2015年、万全の準備を終えた音楽プロダクション ― K-POP決算 Vol.1

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2015年、今年も韓国の音楽業界は成長して発展した。さらにワンステップ跳躍して、より大きな舞台に進出するために挑戦し、新たな試みを続けた。そんな中、音楽プロダクションの変化が最も顕著に現れた。これまでの努力が実を結ぶ瞬間の連続だった。

まったく接点がなさそうな歌手がデュエットで幻想のコラボレーションを完成させるように、芸能事務所もそれぞれ得意なジャンルを前面に出して他の事務所と手を組む、様々な形のシナジー創出を狙った。これは2015年に最大化され、多数の音楽プロダクションは新年に向けて万全の準備を整えた。熱い2015年を過ごした後、明るい2016年を迎える準備を終えたのである。

強みを活かして“買収合併” vs 力を大きくするため“大勢のスカウト”

歌手だけが所属する事務所と俳優だけが所属する事務所が手を組むと、“総合エンターテインメント企業”になる。これは昨年、MYSTIC89が家族アクターズと合併を開始し、注目され始めた。これに先駆け、SMエンターテインメント、YG ENTERTAINMENT、JYPエンターテインメントなどの大手事務所は早くから俳優を迎え入れ、本格的な“規模拡大”で総合エンターテインメント企業として生まれ変わる歩みを見せた。SMの場合、SM C&Cというブランドを立ち上げ、俳優はもちろん、お笑い芸人、MCなども迎え入れて強力な総合エンターテインメント企業に分類された。

しかし、中間級規模に当たる他の音楽プロダクションがこのように俳優を迎え入れて再跳躍、位置づけられるためには長い時間を投資しなければならない。そのため、短時間に効率的な成果を得るために選んだ方法が“買収合併”だ。これはお互いの強みを前面に出して手を組むことで、代表的な事務所にはSTARSHIPエンターテインメント、Jellyfishエンターテインメントを挙げられる。

STARSHIPは今年5月、キングコングエンターテインメントを買収した。SISTAR、K.will、BOYFRIEND、MONSTA X、ユ・スンウ、Mad Clown、ジョンギゴ、ジュヨンなどが所属するSTARSHIPとパク・ヒスン、イ・ドンウク、イ・グァンス、ユ・ヨンソク、キム・ボム、パク・ミヌ、イ・ジン、チョ・ユ二などが所属するキングコングが手を組むことで、他の事務所に負けない総合エンターテインメント企業になり、その力も実に強大になった。STARSHIPはお互いの強みをうまく活かして巧妙な方法を取った成果を存分に味わった。

Jellyfishもこのような方法で力を大きくした。今年8月、JellyfishはTHE KINDエンターテインメントを買収合併した。ソン・シギョン、ソ・イングク、パク・ヒョシン、VIXXなどが所属するJellyfishはTHE KINDを買収することでパク・ジョンス、イ・ジョンウォン、チョン・ギョンホ、キム・ソニョンなどの俳優を手に入れた。それぞれ歌手と俳優の養成に集中していた事務所が総合エンターテインメント企業を目標に領域を拡張し、お互いの力を得て大手事務所に匹敵するほどの規模に拡大した。

一方、時間をかけても“大スター”を迎え入れて大手事務所に挑戦状を出す事務所もある。音楽プロダクションだったが、最近、総合エンターテインメント企業として見事に地位を確立したFNCエンターテインメントがそのケースだ。FNCは当初、FTISLANDをはじめ、CNBLUE、JUNIEL、AOA、N.Flyingなどを保有する歌手中心の芸能事務所だった。だが、チョン・ジニョン、イ・ドンゴン、ソンヒョク、イ・ダヘ、ユン・ジンソ、チョンウなど錚々たる俳優はもちろん、チョン・ヒョンドン、キム・ヨンマン、ノ・ホンチョル、イ・グクジュ、ムン・セユン、チ・ソクジン、そしてユ・ジェソクまで手を組み、しっかりとした総合エンターテインメント企業に成長した。


中国市場が熱い…戦略的提携

今最も熱い市場は中国だ。実際、かつてスターたちの活動が“韓流ブーム”の影響で日本に偏っていたのとは異なり、2015年は完全に中国に傾いた。テレビ番組の出演はもちろん、コンサートも中国でより活発に行われた。

これに合わせて、音楽プロダクションは中国に目を向けた。中国進出がより容易にできるように様々な方法で接近を試み、挑戦を恐れなかった。

STARSHIPは中国のYUEHUA Entertainment(楽華娯楽)と戦略的提携関係を結んだ。YUEHUAは8日、新規上場記念の打鐘イベントを開催してグローバル総合エンターテインメント企業としての跳躍を知らせた。

STARSHIP側によると、YUEHUAは2009年6月の設立以来、音楽事業、アーティストのマネジメント、映画やドラマ、バラエティ、デジタルメディアの広報など短期間で卓越した発展を成し遂げたエンターテインメント企業だ。包括的なマネジメントシステムとマーケティングシステムを備えてハンギョン、UNIQ、チョウ・ビーチャン、アンジェラ・アン、アードゥ、ファン・ジョン、ジャン・ヤオ、O2Oなどのアーティストのマネジメントを行っており、音楽ライブラリやインターネットのIPTVチャンネルなどでもコンテンツを提供している。中国市場だけでなく、全世界の若いファン層をターゲットにしたグローバル戦略で他の中国のエンターテインメント企業とは差別化された動きを見せ、注目を浴びた。

今年4月、SISTAR、K.willらの所属事務所であるSTARSHIPと“戦略的提携”を結び、STARSHIP所属のアーティストの中国マネジメントを担当している。中国のエンターテインメント企業の中で唯一、韓国に支社を持ち、2014年に韓中合作ボーイズグループUNIQをデビューさせたことに続き、2016年にはSTARSHIPと一緒に作ったガールズグループ宇宙少女のデビューを控えている。

