1993年生まれの同い年4人で結成…実力派バンドHYUKOHが歌う「今この瞬間」

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写真=drdramc

バンドHYUKOHの第一印象はかなりユニークだった。坊主頭にしたボーカルのオ・ヒョクをはじめ、ドラムのイ・イヌはまるで漫画の主人公のように髪を全て立たせたヘアスタイル、ベースのイム・ドンゴンはセンター分けの前髪で登場した。非常にダンディーなビジュアルを持つギターのイム・ヒョンジェはショートパンツを着こなし、視線をどこに向ければいいのか分からなかった。

HYUKOHは外見と同じくらい独特な音楽カラーを持っている。サウンドは英米バンドのようだが、ボーカルは黒人のトーンに近い。歌詞はほとんどが英語で、内容もかなり重々しい。5月28日に発売された2nd EPアルバム「22」も同様だ。HYUKOHは関係網の誤作動とそれによる寂しさ、虚しさなどについて深い歌詞で表現した。同時に誇張されたリバーブやエフェクトを大胆に排除し、オ・ヒョクのボーカルを繊細に生かして音楽を聴く人にさらに近づく。

HYUKOHの最も大きな特徴は年齢にある。HYUKOHのメンバー4人は全員1993年生まれで、やっと23歳(数え年)になった。バンドが結成されてからも、やっと1年余り。これほどの経歴でこのような“カラー”を出せるグループは、断言するにあまり多くない。まだ若いが彼らは今までの時間を決して無駄にしていなかった。

―まず、アルバムの紹介をお願いしたい。

オ・ヒョク:2枚目のEP「22」というアルバムだ。1stアルバムを出した時よりは見られる視線が変わった。1stアルバムには10代後半から20代前半までの様々な感情を盛り込んだが、今回のアルバムではその後に生じた内外的な変化とそれに関する考えを扱った。前作よりもう少し簡単で淡々としたニュアンスで表現しようとした。

―どんな変化があったのか?

オ・ヒョク:様々な変化があってその幅も広かったが、今回のアルバムでは主に人間関係についての曲を書いた。

―人間関係について以前と変わったと感じたのか?

オ・ヒョク:一次的に懐疑心が生まれた。自分と他人の考えがずれる可能性もあると思い、何かを受け入れる時はただ直接的に受け入れてはいけない気がした。

イム・ヒョンジェ:「Hooka」の場合は僕たちが人気になった後、あまり知らなかった人が親しいふりやよく知っているふりをする経験について書いた。

―1stアルバムに対するの反応がかなりホットだったので、新しい人にたくさん出会ったと思う。

イム・ヒョンジェ:人々の関心を受けたから変化が生じるのは自然なことだが、少し突然のことのように感じられた。僕たち自体が社会活動や友達と付き合うことに慣れていない性格でもある。

オ・ヒョク:ぎこちない感じもするが、ネガティブなぎこちなさではなく面白い。

―バンドを結成したきっかけについて聞きたい。

イム・ヒョンジェ:ヒョクは以前からバンドをやりたいという意志を持っていた。だから、ワンマンバンドとして活動しながら「20」というアルバムのレコーディングをすでに終えた状態だった。当時はイヌがドラムを叩いて、以前バンドをやっていた知り合いの兄さんがギターの録音をした。そんな中、高校の同級生だったイヌが僕に連絡をくれてバンドに合流することになった。ドンゴンはヒョクが中国にいる時に知り合ったお姉さんと交際中だった。音楽をやっていると聞いて一緒にバンドをしてみようと提案した。

―オ・ヒョクはソロでボーカリストになることもできそうだが、バンドを結成した理由はあるのか?

オ・ヒョク:まず、僕は他の皆がよくやることはあまり好きじゃない。興味があまり湧かない。ソロでボーカリストになろうと思ったらたぶんなれたと思うが、魅力をあまり感じなかった。大学1年生の時、学校の友達とプロジェクトの形でバンドをやったことがある。その後、ワンマンバンドもやってみた。だが、面白さが違った。バンドとして最後までずっとやっていくということがとても難しいことは知っている。世界の大半のバンドが解散を経験した。だが、僕はそれを破ってみたかった。難しいだけに面白さがある。

―他のメンバーたちもHYUKOHの前に音楽活動をしていた経験があると聞いた。

イム・ヒョンジェ:特別な経験はない。バンドをやるのはHYUKOHが初めてだ。ただ、その準備過程があった。僕の場合は学校でギターを専攻していた。大学時代、休学してプロデュースの勉強をしたことがあるが、その時にイヌを通じてバンド結成を提案された。

イ・イヌ:僕は小さい頃から音楽をやってきた。クラシック音楽をやっていたことがあって、ヒップホップに心酔した時期もあった。ドラムも続けていたが、途中で懐疑心が生まれて2年ぐらい休みながらプロデュースの勉強をした。そんな時にヒョクに出会ってバンドをやることになった。

イム・ドンゴン:本来はベースではなく、ギターを弾いていた。バンドも1~2組ぐらい経験したが、主にセッションとして活動した。ハン・ヨンエ先生とご一緒したことがあって、Mnet「MUSTバンドの時代」にも出場した。

―オ・ヒョクは大学で芸術学を専攻しているが、音楽と関連のある学科に進学しなかった理由はあるのか?

