少女時代 スヨン、カム・ウソン、イ・ジュニョク…俳優たちの熱演が光る純愛ドラマ「私の人生の春の日」 ― 鑑賞コラム 後編

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ドラマにハマるか否かは、キャラクターに感情移入できるかが重要なカギだ。いくらキャストやストーリーがよくても、キャラクター作りを誤れば、徐々に視聴者は離れてゆく。視聴者が登場人物の気持ちを理解して、共感してこそ、胸をときめかせたり、感動できるのだ。そして「私の人生の春の日」が古典的でシンプルなストーリーでありながらも、高評価を得たのは、まさにキャラクター作りの勝利であろう。監督や脚本家が作り上げたベースのキャラクターに、俳優たちが的確に息を吹き込んだからこそ、感動を呼ぶ作品に仕上がったのだ。

まずはヒロイン・ボミ役のスヨン。ボミは一生懸命生きようとするあまりに頑固だったり、信念を貫こうとして周囲を巻き込むことも多い、一歩間違えれば、利己的なキャラクターだ。しかし、スヨンは持ち前のピュアなイメージと、はつらつとしながらもはじけすぎない演技、笑顔と涙を行き来する豊かな表情で、ボミの短所を“一途”という長所に見せることに成功した。序盤でヒロインのはつらつとした姿が強調されすぎて、ギャンギャンとまくし立てる姿に視聴意欲を一気に失ってしまうドラマが多々あるのだが、スヨン扮するボミの場合は、ハタ迷惑な行動をとっていても、それが“善意で一生懸命の行動”に映るのだから不思議だ。このあたりに、まだ女優としては経験の浅いスヨンの、計算ではない天性の才能を感じた。

そして、ドンハ役のカム・ウソン。年齢差20歳の純愛を描いた本作において、ドンハ役に彼を選んだことが成功の最大の要因だろう。中年男性が若い女性に心惹かれることは本能だけに、演じる俳優が男性フェロモンをにじませると、見る者を不快にする可能性もあったが、カム・ウソンは脂っこさを感じさせない、いわゆる「枯れ専」女子が好む魅力を持つ俳優であり、誰もが認める実力派だ。ボミへの想いの葛藤や、中年男やもめの悲哀、父親としての悩み、さまざまな感情を静かながらも、視聴者にはひしひしと伝わる繊細な演技はさすがの一言。ボミはメモリーセルラー現象でドンハに惹かれたかと思ったのだが、のちに「ドンハのような魅力的な草食系中年ならば、運命とは関係なしに惹かれたかも」とも考えるようになった。

そして、ドンウク役のイ・ジュニョク。前半は理想の婚約者像に胸をときめかされ、中盤はボミとドンハの急接近に焦りを抱く姿に胸を痛める一方で「2人の邪魔はしないでー」と思ってみたり、後半は、あまりのイイ人ぶりに感動すると同時にもどかしさを感じたりと、見る側にこんなにもいろんな感情を抱かせるキャラクターは珍しい。これまでの韓国ドラマのパターンならば執着男に変化していたかもしれないドンウクを良い人に描いても薄っぺらく感じなかったのは、過去の回想シーンの数々で、ドンハとの葛藤を丁寧に描いていたことが大きい。そして、そのシーンで見せたイ・ジュニョクの哀しみや失望感をにじませた目の演技にも、心を奪われた。

また、本作でミステリアスな経営企画室長ジウォン役で新境地を開拓したチャン・シニョン。コミカルカップルとしてドラマを盛りたてたイ・ジェウォンとカ・ドゥッキ。そして、カン・ブジャ、シム・ヘジン、クォン・ヘヒョといったベテラン陣の重厚な演技と、子役のヒョン・スンミンとキル・ジョンウの健気で泣かせる演技のハーモニーも見事だ。
韓国ドラマらしい純愛や情愛にあふれた王道のストーリーでありながらも、洗練された映像美や、きめ細かな心理描写、そして俳優の名演技によって、古めかしさを感じないどころか、新鮮な感動を与えてくれる本作。またその一方で、韓国ドラマの定番要素である悪女や陰謀、記憶喪失などのドロドロ要素は出てこないので、純愛ドラマが好きな韓国ドラマビギナーにも、自信を持ってオススメできる秀作だ。

韓国エンターテインメントライター:安部裕子

「私の人生の春の日」DVD情報
DVD-SET1&2 好評発売中 ※Vol.1~12 好評レンタル中
¥15,200+税 発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
DVD公式サイト:http://kandera.jp/sp/haru/
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記者 : Kstyle編集部