リュ・スンボム、韓国を離れて“放浪者”となった理由ある逸脱

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突然韓国での生活を片付けてフランスに行った俳優リュ・スンボム。世の中を驚かせた後、逃避するためではなく、ただ突然自由を求めて旅に出た彼の歩みは不思議でもあり、不自然でもある。“放浪者”、彼を説明するにはピッタリな単語だ。

予告もなく旅に出たリュ・スンボムは、彼の空席が寂しく感じてきた頃、予告もなく観客の前に立った。自由を満喫して戻ってきた彼は、世の中の道理を悟った道人の姿で余裕を見せる。鳥かごから脱した鳥のように、飛び上がった彼にとって犯罪アクション映画「私の親友悪党たち」(監督:イム・サンス、制作:フィルムパマル)は、休止符の役割をきちんと果たした。

「私の親友悪党たち」で、古くみすぼらしい現実の中でもポジティブな思考と愉快さを忘れない愛おしい変わり者ジヌ。“パリジャン”に変身したリュ・スンボムと高いシンクロ率を誇る。

映画「ベルリンファイル」(2013年)以来、2年ぶりに映画「私の親友悪党たち」に出演したリュ・スンボム。「今回の作品が俳優人生において“最後の若さの記録”になれるかもしれないと思って出演を決めた」という彼の言うとおり、今回が最後、あるいは始まりになるかもしれない。

「韓国でのすべてを清算して3年前にパリに向かいました。数着の服だけを持って行きました。たくさんの変化がありました。とてもプライベートなことなので一々話すことはできませんが、本来の姿に戻ったような気がします。これまで仕事のために縛られていたすべてを開放し、自由を取り戻したからです。僕の中に潜在されていた性格や実体がやっと世界の外に出たような気がします。僕は今ノーメイクです。メイクをする理由もなくなりました。ただの人間リュ・スンボム、僕という人間が現れたんです(笑)」

―「私の親友悪党たち」の試写会を控えている。もしかしてもう映画を見たのか?

リュ・スンボム:はい。昨日イム・サンス監督と一緒に見ました。とても面白く、ユニークな映画でした。イム・サンス監督のメッセージが込められているところが良かったし、いろいろと気に入った映画だと思います。久々によいエネルギーを与える映画のような気がして、胸がいっぱいになりました。この作品はクールです。軽いし、大胆です。もちろんブラックコメディ的な要素はありますが、クールです。力を抜いているけど、ある部分では強烈に生きている感じを受けました。

―R19判定を受けた。

リュ・スンボム:韓国の情緒ではそうなのかなと思います。実は、フランスで一番羨ましかったのは、子供たちがミュージアムで遊んでいる光景でした。作品を理解しようとするのではなく、ただ遊びながら楽しんでいました。そういうところに驚きました。韓国もそうだったら等級の制約はなかったと思います。

―フランスで3年間どうやって過ごしたのか?

リュ・スンボム:本当に多くのことがありました。別人になったみたいです。35年間生きてきた時間ほど、パリでの3年間が長かったです。多くの経験、インスピレーションを受け、考え方と食べ物も変わりました。菜食を楽しむようになり、お酒もやめました。このような表現があってるかどうか分からないけど、自分の中の油が取れたような気がします。

―変化のきっかけがあったのか?

リュ・スンボム:別にきっかけがあったわけではありません。環境も変わるし、会う人も様々になるから自然と変わったみたいです。一つのきっかけを挙げるのは難しいです。毎日違う生活をしているからです。僕のパリ生活を知らせることも3年間悩みましたが、すでにみんな知っていました(笑) パリは僕にピッタリな都市だと思います。気楽になろうと思って向かいましたが、成功しました。今は完璧なアウトサイダーになりました。

―自らの変化が演技にも反映されたと思うのか。

リュ・スンボム:そうだと思います。作品を選ぶ視線も変わりましたし。特に、今回の「私の親友悪党たち」を見てたくさん感じました。

―作品を見る目がどのように変わったのか。

リュ・スンボム:まずは恥ずかしくない作品がしたくなりました。時間が経つと、これまで出演した僕の映画が全部記録として残っていました。とても深刻な問題だということに気づきました。僕が死んだ後にも僕の演技は残っているという話じゃないですか。僕という人間を消耗してはいけないと思いました。永遠に残されても悔いのない作品がしたいです。

―心境の変化は俳優としての発展の延長線上にあるものか、それとも結婚のための段階なのか。

リュ・スンボム:いつも芸術に対する渇きがあり、芸術に溺れる人間として生まれたと思います。でも必ずしも俳優のために生きているわけでもありません。俳優の人生も大事だけど、僕自身の人生も大事だと思います。結婚は本当に分かりません。別に結婚に縛られた人ではありません。縁があれば結婚もできると思います。自然な過程じゃないでしょうか?

