キム・サンギョン「『鬼はさまよう』のため10日で10kg減量…はっきりとした違いを表現したかった」

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すでに3度目の刑事役だ。「殺人の追憶」「悪魔は誰だ」に続き、「鬼はさまよう」(監督:ソン・ヨンホ、制作:ミインピクチャーズ)まで。ここまで来ると飽きそうなものだが、毎回違うスタイルの演技で3人の刑事を誕生させた俳優キム・サンギョン。

スリラー映画の不毛の地に近かった忠武路(チュンムロ:韓国映画界の代名詞)に韓国型スリラーの新たな章を刻んだ「殺人の追憶」から12年が経った今、キム・サンギョンは「鬼はさまよう」から妙な既視感を覚えたという。まるで「殺人の追憶」で検挙できなかった犯人を「鬼はさまよう」でようやく検挙した気分というのだろうか。

よく犯罪スリラー映画は犯人を検挙する過程で観客を緊張させるが、「鬼はさまよう」は犯人を検挙した後に集中する。愛する妹が、妻が、残酷に殺害された後、一日一日を耐えなければならない被害者たちの地獄のような現実を強調するという点で、これまでに彼が出演した作品と異なる。この点が、キム・サンギョンを再び“刑事役”に向かわせた動力だった。

彼は「鬼はさまよう」で偶然捕まった連続殺人犯が自分の妹を殺したという事実を知った後、どん底に落ちる刑事テス役を演じた。彼は序盤の図太い刑事の姿から、妹が死んでから1分1秒を危うく耐えていく被害者の姿まで、全く異なる演技を披露しなければならなかった。そのため10日間でなんと10kgを減量する殺人的な試みを敢行した。

写真=映画「鬼はさまよう」スチールカット
スクリーンの中の刑事でも、週末ドラマの古狸のような息子でも、ホン・サンス監督の映画の中のくだらない男でも、彼が演じた人物は四角いフレームの中にとどまることに満足しない。その代わりに、振り返ればすぐそばで生きていそうなリアルな印象を与えながら、作品全体に活力を与える。そのような意味で「鬼はさまよう」はかなりの部分でキム・サンギョンの演技の恩恵を受けたとも言えよう。

「僕が立ち上がって刑事役をしたいと言っても、もうさせてくれる人もいなさそうだ」と冗談を言う彼は、1998年にデビューしてからずっと守ってきた俳優哲学として「スタッフの名前を覚えること」を挙げた。どの作品も撮影が10回行われる前に一番下のスタッフの名前まで覚えるという彼は、自分がかけたフレンドリーな一言が、結局は作品にとって前向きな影響を及ぼすと信じているという。彼の演技に人間臭い魅力が漂う秘訣はここにあるのではないだろうか。

以下はキム・サンギョンとの一問一答である。

―映画を見た感想は?

キム・サンギョン:どんな映画よりも観客の反応が気になる。結論があまりにも強烈じゃないか。大半の映画やドラマは結論を特定しないのに、この映画は違う。波及効果や口論が多そうだ。死刑制度を巡る議論もあると思う。だから気になる。

―結末に対して自分ではどのように考えているか。

キム・サンギョン:テスの最後の選択が正しいと思ったから出演したんだと思う。今はテスの感情が残っているから、僕の意見は客観的じゃないと思う。

―3度目の刑事役だ。プレッシャーはなかったか。

キム・サンギョン:「鬼はさまよう」は「悪魔は誰だ」の制作会社の映画だ。僕は最初シナリオをもらった時、「どうしてまた刑事役なんだ! おかしくない?」と言った。でもシナリオを見たら全く違う刑事だった。「殺人の追憶」と「悪魔は誰だ」の場合は、結局事件が刑事自身のことではない。でも「鬼はさまよう」は刑事であることよりも、被害者になった状況だという点で違う。「刑事3部作」とも言われるけれど、その点で興味を持った。「殺人の追憶」のデジャヴを感じたくらいだから。様々な姿が重なった。以前の作品で解決できなかった事件を「鬼はさまよう」で終わらせた感じだ。

―3年前とその後を見せるために撮影中になんと10kgも減量した。

キム・サンギョン:作品の撮影中に減量することはほとんどない。人間として壊れる様子を見せるために10kgも痩せた。3年前後のはっきりとした違いを表現したかったから。最初から普通の体重より少し太らせた状態で3年前の分量を撮影した。10日間で10kg痩せたけど、6kgは5日で痩せられた。そこまでがいつもの僕の体重だったから。でもそこからさらに3kg痩せるのが死ぬほど大変だった。何も食べずに登山したり、走ったり。あまりにも大変で、生まれてはじめて強壮剤も飲んだくらいだ。バッテリーが切れたという感じを受けた。

―また刑事役のオファーが来たら?

