イ・ヒョヌ「『延坪海戦』は努力が実を結んだ作品」

10asia |

※この記事には映画のストーリーに関する内容が含まれています。

自信あふれる姿が見えた。謙虚な態度の中でも色褪せることのない、明瞭で堂々とした姿だった。映画「延坪(ヨンピョン)海戦」でパク・ドンヒョク役を演じたイ・ヒョヌは、今回の映画について「たくさん努力した作品」と話した。「(努力の)結実を結んだ。たくさん成長することができた」と付け加えた。映画「シークレット・ミッション」「技術者たち」を経て「延坪海戦」に至った彼がこう話せたのには、それなりの理由があった。前半、中盤、後半に分けられるだけにストーリーの変化が明確なこの映画で、彼はストーリーの流れにスムーズに溶け込んだ。シーンごとに表現しなければならない異なる感情を明確に区分してしっかりと表現した。彼自身が「演じたいと強く思った」と話したパク・ドンヒョクのキャラクターを通じて、イ・ヒョヌの“今日”を目撃した。

―「延坪海戦」をマスコミ試写会ではなく、クラウドファンディング(不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと)の試写会で見た。映画が終わった時、ほとんどの観客が席から立たずに穏やかな拍手を送った。その理由はどうしてだと思う?

イ・ヒョヌ:あ……(しばらく考えてから)僕が感じるには、「延坪海戦」は映画自体はささやかな面白さと笑いがあるが、最後には大きな感動を与えるヒューマンドラマの性格を持った作品だ。そして、映画を見ていると映画的な絵は別として、この映画が何を見せようとしたのかについてたぶん皆が分かると思うが、そんな部分のためだったと思う。実際、それが正確にどんな感情なのかはよく分からない。僕も映画が終わってから今まで感じたことのない感情がぐっと来た気がした。観客も僕と似たような心だったと思う。それで、拍手してくれたのかな?(照れ笑いながら)ハハハ。

―それで、どうしてイ・ヒョヌがこの映画を選択したのだろうともっと気になった。

イ・ヒョヌ:以前、僕が出演した作品と選択基準は違わなかった。シナリオを見て、全体的な絵を見た。その中で僕が演じるようになるキャラクターを通じて何をお見せできるだろう、何を得られるだろうということを考えていたら、パク・ドンヒョクという人物を必ず演じてみたいという気持ちが強くでてきた。

―その基準とは?

イ・ヒョヌ:僕はキャラクターを中心に見るタイプだと思う。

―ドンヒョクのどんな面に魅了されたのか?

イ・ヒョヌ:まず、ドンヒョクは正直で真っ直ぐな人物と言える。それである意味、以前にも多く見せた演技かもしれないし、僕の姿が多く反映されているのかもしれない。とても似たキャラクターだと言う人もいるかもしれないが、むしろ僕は今の姿でこのキャラクターを演じた時、きっと違う雰囲気が出て違う姿が見えると思った。戦闘シーンの場合、他人のために自分を犠牲にして、体を捧げて、気を使う姿から強靭さが感じられて、それを演技で表現してみたいと思った。

―その強靭さは映画の中でどのように表現されたのか?

イ・ヒョヌ:個人的にその部分において見てほしいと思ったのが、ドンヒョクは砲弾が爆発して破片に刺されようが、弾丸が直接飛んできて打たれようが、いつも負傷者を心配する言葉を取り出す。痛くて逃げたいのではなく、痛いのにも関わらずイ・ヒワン部長(イ・ワン)や他の人に「大丈夫ですか?」と聞く。医務兵としては当然すべきことだが、(恐怖を)乗り越えた姿だ。自分より他人のことを心配するその姿が強靭だと感じて表現したかった。

―先ほど、自分の姿が反映されているのかもしれないと話したが、お互いに似た点があったのか?

イ・ヒョヌ:戦闘シーンの前の姿は僕と同じだと思う。ドンヒョクが兵士生活をする時は、僕ももし軍隊に行ったら彼のように行動するだろうと思った。そして、戦闘シーンのドンヒョクの姿は見習いたい部分だ。「もし僕があの状況にいたら、彼のように行動できるだろうか?」と考えてみたことがあるが、絶対彼のようにはできないと思ったからだ。

―映画のポスターを見ると、真ん中に位置して正面を凝視していて、これだけでも「ストーリーを引っ張っていくだろう」「核心人物だろう」と推測できる。そして、映画を見たらやはりそうだった。役割に対する負担はなかったのか?