これに関してSTARSHIP側は10asiaに「YUE HUAエンターテインメントの中国市場に対する経験とキングコングの俳優マネジメントのノウハウを基盤に、韓国を超えて世界を舞台に、歌手と俳優の活動を支援するグローバル総合エンターテインメント企業に生まれ変わろうとしている」と明らかにした。続いて、「STARSHIPの最終目標は単なる芸能プロダクションにとどまるのではなく、全世界のファンが楽しめるコンテンツを制作する“コンテンツプロバイダ”になることだ」と話した。

STARSHIPはこの目標を達成するためにYUEHUA、そしてキングコングとの戦略的提携、買収合併を通じて幅広いアーティストやスタッフなど人材を揃え、色んな実務のプロジェクトで息を合わせている。

その代表的な主人公が来年デビュー予定の12人組ガールズグループの宇宙少女だ。宇宙少女はメンバーの選抜からトレーニングまでSTARSHIPとYUEHUAが意気投合して作った。韓国と中国の芸能界市場をよく知っている2社が現場で積み上げた眼目とノウハウを共有してプロジェクトを進行している。関係者によると、「韓中の芸能プロダクションの合作の良い先例になることを願って最善を尽くして準備している」という。

FNCも同様の方法で中国進出に拍車をかけた。FNCは先月、中国の民営企業である蘇寧ユニバーサルメディア(Sunning Universal Media Co., Ltd)に約330億ウォン(約34億円)の投資を受けた。FNCが第三者割当の有償増資を通じて蘇寧ユニバーサルメディアの投資を受ける形で行われ、両者間のパートナーシップを通じてFNCは本格的な中国ビジネスに拍車をかける予定だ。

蘇寧ユニバーサルメディアは中国最大の民営企業で、中国の100大富豪である蘇寧グループに所属している企業だ。蘇寧グループは電子製品の流通、不動産開発、電子商取引関連、エンターテインメント事業等を営んでいる。

FNC側は当時「当社の人気歌手やMCがアジアの韓流ブームを主導しており、中国市場への進出に積極的な動きを見せているだけに、今回の投資を通じて双方の事業拡大において大きな相乗効果を得られるものと期待される」と伝えた。


まさにWin-Win戦略…シナジーを最大化

中国から投資を受けて海外進出を図るグループがいる反面、韓国でもこのような戦略的な投資を受けて相乗効果を高める動きが見えた。

レコード会社で、歌手のマネジメントも行っているLOENエンターテインメントとApink、ホ・ガクなどが所属するA-CUBEエンターテインメントが将来のために手を組んだ。

LOENは先月、A-CUBEの持分70%に対する投資を最終確定した。これでLOENは制作、アーティストマネジメント部門の競争力の向上とともに、K-POPビジネスシステムをさらに強化したことになる。

LOENは2013年9月、マルチ・レーベルの体制に転換した後、レーベルの間の“バラバラ&一緒に”戦略を通じてコンテンツの競争力を高めている。今後も優秀な制作力量を保有した創作者との戦略的提携や投資を通じてコンテンツの多様性を確保しつつ、K-POPの発展に寄与していく計画だ。それはLOENが今回のA-CUBEの投資に先立ち、傘下にLOEN TREE、Collabodadi、独立レーベルのSTARSHIP、キングコングを置いている理由でもある。

これと関連し、LOEN側は10asiaに「エンターテインメントの投資はコンテンツを確保してK-POPビジネスの競争力を向上させるためのものだ。独立レーベル固有のカラーは維持するものの、レーベルの間のコンテンツ共有とLOENの事業部門とのマーケティング協力を通じて専門性を高めることができる。また今後、アーティストたちのコラボレーションなどコンテンツの多様化と完成度の向上が期待される」と明らかにした。

今回、A-CUBEへの戦略的な投資で得られるものについては「力のある芸能プロダクションをレーベルとして迎え入れる戦略的パートナーシップを拡大し、両社間のシナジーを創出、アジアを網羅する良質のコンテンツを生産してネットワークの強化を通じて世界音楽市場でK-POPの拡散に貢献している」と説明した。

LOENも中国との交流拡大に力を入れている。最近、中国のインターネットメディア企業Letv(会長:賈躍亭)とMOU(了解覚書)を締結して本格的な中国事業に進出することを決めた。

関係者は「中国を代表するコンテンツ企業との戦略的提携を通じて中国現地のファンの要求に沿う持続的なマーケティングに活用できる基盤とインフラを構築した。これでLOENは中国国内の様々なK-POPコンテンツ事業を拡張していく計画だ。それとともに、現地のネットワークを確保することで、中長期的なビジネスプランを設計、施行できるようになった」と話した。

この協約でLOENは中国現地に合弁法人の設立を推進して中国国内の芸能マネジメント事業、コンテンツ投資などアーティストと連携した事業を展開する予定だ。所属芸能人の中国活動の支援とコンテンツ事業の拡大、中国に専門的で体系的なキャスティングやトレーニングシステムを構築して現地で活動する新人アーティストを育成する計画である。また、音楽事業以外にも映画、ドラマ、コンサートなど様々なエンターテインメント領域の積極的な投資を目標にしている。

激しい競争を繰り広げながらも明るい明日のために手を組み、歩調を合わせた2015年の音楽プロダクション。“音楽プロダクション”を超えて“総合エンターテインメント企業”への威容を誇るための万全の準備を終えただけに、2016年の歩み、成長、発展の帰趨が注目される。

記者 : キム・ハジン、翻訳 : ナ・ウンジョン