「治外法権」イム・チャンジョン、撮影現場でピリピリしている理由とは?

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俳優イム・チャンジョンが久しぶりにスクリーンに戻ってきた。2013年、映画「チャンス」(監督:イ・ドクヒ)以降、2年ぶりである。今回は多少行き過ぎた、言いたいことは言わないと性に合わない刑事役だ。17対1のアクション演技も披露した。映画「治外法権」(監督:シン・ドンヨプ、制作:ヒュメニテラピクチャーズ)のイム・チャンジョンに出会った。

「治外法権」は怒りの調節が出来ないプロファイラーと女たらしな刑事のコンビが、韓国を思うがままに動かし、法律の上に君臨する犯罪組織のボスを捕まえるために無法捜査チームで出会うことから繰り広げられる物語を描いた作品だ。イム・チャンジョンとチェ・ダニエルが「共謀者」(2012年、監督:キム・ホンソン)に続き、2度目のタッグを組んだ。

映画はコメディとアクションを自由自在に操った。とんでもなく笑えるけど、ハイクオリティのアクションで観客の視線を集中させる。イム・チャンジョン、チェ・ダニエルの抜群の相性も欠かせない面白みだ。荒唐無稽でとんでもない部分も、この映画を構成する妙な魅力の一つだ。

「ウェルメイド(完成度の高い)映画だけが映画なわけではありませんよね?気軽に映画館に来て楽しんで、見た後にそれなりのメッセージを得られる映画。『治外法権』はそんな映画です」

イム・チャンジョンは「治外法権」のシン・ドンヨプ監督について、“忠武路(チュンムロ:韓国映画界の代名詞)の不死身”と呼んだ。「膺懲者」「ウェディングスキャンダル」「西遊記リターンズ」「愛しのサガジ」など相次ぐヒットの失敗にも、引き続きメガホンを取るのを見て「大企業の役員の息子なのでは」と冗談を言った。

「シン・ドンヨプ監督はすごく優しいです。本当に優しいです。もちろん、現場では悪魔ですけどね(笑) 僕はキム・ホンソン監督が一番悪魔だと思っていましたが、シン・ドンヨプ監督はキム・ホンソン監督より上です。にっこり笑いながら人を殺すタイプというか。『治外法権』の現場も本当に大変でした。二度とシン・ドンヨプ監督の映画には出演しないと誓ったのに、いつの間にか口頭で2本も契約してしまって(笑)」

ー映画の感想は。

イム・チャンジョン:「ツー・コップス」のような映画だと紹介され、シナリオを受け取った。とんでもない刑事たちの話だと。いつも殴られる役ばかりやってきたので、アクションをきちんと見せることができると思って出演した。シナリオ通りに面白く仕上がったようだ。

ーいざアクションの演技をしてみたらどうだったのか。

イム・チャンジョン:本当にすごくすごくすごく大変だった。アクションは演技ではなく、タイミングだった。演技とはまったく異なる領域だった。

ー怪我はなかったのか。

イム・チャンジョン:とても多かった。チャン・グァンさんに踏まれるシーンで、本当にすごくやられた。多分、全治5週くらいにはなっただろう。先輩が役への集中度がすごくて、加減無く攻撃してきた。そのシーンを撮影した翌日に、チャン・グァン先輩が「なぜこんなに足が痛いんだろう」とおっしゃった。足が痛くなるほど僕を攻撃したんだから、やられた僕がどうなったか分かるだろう(笑) これまで他の映画でやられた分を全部合わせたくらいやられた。

ーチェ・ダニエルとの演技の呼吸はどうだったのか。

イム・チャンジョン:合わないように見えるけど、よく合う。ダニ(チェ・ダニエルの愛称)は若いけど、仕事の時はすごく大人っぽい。もちろん普段は子供のようだけど。ダニは準備をたくさんして現場に来るタイプで、僕は即興的に演じる。僕のアドリブのせいで、ダニは撮影の序盤はかなり大変だったと思う。当惑していたので。

ー公開前からイム・ウンギョンとのスキャンダルがあった。

イム・チャンジョン:失敗したノイズマーケティングだ(一同爆笑) 僕は記者たちがそこまで早く納得して、手を上げるとは思わなかった。反論が多くあると思ったのに、リアルタイムの検索語ランキングから半日で消えた。所属事務所は仕事のやり方が逆だ、逆。普段は何もしていないのに、あの日だけものすごく素早い対応なんかして。水を差すにもほどがある(笑)

ーイム・ウンギョンの反応はどうだったか。

イム・チャンジョン:最初は楽しんでいるようだった。僕がいたずらでカップルのふりをして写真を撮ると、近付いて撮ってくれたりもした。けど、後になると疲れていた。多分辛かったんだろう。もちろん、ウンギョンが現場で僕と一番仲が良かったのは事実だ。

ーもうイム・チャンジョンにまた熱愛説が浮上しても信じられないと思う。

イム・チャンジョン:また熱愛説があるだろうか?