イ・ヒョヌ:(負担が)とても大きかった。シナリオをもらった時も、物語を引っ張っていく姿が出るから意欲が生じた一方、それだけ負担も大きかった。撮影している間は現場で上手くいかないことがあったり、疑問が生じる部分があったらストレスをたくさん受けた。これをどう解決していったらいいだろうとたくさん悩んだ。それで、他の俳優たちや監督と一緒に話し合いながら絵を作っていった。

―映画が本格的に始まる時、「僕たちは全員が生きて帰ることを願った」というドンヒョクのナレーションが登場する。そして、戦闘が終わった時は「空が青い」と物語をまとめる感じを与えて、非常に重要な役であることを改めて想起させた。この映画で自分が果たすべき役割は何だと思ったのか?

イ・ヒョヌ:ドンヒョクとして物語を上手く引っ張っていかなければならないが、僕は上手くできるだろうかという心配がとても大きかったから、たぶんそれに焦点を置いたと思う。特に、ドンヒョクの感情の変化についてたくさん考えた。映画の中間、あまり映されていなかったが、隊員たちと一緒にいる時のドンヒョクはとても明るい。ずっと笑っていて、誰よりも熱心に(ワールドカップ試合を)応援する。その後、最後に病室にいる時は他の俳優との感情などにたくさん気を使って、映画が伝える感動をより倍増させるように努力した。

―イ・ヒョヌが見た「延坪海戦」はどんな映画なのか?

イ・ヒョヌ:どっしりとした感動がある映画であることは確かだ。映画を見てない方々はどう思っているのか分からないが、重いテーマを扱った映画ではあるが、重くない。

―その理由は?

イ・ヒョヌ:実話をもとにした映画だから色んなことを考えながら見ると思うが、見る時だけは映画として見て、その後に何かを感じてほしい。

―実際の事件を念頭に置いて演じたのか、それともキャラクターだけを見て演じたのか?

イ・ヒョヌ:映画と劇の中で僕が見れる部分に集中した。実際に起きたことであり、胸の痛む事件を見せるための映画ではある。だが、僕は演技をする俳優で、ある人物を観客に見せなければならない立場なので、どうすればキャラクターをより生かすことができるのかに集中した。

―今回の作品でもドンヒョクが母性本能を刺激する部分がある。母親役(キム・ヒジョン)と一緒にいるシーンやハン・サングク下士官(チン・グ)と一緒にいる時は特にそうだった。キャラクターの影響もあるが、イ・ヒョヌという人が持つ雰囲気の影響もあると思う。これは自分にとって得なのか損なのか?

イ・ヒョヌ:得だと思う。「シークレット・ミッション」の時はそのような雰囲気を“ブロマンス(BrotherとRomance)”と見てくださって、ありがたかった。今回の作品では、母親といる時の息子の姿が大きく反映され、ハン・サングク下士官といる時は階級社会で上司と部下がいる時の姿だったのでそう感じたかもしれない。でも、僕としては成功だった。僕が見せたかった姿だったから。

―また、ドンヒョクは誰といても“ケミ”(ケミストリー、相手役との相性)が良かった。チョコパイを渡したキム一等兵(キム・ヒチャン)、先ほど話したハン・サングク下士官、母親等々。いざ、俳優イ・ヒョヌは誰といる時により大きな相乗効果を発揮できたのか?

イ・ヒョヌ:二人を挙げられる。チン・グ兄さんと映画の中で同期であるクォン・ギヒョン役を演じた(キム)ドンヒ兄さんだ。その二人と撮影する時に一番気持ちが楽になった。ドンヒ兄さんは僕の面倒をよくみてくれて、可愛がってくれた。映画で友達の役だったので、先に友達のように話しかけてくれて、気楽に接してくれた。チン・グ兄さんもドンヒ兄さんのような部分もあったけど、演技をする時に自分も知らないうちに兄さんの演技に引き込まれて、自然に演技に集中することができた。一緒に演技する演技者として楽しかった。楽しいという表現があっていると思う。もちろん、映画では母親と息子の姿が一番浮き彫りになっていたので、そのようなシーンたちが記憶に残ると思うが、おっしゃった通り、色んな人と感情を分かち合った。細かく見ると、そのような部分がたくさんある。