―「パリジャン」という修飾語がつくほどパリを愛しているようだ。

リュ・スンボム:もともと計画を立てて活動する俳優ではなかったから。だからといって僕がフランスに憧れていたわけではありません。社会主義の国に対する好奇心が多くて自然と目が向きました。観光客ではなく、地元の人として彼らの世界に接するために行ったんです。明日すぐに韓国に拠点を移すかもしれません。決まったものはありません。たぶん近いうちにほかのヨーロッパの地域に移ると思います。真剣に暮らしています。

―多くの知人たちがパリに遊びにきたと思う。

リュ・スンボム:僕が住み始めたばかりの頃、たくさん遊びにきました。今は知人たちの間で面白いキャラクターになりました。時々、不思議な目で見られます。ある日、突然トランク2個に荷物を入れてパリに向かったからです。韓国でのすべてを清算して。

―リュ・スンボムにはファッショニスタという修飾語もあるが。

リュ・スンボム:僕はいつまでその言葉を聞かなければならないのか…(笑) 僕ももうすぐ40歳になるので、そのような修飾語は恥ずかしくなりました。「男になった」「良い俳優だ」と言われたいです。ファッショニスタは若い頃に聞いて嬉しい言葉だと思います。

―年齢を実感しているのか?

リュ・スンボム:相変わらず年を取っていない部分もあり、反対に年齢に慣れた部分もあります。考え方や志は変わるような気がします。重くなるよりは、真剣に変わるような気がします。(―物事が分かるようになったのか?)そうだと言うにはちょっと恥ずかしいですね(笑)

―3年間の空白、パリでの生活費はどのように解決したのか。

リュ・スンボム:パリに行ったのはお金を稼ぐ気がないからです。簡単なモデルのバイトはしましたが、今はそれも恥ずかしくて断ります。もともとお金の心配はあまりしません。お金がなかったら使わなければいいという主義ですから。これまで稼いだお金で生活はできるから、そうやって生活を維持しました。

―韓国での人生は、リュ・スンボムにとっては自由を抑圧した人生だったのか。

リュ・スンボム:必ずしも「そうだ」というわけではありませんが、どうも顔が知られた俳優だから縛られる部分があります。まず空港に着いただけで人々が僕を見るじゃないですか。それが不自由だったんです。でもパリに到着してからはそのような不自由がなくなるから夢中になるしかないですね。一言で言うと、自由を味わったんです。

―パリでの生活に夢中になったリュ・スンボムに引退を囁く人もいる。

リュ・スンボム:引退ではありません。引退を決めるのは僕ではなく、大衆だと思います。これ以上見たくなかったらそれが引退です。でも、それまでは一生できる職業が俳優じゃないですか。だから僕は人生を分けました。二重生活を送るんです。

―引き続きパリで暮らす気か?

リュ・スンボム:居住権の問題があるのでたくさん移ったりしましたが、まだ若いのでもっと多くのものが見たいし、多くのことが知りたいです。1ヶ所で過ごすより、流浪したいですね。慣れました。

―海外からのラブコールはないのか?

リュ・スンボム:機会はあります。でも自由に静かに暮らしたいです。もし海外の作品に出演することになれば、自由がもっとなくなるからです。輝くセレブもいいけど、僕の人生のために生きたいです。有名になるということは、思ったより大変です。自由になりたいです。視線を浴び、拘束されるより、僕だけの空間が必要です。もちろん、誰かに愛されることはありがたいです。でも問題は、365日愛されるのは大変だということです。

―パリに向かったリュ・スンボムに兄リュ・スンワン監督のアドバイスはなかったのか。

リュ・スンボム:一番早く知った人です。僕に『その男ゾルバ』(ギリシャの作家ニコス・ カザンザキス著)という本をプレゼントしてくれました。その本が僕のパリ生活に多くの影響を及ぼしました。兄はいつも、僕にとってそのような存在です。1年前、一時帰国した時に、兄にキャンプを提案し、一緒に行ったことがあります。兄だけには僕の考えを知らせかったし、僕がどのような感情を抱いているのかを話したかったからです。もちろん、僕も兄に対して気になる部分がありましたし。男対男、人間対人間として会える、世界で一番気楽な関係です。今回は兄が忙しすぎて会えなかったけど、会いたいですね(笑)

―3年前のリュ・スンボムより現在のリュ・スンボムの方がもっと幸せなのか。

リュ・スンボム:まず気楽で、ハッピーでもあります。とても気楽で、とても幸せです。ストレスもないから、自ら見た時にとても良好な状態だと思います。過ぎた話をするのは無意味ですが。

―自由だけど寂しいときも多そうだが。

リュ・スンボム:そうです。寂しい程度ではなく、孤独です。こんなにも孤独な人だということに今回気づきました。これからはクールに認めようと思います。孤独は避けたくても避けられるものではないでしょう?自ら認めると、心が静かになりました。どこでもアウトサイダーで幽霊のような存在になったけど、それを楽しんでいるような気がします。今は人に会うのが気まずくなりました(笑)

―「私の親友悪党たち」のPR活動で疲れたようだ。

リュ・スンボム:簡単なことではないと思います。でも商業映画に出演した俳優が、当たり前のように持つべき責任感だとも思います。これからはあまり有名にならなくてもいいような気がします。最近思うのは、僕があえて誰かにとって影響力のある人になれるなら、良い影響力を及ぼしたいということです。「こう生きてもいい」「こういう人もいる」という部分を見せたいです。映画も同じです。「私の親友悪党たち」のような映画もあると言いたいです。僕みたいな俳優も必要じゃないでしょうか?(笑)

記者 : チョ・ジヨン、写真 : フィルムパマル