Vol.1 ― 放送終了「大丈夫、愛だ」演技&演出&台本“3拍子揃った上質なドラマ”

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※この記事にはドラマのストーリーに関する内容が含まれています。
写真=「大丈夫、愛だ」放送画面キャプチャー
SBS水木ドラマ「大丈夫、愛だ」(脚本:ノ・ヒギョン、演出:キム・ギュテ)が韓国で11日に放送終了した。それぞれ違う心の病気を抱えて生きいた人物たちは愛でそれを克服した。その過程で繊細な演出と美しい台詞が輝いた。演技と演出、台本、何ひとつ足りないところなくよく調和していたため「大丈夫、愛だ」は出来の良いドラマの手本になった。

チョ・インソン、最高の演技

「大丈夫、愛だ」は、ユニークなラブコメディであると同時に涙腺を刺激する精神医療ドラマだった。変化を主導したキャラクターは、チョ・インソンが演じたチャン・ジェヨルだった。序盤には鋭くてウィットのある成功した推理小説作家に描かれたが、義理の父を巡る秘密が明らかになり、彼の幼い頃の痛みと家族の悲劇が明らかになった。自信満々の彼は実は幻視に苦しむ統合失調症患者であり、それを克服していく過程は視聴者を泣かせた。

チョ・インソンの勢いに乗った演技と多彩な魅力も際立った。自然な笑みと優しい眼差しは、完璧に近い彼氏を作り上げた。前半では“スター”チョ・インソンのイメージを活用したが、後半では“俳優”チョ・インソンになった。病室を訪れたチ・ヘス(コン・ヒョジン)に「こんなこと、言わないでほしいと思ってるのか?君が行ってしまうのか?」と言う14話のシーンは名シーンの一つになっている。チャン・ジェヨルが感じる不安と混乱が彼の声と表情を通じてそのまま視聴者たちに伝わってきた。

チョ・インソンを含め、神経質的でありながらも人間的な精神科医の姿を見せてくれたコン・ヒョジン、心強い助っ人でコミカルな姿と真剣な姿を同時に見せてくれたソン・ドンイル、トゥレット障害(チック症)の演技で強烈な印象を残したイ・グァンス、元夫とぎりぎりの友情を続けるチン・ギョンなども立派だった。出番は短かったが、優れた感情の演技で没入感を高めたEXOのディオは「大丈夫、愛だ」が見つけた新人俳優だ。

キム・ギュテ、洗練された演出

人物たちの心理が重要に扱われたドラマであるだけに、演出も繊細で洗練されていた。特に、自身の幻視から抜け出せないチャン・ジェヨルの心理を表現するシーンが優れていた。15話でチャン・ジェヨルはチ・ヘスの助けでハン・ガンウ(EXO ディオ)が幼い頃の自身であることに気付いた。これは、それぞれ違う方向から走ってきた幼いチャン・ジェヨルとハン・ガンウが一つになるシーンで説明された。

ディテールもドラマをより豊かにした。15話でチャン・ジェボム(ヤン・イクチュン)は精神病院に入院しているチャン・ジェヨルを訪れ、怒りを抑えきれず、暴力を振るった。抵抗はおろか、床に横になって蹴られっぱなしになっていたジェヨルの顔は、第14話で車にはねられ道路の上に倒れたハン・ガンウの姿と似たようなアングルで撮られた。これはガンウがジェヨルだったためだ。

バックグラウンドミュージックとOST(劇中歌)は「大丈夫、愛だ」の完成度をさらに高めた。義理の父の暴力に苦しんでいたチャン・ジェヨルの子供時代の様子がモノクロ画面に登場する度に軽快なポップソングが流れた。悲惨な状況とコントラストをなす音楽の雰囲気は、チャン・ジェヨル家族の悲劇を最大化した。静止画とモノクロで暴力的なシーンを効率よく描き出したのは、賢い選択だった。

チョ・インソンを中心とした劇的なクローズアップは「大丈夫、愛だ」のトレードマークだった。チ・ヘス(コン・ヒョジン)がチャン・ジェヨルを同居人として迎える第2話のシーンでチャン・ジェヨルはまるでCMのワンシーンの中の主人公のように登場し、女性視聴者たちをときめかせた。

ノ・ヒギョンのラブコメディは軽くない?

脚本家ノ・ヒギョンは「ラブコメディ=軽い」という偏見を破った。「大丈夫、愛だ」はハッピーエンドになったが、重いテーマを決して軽く扱わなかった。同居人ら皆一番近い人、つまり家族により傷ついた人々だった。彼らは、まるで家族のようにお互いの面倒を見てあげたり、自ら安否を尋ねた。安定したメンタルを持った人は一人もいなかったものの、希望を語った。「その原動力は愛」ということが脚本家のメッセージだった。チャン・ジェヨルとチ・ヘスの恋愛を結婚で終わらせず、変わらぬ愛を見せてくれたこともそのような理由があったためだ。

ところどころに複線と暗示があった。16話まで緊張の紐を緩めることはできなかった。いい加減に書かれたシーンも、小道具もなかった。チャン・ジェヨルの繰り返される危険な行動は、罪悪感による自傷行為につながり、ハン・ガンウの全身を見せるシーンがなかった理由は彼がいつも素足だったということを後半に見せるためだった。ハン・ガンウが被った野球帽は後日ルー・ゲーリッグ病を意味するものになった。最終回に近づくほど完成度が落ちる他の作品とは異なり「大丈夫、愛だ」はチョク台本(撮影直前で渡される、そのとき撮るシーンの台本)のない、半分は事前に制作されたものだった。そのおかげで完成度を維持することができた。

珠玉の名台詞も欠かせない。最終回でも「愛は相手のために何かを諦めることではなく、何かやり遂げることだ」「これまで人にたくさんお休みの挨拶をしたが、僕自身にはしたことがない。今日は自分に安否を問い、グッド・ナイトの挨拶をする」など、淡白ながらも響きのある台詞が続いた。

記者 : キム・ユンジ