作曲家キム・ヒョンソク「覆面歌王」で破ったアイドルへの偏見

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メロディ1つで人の心を動かすこと、またそれを実現している人に会うことは、心が震えるほど嬉しいことだ。ダンス、ロック、バラード、R&B、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)、ヒップホップなど、世の中には本当に多様な音楽が存在する。ある人はバラードを聞いて涙を流し、ある人はダンス曲を聞いてテンションを上げ、またある人はヒップホップに自分の話を盛り込む。このすべてのことは、作曲家がいなかったら楽しめないことである。無から有を作り出す作曲家の世界はどんなところだろう。音符を描いて感動を伝える作曲家たちに会ってきた。

キム・ヒョンソク作曲家はキム・グァンソクの「愛という理由で」、キム・ゴンモの「第一印象」、SOLIDの「この夜の終わりをつかんで」、パク・ジニョンの「君の後ろで」、イム・チャンジョンの「また」「狼と一緒にダンスを」、ソン・シギョンの「僕に来る道(The road to me)」、シン・スンフンの「I Believe」、ナ・ユングォンの「僕だったら」など多くのヒット曲を生み出し、韓国音楽著作権協会に1000曲以上を登録した、まさに“レジェンド作曲家”である。

ただ神の領域にいるだろうと思ったキム・ヒョンソク作曲家が気になり始めたのは、MBCのバラエティ番組「僕らの日曜の夜-覆面歌王」(「覆面歌王」)を見てからだ。キム・ヒョンソク作曲家は「覆面歌王」で、作曲家なのに毎回予想を間違えて笑いを誘う、身近で優しいイメージで愛されている。“チキンおじいさん”という面白いニックネームも付けられた。だが、そんな姿よりもっと注目を集めたのは、覆面歌手が登場するたびに愛情のこもったアドバイスと称賛を惜しまないキム・ヒョンソクの温かい視線だ。身近なイメージを持った“レジェンド作曲家”キム・ヒョンソクの一言は、覆面歌手に大きな勇気を与えた。

「歌の上手いアイドルにたくさん出てほしい。アイドルだからとけなしているわけではない。ステージでコンセプトを中心に披露することがアイドルの本質だ。でも、EXIDのソルジのように、歌で再び評価されて拍手を受けてほしい。歌手という職業自体、結局は歌を上手く歌わなければならない。そうしてこそ輝く」

キム・ヒョンソク作曲家が「覆面歌王」の制作発表会で話したことだ。キム・ヒョンソク作曲家は「覆面歌王」を通じて、アイドルに対する偏見を破ることに大きな貢献をしている。キム・ヒョンソクの言葉には以前、実際に偏見を持っていて、それを破った人だけが言える真心がこもっていた。キム・ヒョンソク作曲家がアイドルに対して持っていた本来の考え方と、「覆面歌王」を通じて変わった考え方が知りたくなった。

―最近、放送活動を多く行っている気がします。

キム・ヒョンソク作曲家:「覆面歌王」のおかげです。「覆面歌王」での姿を面白く見てくれているようです。「覆面歌王」のコンセプト自体が、実際に歌手の正体を知らない状態で収録を行うことなので、それが面白く見えるようです。

―「覆面歌王」の序盤には予想が外れることが多くて、大きな笑い担当として活躍しました。でも「黄金漁場-ラジオスター」に出演した時、番組を面白くするためにわざと間違えた答えを出したと話しましたが、本当に間違うことと、そうじゃない答えの比率はどれぐらいですか?

キム・ヒョンソク作曲家:今も間違えることが多いです(笑) 実は、意図的に間違う場合はほとんどありませんです。正解を当てることが重要ではないからです。音楽を聞いて褒めたり、おかしいと感じたらおかしいと答えるのが僕の役割です。

―シン・ヒョボムさんが「覆面歌王」で「今日の歌の実力で絶賛してくれるほど耳のレベルが低い方ではないのに、絶賛して勇気を与えてくれて感謝する」と言いました。その言葉通り、キム・ヒョンソク作曲家は音楽を聞く耳のレベルが高いはずなのに、出演するほぼすべての歌手に称賛を惜しみません。それが勇気を与えようとしている感じがします。

キム・ヒョンソク:覆面歌手を見ると、どれほど切羽詰まったら覆面をかぶって出てきて、歌を歌うのだろうと思うんです。「私は歌手だ」も同じです。今の音楽界は私たちが知っている正式なルートを通じて評価を受けるよりも、プラスアルファの要素が必要となっています。そして、それ自体が公平じゃないんです。なぜなら、歌が上手な人は歌だけで認められなければならないのに、それをどんな方法でリリースすればいいんだろうという悩みが生じたからです。どんなに良い曲をリリースするかではなく、どんな形でリリースした方がいいかという悩みが芸能界で自然になりました。そんなことが前提となっているからか、「覆面歌王」で歌を聞いたら、その歌手たちをより応援するようになります。

―2003年のあるインタビューで「歌手は歌を上手く歌わなければなりません。“企画の勝利”“プロモーションの勝利”といって、歌が下手な歌手をスターにすることは、人々に対する“詐欺”です」と強く話していたものを読みました。アイドルに関する話のような気がしました。

キム・ヒョンソク:もう12年前の話です。その時はまだ歌が上手い歌手が注目を集めました。でも、今は企画、プロモーション、ダンス、歌、才能など、すべての要素が揃わなければなりません。ある意味、成功することがより難しくなりました。でも、その一方では歌という最も重要な才能が、企画やビジュアルなど他のマーケティング要素に隠されているから、成功はより簡単になったのかもしれません。結局は作詞・作曲家や芸能人が持つべき基本的な自己省察、良心、道理が自分を絶えず磨かせる原動力になるはずだから、果たして自分は何を上手くできるのかに対する自らの悩みと努力が必要だと思います。アイドルもそうだし、そのすべての努力が才能だと思います。

―「覆面歌王」を通じてアイドルに対する考え方がかなり変わった気がします。

キム・ヒョンソク:「覆面歌王」を見ながら「アイドルがあんなに歌が上手かったの?」と感じました。歌にフォーカスを合わせても輝くことができる歌手なのに、今までの自分は彼らをアイドルという限られた企画やトレンドに合わせた商品として見て音楽、歌に対する情熱は見ていなかったのかもしれないと思いました。

―その一方で、実力のある人がスターになるためには、アイドルという道しかないような気もします。

キム・ヒョンソク:それほど極めて難しいことになりました。今は歌が上手い人がとても多いです。私が若かった頃は実用音楽学科がなかったのに、今はみんなが歌を習えるようになりました。そのためか、みんな基本以上は勉強してこの世界に入ってきます。それで、ビジュアル、ダンス、才能などプラスアルファの要素がないと、この世界で生き残れないんです。今は正式なルートを歩くことがより難しくなったわけです。

―「覆面歌王」を通して打ち破ったキム・ヒョンソク作曲家の最も大きな偏見は何ですか?

キム・ヒョンソク:アイドルは企画商品だという偏見です。EXOのチェン、B1A4のサンドゥル、EXIDのソルジ、f(x)のルナなどを見ると、本当に音楽を愛して歌をたくさん練習したことが分かります。アイドルの企画力を見て、アンダーグラウンドやインディーズは反省すべきだと思います。メジャーがどうしてメジャーなのか、そのはっきりとした理由が分かるようになりました。

記者 : パク・スジョン、写真 : ク・ヘジョン、翻訳 : ナ・ウンジョン