかし彼は違った。“完璧な男”ユ・シジンではなく、完璧な“俳優”を夢見ていた。「様々な経験を通して、ゆっくりと完成した姿をお見せしたい」という彼の言葉のように、ソン・ジュンギはゆっくりと“俳優”というツールを完成させている。

―非常に愛された「太陽の末裔」が終わったが、その感想は?

ソン・ジュンギ:今までたくさんのドラマに出演してきた訳ではないけれど、記者の方に三度も会うのは初めてだと思う。ドラマがたくさん愛されたので、このような機会を頻繁に持つことができた。俳優としては本当に嬉しいことだ。事前制作だったので自分で放送を見ることができた。反応も視聴者と共に感じることができた。多様な意見とフィードバックを得られたことは、俳優の立場としては本当にありがたいことだった。

―100%事前制作のドラマだったので、オンエアを見る感じが違ったのではないかと思う。主にドラマをどこで見ていたのか?

ソン・ジュンギ:親友イ・グァンスの家で数回見て、最近は主にCMの撮影現場で見ていた。事前制作だったので反応がすごく気になった。正直な反応が見たくて、一般人の友人の家でよく見た。中学の時から知っている友人たちだったので、はっきり言ってくれた(笑)

―事前制作のおかげで放送期間中も他の活動を活発に繰り広げることができた。少し前には香港のプロモーションの一環として、香港のファン達と会ってきたそうだが。

ソン・ジュンギ:香港でのプロモーションは僕にとって有意義な経験だった。今まで記事でしか触れて来ず、海外の反応を体で感じたのは初めてだったから。僕たちのドラマを海外ファンの方々もたくさん愛してくださっていることを感じた。プロモーション活動が終わった後、街頭で少し写真集の撮影をしたが、現地の人々がたくさん僕に気づいてくださった。初めて感じることなので驚いたし、嬉しくもあった。

―あるイベント会場で朴槿恵(パク・クネ)大統領にも会った。大統領とはどんな話をしたのか?

ソン・ジュンギ:当時、大統領に会うと言うのでとても緊張していた。入隊前に子供の日の行事の時に一度お会いしたことがあったのに、自然に「初めまして」と失言してしまった。大統領に「お会いしたことありますよね。軍隊はどうでしたか?」と言われて、背中に冷や汗をかいた。ハハハ。その日、「太陽の末裔」の話から、これからも謙虚であるようにというアドバイスまで、年長者としての良い言葉をたくさん頂いた。

―ニュース番組に出演し、大統領と一緒に行事に登場するなど、ソン・ジュンギの多様な歩みからもわかるように、「太陽の末裔」はドラマや俳優だけでなく、経済的効果、社会的波及力等、様々な分野からスポットライトを浴びている。俳優として、どんな気分か?

ソン・ジュンギ:様々な分野で言及されているということを体でも感じるが、たくさんの記事を通しても感じる。僕はただ俳優として自分の仕事をしただけだと考えている。僕が負うべき荷といえば、これを通してより多様な分野に挑戦していきたいという考えと責任感だ。

―親友イ・グァンスが射撃手としてカメオ出演もしたが。

ソン・ジュンギ:とてもありがたかった。直接話したことはないけれど、おそらくグァンスは復帰作にプレッシャーを持っていた自分を助けようという思いだったと思う。実際、グァンスがカメオでたくさん消費してしまった気がして、申し訳ない思いもあった。この場を借りて、もう一度ありがとうと伝えたい。

―カメオでも「太陽の末裔」にはたくさんの俳優が登場した。俳優たちとの掛け合いはどうだったか。

ソン・ジュンギ:現場で俳優の方々に本当にたくさん助けていただいた。まず最初にカン・サンイル先生が思い浮かぶ。先生とは少し前、団体の会食の時に初めて番号交換をした。その日先生が長文のメールを送ってくださって、読んでいた僕の胸が熱くなって、涙が出るほどだった。おそらく永遠に忘れないと思う(笑) チン・グ兄さんにも感謝していることがたくさんある。チン・グ兄さんには特有の余裕がある。何をしても全部受け止めてくれる。チン・グ兄さんを見ながら、僕も後輩にああしなきゃいけないんだなとすごく感じた。それ以外にもたくさんの俳優方がいたけれど、話せばキリがないくらいだ。ハハハ。

