コ・アソン「『グエムル-漢江の怪物-』はあまりにも早く訪れてきた幸運だと思う」

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映画「オフィス」のヒロイン、コ・アソンの演技哲学“俳優は30歳からだと思う”

「君はそれが問題だ。頑張りすぎじゃない。ほどほどにしなさい」。映画「オフィス」の中のセリフだ。ある社員(イ・チェウン)がインターン社員のミレ(コ・アソン)に忠告のように言う。お茶を入れることから文書を整理することまで、あらゆる雑用を任されるミレはいつも気後れしている。何も言わず黙々と仕事をするが、小さいミスでもすればひどい叱責を受ける。「なんてことをしてくれたんだ!」

最近、ソウル三清洞(サムチョンドン)のあるカフェで会ったコ・アソンは自身とミレは似ている部分が多いと言った。彼女は「今まで一番大変だったときが一生懸命にしているのに成果がなかったときだった。そういうときは本当に自己否定感にさいなまれることになるが、ミレもそういう気持ちだっただろう」と話した。spれほど作品に共感しただけに、ミレは適当に表現できない人物だったはずだ。


もしかしたら誰でも経験できる状況:一生懸命にしているのに成果が出ないとき

「オフィス」について話す前にコ・アソンが最近出演したドラマ「風の便りに聞きましたけど!?」について話す必要があった。実はポン・ジュノ監督、ハリウッド俳優クリス・エヴァンス、イギリスの国民的俳優ティルダ・スウィントンと共演した「スノーピアサー」が成功し、海外に進出する土台を作った直後だった。

しかし、当時コ・アソンは「もっと段階を踏まなければならない。海外進出はまだ時期尚早だ」と言いながら低予算芸術映画「優しい嘘」と財閥の俗物意識を風刺した「風の便りに聞きましたけど!?」に相次いで出演した。ドラマを通じて24歳としてはなかなか演じにくい出産と母性愛を演じ、映画ではシングルマザーの母のそばで頼りになる娘になっていく高校生を演じた。変化の幅が非常に広い。

「『風の便りに聞きましたけど!?』は、おばさんと母性への限りない愛情だった」がコ・アソンが明かした出演の理由だった。そんな彼女が今回の「オフィス」については「周りの友達と姉さんたちを考えながら表現したかった」と語った。自身の人生と作品の距離が他の俳優に比べ、非常に近いように見える。

写真=映画社コッ(花)
「『オフィス』への出演を決めた一番の理由は姉たち(コ・アソンは3人娘の末っ子)や友達のためだった。皆インターンをしていた。作品そのものも良かったが、何だか私の体を全部捧げたいと思った。姉が仕事をしながら度々大変だという話をした。所属感もないし、部外者のように感じられると言った。それがまさにインターンだけが感じられる感情だと思う。

とても残念だった。会社員への思いが単純な好奇心以上に大きくなった。(映画撮影前)ある会社を訪れたとき、残業しているある女性社員を見た。表情を見たら、その方の1日を全部思い浮かべることができるほど疲れた顔をしていた。長い時間のストレスが溜まった様子だった。心が痛くて悲しかった。そのときからは道を歩いても会社員ばかり目に見えた。その方々が特別に感じられたし、それだけミレを本当によく表現しなければならないと思った」


ナイフを持っている課長

職場で生き残るため激しく生きる姿が、コ・アソンにはただ観察の対象に見えるだけだったのだろうか。4歳の頃から演技を始めたせいで一般の人々の人生に共感することはできないと思ったが、それは勘違いだった。コ・アソンは「4歳の頃、初めてドラマというものをしてみて、13歳まで何もできなかったこともあった。ミレの気持ちを理解することがそれほど難しくはなかった」と慎重に語り始めた。

「シナリオをもっらった直後、監督が漫画『ミセン』の全巻をプレゼントしてくださった。『オフィス』が『ミセン』のホラー版という一部の解釈にある程度は同意する。違うところがあるなら『ミセン』は地獄のような会社の生活を人と人のつながりで克服していくが、『オフィス』は会社の仕事も大変で、人間関係もめちゃくちゃじゃないか。率直に初めてシナリオだけ読んだときはファンタジー映画だと思ったが、これが本当の現実だった。

日常の暴力がひどいと思う。学校であれ、職場であれ、いかなる人間関係であれ、残念ながらこういう暴力が存在する。映画で(社内でいじめられていた)キム・ビョングク課長(ペ・ソンウ)が鋭いナイフを隠し持って『僕にはロザリオのようなもの』と言うじゃないか。このシーンを撮影するときは激しく生きている友人たちを思い出して胸がとても痛かった。『オフィス』のメッセージの中で最も心を打たれたのが、組織生活に深く浸透した様々な暴力を見ようということだった」


「グエムル-漢江の怪物-」以来10年“女性らしくなったから恋愛物も撮らなきゃと言われる”

女優にならなかったらコ・アソンも今頃就職の準備に追われているはずだ。女優ではない人生を考えたことあるかと聞いたら「たまに考えてみたが、人生最初の記憶がカメラの前に立っていた姿であまり想像できない」と恥ずかしそうに言った。もっぱら作品を通じて自身を証明してきた人生だ。

ただ、他の子役俳優らと異なるところは、彼女は焦らなかったということだ。映画デビュー作の「グエムル-漢江の怪物--」(2006)のときはまだ幼く見える顔だったので周りの人々は怪我などしないようにたくさん配慮してくれた。成長する姿をたくさんの人が見守っているだけに、自身の中に閉じ込められやすい環境だったが、コ・アソンは芯が強かった。
最近になって「相当女性らしくなったからキスシーンも撮って、恋愛物も撮らなければならない」というアドバイスが多いという。コ・アソンは「イメージ作りよりはよい作品を作っていくことがもっと重要だ」とはっきり言った。

「成長は結局無理やりすることではなく、自然にするものだと思う。身長が伸びなければならないと焦っても皆伸びるわけにはいかないことと同じだ。それでも周りから成人の役者にならなければならないとよく言われるから意識はしている。子役のイメージから抜け出さなければならないという提案をずっと受けてきたので、ドラマ『風の便りに聞きましたけど!?』のような大胆な作品をすることになったと思う(笑)

もう『グエムル-漢江の怪物-』を撮ってから10年が過ぎた。その間たくさんのことが変わった。個人的には漢江(ハンガン)に売店がなくなったのが最も残念だ。ちょうど今頃撮影したと思う。考えてみたら『グエムル-漢江の怪物-』という映画は私にあまりにも早く訪れてきた幸運だったのではないかと思った。もうちょっと様々な経験を積んだ後だったらもっと感謝したはずだし、良かったと思う。個人的に俳優は30歳からだと思う。その前までは色々な作品に出演しながら試行錯誤も経験したい」

2年前、コ・アソンが受けたはずの質問をもう一度した。海外活動のためのマネジメント会社もできただけに積極的に外国に出て行く計画があるかということだ。実際にコ・アソンのアメリカ進出作の制作が準備されたが、途中で中止になったこともあった。

「(韓国国内で経験を積むという考えに)変わりはない。あえて比率を考えれば半分ずつだと思うが、必ずハリウッドでなくても良い。ところで私が一番好きな作品はイ・チャンドン監督の『ポエトリー アグネスの詩』だ。数十回も見ながらシーンごとに分析もしてみた。いつかイ・チャンドン監督の作品に必ず出演したい」

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン