【K-ローカル・シリーズ Vol.02<イ・スンファン>】アーティスト生活26年目の“ライブの皇帝”「日本で道場破りツアーをしてみたい」
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イ・スンファン氏を初めて見たのは、2004年に渋谷の小さなライブハウスで行われた「東京アジアミュージックマーケット(TAMM)」のショーケースだった。ベビーフェイスの小柄な彼に、ベテランながら“少年”のような第一印象を持ったものの、いざマイクを握るとパワフルでエネルギッシュ、加えてハリのある艶っぽい歌声がとても印象的だった。その後、韓国でのダイナミックなソロライブを見たとき、“ライブの皇帝”と言われるゆえんに大きく納得させられた。今年でデビュー26年目となるが、若手と積極的に交流し、イキイキとした音楽性を奏で続ける。日本メディアの取材はとても珍しいということで、まさか(?!) の質問にも応じてくれた貴重なインタビューとなった。
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イ・スンファン:僕の音楽的な成功を、専門家たちの選考を通じて認められた賞なので、本当に喜びがまだ冷めやらないほどうれしいです。日ごろから努力を重ねてきたことが、実を結んだのだろうと思います。支えてくれたファンの皆さんにもたちにも感謝ですね。
―イ・スンファンさんと言えば、エンターテインメント性の高いライブを見せることから、韓国で「ライブの皇帝」と言われていますが、ライブへのこだわりとは?
イ・スンファン:韓国のライブで、音響、舞台装置、演出など、先駆者的な役割を果たしてきたと自負しています。音楽をやる者として常に進化を意識しながら、徹底した自己管理をと投資を心掛けてきました。“節制された生活”“進化する創造力”“実力”これらが舞台を創り上げる原則と感じています。
―最近、後輩バンドとのジョイントライブや、アルバムでも若手と積極的にコラボレーションされていますが、自身の音楽に影響はありましたか?
イ・スンファン:インディバンドからも、素晴らしい情熱や創造力など学ぶ点は本当にたくさんあって、彼らの若い感覚やステージマナーなど、新しく習得することも多いですね。どんなステージでもベストを尽くし、最高のパフォーマンスを見せなければならないという思いで立っています。
―昨年リリースした11thアルバム「Fall To Fly 前」は、3年の制作期間と、4千万円近い製作費を投じ、こだわりぬいた楽曲が収録されたことで大きく注目されました。どんな点にポイントを置きましたか?
イ・スンファン:韓国社会が抱いている、機会均等の問題や表現の自由などについての内容を込めています。つまり、青春をあきらめずに希望を持てという肯定的なメッセージです。
「日本でライブを見て、僕の中でもさらなる熱い気持ちを育てられた」
―日本でのステージは、2004年の東京アジアミュージックマーケットが唯一ですね。ずいぶん前ですが、日本のステージに立った感想はいかがでしたか?イ・スンファン:とても小さな会場でしたが、プロフェッショナルなスタッフの皆さんの作業に感動を覚えましたよ。実はもっと、僕のハードな音楽性やディープな世界観を伝えたかったのですが、歓声があまりないライブは初めてだったので……(笑) 少し不自然な空気を感じたのを覚えています。
―関係者のみのショーケースでしたから特殊な空間でしたよね。ところで日本でのライブに興味はありますか?
イ・スンファン:はい、とても興味がありますよ。日本有数のロックフェスティバルの関係者とお会いしたこともありますし、小さなライブハウスツアーを計画したこともありました。日本のバンドを見るために、日本のライブハウスへ通ったこともあるんですよ。とてもエネルギーあふれるライブが1つの空間で展開されていて、それを観客たちみんなが呼応する――その様子を見て、僕の中でもさらなる熱い気持ちを育てられました。すでに何度も日本でライブを行っている、Yellow Monsters(イエローモンスターズ) やRomantic Punch(ロマンチックパンチ) などのバンドに、僕がオープニングに立つから日本のステージに出してくれと真剣にお願いしたこともありました。また僕の実力が認められるなら、“道場破り”タイプのライブツアーなども面白そうですね。
―道場破りツアー! ぜひ見てみたいです。日本のミュージシャンで、コラボレーションしてみたい人は? また音楽以外で日本に興味あることは?
イ・スンファン:以前に韓国で、B'zとのジョイントライブの話が出たことがあったんですよ。同じ年頃なこともありますし、彼らと何か一緒に出来たら面白いでしょうね! それと日本のファッションも好きですよ。好きなブランドはクリスチャンダダ、ヨシオクボ、ato、JURIUSなど、たくさんあります。
「ライブで感動してもらえるよう、真剣な準備と本物の実力が必要」
―さて、イ・スンファンさんのセクシーな歌い方を色んな人が真似をしますが、ご本人はどう感じていますか?(※歌尾を跳ねあげる独特な歌マネが、一時流行した)イ・スンファン:実は戸惑っているんですよ(苦笑) 僕の最大のヒット曲「千日の間」(1995) のときに、あの歌い方で歌っただけなのに、とても誇張さることが多いので、最近はあまり歌っていないです。
―その話の延長で恐縮ですが……イ・スンファンさんの歌い方が、日本の河村隆一さん(元LUNA SEA) に似ていると言う声があるんです。似ていると言われて如何でしょうか……?
イ・スンファン:河村隆一さんですか?(曲を聴いて) う~ん、僕はこんなにも鼻声じゃないかな?(笑)
―わざわざありがとうございます! さて多くの女性がうらやむ、イ・スンファンさんの若さの秘訣は何でしょうか?
イ・スンファン:そんなに肌がきれいな方では無いと思いますが、皮膚科へ2週に1度くらいは通っていますね。
―ところでこの5年ほど、K-POPとして多くのアーティストたちが世界へ羽ばたいていますが、イ・スンファンさんのように素晴らしいアーティストの皆さんが、なかなか日本で知られる機会がありません。海外進出に対して、どうするのが理想的だと感じていますか?
イ・スンファン:いちばん理想的な形は、やはりライブを通した交流でしょうね。ライブ現場で感動してもらえるよう、真剣な準備と本物の実力が必要でしょう。ですが、(メインストリームとの) ルートを持たないアーティストが大部分である弘大(ホンデ) のミュージシャンたちは、その機会が奪われてしまい、うまく回ってきていないように感じます。
―最後に日本の皆さんに、メッセージを。
イ・スンファン:アルバムを聴いてもらうと、バラードからロックまでを歌う、幅広いミュージシャンだと知ってもらえることでしょう。早いうちに日本の皆さんと、ライブ会場で熱く燃え上がるように盛り上がりたいです。そのときまでお互い死なずに(笑) どうぞお元気で~!
イ・スンファン「君だけに反応する」
イ・スンファン「僕だけに起こること」
執筆/日韓音楽コミュニケーター 筧 真帆
2004~2007年韓国在住。韓国の音楽を日本へ、日本の音楽を韓国へ、双方をつなぐコミュニケーションを担い、メディア発信からアーティストやライブのエージェントを手掛ける。
記者 : Kstyle編集部