コン・ユ「サスペクト 哀しき容疑者」来日インタビュー“ラブコメは僕より若い後輩たちがやってくれると思います(笑)”

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最新主演映画「サスペクト 哀しき容疑者」で、最愛の家族を殺され復讐を誓う元北朝鮮特殊工作員チ・ドンチョルに扮したコン・ユ。国家をゆるがす陰謀に巻き込まれ殺人事件の容疑者として追われる身になった男の、命をかけた反撃の結末は!? 韓国版「ボーン」シリーズとも評されたアクション快作。過酷を極めた撮影の裏話、35歳を迎えた現在の心境とは……日本公式ファンクラブ“With YOO”主催の特別試写会のため来日したコン・ユに話を聞いた。

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―ウォン・シニョン監督からの熱烈なオファーを受けてこの作品に出ることを決めたそうですが、監督のどんな言葉がコン・ユさんの心を動かしたのでしょう?

コン・ユ:実は最初は出演をお断りしたんです。それでも再度オファーをいただいたので、直接監督にお会いしてお話を聞きました。僕に決定的な信頼感を与えてくれたのは「これはただ華やかなだけのアクション映画ではない。土台のしっかりした物語を伝えたいんだ。単に殴ったり壊したりするだけのアクションものは作らない」という監督の言葉でした。映画を見るとわかりますが、劇中ではドンチョルの父性愛も描かれます。危機に瀕した男が、自分の血を分けた娘のためにさまざまな困難を乗り越えてたどりついた先に何があったか……そのあたりの展開にも心を掴まれました。

―前作の「トガニ 幼き瞳の告発」が好評だったので、次回作選びが大変だったのではないでしょうか?

コン・ユ:それは問題なかったですね。なぜなら「トガニ」は実話をもとにした社会的な物語だったので、次の作品はそのジャンルから離れさえすれば、むしろ選択の幅は広がると思いました。実際、以前よりプレッシャーも少なく、楽な気持ちで次回作を選ぶことができました。つけ加えるなら、僕は「トガニ」がここまで成功して、みなさんに受け入れられるとは思ってもみなかったので、本当に驚きました。そういう意味で「トガニ」が成功したから次も成績のよい作品に出なくっちゃ、という欲もなかったですね。

―ロッククライミングのシーンがとてもスリリングでした。コン・ユさんは兵役時代に厳しい大自然のなかで過酷な訓練を受けたと聞いていますが、そのときの経験は今回の役を演じる上で役に立ちましたか?

コン・ユ:ハハハ、僕が軍隊で受けた訓練は映画に出てきた訓練とはまったく違います。でも、あまりに大変だったので、もう一回軍隊に行ったような気持ちはしましたね(笑) 僕は軍隊では走ってくる戦車に向かって隠れた場所からミサイルを撃つ、射手をしていました。ドンチョルが受けたような難易度の高い訓練ではありませんでしたが、実際に銃を触ったこともありましたし、仲間たちと軍服を着て山の中を転げ回ったりもしました。そのような経験があるのとないのとではやはり違うと思うので、そういう意味では軍隊で受けた訓練は、今回の役作りにとても役に立ったと思います。


「過酷なダイエットと減量で作り上げた体…CGと言われて悔しかった」

―ほかにもカークラッシュや、漢江に飛び込むシーンなど、ハードなアクション・シーンがたくさんありましたが。

コン・ユ:カーアクションはたしかに危険でしたが、僕は車の運転が大好きなので「こんなに激しいことは現実にはできないぞ」と思い、むしろワクワクしながら撮影に臨みました。まるで遊園地の乗り物に乗るみたいに楽しかったです。なので、僕自身はまったく怖いと感じなかったんですが、一緒に車に乗っていたカメラマンは「スピードを落としてくれ、これじゃ撮影できない!」と言っていました(笑) 橋の上から20m下の漢江に飛び込むシーンは、ジャンプの瞬間が怖くてたまりませんでした。ジャンプするシーンと川に落ちて潜水するシーンは実際には別々に撮っています。僕は、水泳は得意なんですが、このシーンに限っては、水泳のうまい下手とは一切関係なかったですね(笑)

―絞首台から脱出するシーンも迫真の演技でしたが、現場での苦労話を教えください。コン・ユさんの鍛え上げられた肉体にも目を見張りました。

コン・ユ:韓国で公開されたとき、僕の体がCGだとマスコミに言われて、監督も僕も大変悔しい思いをしました。3ヶ月間、過酷なダイエットと減量をして作り上げた体だったからです。あのシーンは肉体美を誇示しようとか、目を楽しませるためにつくったシーンではありません。主人公が脱臼をしてまで絞首台から逃げ出したという、過酷で凄惨な状況を訴えるためのシーンでした。実際に脱臼するわけにはいかないので、肩を片方ずつ外したように撮影し、後からCGで合成しました。ですがCGを使ったのはそこだけで、小さな筋肉がビクッと痙攣するところまで全部自分の体でやっています。高度な訓練を受けている人たちはあのように自分の意思で自由に脱臼できるそうです。映画の中の作り話ではないんです。体力的には本当に辛くてきつくて、このシーンの撮影が終わったときはほとんど失神状態でした。