―よく息が合ったおかげか、相手役のソン・ヘギョとはスキャンダルが出るハプニングもあった。

ソン・ジュンギ:ハハハ。ソン・ヘギョ先輩は僕にとって手の届かない先輩だ。俳優としてたくさんの後輩たちに尊敬されている先輩。僕もやはり一緒に撮影しながら、ソン・ヘギョ先輩の姿に役者としてたくさん学んだ。今もすごく努力されている先輩の姿を見て、「やっぱり先輩だ」と感じた。ソン・ヘギョ先輩は相手役をとても気遣ってくださるタイプだ。15話、16話を撮った時は僕が肩を負傷して撮影が遅れている状態だったのに、先輩の方からスケジュールを調整してくれて、僕のために配慮してくださった。その時は本当にありがたかった。

―「太陽の末裔」を通して、“ラブコメキング”の座を揺さぶる存在になった。ソン・ジュンギだけの恋愛演技の秘訣は何か。

ソン・ジュンギ:秘訣とまで言うのは難しい。僕は演技において基本的に一番重要なのは台本だと思う。無条件に台本に出てくる通りにすればよい。場面が入り組んだ前後の事情と、「なぜこうなったのか」という筆者の立場で考える場合が多い。そうやってシーンを理解してアプローチする方だ。敢えて秘訣を言うなら、普段の姿を投影するくらい?(笑) 演技はある程度、自分の姿が出てしまうものだから。

―だからだろうか、たくさんの人々がユ・シジンとソン・ジュンギについて一体感を感じる。実際のソン・ジュンギはどんな性格か?

ソン・ジュンギ:「太陽の末裔」13話でカン・モヨン(ソン・ヘギョ)のお母さんと会うシーンがある。そこでユ・シジンが「僕は保守的な人間です」と言う。その台詞を言いながらすごく実感した。僕もやはり保守的なタイプだ。田舎っぽい面もあるし、クラシックな面もある。そんな性格のせいで、時には俳優という職業が自分に合っているのか悩む事も多い。

―自身の考えるユ・シジンは男のヒーローか、男の敵か?

ソン・ジュンギ:ユ・シジンを見ながら、既婚の友人は色々文句を言ってくる。ハハハ。ヒーローなのか敵なのかよくわからないけど。僕が演じたキャラクターだから敵とも言えないし、ヒーローというにもオーバーだ。ユ・シジンはただのかっこいい奴だと思う。

―ソン・ジュンギの実際の恋愛スタイルはユ・シジンの恋愛スタイルとは違うのか?

ソン・ジュンギ:ユ・シジンという人物に「こうしたら彼女が喜ぶんだ」ということをたくさん学んだ。もちろん脚本家さんが作ったキャラクターだけど、なぜ女性がユ・シジンを好きなのかわかる気がした。もし自分がユ・シジンと似ていたら、女性たちにとてつもなく愛されると思う(笑) ユ・シジンのような完璧な男がいるだろうかと思うくらいだ。

―“完璧な男”ユ・シジンの台詞の中で一番記憶に残る台詞は?

ソン・ジュンギ:少し前、CM撮影の途中に、楽屋で1話から14話まで連続放送されているのを見た。台詞一つ一つが新しく聞こえた。15話のエンディングで生きて帰って来たユ・シジンが「そんな難しいことを私がやり遂げました」と言う台詞がある。ドラマの序盤に出てきた台詞をもう一度活用したものだった。感情が違うので全く違うように聞こえた。一つの台詞がこんなに新しく聞こえるというのが本当に不思議だった。

―カン・モヨンに向かって、ストレートに思いを表現するユ・シジンの台詞がちょっと恥ずかしいという反応もたまにあったが。

ソン・ジュンギ:僕にとって恥ずかしい台詞は一つもなかった。ただ趣向の違いだと思う。そう感じるかもしれないが、僕は台詞を言いながら恥ずかしさを感じられなかった。恥ずかしくなるような台詞も僕の持つ色に溶け込ませてしまえばいいという自信があった。僕はもともとこういう性格だ。一つの短所があれば、一つの長所で補完し、またほかの短所は、また違う長所で補完できると思う。組織の芸術のように。そうして溶け込ませていけばよいという思いで演じた。