―個人的にハン・サングク下士官の隣に座っている時が一番自然で気楽に見えた。

イ・ヒョヌ:兄さんと撮影しながら本当に幸せだった。戦闘中に操舵室でハン・サングク下士官に「下士官、もう行かなければなりません」と話した時、「君は人々を助け、僕はこの船を守る。君は君の行く道を行けばいい」と言って、ドンヒョクが一人で下りるシーンがあった。そのシーンを撮影した時に兄さんとたくさん話し合った。そのようにたくさん悩んだ末に撮影した結果が出た時は本当に嬉しかった。僕が前にいたからそう言ったのかもしれないが、チン・グ兄さんも「僕は『延坪海戦』を撮影しながら君と演技をした時が一番良かった。気楽に撮影できた」と言ってくれた。兄さんからこんなことも聞いたし、僕も色んな感情を感じたので兄さんと一緒にしたそのシーンが一番記憶に残る。

―制作発表会でチン・グが“(ヒョヌが)よく絡む”と話し、愛されている弟なんだなと思った。

イ・ヒョヌ:ヘヘヘ。チン・グ兄さんの表現が……表現が意地悪だけど、その中から感じられる温かい情がある。

―だからか、二人のそのような感情が、映画でもにじみ出ていた。

イ・ヒョヌ:そうだ。

―今年の初め、SBSドラマ「明日に向かって走れ」では、父親への愛が、「延坪海戦」では母親への切ない気持ちが現れていた。男女の愛より大きな概念の愛に惹かれるのか?と思ってみた。

イ・ヒョヌ:あ、そうではない。

―偶然だったのか?

イ・ヒョヌ:そうだ。偶然かもしれないし、必然かもしれない(笑) そのようなことを考えて作品を選んでいない。

―話は変わるが、このメモ帳(インタビュー当時、テーブルの上には『延坪海戦』のポスターが表紙になったメモ帳が3つ置いてあった)はどうしてここに置いたのか?(笑)

イ・ヒョヌ:ハハハ。これ、見て良いですよ。無かったら、あげようと思って置いたのに……

―最近、周りに「延坪海戦」について直接広報しているのか? Instagram(写真共有SNS)でヨーグルトのお店の社長に映画の広報をしたという書き込みを見た。

イ・ヒョヌ:さっき(窓の外を指差しながら)あそこにあるヨーグルトのお店に行った。何を売っているお店なのかなと思いのぞいていたら、社長が入ってきて一口ずつ試食してみてもいいと誘ってくださって入ったら、1カップもくれた。ただで食べるのも申し訳なかったので、計算をした後、「今度、僕の映画が公開されるので、是非見にきてください」と宣伝した。

―映画を見た知人や友達はいるのか?

イ・ヒョヌ:知人たちは試写会の時に来て見た。悲しかった、たくさん泣いたと言ってくれる人が多かった。僕は撮影現場でずっと一緒だったマネージャーの兄さんと一緒に見た後、物足りなかった部分について話し合った。

―どんな点が物足りなかったのか?

イ・チョヌ:ほとんど演技的な部分だった。良い部分もあったけど、すべてが上手く行く、というわけにはいかない。でも、幸いだったのは全体的な流れを壊していなかったようだ……自分なりに良い方に考えている。

―俳優たちは自分の演技に常に物足りなさを感じている。「延坪海戦」はイ・ヒョヌにとってどんな映画として記憶に残るだろうか?

イ・ヒョヌ:うん……一生懸命努力した作品だ。以前の作品でも努力はしたが、今回の作品ではもっと大きかった。最近の作品である「シークレット・ミッション」と「技術者たち」のことを話すと、「シークレット・ミッション」は遊び場に行くように負担を感じずに遊びに行っていた作品で、「技術者たち」はそれなりにたくさん準備したけど、物足りなさを感じた作品だった。「延坪海戦」は本当に一生懸命努力したので、自分なりには努力が実を結んだ作品と言えるだろう。個人的に大きく成長することができた。

―成長した姿をお見せできる時期作の計画は?

イ・ヒョヌ:まだ正確に決まったことはない。何をすれば良いのかまだ分からない。映画になるか、ドラマになるか。仕事の話をしていると、早く次の作品がしたくなる。

記者 : イ・ジョンファ、写真 : ク・ヘジョン、翻訳 : ナ・ウンジョン、チェ・ユンジョン