―そんな知識もお持ちだということは、この映画のためにいろいろ勉強されたのでしょうね。

コン・ユ:はい、今回は事前にいろんな話を聞いたり見たりして準備しました。今の時代、アクション映画について語るときは、ハリウッド映画の「ボーン」シリーズの前かあとか、それがひとつの基準になると思うんです。そういう意味では「サスペクト」も多分に「ボーン」シリーズの影響を受けています。僕はそのメイキング映像を見たんですが、思いのほか主演のマット・デイモンが代役を使っているんですよ(笑) 映画では彼自身がやっているように見えたんですが、僕のケースよりもはるかにスタントマンの力を借りていました。実をいうと今回は、それに対する競争心のようなものもありました。「サスペクト」は予算が本当に少なくて、インディーズクラスだったんですよ。でも、そんなことは感じさせない、クオリティの高いものを作りたいという自負心と、きっと作れるという自信をもって撮影に臨みました。車のドリフトも、こんなことを実際にやったら警察に捕まってしまうようなレベルのことを、堂々と練習しました。ロシアの人たちが相手を制圧するときに使う、システマという武術も取り入れましたし、北の軍人たちが使う、主体撃術という近接格闘術も映像を見て習得しました。もちろん、作品が完璧に出来上がったわけではないので、未練があったり、ここは残念だな、と思う部分もあります。でも、これは笑い話なんですが、マット・デイモンひとりの出演料より「サスペクト」1本の製作費のほうが低いんです。おそらく半分くらいじゃないかと思います。それにもかかわらずこれだけのクオリティの作品に仕上げた監督に、僕は拍手を贈りたいと思います。製作費がもっと豊潤だったら、どんな作品ができあがっただろうと思いますし、監督の次のアクション映画にもおおいに期待したいです。

―そのときはぜひまた、コン・ユさんの主演で。

コン・ユ:監督が僕を呼んでくだされば、出たいですね(笑)

―あのときの体は、今もキープされていますか?

コン・ユ:(笑) いいえ、今の僕はあのときの体ではありません。気持ちとしてはあの肉体を維持したいんですが、そのためには食べたいものも、好きなお酒も我慢しなくてはなりません。それでは人生が悲しくなってしまうじゃないですか。そこまでするつもりはないです。でもまもなく、次の映画のために体を絞らないといけなくなりそうです。「サスペクト」ほどではないんですが、ダイエットをする予定です。だから今のうちに美味しいものをたくさん食べています(笑)


「ラブ・コメディは僕より若い後輩たちがやってくれると思います(笑)」

―日本のファンの間では「映画のコン・ユさんもいいけれど、ラブ・コメディのドラマのコン・ユさんが見たい」という希望があるようですが。

コン・ユ:う~ん。僕は次回作に、チョン・ドヨンさんと共演する映画「男と女」を選びました。韓国のファンの中にも、また映画なの、とがっかりされた方がいたようです。でも、「では次はラブ・コメディに出ます」とは言えないものですよね。ドラマも機会があれば出たいですが、絶対とも、いつとも約束できません。ただ、ラブ・コメディが上手と言われることは、本当に嬉しいことだと思っています。俳優が全員そのように言ってもらえるわけではありませんし、その部分は僕の長所であり、有利な点だと思って感謝しています。ラブ・コメディを避けているわけではないんですよ。つねにシナリオもいただいています。でも、いざやるときは、内容を読んでから決めますよね。「このジャンルなら自分がうまくやれそうだからやろうとか、期待されているからやろう」ということではないと思うんです。その時がきたら、いつかやると思います。いずれにしても、次の仕事は映画で、メロドラマです。僕は自分の年齢にふさわしいラブストーリーを演じたいです。ラブ・コメディは僕より若い、後輩の俳優たちがたくさんやってくれると思います(笑)

―今回、「サスペクト」のトークイベントが行なわれた六本木ブルーシアターは、韓流ミュージカルがたくさん上演された劇場です。コン・ユさんは歌がうまいことでも知られていますが、ミュージカルに出演する気持ちはありませんか?

コン・ユ:これまでにもミュージカルのオファーはもらっているのですが、今すぐはできないと思います。なぜなら歌がうまい方、ミュージカル専門の方がたくさんいらっしゃるのに、僕には実力がないので。今の段階でブランドや名前の認知度を使ってミュージカルの舞台に出るのは、申し訳ないような気がします。


「真の男は40歳から…僕なんかまだまだ子どもですよ(笑)」

―では最後の質問です。この夏、35歳になられたコン・ユさん。俳優としてもひとりの男性としても、もっとも美しく内面も充実した時期かと思いますが、これからの30代後半を、どのように過ごしたいですか?

コン・ユ:これからが始まりですよね(笑) 僕は真の男は40歳からだと思うんです。僕なんかまだまだ子どもですよ(笑) 年を重ねながらわかってきたことですが、男の本格的なスタートは40代。その年代が一番カッコよくてセクシーですよね。ソン・ガンホ先輩やチェ・ミンシク先輩を見るたびにそう感じます。僕自身、これからますますカッコよくセクシーになるためには、今からもっともっと努力しなければいけません。

―今も十分にセクシーです! ますますのご活躍を。今日はありがとうございました。

コン・ユ:ありがとうございました(笑)

ライター:望月美寿

「サスペクト 哀しき容疑者」
監督:ウォン・シニョン 脚本:イム・サンユン 出演:コン・ユ、パス・スンヒ
原題:용의자(The Suspect)/韓国映画/2013年/2.35:1/137min./カラー/Dolby Digital SRD
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「サスペクト 哀しき容疑者」公式サイト

記者 : Kstyle編集部、撮影 : 朝岡英輔