―ユ・シジンはネットユーザ達から“不死鳥”と呼ばれるほど、銃撃戦、テロ、拉致等の危機を経て生きて帰って来たが。

ソン・ジュンギ:不死鳥は合っていると思う。自分でも本当にたくさん生きて帰って来たと思う(笑) 僕はユ・シジンが生きて帰って来ることが正しいと思う。以前、制作発表の時にも言ったように、僕たちのドラマの一番の武器は“メロドラマ”であることだ。ユ・シジンが生きて帰ってくるシーンは、メロ展開のための作家の装置だ。またユ・シジンの生死を行き来する劇的な状況を通じて、メロを強化させたのだ。個人的には満足している。

―一角では「ドラマの必然性はソン・ジュンギの顔だ」など、「太陽の末裔」の展開の必然性不足、省略部分に対する指摘などがあった。このような指摘について俳優としてどう考えるか。

ソン・ジュンギ:そのような意見は皆聞いている。そうじゃなくても今度キム・ウォンソク作家と一度一杯飲もうと言っていたところだけど、会って話を聞いてみないといけない(笑) 僕の権限外の事なので、間違ったことを話せば、誤解が生じるかもしれない。ハハハ。ただ、どうせドラマは視聴者のものだ。だから視聴者の考えが答えだと思う。

―演技をしながら理解できなかった部分はあったか?

ソン・ジュンギ:理解できなかった部分というより、心配なシーンがたくさんあった。5話でワインキスシーンは心配だった。僕としては会ってからいくらも経っていないのにキスするというのが理解できなかった。ユ・シジンが軽く見えるのではないか、感情移入できるか、とても冷や冷やしながら放送を見た。放送を見て、自分の考えが間違っていたことを知った。視聴者の方々が意外に早い展開を好んでくださった。まったく予想外の反応だった。その時になって心配し過ぎたと感じた。「監督と脚本家さんを信じて行くべきだったのに」と申し訳なさが残った。

―特戦士大尉の役で、アクションシーンも多かった。難しくなかったか。

ソン・ジュンギ:本格的にここまでアクションをしたのは初めてだったと思う。本当に簡単じゃなかった。より念入りに、常に練習していた。これ教えて、あれ教えて、と言いながら武術チームをたくさん困らせた(笑) すごく勉強になった。次にまた機会があれば、もっと上手くやりたい。

―これから挑戦してみたい役はあるか?

ソン・ジュンギ:すごく多い。すべての役者がそうだと思うけど、僕も演技の欲がある方だ。すごく冷淡な役をしてみたい。エドワード・ノートンが好きで、彼の作品をたくさん見る方だ。もっと年を取る前に、エドワード・ノートンのような冷淡な姿を極大化できるキャラクターを演じてみたい。実際ジャンルや役は選ばないつもりだ。KBS 2TV「トキメキ☆成均館スキャンダル」、SBS「根の深い木~世宗大王の誓い~」、映画「私のオオカミ少年」等が、自分にとってたくさんのことを教えてくれた作品だ。特に「根の深い木~世宗大王の誓い~」は出番が少なかったけれど、役がよくて選択した作品だった。たとえ少しの出演であっても、たくさんの人々が反応してくださり、そのような反応を見ながらたくさんのことを学んだ。フィードバックは多様で、たくさん来るほど学ぶものが多い。たくさんの挑戦をしなければいけないとその時感じた。僕はまだ若い俳優なので、もっと多様な経験をしなければいけないと思う。そのような点から次回作の映画「軍艦島」は新たな経験になると思う。

―特戦士大尉ユ・シジンに続き、映画「軍艦島」では再び軍人役を演じるが。

ソン・ジュンギ:「太陽の末裔」の時もそうだったけれど、軍人役をまたするとは思わなかった。「太陽の末裔」は台本が面白くて選んで、「軍艦島」もやはり台本が魅力的な作品だったので選んだ。まだ準備中なので結果がどのように出るかわからないけれど、ユ・シジンとは違う姿をお見せする予定だ。面白いと思う。少しときめきを感じている(笑)

―ソン・ジュンギにはいつも“イケメン俳優”という肩書きがついてくる。このような言葉について俳優としてどう思うか?

