映像翻訳家ユン・ヘジンが語る、字幕に対する誤解「内容さえ伝えればいいですって?」

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写真=イ・ジョンミン

翻訳家ユン・ヘジン「字幕も映画、乙たちの活躍をお楽しみに」

映画館のブロックバスターであれ、恋愛映画であれ、我々は字幕を通じて内容を理解する。映画が終わり登場する翻訳家の名前は無心に見過ごしがちだが、実は彼らによって映画の特徴が倍増される。

外国語にそれなりに自信のあるシネフィル(Cinephile、映画愛好家)の中には、原語の台詞と翻訳を比較しながら間違ったところを指摘する人もいる。しかし、その中にニュートラルな批判はない。映画そのものの好き嫌いが分かれるため、翻訳にもまた、個々人の好みが強く反映されて客観的な批判はあり得ないとのことだ。

「ラストベガス」「ローマでアモーレ」「ブルージャスミン」など、100本以上の海外映画を翻訳してきた翻訳家ユン・ヘジン氏が字幕について語った。「映画評論とは違い、映画翻訳は外国語が出来れば誰にでも出来ると思われがちだが、海外映画の翻訳もまた、数多くのマーケティング会議を通じて生み出された結果です!」

写真=イ・ジョンミン

内容さえ伝えればいい?「字幕も映画の一部です」

「映画と英語が好きでたまらない」とする翻訳家ユン・ヘジンは、確かに尋常ではなかった。中学生の頃、友だちが遊んでいるときにディズニーアニメーション「ライオンキング」「美女と野獣」などを千回以上見ながら台詞を覚えていたという。映画マニアだった父の影響が大きかったため、生活においてそれを切り離すことが出来ず、大人になり自然に好きなことを職業にするようになった。

2004年、OCNとCATCH ONなどのケーブル番組で米ドラマなどの翻訳を始め、2010年からは劇場の映画翻訳も兼ねている。彼女ならではの感性とユーモアで、主にラブコメやドラマ映画を手がけたという。特に、ウディ・アレン監督の作品と縁が深い。「台詞が多いウディ・アレン監督の作品の特性から、観客に言葉の面白さを出来るだけ極めて伝えたことが通じたと思います」としながら、翻訳家ユン・ヘジンは自身なりの営業秘密をひとつ公開した。

「ケーブルの作品を手がける時は、誤訳や文法に気をつけましたが、劇場用の映画はどうしてもマーケティングが重要でした。観客の立場から求めることを読み取り、十分な会議を経て翻訳の方向性を決めます。最近担当したフランス映画「カラフル・ウェディングズ(原題:Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu?)も、フランス語と英語のスクリプトを一緒に見ながら翻訳しましたが、マーケティングチームからは出来るだけ面白くして欲しいとの要請がありました。

映像翻訳家は単純に内容を伝える人程度に思われていますが、実は字幕の効果と芸能性を熟知している人が翻訳家です。テレビの数多くのバラエティ番組で字幕を使う理由と一緒です。映画館でもそれを使おうとする傾向があるのです」

言語感覚と担当する作品に対する理解度、観客の情緒など、考慮すべきことが多そうだった。ある意味では、映像翻訳そのものが一つのコンテンツである。翻訳家ユン・ヘジンは「それでも、字幕が単純な内容伝達を乗り越えることを嫌う方もいらっしゃる」と苦渋を吐露した。

「映像翻訳に対し、狭い考え方を持ってらっしゃる方もそうですが、過度にマーケティング面だけにこだわることにも問題があります。一部の会社は、大げさにしてでも観客を集めるようにと要求しますが、正直、映画が良くないのに字幕で生かせと言われると力が抜けます」

写真=イ・ジョンミン

「甲ではなく、乙たちの愉快な反乱を夢見ています」

人間同士にも縁があるように、翻訳家ユン・ヘジンは「翻訳をする時も、私の映画だと思われる作品がある」と強調した。「これは私のものだと感じた時、魔法のように来る映画がある」としながらユン翻訳家は、「ユー・アー・ノット・ユー」そして「美しい絵の崩壊」「ブルージャスミン」「カラフル・ウェディングズ」などもめぐりめぐって自分のもとに来たと説明した。

「言及した作品は、映画的感性だけでは韓国の観客が慣れていないため、スパイスが必要です。それを、私が出来ると思いました。私は様々な流行語をたびたび使いますが、実は批判もされます(笑) イ・ミド先生をはじめ、現在はパク・ジフン、ソン・ジウォン、ホン・ジュヒなど様々な翻訳家の方々が活動されていますが、意訳で考えるとイ・ミド先生の頃がもっと多かったです。その代わり、悪口を和らげたり、台詞を物柔らかに翻訳していた頃です。

最近はデジタル技術の変化により、字幕をどんどん短くする傾向にあります。また、英語が上手な人が多いため、翻訳家の英語の実力も多々批判の対象になります。悪口や俗語もほとんど正直に盛り込みます。SNSが発達したため、リアルタイムで観客の反応を気にすることが多いです」

自身の仕事について、落ちついて勝つ自信を持って語っていた翻訳家ユン・ヘジンだったが「依然として韓国の映画市場において翻訳家は乙の中の乙」としながら「一部の輸入会社では、翻訳代金を約束した時まで支払わなかったりするため、専業として定着するには難しい構造」と惜しい気持ちを示した。

そのため、ユン・ヘジンは新しい抱負を抱き挑戦を始めた。「JANE&YOU」という輸入会社を設立し、映画会社「ディシード」と手を組み「ある愛へと続く旅」を輸入して公開を推進した。ペネロペ・クルスが熱演したドラマジャンルの映画で、韓国で先月30日に公開されて上映中だ。

「私もこの市場でそれなりに基盤を築いた方ですが、これだけ困難が多いことを見ると、他の翻訳家たちはもっと厳しいのが現実です。輸入会社と共に映像翻訳アカデミーを運営していますが、今まで積み上げたノウハウを人々に伝えたいです。翻訳される方は、物静かで一人でいることが好きな性向を持っていますが、同時に映画に対して誰よりも知識が豊富な方々だからです。

私が強調することは、このような方々が現場に出てたくさん働いて欲しいということです。教え子たちも情熱を持って映画を輸入してシナリオも書けば、この業界を変えるにおいて大きな力になるのではないでしょうか。映画の輸入を始めたのも『なぜいつも乙なのか、直接することも可能ではないか』と思ったからです」

彼女は、乙たちの活躍を夢見ていた。「ある愛へと続く旅」以来、翻訳家ユン・ヘジンが手がけた作品は邦画「猫侍」と「白ゆき姫殺人事件」などだ。着実に自身の仕事をしながら跳躍を準備していた。

写真=イ・ジョンミン

「外国映画を愛する観客へ……」

海外映画に接する観客に翻訳家ユン・ヘジンが伝えたいことがあった。字幕の重要性だった。「映画によって字幕が作品を押さえなければならない場合も、逆に生かすべき場合もある」とし、「観客の立場で字幕についてとりあえず批判する前に、映画の特性に対する判断からして頂きたい」と述べた。

「観客の方々が海外映画を見ながら字幕の役割を考えてみることも、もう一つの楽しみになると思います。感性は活かしているのか、センスはどれくらいなのかを」

記者 : イ・ソンピル