ーシン・ドンヨプ監督が撮影現場でかなり厳しかったとか。

イム・チャンジョン:「共謀者」の時にキム・ホンソン監督が、撮ったものをまた撮っては撮って、本当にとても苦労した。チェ・ダニエルと一緒にキム・ホンソン監督のことを悪魔と呼んだ。けど、「治外法権」の10回目の撮影くらいになった時に、チェ・ダニエルが「兄さん、僕は初めて殺意を感じた」と言った(笑) シン・ドンヨプ監督はキム・ホンソン監督より2倍は厳しい。にっこり笑いながら人を殺すタイプだ。

ーそこまでいじめられたのに、シン・ドンヨプ監督の次回作に出演することを決めた理由は何か。

イム・チャンジョン:まずは人が本当に優しい。シン・ドンヨプ監督が突然「兄さんが出るということで投資をもらったんです」と言ってきた。まずはシノプシス(ドラマや舞台など作品のあらすじ)でも見せてと言った。僕にシナリオも見せないで投資だなんて(一同爆笑) 今後2本ほど一緒にやるとか(笑)

ー数年前から監督デビューを準備しているが、監督としてのイム・チャンジョンにはいつ頃会えるのか。

イム・チャンジョン:シナリオを何回も書いている。もう5本くらいは書いた。まずは時間がない。10年前には、すぐにでも監督としてデビューできると思っていた。5年前に投資も受けたけど、僕の心の準備がまだだったので投資金を返した。いざやろうとしたら怖くなったのだ。歌手もやって、演技もやって、お店もやっている。ここに映画監督までやる時間はない。監督はきちんとしていないと。きちんとするためには、2年くらいは何もしないで監督の勉強をする必要がある。映画は監督の芸術と言うではないか。それをお見せしたい。1本の作品に、ジャッキー・チェンよりも多くの分野で参加するのが夢だ。監督、脚色、脚本、音楽、主演までと。

ーそこまで忙しく生きる原動力は何か。

イム・チャンジョン:生まれつきのものだ。僕は気質そのものがあっちこっちを動き回る。じっとしているほうが耐えられない。

ー「チャンス」の時まではタバコを吸っていたが、今日は電子タバコだ。タバコはなぜ止めたのか。

イム・チャンジョン:子供に対して僕が一番重要だと教えているのが“約束”だ。ある日、子供たちがタバコを止めると言ったのに、なぜ吸い続けるのかと聞いてきた。それから今まで一度も吸ったことがない。禁煙して1年7ヶ月くらいになる。これ(電子タバコ)も止めないと。

ー現場ではピリピリしているという話がある。

イム・チャンジョン:そうだ。“イム監督”という言葉もあるではないか。僕は基本を守らないことが大嫌いだ。そういう時にすごく怒る。言いたいことは言うタイプだ。優しいか、それとも天才であるかだけど、両方できない人があまりにも多い。二度と会わない仲だとはっきり目の前で言うし、それができないと完全に無視する。仕事の時はピリピリしていないと。これもいい、あれもいいだと?そういう人はお人好しと言われるかもしれないけど、僕はそういう人にはなりたくない。もし現場でこういう僕の姿が間違っていたなら、僕は30年間どうやって生き残ったんだろうか。僕は監督が望むのも撮るし、僕が望むのも撮る。「後で監督がほしいものでご自由に使ってください」と言うタイプだ。

ー仕事先以外での実際の性格はどうか。

イム・チャンジョン:信じないと思うけど、おバカさんのようにすごく我慢する。もちろん、一度怒りが爆発すると嵐のようだけど、すぐにまた忘れるほうだ。

ー実際に監督になるなら、現場でどんな監督になると思うか。

イム・チャンジョン:キム・ホンソン、シン・ドンヨプ監督に負けないほど厳しいだろう。一つの分野を始めたなら、必ず1位を取らないと。幼い頃に、教室に通うお金がなくて独学でピアノを練習したことがある。あの頃、1ヶ月半の間、部屋でずっとピアノの練習だけをしていた。そんな執着がある。

ー作品を選ぶ際の基準があるなら。

イム・チャンジョン:基準はない。面白ければいい。僕の出演作の中では「スカウト」(監督:キム・ヒョンソク)が一番好きだ。その映画は、観客は30万人しか動員できていない。良い映画だからといって必ずヒットするという法則はない。ただその瞬間の流れに沿って作品を選ぶほうだ。そうやって時間が過ぎてから振り返ると、いつの間にか僕の愛する作品になっている。

ー最も好きな自身の歌は何か。

イム・チャンジョン:あえて言うと「焼酎一杯」だ。普通はデビュー曲を覚えられやすいが、僕の場合は「焼酎一杯」の方をもっと覚えてくださる。あるイベント会場でおばあちゃん、母、娘の3代が僕の歌を歌ってくれた。その時、「焼酎一杯」が僕の代表曲であると改めて感じた。

ー3人の子供に自身のような才能を感じたことがあるのか。

イム・チャンジョン:6歳、8歳、10歳だけど、3人とも天才的なことが一つある。右に出る者はいないくらいだ。それは他でもなく遊ぶことだ。何もしないでただ遊ぶ。雲中洞(ウンジュンドン)の町でいつも遊んでいる。3人がはしゃいで、遊び終わって家に帰ってくると、もう顔が汚い。誰がどう見てもイム・チャンジョンの息子だ。僕の幼い頃と同じだ。

記者 : キム・スジョン、写真 : ムン・スジ