キム・サンギョン:むしろ今は僕が刑事役をやりたいと言ってもさせてくれなさそうだ。あ、もちろん僕もまた刑事役を演じる気はないけど……。

―KBS 2TVドラマ「家族なのにどうして」で成功してから初となる作品だ。プレッシャーはなかったか。

キム・サンギョン:前作がヒットしたらそれなりのプレッシャーがあり、そうでない場合はまたそれなりのプレッシャーがある。常にジレンマだと思う。結局、天の意思に任せることだ。実は「鬼はさまよう」の編集がシナリオとかなり変わった。ここまで変わるとは思わなかったけど、僕たちもマスコミ向け試写会の当日に映画を見て知った。公開されたら一人で静かに映画館に行き、集中してもう一度見たい。

―「家族なのにどうして」の成功の秘訣は何だと思うか。

キム・サンギョン:久々のマクチャン(日常では起こらないような出来事や事件が次々と起きる韓国特有のドラマ)ではないドラマだったじゃないか。小学生から祖父母まで誰もが一緒に見られるドラマだった。まず脚本家さんの書くものがとても良かったし、俳優同士の調和もとれていたと思う。

―かなりのおしゃべりだ。

キム・サンギョン:わざと話をたくさんする。俳優だからといって気取っているのは好きじゃない。僕がこうやってスタッフとおしゃべりすることに嫉妬する俳優もいた。とにかく僕は主にスタッフとおしゃべりをするけれど、これはユ・インチョン先輩から学んだことだ。主人公ならその作品に参加した一番下のスタッフの名前まで全部覚えなければならないということを学んだ。僕は今も映画の撮影に入るとマネージャーに頼んでスタッフの名前リストを車に貼ってもらい、移動時間に覚える。撮影が10回行われる前までには全員覚える。名前で呼ばれるのがいいじゃないか。僕がそうやって親しくなったら確かに家族のようなエネルギーが集まることを感じた。

―ホン・サンス監督の映画にはいつ出演する予定なのか。

キム・サンギョン:いつも監督から電話はかかってくる。「ハハハ」が終わった後、一緒に仕事はしないことにした。2005年「映画館の恋」でカンヌ映画祭のレッドカーペットイベントに参加して、本当に大変だった。監督にはもともと一度使った俳優は二度と使わないというルールがあったが、それを僕が破ったのだ。(キム・サンギョンは「映画館の恋」の前にホン・サンス監督の「生活の発見」(2002)に出演した) 僕も監督も新しいことを見せようと一生懸命に努力した。それが大変だったのだ。

最近も監督とよく会ってお酒を飲んだり、「愛してる」とメールを送るほど特別な関係だ(笑) そのたびに、お互い離れて歳月がある程度経ったら、映画をもう一本やろうと話している。「その時は本当に世の中がびっくりするほどいいものが生まれるさ!」と。

―自分はどのような父親だと思うか。

キム・サンギョン:息子とレスリングする父。息子は今6歳だけど、5歳の時よりかなり力が強くなった。いたずらな父だ。息子が結婚する時、「お父さん、お願いだからいたずらしないで」と僕を引き止める親子を夢見る。ハハハ。それほど年を取ってもお互いにいたずらをしていたい。

―今も妻を見るとドキドキするのか。

キム・サンギョン:もちろんだ。結婚して8~9年になるけど、一度も喧嘩したことがない。今も大好きだし、ときめく。妻は僕がお酒を飲んで帰りが遅くなっても誰と飲んだか聞かない。僕の扱い方を知っているからだ(笑) 僕は束縛するともっと言うことを聞かないタイプだから。信頼が大事だと思う。

記者 : キム・スジョン、写真 : チョ・ソンジン