ソン・ジュンギ:絶対に捨てたいとは思わない(笑) 個人的に俳優にとって外見がもたらしてくれる力は大きいと思う。外見、身体的な条件によるイメージがとても強い。だから肌の管理も一生懸命するし、老化現象も最大限少なくできるように努力したい(笑) もちろん外見よりも中身をまず磨かなきゃいけないと思う。演技も一生懸命にしないといけないし。もしイケメンというイメージが役の手助けにならない時が来れば、ばっさり捨てるつもりだ。今はそう思ってるけれど、年を取ればまた変わるかもしれない。

―入隊後と除隊後の演技がすごく違うように感じられる。軍隊での経験は演技にもたくさんの影響を及ぼしたか。

ソン・ジュンギ:軍隊に行く日は僕の人生に来ないと思っていたのに、もう自分が軍隊に行ってきたなんて(笑) 軍隊で過ごした時間はとても助けになった。軍隊でずっと心に刻んでいた言葉があった。「一般の兵士たちと部隊で一緒に暮らしてみよう。これからこんな機会はあまりないだろう。俳優を超えて、ソン・ジュンギという人間として得るものがたくさんあるだろう」という言葉だった。本当に感じたことのなかったものを感じて帰って来た。考えに余裕が生まれ、無駄に口答えしてはいけないと感じた。当時の経験が人間的にも演技的にもたくさん力になっている。そんな意味で僕は軍隊に行けて良かったと思う。

―入隊後と除隊後に変わったように、「太陽の末裔」の前後でもたくさん状況が変わった。人気をたくさん得たことは良いことだが、俳優として初心を忘れやすいとも思う。ソン・ジュンギの初心は何か、よく守っていると思うか?

ソン・ジュンギ:最近自分の頭の中で一番よく考えることだ。結論は、実際よくわからない。初心を忘れないようにすることも重要だけど、ある意味初心は変わらなければいけないと思う。僕の器は大きくなるのに初心がそのままなら、空間がいっぱいできるのではないか。一番重要なのは、初心の意味が変わってはいけないことだ。外側の自分の姿がたくさん変わったのは知っている。冗談半分で話すが、事務所の売り上げも変わったし、周りの反応もすごく変わった。韓流スターと呼ばれるのはまだ共感しづらい。僕はドラマで少し知られるようになっただけであって、海外でずっと活動してきた方々こそ韓流スターだと思う。“アジアのプリンス”イ・グァンスもいるし(笑) とにかく僕は変化した生活の中で初心の意味を守りながら生きていこうと思っている。

―「器が大きくなった」とはどのような意味か。

ソン・ジュンギ:「器が大きくなった」という言葉はある意味生意気かもしれないが、仕方なく責任を持たなければいけないことが生じるという意味だ。新人の時には知らなかったことが見え始めたという意味かもしれないし、たくさんのことが含まれている。僕が一生懸命頑張ってこそ、マネージャー、事務所が発展するから。頑張ってこそ、僕を応援してくれる海外ファンの皆さんも生まれるし。僕を見つめてくださる方々を失望させてはいけないと思う。俳優として失望させないためには、良い作品で演技しないと。そういう意味で器が大きくなったとも言えるかもしれないし。チヤ・テヒョン兄さんが器が大きい人だと思う。見習おうと努力している。実際に自分がする行動はチャ・テヒョン兄さんに学んだことが多い。

―新人時代の目標は叶ったか。

ソン・ジュンギ:当時もたくさん主演を獲得しようという気持ちより、たくさんの経験を積みたいという気持ちがより大きかった。急に人気が出て、未熟な姿を見せるよりは、少しずつ完成度のある姿をお見せしたかった。そういう意味で目標は叶ったと思う。まだ今でもその過程に立っているけれど。一生の目標かな(笑)

―「太陽の末裔」はどんな作品として人々に記憶されたいか。

ソン・ジュンギ:撮影に入る前に制作会社の代表、マネージャーがこう言ってくれた。「時が過ぎても影響を残し続けるドラマを作ろう」と。昔見たドラマの中で今でも伝えられているドラマがあるじゃないか。そういうドラマを作ろうと別々に二人が話してきた。ドラマを終えてみると未熟な点も多く、残念な点も多かったけど、「たくさん影響を与えるドラマ」になったという点は光栄だ。これからも長く記憶されるドラマになって欲しい。

記者 : ハン・ヘリ、翻訳 : 前田康代