オ・ヒョク:学問を学ぶことにすごく関心があった。ファッションや美術が好きということもある。実は実用音楽学科に行きたくなかった。そこに行かなくても音楽をやるはずなのに、あえて学ぶ必要があるのかと考えた。

―芸術学を専攻しているからか、アルバムのアートワークにも力を入れた。どんなコンセプトなのか?

オ・ヒョク:1stアルバムを出して次のアルバムを構想する過程でアイデアを発展させていたら、今のようなアートワークが出てきた。1stアルバムはとても長いイメージで構成されている。今回のアルバムと最初のアルバムはお互いに繋がっているが、それが時間の属性を象徴するように感じた。だからアルバム名も「20」から数字を足した「22」にした。これは長期間のアーカイブになるかもしれない。僕たちのアルバムの雰囲気はコンセプトを決めてから進行されるのではなく、アルバムを準備しながら感じたもの、特定の時間帯に感じたものを詰め込んだため、象徴的な表現を入れようとした。

―他のメンバーたちは美術分野の作業はどうだったのか?

イム・ヒョンジェ:大きな枠組みの中でオ・ヒョクや作家がアイデアを提示してくれて、それに大きな疑問を持ったり、反感を抱いたことはなかった。メンバー全員が同意したから進行された。実はアートワークは複数の作家とコラボレーションを行う概念なので、特定のキャラクターを描いてほしいなどのディレクションはしなかった。

―アルバムのタイトルを見ると、年齢に非常にフォーカスを置いているように見える。理由はあるのか?

オ・ヒョク:今という時間は過ぎたら二度と戻ってこない。瞬間瞬間を収めていたらそれが積み重なって、僕がどのように生きてきてどんな考えをしたのかを見せる結果になると考えた。“年齢”という境界線でくくると、様々な考えを包括的に盛り込むことができる。「この瞬間にはこんなことを経験した」という記録になる。

―20代半ばに向かっているが、大人になっていく感じはするか?

イム・ヒョンジェ:多くのことに責任感が生まれる気がする。バンドが大きくなってそれを実際に体感しているから、それに対する責任感や次のアルバムに対する責任感が生まれる。

オ・ヒョク:実際、僕たちは一般的な20代前半の人々と違う経験をしている。僕たちは学生の身分でもなく、保護装置もない。社会に放り込まれたのだ。様々な経験をして、キャリアを築いて、その中で嬉しいことに多くの関心を受けている。だから同じ年頃の人たちのように大人になっていくことを体感するよりも、ただ今感じていることをより深く味わおうと思う。それから、実はこのフィールドには僕たちと同じ年頃の人がほとんどいない。親しいバンドのメンバーたちは少なくとも10歳以上の年齢差がある。その方々に会ってみると、彼らは年を取ることを体感していない。「一昨日20歳だったのに、ある時、振り返ってみたら年を取っていた」と話す。だから僕たちも大人になっていくことを感じるというよりは、ただ僕たちが持っている考えを表現しようとしている。

―同じ年頃の人だけでなく、ほとんどの人と違う経験をしている。それなのに、どうしてHYUKOHの曲は人々の共感を得ることができたのだろう?

イム・ヒョンジェ:ヒョクの歌詞や歌は特別な経験について書いていない。寂しさのように、基本的な関係を結んでいれば経験する感情に関する歌だからだと思う。

オ・ヒョク:経験する問題が違うだけで、感じる感情は同じようなものだ。

―タイトル曲「ワリガリ」はどんな意味なのか?

オ・ヒョク:小学生の時にやった遊びの名前だ。両サイドにボールを投げる人がいて、真ん中にいる鬼はそのボールを奪わなければならない。鬼はボールを取るまで走り回る。「ワリガリ」という遊びの名前の中に「行ったり来たり」という意味があると思った。1stアルバムを出してから人々との関係において変化が生じた。フィルタリングがない状況で、新しい人が近づいてきて多くのものが流入され、懐疑心が生まれた。新しい人に慣れようとしたら離れていって、また誰かが近づいてきて離れる。その時の感情を「ワリガリ」に込めた。

―虚しさと懐疑心について歌っているのに、歌詞には「play」という表現を使い、曲も楽しい雰囲気だ。逆説的な表現が好きなのか?

オ・ヒョク:ギャップを与えようという意図というよりも、僕たちが生きている姿がそうなんだと思う。人々は普段大変でも大変だと話さず、笑う姿だけ見せようとするじゃないか。音楽も同じだ。

―「ワリガリ」を含め、今回のアルバムは全体的に“寂しさ”“空しさ”を主なキーワードにしている。実際にそんな感情をよく感じているのか?

イム・ドンゴン:こうやって一緒にいると楽しいが、 (一同:じゃあ家に帰らないで) いや、でも家には帰らなければならない。どうして寂しいのかよく分からない。

イム・ヒョンジェ:個人的には孤独な人がいて、孤独になりたがる人もいると思う。僕の場合は後者だ。一人でいることが好きで、そんな時間が必要だ。でも、一人でいることがずっと続くと苦しくなる。

オ・ヒョク:僕もそうだ。

イ・イヌ:僕は寂しくなりたくない。

イム・ヒョンジェ:外交的な人は他人と一緒にいてエネルギーを得る。僕は寂しさというキーワードは誰もが持っていると思う。僕にとっても寂しさは重要なキーワードだ。でも、「僕、寂しい」と露骨に表現するのは良い方法ではないと思う。だから曲を作る時はそう表現しないように努力している。

―以前は主に英語で歌詞を書いていた。

オ・ヒョク:幼い頃から英米圏の音楽を聞いたので、作る時も自然に英語でアプローチするようになった。韓国語で歌詞を書くと、上手く書かなければならないというプレッシャーのようなものがある。今後、準備がより整った時にやってみようと思った。

―今回のアルバムでは韓国語の歌詞が増えた。もう準備ができたと感じたのか?

オ・ヒョク:Primaryと「Lucky You!」のアルバムを作った時、韓国語で歌詞を書いた。そこで良いフィードバックが来て、少し勇気をもらえた。

―上手く書かなければならないというプレッシャーは内容についてなのか、それとも表現力についてなのか?

オ・ヒョク:両方だ。歌詞には個人的な部分を盛り込むことになる。それを整っていない状態で書いていると、裸になっていく気がする。

―マニア層からの口コミが始まって、多くのミュージシャンが褒め称えた。そして、今は大衆的な認知度も高くなっている。予想していたのか?

オ・ヒョク:予想していた。「音楽配信チャート(の上位)に行けそう」と考えたのではなく、音楽に対する信頼があった。

イム・ヒョンジェ:大衆に愛されるだろうという信頼があったのは、僕たちの音楽がとてもマニアックだったり、理解できない形ではないからだ。聞き慣れない音楽だが、その聞き慣れない感じは表現方法におけるぎこちなさであって、大衆的な感じは十分に持っていると思った。

―曲の制作はどのように行うのか?

イム・ヒョンジェ:歌詞はほぼヒョクが書いて、それを僕たちに見せて一緒に共有する。歌を歌う人が書くのが正しいと思う。作曲の場合、曲の大きな形やテーマは合奏中に出てくる。それを一緒に編曲する過程でメロディーの構成をほとんどヒョクが行う。

―意見はうまく調整できる方なのか?

イム・ヒョンジェ:うまくできる方だ。一人が自分の考えていることをやろうと主導するケースは何度かあった。(オ・ヒョク:僕がそうした。ごめんなさい) でも、そんなケースがかなりなくなっている。最初、バンドが集まった時はお互いに好みが違うからそれを一致させる過程が必要だった。そのたびにリファレンスをヒョクが提示した。序盤は意見が一致していない状況で作業が行われたこともあったが、結果的に悪いとばかりは言えない。

―曲の制作に参加する比重を高めたくないのか? 歌詞はオ・ヒョクの比重が大きい。

イム・ヒョンジェ:時間の問題だと思う。バンドとしてより成熟した段階になったら、僕たちも参加するようになるだろう。今は歌を歌う人が作詞して自分が書いた歌詞に集中して歌を歌うのが安定すると思う。僕たちはバンドを結成してからあまり経っていない。作詞を簡単に考えてその分野に接近すると、バンドの方向性に問題が生まれるかもしれない。フルアルバムを出して、僕たちがより仲良くなって、音楽的にも共通の方向性が出てきたら一緒に作れるだろう。

―一緒に曲を作るには、お互いに自分の深いところを見せなければならない時もあると思う。

イム・ヒョンジェ:個人的にはそんなことも必要だと思うが、必ずそうしなければならないとは言えない。ヒョクも自分の深いところを僕たちに100%見せてくれたとは思わないが、そうする必要もないと思う。

オ・ヒョク:アプローチの方法だと思う。もちろん、歌詞を書いたり、曲の雰囲気を作る時は当時感じたものを深いところから引っ張り出す。だが、音楽をする人間としてコンテンツを作ると考えて作っているので、個人的な部分を直接露出するのは難しい気がする。

―例えば「こんなことがあって、こんなことを考えて、こんな曲を書いた」というような話はあまりしないのか?

イム・ヒョンジェ:そんなことがある時は話す。だからといって、キャンドルを一つずつ持って話すのではない。ハハ。

イム・ドンゴン:一度やってみよう。面白そうだ。

イム・ヒョンジェ:そんな時間をわざわざ作ることはないが、お互いに話すと深く受け入れてくれる。お互いに対する信頼がある。

―今回のアルバムはどんな活動を計画しているのか? 公演やテレビ出演の計画もあるのか?

オ・ヒョク:あるべきだ。多くなければならない。僕たちは音楽をする人間だから、音楽を紹介する機会があれば、それがテレビであれステージであれ関係ない。結果的にやりたいことを面白くかっこよく披露できるんだったら、僕たちはやる。

記者 : イ・ウノ、翻訳 : ナ・ウンジョン